東京多摩借地借家人組合

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車上生活続けた時期も… 1人暮らし高齢者の住まい どう確保?

2023年09月22日 | 国と東京都の住宅政策
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230921/k10014202481000.html

単身の高齢者が増加するなか、賃貸住宅への入居を断られるケースが多いとして、支援の在り方を議論している国の検討会は、入居後
の見守りも行う住宅を普及させるなど、大家が家を貸しやすくする環境整備を進めるなどとする素案を示しました。

単身高齢者増加 “死亡事故に対する不安”

今回の国による住宅確保の議論の背景の一つとなっているのが高齢者の増加です。
内閣府がまとめた最新の令和5年版の高齢社会白書によりますと、65歳以上の高齢者の数は、2010年におよそ2900万人だったのが2020
年にはおよそ3600万人に増えていて、今後、総人口が減少する中で高齢者の割合が増加していくと推定しています。また、1人で暮ら
す65歳以上の高齢者は2010年に479万人だったのが2020年には671万人に増えていて、さらに2030年には795万人にまで増加する推計さ
れています。
一方で国土交通省が令和3年度、大家などの賃貸人187団体に対して行った意識調査では、およそ7割が高齢者の入居に対して拒否感を
示したということです。また、高齢者に対して入居制限を行っている大家などもいて、その理由を尋ねたところ「屋内での死亡事故等
に対する不安」が90.9%と最も多く、次いで「住宅の使用方法等に対する不安」が3.9%、などとなったということです。
高齢者などの住宅確保に取り組む居住支援法人への相談件数も増加傾向にある一方、孤立死にともなう遺品の処分の負担などから賃貸
住宅への入居を断られるケースが少なくなく、安心して生活を送るための住まいの支援が課題となっています。
さらに高齢者のほかにも障害者や刑務所を出所した人などが入居が拒否されるケースがあり、今回、国土交通省、厚生労働省、法務省
の3省で検討会で対策について議論が進められてきました。

検討会 大家の不安を解消する取り組み進める

国土交通省と厚生労働省、それに法務省による専門家の検討会は21日、とりまとめの素案を示しました。それによりますと、支援が必
要な人は住宅だけでなく、家族や地域から孤立するなど複合的な課題を抱えていることから、住まいの確保から入居後の暮らしまで一
貫して支援することや孤立死などへの大家側の不安を解消する取り組みを進めるとしています。
具体的には、市町村の住宅と福祉の部局や支援団体が連携した相談体制を構築することや居住支援法人が見守りなどのサポートも含め
住宅を管理する仕組みを作るほか、居住支援法人の経済的な支援の方法や、事業継続モデルの構築も検討すべきとしています。
委員からは「相談者のニーズにあわせて、さまざまな支援につなぐために地域にコーディネーターを置くことが重要ではないか」とか
「居住支援法人によっては住宅の管理まで対応できないところもあり、見守りや遺品の整理などのサービスも広めていくべきだ」など
といった意見が出されました。
検討会では21日の意見を踏まえて、年内に報告案をとりまとめることにしています。

車上生活を続けた時もあった男性は

関東地方に住む74歳の男性は去年、連帯保証人がいないことなどを理由に賃貸住宅への入居を断られる経験しました。男性はもともと
持ち家で暮らしていましたが、一緒に住宅ローンを組んでいた家族に先立たれて返済が苦しくなり、去年の夏、家を手放しました。そ
して、1人で暮らせる賃貸のアパートなどを探し始めましたが、不動産業者からは「保証人がいないと難しい」と紹介を断られ、物件
は見つからなかったと言います。男性はやがて部屋探し自体が嫌になり、半年以上、所有していた車での車上生活を続けた時期もあっ
たということです。
男性
「一時はもう、どうなってもいいやという気持ちになった。自分の力だけでは部屋を借りることができない、どうにもならなさを感じ
た」
そうした生活も限界が近づいていたことし6月、男性は自治体からの紹介で、居住支援法人が男性の見守りを行うことを条件にしてマ
ンションに入居することができたといいます。最近では、週に2回の清掃の仕事を始め、趣味の釣りを楽しむ余裕もできたということ
です。
男性
「住むところがあるだけで気持ちに余裕が生まれ、生活は全然違います。高齢で収入がさらに少ない人が賃貸住宅への入居でさらに苦
労すると思うので、高齢であっても、もう少し簡単に部屋が借りられるようになってほしい」

居住支援法人「大家への経済的な支援が必要」

居住支援法人は、都道府県ごとに指定されていて、入居先が見つからない高齢者などに住宅の情報提供や相談などのサポートを行って
います。
このうち、男性に部屋を紹介した都内の居住支援法人では、部屋を借りる高齢者への見守り支援サービスを行うことを条件に、高齢者
の入居に理解してくれる大家を増やす取り組みを行っています。具体的には地域のNPOなどと連携して、月に一度、契約している高齢
者のアパートなどを訪問し安否確認や生活相談に乗っていて、この日は、法人のスタッフが男性の自宅を訪れ、体調の変化などを聞き
取っていました。
こうした見守り支援などを条件に法人では高齢者の入居に理解してくれる大家を探し、今では単身の高齢者でも利用できる物件を数十
件程度確保できたということです。ただ、認知症や孤立死した場合など、高齢者の入居そのものにリスクを感じる大家が多いのは今も
変わらず、抜本的な対策の必要性を指摘します。
居住支援法人「高齢者住まい相談室こたつ」の松田朗室長は次のように話していました。
松田朗室長
「孤立死では遺品の片付けや原状回復に相当な費用がかかったり、事故物件の扱いになったりするリスクがある一方、それに対する大
家への支援や補助は非常に少なく、高齢者の入居に難色を示すのはしかたのない状況だと思います。まずは大家への経済的な支援が必
要なほか、地域で暮らす高齢者を介護や医療従事者などと、社会で支えていく仕組み作りも大家の不安を取り除くためには有効だと思
います」

専門家 “入居拒否が起こらない体制づくり必要”

高齢者の問題に詳しい、みずほリサーチ&テクノロジーズの主席研究員で、日本福祉大学の教授の藤森克彦さんは次のように話してい
ました。
藤森克彦さん
「孤独死や死後の残置物の処理などへの不安などから大家が入居を拒むという問題が生じている。退職をきっかけに収入が減った高齢
者が家賃を低くするために引っ越したり、3階とか4階に住んでいた高齢者が階段をのぼれなくなって1階に引っ越すケースも多く聞い
ていて、1人暮らし高齢者が増える中、入居拒否が起こらないような体制づくりが必要だ。昔は家族が行っていたような高齢者の見守
りや葬式などを地域や居住支援法人など社会全体で行う体制を作り大家の不安を軽減していくことが重要で、住宅確保の支援と福祉の
支援を連携して行っていく必要がある。また、国だけでなく地方でも高齢者のほかに障害者や外国人など、どういう人が住まいの確保
に困っているかを分析し、対策を検討していくことも重要だ」

住宅SN検討会、中間とりまとめに向け議論
https://www.re-port.net/article/news/0000073744/

 国土交通省は21日、厚生労働省と法務省との合同で設置した「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」
の4回目の会合を開き、中間とりまとめの策定に向けての素案を検討した。
 素案では、各省に対して、現行制度の課題を踏まえて住宅セーフティネット制度および関連制度の具体的な見直しを進めるべきであ
るとし、さらに地方公共団体や不動産事業者、居住支援法人など多様な主体と連携して取り組む仕組みを構築し、制度の充実や補助・
税制など幅広く検討していくことを求めた。
 現状と課題については、高齢者人口・単身世帯の増加、持ち家率の漸減について指摘。さらに、賃貸住宅大家(賃貸人)の住宅確保
要配慮者の入居に対する拒否感の解消、高齢者・低額所得者・障がい者だけではなく、ひとり親世帯や刑務所出所者についても地域で
安心して暮らせる環境整備が求められるとし、その上で、居住支援法人の半数以上が赤字経営を強いられている現状や、市区町村レベ
ルでの住宅部局・福祉部局の連携等に課題があることも明記した。
 こうした課題認識の上で基本的な方向性として、「相談から住まいの確保・入居後の支援まで一貫した支援体制を行政が積極的に関
与して構築する」「入居時だけでなく入居中や退去時における対応を充実したものにする」「住宅確保に当たっては民間・公共のス
トックの有効活用する」等の項目を示した。
 今後の取り組みについては、(1)居住支援の充実、(2)賃貸人が住宅を提供しやすい市場環境の整備、(3)住宅確保要配慮者の
ニーズに対応した住宅等の確保方策、(4)地域における住宅・福祉・司法と連携した居住支援の体制づくり、といった項目を掲げ
た。(1)では、情報提供や相談体制の充実、地方公共団体や地域の不動産業者、居住支援法人等が連携した切れ目のない支援体制の
整備、賃貸人を継続的にサポートする伴走型の取り組みなどが掲げられた。また、(2)については住宅扶助や家賃債務保証といった
制度・仕組みの活用、終身建物賃貸借制度の対象拡大など、(3)では住宅だけではない地域における居場所づくり等について検討し
ていくこととなる。
 この素案について、各委員からは「個々の政策の拡充はもちろん、法的な枠組みとして『政策の一体感』が重要ではないか。住宅
セーフティネット法を、関係省庁による共管とするなど、方策を考える必要がある」「賃貸人や家賃債務保証会社のリスクを軽減し、
不安を払拭する取り組みが必要。死後事務委任など、既存の仕組みをPRすることも必要だ」「賃貸管理会社は地域の福祉団体との関わ
りが少ない。連携を進めるために、もっとPR・広報が求められる」などといった意見が挙がった。
 今回、委員から挙がった意見を踏まえ、年内に5回目の検討会を実施する予定。その際に中間とりまとめ案について議論していく。

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分譲マンションの建替え決議で賃借権消滅! 区分所有法改正中間試案に全借連が反対意見提出

2023年09月20日 | 最新情報
 法制審議会区分所有法制部会は、2023年6月8日に「区分所有法制の改正に関する中間試案」を取りまとめ、意見募集を行っています。令和6年の通常国会に法案が提出される予定です。
区分所有建物(マンション)の建て替えなど円滑化を図るため、建替え決議要件の緩和に加え、建替え決議がされた区分所有マンションに住む賃借権についても消滅させる案が検討されています。全借連として事務局長名で9月1日に法務省民事局宛てに次の意見を提出しました。

 法制審議会区分所有法制部会の「区分所有法制の改正に関する中間試案」の第2の1(2)の建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅について、(ア)存続期間中の賃借権の消滅、(イ)更新等に関する借地借家法の適用除外についいずれの案も以下の理由により反対する。

 現行の借家制度において、定期借家契約を除く普通借家契約において、賃貸人が契約の更新拒絶叉は解約の申し入れをするには正当事由を必要としている(借地借家法28条)。賃貸人の主張する建替えの必要性のみでは正当事由が認められないことは法文上明らかであり、区分所有建物に居住ないしは営業する賃借人に対し、建替え決議のみで正当事由を適用しないとして適用除外を認めることになれば、借家制度の根幹である正当事由制度を解体し、賃借人の居住や営業の権利を脅かすものであり、区分所有部会部会の審議で進められることに反対である。区分所有マンションが老朽化するに伴い、マンションに居住しないまま、賃貸で貸し出す物件が増え、建替え決議が賃借人を立ち退かせる口実に利用されることは明らかである。

 また、(ア)の存続期間中賃借権の消滅については、B案では賃借権消滅請求がされた時から4カ月もしくは6カ月が経過したときは、専有部分の賃借権が消滅するとされているが、賃借権の消滅により生ずる損失補償金支払の請求ができたとしても、賃貸借契約期間を定めた意味がなくなり、契約期間中の賃貸人からの突然の明渡しによって受ける賃借人の損害ははかり知れない。
現在、不動産業者よる地上げ問題が多発し、借地借家法を無視して「3カ月以内に立ち退け」と脅迫する事例が後を絶たず、明渡しに応じないことで生ずる人権侵害の嫌がらせに怯えて不合理な立退き請求に応じてしまう賃借人が多いのが現実である。建替え決議を唯一の根拠にして、賃借人の居住する権利を一方的に奪うことは許されない。借地借家法制の賃借人の居住の権利を賃貸人及び建替えを求める区分所有者の言い分のみ認めて、賃借人の権利をないがしろにすることのないよう、立退きを求められる賃借人の事情等をより重視し、審議会において区分所有法制の慎重な審議を求めるものである。

(全国借地借家人新聞より)
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更新料支払約束なく、更新料請求を拒否。地代増額の根拠も不明で拒否回答。

2023年09月20日 | 契約更新と更新料
 豊島区内に土地約40坪を賃借する中尾さん(仮名)は地主の管理会社から地代増額請求と更新料支払い請求を受けている。地代増額の根拠は東京都不動産鑑定士協会と日税不動産鑑定士会の資料を参考に按分したものを請
求し、更新料は一般的な相場と称し請求している。A4用紙2枚に渡りびっしりと計算式が書かれている。中尾さんは今年の5月に組合と相談の上前回の更新が法定更新で更新料支払い約束が一切なく支払いできかねると回答。
地代増額も確固たる不相当である理由を述べていないため拒否回答した。
8月になって前回の通知書を全く理解していないような回答をしてきたため再び組合に相談。再度の説明として前回の更新が法定更新で更新料支払い約束が一切ないので支払いできかねる、地代増額は資料を参考にしただけの曖昧な根拠であるため公租公課証明直近数回分を提出し不相当の理由を明確に回答するよう通知を作成することにした。地主も管理会社も通知した内容が理解できないのだろうかと中尾さんは首をかしげていた。
(東京借地借家人新聞より)


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家賃債務保証会社に聞いた、家賃集金・滞納対応業務の実態

2023年09月16日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
https://www.zenchin.com/news/post-8129.php

 家賃債務保証会社(以下、保証会社)の家賃集金・滞納対応業務の実態を全8社に取材しました。すると、家賃回収の初動対応や家賃回収方法には、各社に違いがあることが見えてきました。保証会社が大きなリソースを割く督促業務と、滞納者への訪問業務のポイントについて、保証会社の注目される取り組みを解説します。

そもそもどのくらいの件数、家賃滞納が発生し、保証会社のマンパワーが割かれているのか

■家賃滞納および回収の実態

 滞納発生率は、各社の保有契約件数に対して滞納が何件あったかを計算したもので、1〜2%台と7〜8%台で二極化。代理店である不動産会社によって滞納発生率が大きく異なるとの声も上がっています。ある地場系の保証会社では、地盤のあるエリアでは不動産会社に1番手として利用してもらえるので滞納率が低くなりますが、新規に出店したエリアにおいては、2番手、3番手となってしまいます。その結果、入居者の属性が変わってくるため、滞納発生率が跳ね上がることがあるそうです。
 滞納のうち、明け渡し訴訟に至る割合を表した「明け渡し訴訟の発生率」の比較については、少ないところで0.1%、多いところで2.7%でした。各社、明け渡し訴訟になる件数自体には大きなズレがなく、発生件数は月に5件ほどです。
 各社が督促業務にどれほどのマンパワーを割いているかを把握するため、全社員数に対する、督促業務従事者の割合を比較したところ、少ないところで20%、多いところで65%。平均すると30%ほどの人員を督促業務に投入していました。保証会社の仕事において、督促業務が一定のボリュームを占めていることがわかる結果となりました。

保証会社の督促業務の体制は? 対応はどのように行っているのか

■督促業務における注目すべきポイント

ポイント01 初月滞納者への対応方法

 初動対応は、ショートメッセージサービス(SMS)の活用が基本ですが、SMS単体で行う、SMSと架電を併用して行うなど、対応の仕方は保証会社によってさまざまです。架電についても、自動音声対応のパターンと担当者が直接電話をかけるパターンに分かれました。自動音声のオートコールは、実務で生かしている企業もありましたが、実験的に試してみて回収率が上がらなかったため、やめた会社が2社。SMSに加えて郵送で知らせるケースも見受けられましたが、SMSを送らず、すぐに電話をかけている会社も1社ありました。

ポイント02 滞納者へのアプローチ方法と情報収集のポイント

 滞納者の大半はうっかり滞納した人や滞納に気付いていない人が占めるため、最初はSMSでアプローチする傾向が見られます。それだけで2割ほどの回収が見込めるそうです。中にはSNSの通知だけで5割回収できるという会社もありました。最初から電話をかけると、保証会社がかなりのマンパワーを割かなければならなくなるため、まずはSMSを送ります。それで回収できなかった滞納者に電話をかけ、滞納の理由や支払いのめどはいつ立つかなどをヒアリング。今後の回収の方向性を定めていくそうです。回収に関しても、入居者の状況を見つつ、何日の何時と期限を設定し入金に向けて動くように促しているケースもありました。
 電話をかける時間帯も回収率を上げる上でのポイントの1つです。ある保証会社は午前12〜午後1時までのお昼休みの時間帯と、午後5時以降のつながりやすい時間帯に絞ってかけているとのこと。さらに、代理店である不動産会社の定休日で、問い合わせの少ない水曜日に集中してかけるなど、各社、電話をかける時間帯も工夫を凝らしていました。

ポイント03 2〜3か月、滞納が続いた入居者への対応

 長期化する滞納者への対応は、基本的に、電話を継続。つながらなくても、ひたすら電話をかけ続けるとのこと。1度は話ができたものの、2回目以降に本人とつながらなくなった場合は、緊急連絡先や勤務先に電話をします。それでも難しい場合、滞納者の自宅に訪問するという流れとなります。
 督促業務の組織体制にも違いがありました。1回目の電話は本社のコールセンターで一括して行い、滞納2〜3カ月目に入ったら、現地のエリア担当者に引き継ぎ、担当者が電話をかけ入居者とコミュニケーションを取るという会社もありました。コールセンターを持たず、拠点ごとに初動から電話をする会社も一定数存在します。

■訪問業務における注目すべきポイント

 訪問業務における注目すべき四つのポイントを解説する。

(1)対象の選び方

 滞納者の自宅を訪問する際の対象者の選び方は大きく分けて二つ。一つ目は、電話で連絡がつかず、相手がどのような状況かわからないケース。何度連絡しても電話に応答してくれなかったり、電話番号が使われていないというアナウンスが流れたりする場合が挙げられます。そもそも滞納者が携帯電話を持っていないこともあるそうです。
 二つ目は、早めに訪問してリスクを回避したいケース。ある会社は、高齢者や生活保護受給者、外国人らに対しては、連絡が取れなければ1カ月目でも訪問を実施します。高齢者ら、孤独死のリスクがある入居者は、安否確認の意味合いもあります。外国人の場合は、契約者が他人に部屋を貸して、実際の居住者が変わっていることがあるため、物件の状況を確認する意味合いが大きいとのことでした。

②担当するのは誰か?

 会社によってさまざま。初動から現地訪問までエリア担当者が対応するところもあれば、代理店開拓の営業スタッフに任せたり、外部委託したりしている会社もありました。

③訪問したときのチェックポイント

 各社、現地訪問は、実際に居住実態があるのかないのかを把握する、現地調査の意味合いもあるそうです。明け渡し訴訟のときに、居住実態の有無を裁判所に提出する書類に記す必要があるため、インフラとなる電気やガス、水道メーターなどの動きや、郵便受けなどを見て、居住実態の有無を確認します。
 さらに、滞納者がどの時間帯であれば自宅にいるのか調査する目的もあります。滞納者の周辺に聞き込みをして、入居者がいる時間を絞り込んで訪問することもあるそうです。一方で、信頼を得るため、生活に困っている入居者に、訪問の際にフードバンクなどの食料を届けることもあります。

④訪問業務の注意点

 注意点としては第一にコンプライアンスを重視しています。すべての会社が非常に気をつかっているということ。例えば、貸金業法で定められた督促方法や、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(東京都千代田区)が作った自主ルールの内容を踏まえ、各社マニュアルに落とし込んでいました。法律を順守する形で督促業務、回収業務を実施。周囲の住人に家賃の回収で訪れたことが気付かれないようにするため、建物の巡回で来たように見えるように、作業服のようなラフな格好で訪問するなど工夫をしています。ある会社は会社の制服としてポロシャツを用意し、訪問業務にあたってもらっているとのことでした。

■注目される保証会社の取り組み

【ケース①:H社】

 97%以上という非常に回収率が高いH社では、電話対応を分業化し、アルバイト・パートのスタッフに電話をかけてもらっています。社員はスーパーバイザーとして、優先してどこに電話をかけるかなどの指示を出します。分業化するメリットの一つ目は、現場の社員の業務負担を減らすこと。二つ目は、精神的な負担の軽減。複数の現場に1人で対応している場合など、業務に対するプレッシャーから、入居者への電話対応などがきつい口調になり、トラブルに発展することがあります。分業化により、社員の業務的・精神的負担を減らす効果があるそうです。結果として、回収率97%超えの非常に良い結果につながっています。

【ケース②:F社】

 F社は、滞納する入居者と管理会社の担当者、保証会社の担当者の3者に、管理会社の店舗やオフィスに集まってもらい面談をするという方法を取っています。狙いは、入居者に当事者意識を持ってもらうこと。入居者がわざわざ足を運ぶことで、自分がオーナーや管理会社に迷惑をかけている、本来果たすべき責任を果たしていないことを自覚してもらいます。それと同時に、管理会社にも当事者意識を持ってもらえるそうです。面談自体は、月に10件ほどで多くはありませんが、面談によって、入居者の次回の支払いをどうするかなど、次の行動を促すことができます。

--------(まとめの内容)

 2022年12月、家賃滞納者への「追い出し条項」に関する最高裁が下した判決が物議を醸しました。当時、一般のメディアでは、借主保護を一方的に訴えた記事も見かけられましたが、今回取材したすべての保証会社が、コンプライアンスを守り、ルールにのっとって督促・回収業務を遂行している印象でした。
 保証会社の役割は入居者を保証することにあるため、入居者に寄り添った姿勢を見せている企業が多くあります。その中には、入居者の生活の再建まで考えてサポートをしている会社の姿も見受けられました。家賃回収という賃貸住宅ビジネスの核となる業務は、保証会社が担うところが大きいと感じました。
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たった3日地代の支払が遅れただけで契約解除?

2023年09月16日 | 賃貸借契約
 区内でも宅地約45坪を賃借する永井さん(仮名)は毎年6月末日までに翌年1年分の地代を地主の口座に振込む約がある。 地代と言えば前回地代増額請求があった際は地主の顧問弁護士に否応なしに近隣地代に比べて安すぎるという理由で1・5倍の値上げを承諾した経緯があった。
 今年は6月末日までに振込むのを7月3日に振込んだところ地主は永井さんの口座に1年分地代を返却してきた。驚いて東京法務局を尋ねた永井さんは職員に経緯を説明し相談の結果、受領拒否に当たると言われ無事に供託を済ませた。
 この地主はこの地域で500以上の借地を抱えており、自分ひとりでは到底管理できないと考え区内にある建設会社に地代の回収及び更新料の請求、地代増額請求の通知書発送、駐車場の管理等を依頼している。
 その後、組合事務所を訪ねて地主は何をもって地代を返してよこしたのか理由が判らず心配である。たった3日の遅延をもって信頼関係破壊という理由には当らないと思うが、何か地主との争いはありますかと尋ねても思い当たることはないという。今後、調停なり訴訟を起こされる可能性はないとは言えないと回答。後日、建物収去土地明渡の訴訟を申し立てられたと連絡があり、弁護士に相談するよう伝えた。(東京借地借家人新聞より)

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居住支援少ない男性にもシェルターを。犯罪歴ある人の身元引受けなど、金沢市の不動産会社エリンクが支援つづける理由とは

2023年09月05日 | 居住支援
https://suumo.jp/journal/2023/08/31/197628/

金沢のまちは、観光地としても名高く、冬は雪深い土地。この石川県金沢市で居住支援を行っている不動産会社、エリンク代表の谷村
麻奈美さんは、生活保護受給者や障がいのある人に住まいの斡旋だけでなく、一時的な避難シェルターや入居した後の継続的な支援、
見守りを提供しています。エリンクの不動産会社としての活動のほか、NPOの設立や金沢における居住支援の課題などについて聞きま
した。

住まい確保に困っている人たちを断るのが辛かった

金沢市にある不動産会社エリンク。子育て世帯・ひとり親世帯・高齢者・生活保護受給者・障がい者・犯罪歴のある人などを中心に、
賃貸物件の仲介や管理を行っている(画像提供/エリンク)
石川県金沢市。北陸新幹線が通り、県庁所在地でもあるこの地に、エリンクという不動産会社があります。従業員4人という規模なが
ら、子育て世帯・ひとり親世帯・高齢者・生活保護受給者・障がい者・犯罪歴のある人など、賃貸住宅への入居に困難を抱えている人
たちに物件を紹介し、2022年には住まい探しをサポートする居住支援法人として登録されました。
住まい探しが困難な人たちは、さまざまな事情を抱えています。生活保護を受給するために自治体の定めた家賃以下でなければ入居で
きなかったり、生活支援や見守りといった入居後の暮らしに継続的な配慮やサポートが必要な場合があります。また、家賃の滞納や孤
独死などを懸念するオーナーや管理会社が、入居を敬遠することも。居住支援では、それらの課題を一つひとつ乗り越えていかなけれ
ばなりません。
代表の谷村さんがエリンクを立ち上げたのは、2017年のこと。
それまでは会社員として別の不動産会社に勤めていましたが、会社の収益を上げるため、効率の良い仕事が優先されることに違和感を
感じていたと言います。
「通常よりも手間がかかる案件に時間をかけることについて十分理解されていませんでした。個人の思いとは裏腹に、住まい探しに
困っている人が来ても断らざるを得なかったのです。相談に来た人が残念そうに店を後にする姿を見るのは、とても辛いものでした」
(エリンク 谷村さん、以下同)
組織の中にいては思い通りにできない。どんな人でも受け入れられる不動産会社をつくろう、と立ち上げたのがエリンクでした。

「時間をかけて入居者との関係を築いていく」エリンクの居住支援

現在、谷村さんを含むスタッフ4名のうち、普段から住宅の確保に配慮が必要な人たちの居住支援を行っているのは、谷村さんと従業
員2人の3名。この記事のインタビューの最中も、ひっきりなしに電話がかかってくる忙しさです。
賃貸物件の紹介だけでなく、入居後、連絡が取れなくなったときには様子を確認しに行ったり、「体調が悪くて家賃の振り込みに行け
ない」と連絡があれば谷村さんたちが部屋まで集金に行ったりします。時には「給付金の申請をするのに書き方がわからない」と電話
がきて書き方を教えに行くなど、頼まれれば入居者を訪ねることも日常なのだそう。
また、ある時は上の階に住む人とけんかをした入居者が警察に連れて行かれ、ほかに身寄りがないため、谷村さんが身元の引き受けに
行ったこともあります。「なんでお前が来たんだ」と怒鳴られ、すかさず谷村さんも「オーナーさんの迷惑になることを考えて!」
と大声で言い返したのだとか。谷村さんは「『なんでも相談所』のようでしょう?」と笑いながら話します。
「大事なのは入居者と信頼関係を築くこと。大げんかしたその入居者とも、1年以上の時間をかけて、時には人生相談にも乗り、関係
をつくり上げてきました。だからこそ、本音でぶつかり合えるのだと思います」

経営的にはギリギリ。それでも達成感を感じている

それでも経営は赤字ギリギリの状態です。居住支援法人に登録した理由の一つには、助成金がないと居住支援事業を継続するのが難し
いという背景もありました。
「会社や事業には、それぞれの客層やターゲットというものがあります。低所得者など住まい探しに困っている人に重点を置いている
不動産会社がなかったので、私は逆にそこに事業としてのチャンスがあるのではないかと思ったのです。何より、さまざまな問題を解
決していかなければならないことは、むしろ楽しそうだと感じました。
私自身が、そういう性分なんです。普段の仕事はもちろん大変ですけど、達成感があるので忘れちゃう。嫌なことも楽しいことも波が
あることを楽しんでいます。経営は厳しくても、私がやりたかったことを実行できているという点では『成功』だと思っています」
現在、エリンクのホームページに掲載している物件の中で、生活保護受給者が入居できる家賃のものは1200件以上。それ以外の物件数
は600件ほどなので、住まいに困っている人の支援にいかに力を入れているかがわかります。しかしそれぞれの物件で入居に必要な条
件が異なるため、どうしても入居できない場合は、谷村さんが保有している3室を含め、160室ほどのエリンクの管理物件から紹介して
いるそう。
これらのエリンクが管理する部屋は、長年空室で悩むオーナーさんが、エリンクの取り組みをメディアを通して知ったり、別のオー
ナーさんからの紹介で「空室にしておくよりは、困っている人に貸してほしい」と託されたもの。オーナーさんの理解も得て、エリン
クでは2022年中に住まい探しに困難をかかえる人から相談があった約95件のうち、67件が入居に至っているのだそうです。

緊急で住まいを必要とする人には男性が多い!? 石川県・金沢市の事情とは

エリンクを訪れる相談者の特徴は、30~60代の男性が圧倒的に多いということ。
その理由は、ちょうど一般的に「働き盛り」とされるこの年代で、行政には住まいに困っている男性を受け入れる受け皿がないためだ
と、谷村さんは分析しています。
「石川県には、住まいに困っている女性や子どもに対しては『女性センター』や『母子寮』など、行政で受け入れる場所があるのです
が、住まいを失った男性向けの一時的な避難場所となる『シェルター』のような施設がありません。職を失って社宅や寮を出なくては
ならなくなった人が、ネットカフェや車中生活をせざるを得ない状況が多いのです」
そこで普段はNPO法人「安心生活ネットワークいち」(活動内容については後述)の事務所として利用している店舗の2階を、緊急用の
民間シェルターとして確保しています。しかし一度に1名しか利用できないので、いつでも空いているわけではありません。「もっと
一時的に避難するシェルターとなる場所が必要」だと、谷村さんは訴えています。

金沢における居住支援法人の活動、行政との連携は?

また、もう一つ、谷村さんが課題として挙げるのが、居住支援に携わる人たちや組織が連携するためのネットワークや体制づくりで
す。
住まい探しに困っている人たちに居住支援を行う各地方自治体の住宅部門は、福祉部門との連携がうまく取れていないことが課題に
なっているところも少なくありません。かつてエリンクの存在は、石川県や金沢市の住宅部門・福祉部門いずれの担当者にも知られて
おらず、住まいと福祉の連携もありませんでした。
「生活保護を受けている人が提出する賃貸借契約書などの書類にエリンクの名前がたびたび上がるのを知った金沢市の社会福祉協議会
の方が当社を訪ねてくださって。2019年ころから、家賃を支払えず困って社会福祉協議会に相談に来る人の紹介を受けたり、こちらか
ら給付金が利用できないかを尋ねたりというつながりができました」
今では、金沢を地盤にしている福祉関係団体や弁護士から多くの問い合わせが来るようになったそうです。
「ただし、今は何かトラブルや問題が起きた時にその都度、担当者同士の個人的なつながりを頼りに連絡をとって対応しているので、
スムーズに支援ができている状態とは言えません。支援を必要とするより多くの人たちを的確にサポートしていくためにも、ネット
ワークづくりや連携の仕組みが必要です」

「入居後の孤立を無くしたい」谷村さんの新たな一歩

協力してくれるオーナーさんも増えて入居まではサポートできるようになったものの、谷村さんは「入居した後も人や社会とつながり
を持てない、孤立している人をどうにかしなければ」との思いを強くしたそうです。
不動産事業のオプションとしてではなく、本腰を入れて入居後の生活までサポートする必要があると考え、2022年12月にオーナーさん
や司法書士、引越し業者や特殊清掃業者など、応援してくれている人たちを会員としてNPO法人「安心生活ネットワークいち」を設立
しました。
孤立を防ぐために谷村さんたちが早速始めたのは、金沢市社会福祉協議会の事務所を会場として開催する「おむすびの会」。
「支援者も受益者も関係なく、ごちゃ混ぜで『みんなで楽しくおむすびをつくっておしゃべりをしよう』という趣旨の会で、誰でも参
加できて、しかも無料です。不要な食べ物をもらいに行って、それを欲しい人に届けるフードバンクの活動も行っていて、今は車1台
のみで配っていますが、もっと増やしていきたいと考えています」
入居前のサポートから入居後の見守り、そして引きこもりがちな高齢者や障がい者、犯罪歴のある入居者などが社会とつながるサポー
トを目指す谷村さんたちの活動は、前へ前へと進んでいるようです。
「孤軍奮闘」。谷村さんと周囲の人たちの活動を知り、そんな言葉が頭をよぎりました。
最後に谷村さんは、「ライバルをつくることになるかもしれないですが、私たちのような不動産会社がもっと増えればいいと思ってい
ます。それだけ、困っている人がいるということです」と話してくれました。
金沢市内には他にも居住支援や生活支援に携わる団体や企業が存在するでしょう。しかしネットワークや仕組みが未だできてない理由
の一つは、金沢にはとても奥ゆかしい人が多い風土だからなのだそうです。「『やれたらいいよね』という人はいても『よし、やろ
う』という人がいない」と谷村さんは打ち明けます。
谷村さんのようなリーダーが増え、その人たちが繋がることができれば、金沢の居住支援は大きく前進するのかもしれません。そし
て、住まいに困っている人たちを包括的に支援するためには行政の協力も欠かせません。現状の周知と連携強化を訴え、谷村さんたち
は今日も活動を続けています。

●取材協力
株式会社エリンク
https://www.alink-kanazawa.com/
特定非営利活動法人安心生活ネットワークいち
https://ichi-kanazawa.org/
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