東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

虚偽の賃貸借契約書を作成し、業者が処分された事例

2009年08月20日 | 宅地建物取引業法
タイトル:処分事例虚偽の賃貸借契約書の作成

《要旨》
 建物賃貸借に係る貸主代理において虚偽の賃貸借契約書を作成した等として、代理業者が9か月間の業務停止処分とされた。


(1)事実関係
 貸主Xは、区分所有するマンションの一室を賃貸するに当たり、業者Yに媒介を依頼し、その管理も委託していた。
 Xは、Yから、「前借主Aが退去し、その後空室であったが、借主Bが現れた。」として、Yの媒介により、Bとの間で賃貸借契約を締結した。しかし、それから6か月が経過すると、家賃がXに入金されなくなり、Xが調べたところ、当該物件にはAが入居したままであった。
 Xは、Yが、Yの媒介により他の賃貸物件に住んでいるBに関する情報をもとに、Bからの入居申込書及び賃貸借契約書を偽造し、家賃を着服している可能性があるなどとして、行政庁に来庁した。

(2)事情聴取
 行政庁で、Yに事情を聴こうとしたが、Yはそれに応じず、また、行政処分の聴聞にも欠席した。



(3)処 分 
 行政庁は、Yは、建物賃貸借に係る貸主代理において、当該物件に従前からの賃借人が居住しているにもかかわらず、貸主に、空室になったと称し、新規入居者との間で賃貸借契約を締結する旨の虚偽を告げて、自らが媒介者となり、関係の無い第三者を借主とする賃貸借契約を締結させた、また、当該案件に係る調査に応じなかったとして、Yを9月間の業務停止処分とした。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

預かった礼金・敷金を貸主に払わなかった仲介業者が業務停止処分

2009年04月16日 | 宅地建物取引業法
《要旨》
 礼金、敷金等の金員を賃借人から預かりながら、その一部を賃貸人に支払っていない等として、媒介業者が1か月間の業務停止処分とされた。


(1)事実関係
 Xは、賃貸アパートを経営しており、そのアパートの管理を業者Yに委託していた。しかし、次第に集金代行した家賃がYから送られてこないようになり、その額が多額になったため、家賃の支払をYに催告するとともに、借主にも直接会って家賃滞納の調査を行った。
 その結果、Yが集金済みの未納付家賃が170万円余りあるとともに、空室であるはずの2室に入居者がいることがわかった。この2室の入居者に確認したところ、Yは2年前に賃借人Aと、8か月前に賃借人Bと、Xの了解を得ずに無断で賃貸借契約書を作成し、各物件に賃借人を入居させていたことが判明した。これらの取引について、Yは礼金、敷金等を受領しながらXに渡しておらず、Xは行政庁に相談のため来庁した。

(2)事情聴取
 行政庁で、Yに事情を聴いたところ、Yは、「申し訳ない。特に弁明することはない。Xには、30万円を支払ったが、そのお金は集金代行した家賃等の一部でもあり、賃借人A及びBの礼金、敷金等とは特定できない。半年後にはすべての債務を支払うつもりである。」と述べた。


(3)処 分 
 行政庁は、Yは、礼金、敷金等の金員を賃借人から預かりながら、その一部は賃貸人に支払っているものの、残金について支払の履行をしていない、また、媒介業者であるにもかかわらず、賃貸人の了解を得ずに無断で賃貸借契約書を作成し、当該物件に賃借人を入居させた等として、Yを1か月間の業務停止処分とした。

(不動産適正取引推進機構)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

契約成立前に支払った賃貸住宅の申込金は返還請求できるか

2009年04月12日 | 宅地建物取引業法
 結婚後の新居を探すために不動産業者を訪ねた。そこで、建設中の5階建てマンションを勧められた。気に入ったが、他の物件も探したい旨を伝えたところ、「この物件は入居希望者が多い。あらかじめ部屋を押さえておく必要がある」と言われ、1ヶ月分の家賃(63,000円)を申込金として支払った。

 数日後、申込金を支払った物件の周辺環境等が気になったので、断ることにした。不動産業者に電話をしたが、「申込金は貸主の承諾後は返金できない。領収書に明記してある」と言われた。申込金を返金してほしい。

(20歳代 女性 給与生活者)



◎アドバイス
 賃貸借契約を申し込む際、申込金・手付金・内金・予約金などの名目で一定の金銭(預り金)を求められることがあります。契約前に借主が断ると「貸主の承諾を得ているので返金できない」などと不動産業者が説明し、預り金の返金を拒否するケースが少なからず見受けられます。

 そもそも賃貸借契約の成立には、契約の成立前に宅地建物取引業者から当該物件の重要事項についての説明を受けた上で、書面が交付されることになっています(宅地建物取引業法第35条、注1参照)。

 賃貸借契約の成立前に支払われた金銭は、名目を問わず、すべて預り金とみなされます。そのため、契約成立前に預り金を受領していた場合、その預り金は申し込み順位確保のための証拠金として授受されるにすぎず、賃貸借契約が成立するわけではありません。よって、キャンセルした場合には、業者は預り金を返金しなければなりません。

 この相談では、預り金は返金されるべき性質の金銭であることを主張した結果、全額が返金されました。




◎コメント&解説
 この相談のように、預り金をめぐるトラブルが絶えないため、同法第47条の2第3項の国土交通省令(注2参照)及び同法施行規則第16条の12第2項(注3参照)で「預り金の返還の拒否の禁止」を定めています。

 業者は、金銭の支払いを求めることによって消費者が簡単にキャンセルすることを防ごうと考え、申込金などの名目で預かっているものと思われます。

 このようなトラブルを防ぐためには、預り金を求める業者には注意し、どうしても預り金を支払わなければならない場合には、契約の締結に至らなかった場合には返金される旨を明記してもらうことが大切です。


(注1)宅地建物取引業法第35条
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、取引主任者をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第5号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。(以下省略)


(注2)同法第47条の2第3項
宅地建物取引業者等は、前2項に定めるもののほか、宅地建物取引業に係る契約の締結に関する行為又は申込みの撤回若しくは解除の妨げに関する行為であつて、宅地建物取引業者の相手方等の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるものをしてはならない。


(注3)同法施行規則第16条の12第2項
宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。 (国民生活センター)


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「重説の合理化」提言など、中間とりまとめを4月に発表/社整審産業分科会不動産部会

2009年03月06日 | 宅地建物取引業法
 社会資本整備審議会産業分科会不動産部会(部会長:平井宣雄・専修大学法科大学院長)が5日開催され、2008年8月に国土交通省から諮問された不動産流通市場の活性化、宅地建物取引業制度のあり方についての「中間とりまとめ」を4月2日にも発表することを確認した。

 同日示された「中間とりまとめ」の素案では、(1)宅地建物取引業者により実施される重要事項説明の合理化の必要性、(2)既存住宅流通促進のための情報提供手段としての「告知書」「インスペクション」の活用、(3)賃貸不動産業等のあり方についての検討、などが盛り込まれている。これに対し、各委員からは「重要事項説明の事前交付、合理化は、本当に必要なことが消費者に理解していただけるよう配慮すべき」「告知書やインスペクションを普及させるには、消費者に対する明確な有用性を打ち出してほしい」「賃貸管理業の法制化を考える前に、その業務や既存の法体系でカバーできる範囲等を明確化していくべき」といった意見が出された。

 同会では、これらを踏まえ修正を行なった「中間とりまとめ」を、4月2日に発表。十分な議論が行なわれなかった事項については、引き続き検討を行ない、21年度中に最終的なとりまとめを行なう。(不動産ニュース 3月6日)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

処分事例 雨漏り及び敷金の承継の説明不備

2009年02月13日 | 宅地建物取引業法
《要旨》
 雨漏り等の欠陥を説明せず、敷金の承継の説明も不十分であったとして、媒介業者が7日間の業務停止処分とされた。


(1) 事実関係
 買主Xは、業者Yの媒介で、築30年の4階建てのビルを買い受けた。
 Xは、「4階に事務所を構え、階下の6部屋を賃貸する予定であったが、4階や3階は雨漏りによる傷みが激しく、このような物件であることを事前に知っていたら購入はしなかった。また、購入した時点で3人の賃借人がおり、そのうちの1人が退去したが敷金155万円の返還をめぐってトラブルになっている。」として、相談のため行政庁に来庁した。

(2) 事情聴取
 行政庁で調べたところ、本件建物には、4階と3階に雨漏りの箇所が多数あるなど欠陥があったが、Yは売主側から現況渡しであると言われていたことなどから、調査を行わず、欠陥を認識していなかったため、雨漏りの欠陥等についてXに説明していなかったこと、敷金について、3人の賃借人から合計で321万円が差し入れられていたが、Yは売主側から敷金の承継について説明を受けていたにもかかわらず、重要事項説明書に記載せず、口頭で「(売主からは)敷金は戻らない、出どこはない」と説明するのみであったことが判明した。
 また、Yは、「Xは他にも不動産を所有し、大学の経済学部の教授であることなどから不動産取引について専門的な知識を持っている。売買代金についても650万円の値引きをした。」などと主張した。


(3) 処 分 
 行政庁は、Yは、Xに対して雨漏り等の欠陥を説明しなかった、敷金がXに承継されることの説明は極めて不十分であるとして、Yを7日間の業務停止処分とした。 (不動産適正取引推進機構)



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

賃貸住宅を借りたが、不動産業者の重要事項の説明が違っていた

2008年05月10日 | 宅地建物取引業法
(Q)重要事項説明書の記載内容が実際とは異なっていたので、業者に「契約を解除したい」と言ったが、「申し訳ない」というだけで埒があかない。


(A)重要事項説明書の記載内容は、契約するかどうかを判断する上で重要となる内容を説明したものですから、記載内容自体が間違っているという場合は、業者として、何らかの責任を負わなければなりません。
 「記載自体が間違っている」場合の原因としては、家主が業者に提供した情報自体が間違っていたケース、業者が過失で記入間違いしたケース、業者が故意に記載内容を変更したケースなどが考えられますが、はっきりさせなければならないのは、もし、「記載内容が間違っていなければ契約したかどうか?」です。
 たとえば、遮音構造を物件選びの際に重視していた人が、鉄筋コンクリート造だと説明されていたものが、実際には鉄骨造だった場合などは、業者は、単に「すみません」では責任をおったことにはならず、契約解除する場合の損害をすべて負うべきでしょう。
 しかし、建築年が1・2年事実と異なっていたというようなケースや全体の部屋数が少し食い違っていたというようなケースでは、契約するかしないかにほとんど影響はなかったはずですので、損害賠償まで求めるのは無理でしょう。
 従って、ご質問のケースでは、業者に対して物件探しの際に重視するポイントとして説明していた事項が間違っていたのかどうかがポイントとなり、業者に対する責任追及の内容もおのずと異なってくるものと思います。



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

保証会社と保証委託契約書を結ぶようにいわれたが、どのような点を注意したらよいか

2008年04月09日 | 宅地建物取引業法
(問)まもなく引越しをするのですが、入居するに際して、連帯保証人がいないので不動産会社が紹介された保証会社と委託契約を結ぶよういわれましたが、どうしたらよいか、注意する点はありますか。

(答え)組合はこのように連帯保証人を立てることのできない人には地方自治体などが公的保証制度を確立するように要求しています

最近では、高齢者、外国人、若者など連帯保証人になれる身内などがいない、非正規雇用の増大などで会社や上司に保証人を頼むことが出来ないなどの事情でこのような保証会社を利用する人が増えています。一方で、地方自治体などでも安易に紹介する例などが増えています。

「このような保証会社の業務内容に対しては宅建業法上の規制はありません」(東京都都市整備局住宅政策推進部不動産業課)とされ、法的規制がないために賃料滞納のさいには悪質な取立てや借りている部屋への無断立ち入り。施錠などをし、入居できないようにすることが出来る。貸主に代わって契約を解除する代理解除権を有すなど悪質な契約内容が多く存在します。一部は消費者契約法に違反している契約書もありますので、契約をする際には十分内容を検討することが求められています。少しでも不明な点や不安の点がある場合は組合までご相談してください。
(全国借地借家人新聞より)

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず 042(526)1094
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする