東京多摩借地借家人組合

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マンション更新料:過大でない…返還請求を棄却 京都地裁

2008年01月31日 | 最高裁と判例集
 賃貸マンションの更新料は消費者契約法に違反し無効だとして、京都市の男性会社員(53)が貸主に、更新料5回分計50万円の返還を求めた訴訟の判決が30日、京都地裁であった。池田光宏裁判長は「更新料はいわば賃料の前払いで(本件では)契約期間や家賃に照らし過大でなく、消費者の利益を一方的に害するものとはいえない」と述べ、請求を棄却した。男性側は大阪高裁に控訴した。

 判決によると、男性は00年8月、月額家賃4万5000円、更新料毎年10万円で左京区のマンションを借りる契約を貸主と締結。06年11月に退去するまで6回更新したうち、最後を除く5回、更新料を支払った。

 判決は「借り手は更新料を含めて物件を選択しており、契約前に更新料の金額について説明を受けている」と指摘。「契約が不測の損害、不利益をもたらすものではない」として、消費者の利益を一方的に害する条項を無効と定めた同法に反しないと結論付けた。

 男性は「更新料は賃料増額手続きの代わりに脱法的に始められたもので、借り手側が情報力、交渉力に劣るため維持されてきた」などと主張していた。

 更新料は全国で100万戸以上に設定されているとみられ、影響の大きさから、男性側が「京都敷金・保証金弁護団」、貸手側が「貸主更新料弁護団」を組織して正面から争っていた。【太田裕之】

 ▽男性側の弁護団事務局長、長野浩三弁護士の話 更新料は賃貸者契約を分かりにくくしており、合理的な理由もない。控訴審で争う。

 ▽貸手側の田中伸・弁護団代表の話 合意したものを返還せよというのはおかしな話で、(今後予想される)礼金や共益費の返還訴訟でも、約束の履行を主張し勝訴を求めていきたい。

 ▽消費者契約法に詳しい坂東俊矢・京都産業大法科大学院教授の話 現状追認型の判決。更新料が賃料の一部であるなら、本来は家賃に分散して上乗せすべきだ。物件と家賃だけで消費者が家を選択できる方向に向かうのが妥当だ。

 ◇更新料

 マンションなど賃貸住宅で1~2年の契約期間を更新する度に借り手が貸主に支払う。家賃1カ月分前後の場合が多く、敷金と異なり返還されない。導入の経緯は不明だが、約40年前からある。東京、神奈川、千葉、埼玉など首都圏や北海道、愛知、京都、福岡、沖縄などを中心に、全国で100万戸以上に設定されているとみられる。

(1月30日 毎日新聞)
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賃貸住宅ローン融資保証料、返還漏れは総額12億円

2008年01月30日 | 最新情報
賃貸マンションなどを建てる人を対象にした住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の住宅ローンで、全額繰り上げ返済した場合に返還される融資保証料の一部を返していなかった問題で、同機構は30日、返還漏れが最終的に1094件約12億4000万円だったと発表した。

 今年3月末をめどに利息を合わせ計約18億円を返還する予定だ。同機構によると、1件あたりの返還漏れ額の平均は約113万円で、最高額は約1104万円だった。

 賃貸住宅ローンの契約件数は計4万1145件。全額が繰り上げ返済されると、返済窓口の金融機関から連絡を受け、融資保証人となった住宅改良開発公社(東京)や首都圏不燃建築公社(同)が保証料の一部を返還する仕組みになっているが、金融機関が両公社への連絡を怠り、同機構、両公社も返済記録を十分チェックしていなかった。

(2008年1月30日19時34分 読売新聞)
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借地上建物の借家人が地主から借地契約解除を理由に明渡を要求された

2008年01月30日 | 借地借家の法律知識
(問)借地上の建物を賃借しているが、突然地主から家主(借地人)が地代を長期間滞納したので債務不履行を理由に借地契約を解除したと通告された。6ヵ月後に建物を取壊すので早急に建物を明渡すよう要求された。地主の要求に応じなければならないのか。


(答)借地人の地代不払い・無断増改築等の債務不履行によって借地契約が消滅した場合に、判例は借地契約の消滅を借家人に対抗出来るとしている。その場合、借家人に対する代払いの催告も不要であり、借家契約は借家人が現実に建物利用出来なくなった時に履行不能となり消滅すると判旨している((1)最高裁昭和45年12月24日判決)。
 従って債務不履行を理由とした契約解除の場合、借家人は地主に賃借権を主張できないので最終的にはは建物を明渡さなければならない。
 では、家主である借地人の滞納地代を借家人が居住権を守るために代払いすることは出来ないのか。
 判例は借地権の消滅を防止することに法律上の利益を有することから借家人が借地人に代わって地代を支払うことを認めている((2)最高裁昭和63年7月1日判決)。しかし借家人にまで代払いの催告をして、滞納地代の支払の機会を与える必要はない((3)最高裁昭和51年12月14日判決及び上記(1)の最高裁判決)としている。相談者の地主は建物を取壊す目論見があるので代払いを認めることは状況から困難である。
 借地契約が解除される場合でも、(1)の判決にあるように、借家契約は直ちに終了する訳ではない。地主と借家人との間で建物・敷地の明渡義務が確定され、地主が建物収去土地明渡の強制執行をして建物の使用収益が現実に出来なくなる等、借家人が現実に建物を使用出来なくなるまで借家契約は終了しない。それまでは建物の明渡請求に応じる必要はない。
 但し、借家人は建物取壊しまでの間の家賃を支払う義務がある。加えて地主から地代相当額の損害金の請求を受ける場合もあるので留意すべきである。
 なお借地人が建物を第三者に賃貸しても借地自体を転貸したことにはならない。従って地主に無断で建物を賃貸しても地主は契約を解除することは出来ない。
(東京借地借家人新聞より)


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解約トラブルなんでも110番~エステ・結婚情報サービス等

2008年01月29日 | 消費者トラブルと消費者契約法
 消費者機構日本では、2008年2月16日(土)、2月17日(日)の2日間、消費者から直接電話でトラブル情報を収集する「解約トラブルなんでも110番~エステ・結婚情報サービス・スポーツクラブ・老人ホームなどなど~」を実施します。

 これまでは、消費者契約法の裁判例が多い分野をテーマにして110番を実施してきましたが、今回はテーマを限定せずに、契約の条件が消費者にとって不利と思われる契約書の情報収集を行います。

 副題にエステ・結婚情報サービス・スポーツクラブ・老人ホームをあげましたが、その他、予備校や塾などのスクール契約、プロバイダー契約、中古車販売契約など、あらゆる契約について「これって消費者に不利な条項??」と思われる契約書がありましたら、情報提供をお願いします。

 尚、電話だけではなく、ホームページ(http://www.coj.gr.jp/)、FAX(03-5216-6077)でも情報を受け付けます。

☆ 広報チラシはこちら【PDF 248KB】

実施日時  平成20年2月 16日(土)10時~16時 
  17日(日)10時~16時

電話番号 03-3265-9992 *上記2日間のみの電話番号です。

【注意事項】

★110番ついて ○ 消費者トラブルの要因となった勧誘行為・約款の情報収集です。助言のみの対応となります。事業者との間に立った交渉や斡旋解決は行いません。
○ 提供いただいた情報については、検討後、必要に応じて事業者の不当な勧誘行為・契約条項の是正取り組みを行います。また、特定の個人を識別できる情報を除いて統計資料・事例として整理・集計し、当機構ホームページで消費者に注意喚起情報として提供することがあります。

★個人情報の取り扱いについて ○ この110番で取得した個人情報は、その個人への追加の助言並びに聞き取りなど、本人への連絡が必要な場合のみ使用します。それら以外で使用する場合は、あらかじめ本人の同意を得ます。
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契約書の内容が借主に一方的に不利なので拒否したいのだが‥

2008年01月28日 | 賃貸借契約
契約というのは、本来、対等平等な2者の間において、一方からの「申し込み」と他方の「承諾」によって成立します。

 これは、「諾成契約」と呼ばれており、口頭だけで成立します。たとえば、何かを買いにお店に行った場合を想定して考えればよくわかると思います。
 「これをください(申し込み)」、お店「ありがとうございます(承諾)」。

 日本の社会自体も、対等平等を前提としていますから、契約に関しても、「契約自由の原則」(私的自治の原則)というものがあり、人身売買や殺人依頼など、公序良俗に反するような契約は無効ですが、それ以外は、原則として、自由に契約することができるのです(なお、建物の賃貸借契約では借地借家法の強行規定に反する契約は無効であり、例文解釈と言って、契約書、契約約款中の定型的文言の解釈で、文言通りに適用すると不当な結果となる場合に、その不当性を回避するために、その文言を「単なる例文である」として、その有効性を否定する契約解釈の手法などが適用されるときも無効となります)。
 「自由に契約する」というのは、契約内容も自由ですし、誰と契約しようが、逆に契約を拒否すること自体も自由なのです。さらに、契約の形式も自由なので、文書でも口頭でもかまわないのです。
  民法自体も、「契約自由の原則」を前提としつつ、契約内容を取り決めなかった場合のルールを規定しているのです。
  賃貸借契約も、本来は、対等平等な私人間で契約すべきです。しかし、実際には、対等平等どころではなく、立場の強い家主が一方的に定めた契約内容を、立場の弱い借主が承諾するかどうかにかかっているわけです。
  ということは、単純に考えれば、借主に一方的に不利な規定を拒否したくても、家主が認めてくれなければ、結局は契約そのものが成立しないのです。
 つまり、家主には、「あなたとは契約しない」という権利があるわけで、家主に「契約せよ」と請求すること自体できないわけです。
  そういう状況を背景として、民法だけでは立場の弱い借主が一方的に不利であるとして、借地借家法(旧借地法、旧借家法)が誕生しました。
  そのため、借地借家法では、「強行規定」というものを設け、一部の規定については、「契約書にどのような記載があっても、借地借家法の強行規定に反するもので、借主に一方的に不利な条項は無効である」としているのです。
  また、2001年4月には、消費者契約法というものもできました。この法律では、「消費者の利益を一方的に奪う契約条項は無効である」としており、賃貸借契約書にどのように記載されていても、消費者契約法に違反するとされた場合には、借主は従う必要がなく、裁判しても勝訴する可能性が非常に高くなってきています。
  相談内容を見ると、「借主に一方的に不利‥」ということですが、具体的な記載条項を確認する必要があります。
  その条項が、借地借家法の強行規定や消費者契約法に違反すると認められる場合には、そのまま契約しても、条項としては認められませんが、できれば、トラブル予防のために、家主に「法律上認められないと思うので、削除してもらえないか?」申し出ることもできます。
 ただし、言い方には気をつけないと、家主が契約そのものを拒否してくる可能性があります。
  一方、上記の規定・法律に違反していない条項については、借主としては、認めなければ、契約できない可能性が強くなります。
  一般的な傾向として、空室が出てもすぐに借主が見つかるような条件のよい物件の家主は強気ですので、借主から「不利な条項を削除してくれ」と申し出ても、「無理に契約してもらわなくて結構。他にいくらでも借りたいという人がいるから」という答えが帰ってくるのがオチでしょう。
  従って、「借主に一方的に不利な条項がある」場合、「不利を承知でも契約したい」のか、「納得できなければ契約しない」のかをはっきりさせた上で、家主(仲介業者)との交渉に臨まなければなりません。


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大家さんの死亡に伴う退去請求

2008年01月27日 | 借地借家の法律知識
(Q) 現在、賃貸借契約で一戸建て住宅に住んでおります。この度、大家さんが亡くなり、遺族が住む為に建て替えをするとのことで、今年の1月に、退去の申し入れがありました。

 仲介不動産業者から『遺族と退去時期、移転料について話し合いをする。いつなら退去できるか?』と聞かれ『仕事の都合がつかないので6カ月は待ってほしい』と伝えました。その後、遺族の方と偶然お会いできて、遺族も『6カ月ぐらいは』と言っていました。

 そして仲介不動産業者から『遺族の方と話し合った合意書を送ったので、内容を確認してほしい』と言われ、合意書を見ると「退去時期は4月末(退去申し入れから3カ月後)、移転料は現家賃の4か月分(32万円)」とあり、一方的な内容なので不動産業者にクレームを言うと『遺族の方から、○○さんは良い人だと聞いていましたが、クレームを言うなら悪い人になっちゃいますよ。それでもいいんですか?』とか、時期が早すぎると言うと『じゃあいつなら出られるんですか?』と逆ギレされ、『半年は待ってほしいと以前伝えた』と言うと『そんなことは聞いていない』と言い、挙句に『そんなこと言うなら移転料もらえませんよ。もらえなくしてもいいんですよ。』と脅されました。

 さんざん話した結果、「退去時期は5月末、移転料は36万円」という新しい合意書を送ってきました。

 ところが、最初の合意書には親族のサインがあったのに、新しい合意書には親族のサイン欄がなく、代わりに不動産業者がサインをしていました。つまり、私と親族の間の合意書ではなく、私と仲介不動産業者との間の合意書なんです。コレっておかしくないですか?

 とりあえずサインはしないで親族の方に見せて確認しようと思っていますが・・・・・・。また、依然として退去時期と移転料に不満があります。何か良い手はないでしょうか?

(東京都 30歳代 会社員 女性)



(A) 退去義務はありません
 家主が死亡すれば、法定相続人が、家主の地位をそのまま引き継ぎ、契約に従った貸主としての権利義務関係をそのまま履行しなければなりません。したがって、「親族が住む為に建て替えをする」という理由で退去させられることはありません。契約期間が終了するまでは、そのまま居住する権利が法的に保障されています。また、借り主の方からは、契約期間を更新請求する権利も認められています。つまり、期間が過ぎたから当然に出て行ってくれということにはなりません。まず、この前提から話が始まります。

 次に、借主に数カ月の家賃滞納など著しい債務不履行がある場合を除き、新家主から退去要請、つまり更新拒絶を行うには、契約期間終了の1年前から6カ月前までの間に「通告」することと、「正当事由」の2つの要件が必要です。

 正当事由とは、社会通念上誰もが納得できる理由のことですが、単に自分や身内が住むからという理由だけでは足りません。

 そして、通常は立ち退き料(引っ越し代など次に住まいを探すための必要費+必要があれば慰謝料)というお金を足すことによって、正当事由を補完するということが判例で認められています。

 したがって、不動産業者の主張は無茶苦茶です。契約相手は家主ですから、不動産業者を相手に交渉する義務はありませんので、不動産業者との交渉は拒否したほうがよいと思います。

 不動産業者の対応があまりにもひどいようでしたら、宅建業者の指導機関である、都道府県庁の住宅局民間住宅指導相談窓口に相談しましょう。

(住宅ねっと相談室カウンセラー 大学生協職員 朝永 彰)

 日経:住宅ネット相談室より


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借地人が死亡し借地権を相続するのに地主の承諾必要なのか

2008年01月26日 | 相続と遺言、遺産分割
(問)父が亡くなり、私が借地権を相続することになりました。相続に当たり地主の承諾は必要ですか。地主は契約書の書換えと、名義書換料を要求してきています。それと、その建物を人に貸すことは出来ますか。建物を人に貸す場合は、地主の許可が必要ですか。(新宿区 会社員)

(答)借地権も他の遺産と同様に法的に当然相続人が相続する。親が死亡すると相続が開始され、親の有していた法律的地位が当然に相続人に一体として移転することを包括承継と言う(民法第896条)。包括承継は相続法の基本原理とされ、遺産中の不動産・動産のみならず債権や債務を承継するもので、被相続人の地位の承継とも解される。従って相続人は死亡した親の借地権を承継し、地主に対する権利・義務も一切引継ぐことになる。地主との賃貸借契約の内容を誠実に履行していれば何らの問題も惹起されない。「土地を借りた本人が死亡したのだから、土地を返してもらいたい」と地主に要求されても、それに応じることはない。
 まず、相談者の場合は、相続で借地権を譲り受けたので、名義書換の問題は発生しない。よって、地主の承諾は必要ない。名義書換料要求は不当であり、拒否しても何ら問題はない。勿論、契約書を新しく作り直す必要もないので、今まで通りでいい。相談者は、地主に「私が相続人になりました」と通知すればそれでいい。
次に、借地上の建物を人に貸すことについてであるが、何ら問題ない。借家を無断で他人に貸した場合は、転貸ということで契約解除の理由になる。しかし、借地人が地主から賃借しているのはあくまで土地であり、その土地上の建物は借地人の所有物であり、自由に使用収益することが出来る。借地契約は、借地人に建物を所有させることを目的とする契約だから、借地人が所有建物を貸して収益を上げることは借地契約の目的に反するものではなく、転貸にはならない。万が一、地主が「無断転貸をしている。契約違反だから承諾料を払え」等と言ってきても文句を言われる筋合いは無い。拒否すればいい。
 但し、借地上の建物を第三者に売却する場合は、借地の無断譲渡または無断転貸の問題が起きるので注意したい。



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更新を重ねた借地契約を合意解約し新法適用の契約へ切替えられるのか

2008年01月25日 | 借地借家の法律知識
(問)借地借家法施行(平成4年8月1日)前に締結した借地契約が更新を迎える。地主に借地契約を期間満了により合意で一旦終了させ、改めて借地借家法(新法)に基づく契約にして欲しいと言われた。

(答)期間満了により一旦、契約を合意解約し、改めてその時点から新法による存続期間30年の借地契約を新規に締結することにより、新法が適用される契約内容にすることは可能である。借地人が新法施行前の借地権を捨てて新法に基づく契約に切替えることに合理的な理由があり、借地人の真意に基づいて行われたという客観的な事実があれば切替えは可能である。
 普通借地権は新法では堅固・非堅固建物という区別をせずに一律に借地権の存続期間を原則30年としているものの、最初の更新は20年で2回目以降は10年である。借地人は将来的には期間を短縮され、更新拒絶の主張、更新料請求の機会が増える。増改築の制限も強化され借地人にとって何の利点もない。このように新法は旧法に比較すると全体として貸主側に有利に、借主側に不利なものになっている。そのため貸主が既存の借地契約を新法の適用のある契約にしたいと考えるのは当然であろう。
 新法成立時の参議院附帯決議に「既存の借地関係には更新等の規定は適用されない旨及び特約で新法を適用させることは無効である旨を、マスコミその他あらゆる方法を通じて周知徹底させること。」とあるように、新法施行前に締結された既存の借地契約は新法施行後においても旧法が適用される(借地借家法附則4条但書及び6条)。そもそも、地主が新法に基づく借地契約に切替えることを借地人に要求する目的は、最終的には借地人の不利益になる契約内容に改悪するところに真の狙いがある。従って、地主がこのような不当な要求を押し付けようとしても借地人はこれに応じる必要はない。仮に借地人の無知に乗じ、或は地主の圧力に屈して借地人が意に反して嫌々従前の借地契約を形式上合意解約し、改めて新規に新法に基づく契約を締結した場合でも、合意解約に特段の合理的理由が存在せず、また借地人の真意に基づかないものであれば、旧法11条の強行規定により借地人に不利な特約として無効とされる。【再録】


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公道に面する一筆の土地の内公道に接しない賃借人に通行権を認めた事例

2008年01月24日 | 最高裁と判例集
 公道に面する一筆の土地に面する部分が所有者によって使用され公道に接しない残余の部分が賃貸された場合に、賃借人に通行権を認めた事例 (東京地裁昭和62年5月27日判決、判例時報1269合89頁以下)

 (事案)
 X(借地人)の先代は、Y(1)から乙土地を賃借して、同土地上に建物を建築して所有していたが、死亡してXが賃借人の地位を承継。

 乙土地は、4つの地番の各土地に囲繞されていて公道に接しない。右各土地のうち甲土地はY(1)の所有であったところ、その土地の持分の一部を妻のY(2)に贈与し共有となっており、甲土地の東側は公道に面し西側は乙土地に接している。

 (その余の3つの土地は第三者の所有地)Xの先代は、賃借当初には甲土地内の南側境界線から北側に幅約3mの通路を開設させ、そこを日常的に通行していた。その後、右通路は甲と地上の建物の拡張で幅員が約1.8mに狭められたが、約20年にわたり通路として使用。

 その後、Y(1)が、甲と地上の建物の増築に際し、建築確認の都合上、前記通行を建築確認が終了まで見合せてほしいと要望し、Xの先代は、北側に隣接する第三者所有の丙土地の空地部分をその者の好意で通行する至った。

 ところが、Y(1)は甲土地と乙土地との堺にブロック塀を設置したため、甲土地内の通行が事実上不可能となり、XもY(1)に通路の再開を求めないままに丙土地を通行していた。

 ところが、丙土地の所有者が同地にマンションを建築する計画を立て、Xに対し丙土地の通行をやめ、甲土地の通行を求めことから、Xは、Y(1)、甲地に隣接する丁土地所有者、丙土地所有者の間で、Xの通行について協議し、その結果、Y(1)は甲土地内に従前と同様に幅員1.8mの通路を再開し妨害物除去費用はXの負担とする。丙土地所有者は工事完成後にXに対し従前通りの通行を認める等の合意が成立。

 ところがY(1)、Y(2)は、右約定の通路内にブロック塀、鉄階段、物置を設置したまま、前記合意成立直後頃からXに対し丙土地の通行をすべきとして約束を履行しないため、XがY(1)に対し、乙土地の賃借権を有することの効果として、又は前記合意に基づき、Y(2)対しては、賃借権に基づく囲繞地通行権又は前記合意に基づき、通路の使用妨害禁止および工作物の収去を求めた事案。

 (判旨)
 「公道に面する一筆の土地の所有者が、その土地のうち公道に面しない部分を賃借し、その残余の公道に面する部分を自ら使用している場合には、所有者と賃借人との間において通行に関する別段の特約をしていなかったときでも、所有者は賃借人に対し賃貸借に基づく賃貸義務の一内容として右残余地を当該賃貸借契約の目的に応じて通行させる義務があるものと解される(最高裁昭和44年4月13日判決)」。

 「(略)賃貸人であるY(1)が準袋地を使用収益させることの義務の一内容としての、甲地を通行させる義務は、潜在的には、依然として存続していたものというべきである」

 (寸評)
 類似事案は多い.判旨の前段部分には異論はなかろう.後段の判断は事実関係に左右される。 1988.11.


(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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大規模災害で建物が滅失してしまった場合借地権・再築はどうなるのか

2008年01月23日 | 地震と借地借家問題
(問)借地上の建物が大災害により倒壊・焼失・流失等で滅失した場合は借地人の権利はどうなるのか。


(答)借地契約が借地借家法施行(1992年8月1日)前に設定された借地権(建物滅失後の建物築造)に関しては借地法7条が適用される。借地権の存続期間が終了する前に地震・火事・台風等による災害によって借地上の建物が滅失した場合、借地権自体は消滅しない。借地法7条は建物が滅失しても建物を再築することが出来ることを規定している。判例も「建物を新築する時は、地主の承諾を得る旨の特約があるとしても、この特約は消失した建物を再築する際にも地主の承諾が必要である趣旨ではない」(東京高裁1958年2月12日判決)としている。従って災害による滅失の場合は増改築を制限する特約があっても地主の承諾は不要と言うことになる。
  問題は、借地人の建物が滅失している間―例えば建物の再築が資金繰り等で長引いている間に、地主が第三者に土地を売却してしまった場合である。本来、借地人は借地上の建物を登記しておけば土地所有者が代っても新所有者に対して自分の借地権を対抗(主張)することが出来、借地の明渡しを求められることはない。しかし建物が滅失している間に土地を取得した新所有者に対しては原則的には借地権を主張することは出来ない。だが「借地借家法」は建物の滅失の原因を問わずに借地人が建物を特定する事項・建物の滅失の日・建物建築予定等を掲示することによって建物が無くても旧建物の滅失の日から2年に限って新所有者に対抗することが出来る(借地借家法10条2項)という救済規定を定めている。
  大規模災害があった場合は政令で適用地域を定めて罹災都市借地借家臨時処理法(以下処理法)が適用される。12年前の阪神大震災の場合は20日後に処理法が指定された。「処理法」は借地権の存続期間に関しては建物の再築を容易にするために残存期間が10年以下の場合は一律に政令施行日から10年間に延長される(処理法11条)。また政令施行日から5年間に限り建物が滅失のままでも前記掲示をしなくても新所有者に借地権を対抗することが出来る(処理法10条)として借地借家法10条よりも救済措置が強化されている。



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07年の首都圏マンション、供給量18%減の6万1,000戸/不経研調査

2008年01月22日 | 最新情報
(株)不動産経済研究所は21日、2007年1年間の首都圏マンション市場動向を発表した。

 07年1月~12月に首都圏で供給された民間分譲マンションは6万1,021戸で、前年比▲18.1%の大幅減、2年連続の2ケタ減となった。都県別に供給量をみると、東京都区部が1万6,563戸(前年比▲30.0%)、都下7,728戸(同10.3%増)、神奈川県1万7,016戸(同▲16.8%)、埼玉県8,527戸(同▲19.0%)、千葉県1万1,187戸(同▲12.7%)と都下を除いた全エリアで2ケタ減となった。

 分譲価格は、首都圏平均で4,644万円(同10.6%上昇)で、5年連続の上昇となった。都県別では、都区部が6,120万円(同18.9%上昇)、都下4,263万円(同8.4%上昇)、神奈川県4,500万円(同8.4%上昇)、埼玉県3,684万円(同8.3%上昇)、千葉県3,672万円(同10.3%上昇)。1平方メートル単価も61万4,000円(同10.6%上昇)と2年連続上昇した。

 また、初月契約率は、平均で69.7%(同▲8.6ポイント)と70%を割り込んだ。販売在庫数も、12月末現在で1万763戸(06年末8,173戸)と1万戸を上回っており、02年末以来の高水準となっている。

 なお同社は、08年の供給を07年比▲11.5%の5万4,000戸程度と予測している。

(株)不動産経済研究所


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更新拒絶で借地契約が終了した場合借地人に何か対抗する方法があるか

2008年01月21日 | 借地借家の法律知識
(問)地主が土地の明渡しを求めてきた。借地人は地主に対して借地上の建物を買取らせることが出来るというが、どんな場合に出来るのか。


(答)借地契約が終了した場合、本来ならば借地人は建物を取壊し、更地にして返却しなければならない。しかし、使用に耐えられる建物を壊すことは社会経済的利益の保護及び借地人が建物のために投下した資本の回収が出来ない。そこで借地人に「建物買取請求権」(借地借家法13条1項)を設けて借地に投下した資本の回収を可能にした。また間接的に地主に経済的負担をかけることによって更新拒絶を遣難いものにする効果をもっている。
 借地人が建物買取請求権を行使した場合、地主が買取を承諾しなくても、請求があればそれだけで建物の売買契約が成立する。その結果、地主は買取を拒否できず、建物を時価で買取ることになる。
 建物の時価は、「建物が現存するままの状態における価格であって敷地の借地権の価格は加算すべきではないが、この建物の存在する場所的環境は参酌すべきものである」(最高裁1960年12月20日判決)。即ち、地主が支払う建物の時価は建物自体の価格に場所的利益が加算される。この判例では、借地権価格を含めないとしているが、実際は借地権価格を考慮に入れている。それでは、どんな場合に「建物買取請求権」を行使出来るのか。一番多いケースは、借地人が更新請求をしたが、地主が更新を拒絶した場合である。
 権利行使の要件は(1)借地期間が満了したこと(2)契約の更新がないこと(3)借地上に建物があることである。
 地主と借地人が合意の上で解約した場合はどうであろうか。判例は「土地の賃貸借を合意解除した借地権者は買取請求権を有しない」(最高裁1954年6月11日判決)。借地人が買取請求権を放棄したものと解されている。また地代不払い等の債務不履行や契約違反で契約解除された場合も判例は一貫して建物買取請求権を否定している。地主と借地人の間で買取価格について協議が纏まらなかった場合は、調停や裁判で適正な買取価格を決定してもらうことも出来る。建物の買取価格は、鑑定実務では概ね借地権価格の20~30%と考えられている。(東京借地借家人新聞)


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借地権の底地を娘婿が買う場合

2008年01月20日 | 借地借家の法律知識
(Q) 実父名義の借地権(国所有)がある土地の底地を、私(娘)の夫の名義で購入し、その上に夫名義の家を建てる予定でいます。

 借地権はそのまま父のものにして、底地を夫名義で購入する場合に発生する費用が気になります。

 また手続きや問題点などありましたら、是非ご教授お願いします。

(東京都 30歳代 会社員 女性)




(A)  借地権の地位に変更のない旨の届出書
建物=夫(B)

借地権=父(A)

地主=夫(B)

という状態になります。

父の状態は正確には、借地権というより、転借地権となります。

 第三者間の取引であれば、AはBに地代を払い、建物所有者としてBはAに借地権の賃借料を払うということになるでしょう。

 しかし、親子間でこのような支払を継続することは通常考えられません。つまりAの借地権は使用貸借に変化し、借地権(建物所有を目的とする賃借権)は消滅してしまいます。無償で消滅するということは、AからBに対して、借地権の贈与があったものとして贈与税が課税されることになります。

 しかし実際には、このような課税は国民感情になじまず、「借地権の地位に変更のない旨の届出書」を所轄税務署に提出すれば、課税関係は生じないこととしています。

 まずは所轄税務署で相談してみて下さい。登録免許税は固定資産税評価額の3分の1に対して5%の金額です。

 実際にいくらかかるかは、移転登記を依頼する司法書士に確認して下さい。不動産取得税もほぼ同じ税額ですが、新築住宅の軽減措置が受けられると思いますので、都税事務所に問い合わせてみて下さい。

 なお底地価格そのものは、実勢価格よりやや安い程度だと思いますが、買える資力のあるときに、買っておくことを、私はお勧めします。

(住宅ねっと相談室カウンセラー 税理士 松下 明夫)


[2002.3.7 掲載]

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連帯保証人は承諾していない更新契約後の借主債務の支払義務はあるか

2008年01月18日 | 借地借家の法律知識
(問)友人の息子Aのマンション入居時に保証人を頼まれ、連帯保証人になった。ところがAの家主から突然、1年分の滞納家賃と共益費の支払を求められたが、請求に応じなければならないのか。また保証人になると何時までも責任を負わなければならないのか。


(答)入居時の契約でAの保証をしたが、その後家主から保証人に関する連絡などは何もなく、契約の更新にはノータッチであったという。このように保証人の自覚もない人間に対し、家主からの保証債務の履行請求は寝耳に水の事であり、その請求に不満を持つのは当然の気持ちである。
 だが判例の傾向は保証人には厳しいものである。最高裁は原則として契約更新後についても保証人の責任を認めている。その理由として賃貸契約は正当事由がない限り、更新拒絶が出来ないなど本来相当長期間の存続が予定されている。従って保証人も更新を前提とした賃貸借契約の存続を当然予測できる筈である。また保証人の債務は賃料債務を中心とするので賃料額は特定されており、更新後といえども保証人の予期せぬ責任が一挙に発生することがない。以上の理由から「特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責を負う趣旨で合意されたものと解するのが相当であり、保証人は賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない」(最高裁平成9年11月13日判決)と判示した。
 最高裁判決の原則から言えば、相談者は家主からの滞納家賃請求に応じなければならないことになる。
 しかし最高裁は同判決で例外として(1)更新後の債務について保証しないなどの期間満了後の保証責任について格別の定めがある場合(2)格別の定めがなくても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がある場合(3)保証債務の履行を請求することが信義則に反する場合、に関しては責任義務がないとしている。
 Aの家主には保証人の損害を回避すべき義務があり、それを怠って損害を拡大した責任は重い。それゆえ前記「例外」の(3)に該当するので保証人の保証債務責任を認めるべきではない。 (東京借地借家人新聞)


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組合に加入して高額な借地更新料断る

2008年01月17日 | 契約更新と更新料
 台東区千束で永年雑貨商を営む野口さんは16坪を借地している。先月末に3軒先に住む地主に地代を持参した折り、突然地主から「来月10日に契約が満了になる。契約を更新するのであれば更新料として500万円支払って頂きたい」と言われ、慌ててしまった。家に帰り、家族と更新料について話し合った。だが昨今の景気動向では、とても高額な更新料を支払うことは出来ない。

 困り果て、近所の人から借地借家人組合があることを知り早速組合に相談し、加入した。組合の説明では、野口さんの借地契約書には「更新料支払特約」が書き込まれていない。このように更新料の支払い約束の無い場合は、法律的に更新料の支払義務がないことが判例上確定している。従って更新料を支払わなくても借地の更新は問題なく出来る。また建替えも組合の指導に随えば問題なく行えるという説明であった。

 後日組合が準備した「借地法」4条に基づく「借地契約の更新請求」を地主に配達証明付内容証明郵便で通知した。 

借地法4条は借地権が消滅した場合でも借地人からの請求によって一方的に更新を認め、地主は原則としてこれを拒めない。借地契約は地主と合意しなくても前の契約と同一条件の借地権が設定されたものとみなされ、木造建物の場合は借地期間20年と法定される。契約書が無くても借地契約は自動更新される。

 「次回、地主宅に地代を持参する時は地主に更新料は法定されていないし、判例上も支払義務がないことは確定していることを説明し、更新料支払い拒否の意思を明確に伝える積りである。今ままでは地主の要求に言われるままに応じて来た。これからは借地法を勉強して根拠の無い要求には一切応じない決心を固めた。これからは組合とともに頑張りたい」と語った。(東京借地借家人新聞より)


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