東京多摩借地借家人組合

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日本高齢者大会で細谷東借連会長が民間借地借家人の現状と高齢者の住宅問題で報告

2023年11月29日 | 法律知識
 第36回日本高齢者大会が11月12日・13日に東京で開催され、13の学習講座と14の分科会が12日に豊島区西巣鴨の大正大学で開かれ、第10分科会「住まいは人権~住宅政策を見直す」には33人が参加しました。
講師の佐藤和宏高崎経済大学准教授より、高齢者の住まいの実態、高齢者の入居拒否問題、住まいは「人権」のために公営住宅の拡大と住宅手当の拡大、社会保障運動としての今後の取組み等が講演されました。高齢者の入居拒否問題では、日本では入居差別禁止法が存在しない。また、生活保護の住宅扶助費の単給化等によって住宅費の所得補償の必要性などが強調されました。

 続いて、サブ助言者の東借連の細谷紫朗会長より、「民間借地借家人の実態と高齢者の住宅問題」と題して、地上げ問題と地上げ屋の手口、トラブルが多い借地・借家として、高額な更新料と賃料増額請求、老朽借家の明渡し問題、退去時の原状回復問題などについて報告しました。賃借人にとって重い家賃負担について、収入の減少や物価高で年々家賃負担が重くなっており、収入に占める家賃負担の割合が30%超える借家世帯の割では、若年者、高齢者、女性、非正規雇用世帯ほど家賃負担が過重である実態が指摘されました。高齢者など住宅弱者が安心して住むための課題では、家賃補助制度の創設、公営住宅の供給拡大、連帯保証人不要の公的な保証人制度の創設が強調されました。
 次に、サブ助言者の小川満世NPO法人建築ネット前理事長より、戦後の住宅政策の教訓をつかむことが住宅貧困の現状を打開する道であると報告しました。(全国借地借家人新聞12月号より)
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借地借家Q&A

2023年11月22日 | 法律知識
Q 賃貸借契約期間が12月末で満了します。家主が突然契約の更新をしないので、立ち退きを請求してきました。私は今のところに入居して4年ほどで、立ち退きたくありません。どうしたらいいでしょうか。家賃は家主の銀行口座に振り込んでいます。
A 賃貸人は賃貸借契約を解除するには、期間満了の6カ月前に賃借人に対して更新しない旨の通知をしない時は、従前の契約と同一の条件で契約は更新したものとみなす。但し、契約の期間の定めのないものとする(借地借家法第26条、賃貸借契約の更新等)。また、同法26条1項の解約の申入れには、賃貸人に正当事由があると認められる場合でないと、することができない(借地借家法第28条)。正当事由とは賃貸人と賃借人の事情を比較して、賃貸人により切実に建物を使う必要性が必要とされています。
 このように、賃貸人は賃借人の同意がないと賃貸借契約を解約できません。正当事由があるか否かは最終的には裁判所で判断されます。賃借人に家賃の不払いや重大な契約違反がないと、解約はさらに困難です。
賃貸借契約が切れても、契約は法定更新されます。賃借人の対応としては、まずは明渡しの請求を拒絶し、今まで通り住み続ける意思を賃貸人に文書等で伝えて下さい。家賃は1月分以降も家主の口座に振り込んでください。家主が口座を閉鎖し、賃料の受け取りを拒否してきたら、家賃の支払い場所を管轄している法務局に賃料を供託して下さい。

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

電話 042(526)1094
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不動産業者の悪質な勧誘行為は宅建業法違反です

2023年11月22日 | 底地の売買 地上げ
 借地借家人に対して、宅地建物取引業者からの契約の勧誘行為、例えば「底地を買い取れ、借地権を売れ」と執拗に勧誘する行為もこれに当たります。
 宅地建物取引業法施行規則第16条の12第1号八では、宅地建物取引業者に対し、契約の締結の勧誘をするに際して「電話による長時間の勧誘その他の私生活叉は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させる」行為を禁止しています。

 国土交通省関東地方整備局では、次のような勧誘を受けた場合は、その時の具体的な状況や様子(日時、勧誘してきた事業者の会社名及び担当者名、具体的なやり取り等)を下記の免許行政庁までお知らせくださいと呼びかけています。

●断ったにもかかわらずしつこく電話をかけてくる。
●長時間にわたって電話を切らせてくれなかった。
●深夜や早朝に電話をかけられた。
●脅迫めいた発言があった。
●自宅に押しかけられ契約書等を迫られた。など

◎国土交通大臣免許業者の場合の連絡先
東京、横浜、千葉、埼玉など関東甲信は、関東地方整備局 建政部 建設産業第2課 不動産業第1係
電話 048(601)3151 内線6656
 本店が関東以外の業者は道府県を管轄する地方整備局等の宅地建物取引業免許部局
◎都道府県知事免許業者の場合の連絡先
当該都道府県の宅地建物取引業免許局
東京都は住宅政策本部 民間住宅部 不動産業課
電話 03(5320)5072

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現賃料が公租公課額の6・9倍の地代なのに地主の代理人から増額請求

2023年11月18日 | 地代家賃の増減
 葛飾区内に土地を賃借している川部さん(仮名)は地主代理人より賃料増額請求を受け、困って葛飾借地借家人組合に相談した。
組合は川部さんから現在の状況と請求された賃料などを検討し次のようにアドバイスをした。
まず地主に対し公租公課の開示を要求し確かに賃料増額しなければならない根拠を示してもらうため通知書を送る。
借地人として賃料増額に満額応じるのか、一部なら応じるのか、全く応じず拒否回答をするのか腹積もりを決めておくと説明。
通知書送付後、ほどなくして地主代理人より資料が組合に届き固定資産税を算出したところ現賃料は固定資産税の6.9倍であることがことが判明し驚いた。
今回の増額請求は坪100円増額、固定資産税の8倍にあたる。年金暮らしの借地人にとってはかなりの負担になる。近隣の借地賃料と比較してもかなりの高額であり不当な請求といえる。合意できないと地主に内容証明郵便にて通知したが以後何ら返答はない。(東京借地借家人新聞より)
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借地契約の名義が母親のまま、相続人が国交のない外国にいて、生死が不明、相続ができない

2023年11月18日 | 法律知識
 足立区内で15坪の宅地を賃借する池田さん(仮名)は建物の一部を飲食店に貸しているが地主は底地を売却し、購入した酒類販売会社から所有権移転のコピーと通知書が届いた。
 新地主の会社はできれば借地権の買取りを打診してきたので、池田さんはネットで借地借家人組合の存在を知り、電話で今後の対応について相談したい旨伝えた。
 組合では借地契約の内容について伺い更新までの期間は2年ぐらいあり飲食店店主には話の内容を伝えておく。条件次第では売却は考えているのかと尋ねると答は借地権者の母親が十年前に亡くなったが、相続ができない理由がある。相続人5名のうち姉二人が外国におり現在は国交がないので、生死も判らず遺産分割協議書も作成できない状況にある。何度か司法書士に依頼したが難しいとの話で全く進んでいないのが現状である。池田さんは引続き住み続ける他ないのかと話され、旧地主は更新の際は土地賃貸借契約書の名義は私を借地権者として認めてくれた経緯があるが建物の名義は母親のままである。今後、建物の名義変更をしたいと思っても手続ができないままにしておくことは来年4月の相続登記制度の義務化が発表されているので心配と話された。(東京借地借家人新聞より)
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借家から排除される高齢者 国の検討会は賃借人への支援が不十分

2023年11月17日 | 住宅セーフティネット
 高齢者の賃貸住宅の入居拒否問題が社会問題になっています。高齢者や障がい者に対する賃貸人の入居拒否感は約7割に達し、入居を拒否する理由として「居室内での死亡事故等に対する不安」が約9割に達しています。住宅セーフティネット法が2017年に改正され、高齢者や障害者など住宅確保要配慮者向けのセーフティネット住宅は86万戸登録されたものの、空家は2・3%、家賃低廉化補助のある専用住宅は5357戸と登録住宅の0・6%しかありません。

 住宅のセーフティネットが機能しない中で、住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に間する検討会が国交省、厚労省・法務省の三省で本年7月から開催され、これまでの議論の整理(中間とりまとめ)を発表し、10月20日までに①住宅確保要配慮者のニーズに対応した住宅を確保しやすくする方策、②住宅確保要配慮者が円滑で入居でき、かつ適切な支援につなげるための方策、③入居後の生活支援まで含めた、住宅確保要配慮に対する居住支援、④大家が安心して貸せる環境整備のあり方の以上4項目について国民から意見を求めています。

 検討会の方向性は、大家が安心して貸せる環境整備であり、孤独死や残置物処理等の不安軽減に資する、緊急連絡先の確保や家賃債務保証を利用しやすくする環境整備という視点が打ち出され、賃貸人への支援が重視され、賃借人への支援は不十分です。

 高齢者・障がい者、低所得者などの入居を拒まないセーフティネット登録住宅ですが、実際は家賃保証業者の審査が必要であり、より困窮度が高い人ほど保証業者の審査が通らなかったり、入居が拒否されています。また、保証業者による滞納家賃の悪質な取立て行為や原状回復費が勝手に銀行口座から引き落とされる等の問題が起きています。検討会において保証業者の法規制等の問題の議論が必要です。(全国借地借家人新聞より)

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第42回クレサラ被害者交流集会の分科会 家賃債務保証業者の法規制で活発な議論

2023年11月17日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
 第42回全国クレサラ・生活再建問題被害者交流集会東京が10月1日のオープニング集会からスタートし、10月12日から29日まで8つの分科会で議論が行われました。

 10月14日は全国追い出し屋対策会議と生活弱者の住み続ける権利体会議の主管で「賃貸住宅における保証人問題と家賃債務保証業者に対する法的規制を考える」とのテーマでオンラインで開催され29名が参加しました。
 講師は全借連理事で家賃保証会社問題対策班の藤田美佳さん。藤田さんは自ら経験した家賃保証業者被害をSNSを通じてインターネットを使って呼びかけ、日夜被害の相談にものっています。昨年9月から10月にかけて行った保証業者被害のウェブ調査では142人が調査に協力し、保証業者と契約した理由や保証業者の被害の内容、保証制度などへの意見要望等12項目のアンケート調査を実施し、アンケート結果を記者会見し、国交省への要請、国会議員への要請行動などに取組み、今年3月と4月には、田村智子参議院議員と大石あき子衆議院議員の国会質疑が行われました。今後の課題として、家賃保証業者の法的規制や連帯保証人と保証業者契約のダブル保証の禁止、低所得者向けセーフティネット専用住宅に関して保証人を不要とする等が強調されました。

 講師の増田尚弁護士からは、家賃保証業者被害の法的な問題を詳しく説明し、賃借人が保証業者と締結する保証委託契約について、保証料の上限規制もなく、保証委託の期限の制限がないので、更新する度に保証契約の更新料を請求され、賃貸借契約が法定更新されているのに保証契約の更新料を取られ続けている。

 また、家賃保証業に対する法的規制(義務的登録制)として、①不当な求償権(取立行為)の行使の禁止、②不当条項の禁止、保証料の規制、③家賃滞納データーベースの規制(少なくともセーフティネット住宅の使用制限)と同時に、家賃保証業者がいなくてもよい賃貸住宅が必要である指摘しました。

 二人の講師の報告に対し参加者から質問や意見が出され、活発な質疑と討論が行われました。(全国借地借家人新聞より)
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底地買い業者が借地人に底地の買取りを強要

2023年11月10日 | 底地の売買 地上げ
 北区に土地約33坪を賃借している川上さん(仮名)は最近周辺の底地を地上げ業者が買い取った。
川上さんの借地もその地上げ業者が買取り、早速業者の担当者が底地を買うよう要求してきた。
川上さんは借地してまだ浅い期間なので底地を買ったり借地権を売ったりするつもりはない。
地上げ業者は通常地代を集金に来てその時に売るか買うかを迫るが、この業者は地代を振込みにし別途面談という形で訪ねてくる。
あまりにもしつこく精神的にも追いつめられるため組合の存在を知り相談に来た。
以前は私道部分を借地し地代を支払っていたが、地上げ業者はその私道が建築基準法第42条2項の道路に指定されたため賃貸借契約をやめ通路の地代を取らないと通知してきた。
組合はその合意についてきちんと書面で合意書をつくり合意するようアドバイスした。
口約束では合意事実を証明できず地代が足りず未払いと言われ争いになりかねないためだ。
まだ業者も本格的に動き始まっていないが、不安点があれば組合に相談し引き続き頑張っていくと川上さんは語っていた。
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家主の建替え理由による明渡しの裁判で借家人が完全勝訴

2023年11月01日 | 最高裁と判例集
 借家で,大家から,建物の老朽化や耐震性を理由に建て替えたいから,更新拒絶や解約を言われることが増えているように感じます。このような場合,大家からの明渡し請求に,正当事由があるか(大家と借主のどちらが建物を使う必要性が高いか,立退料の支払により大家の必要性が補完できるか)が問題になります。この点,老朽化や耐震性については,築年数によるところが大きく,特に,昭和56年に耐震基準が見直されたので,それ以前の「旧耐震」と「新耐震」で,耐震性に大きな差があります。昭和56年というと,42年前です。木造の建物であれば,大家が建て替えを考える時期でもあります。

 今回,ご紹介するのは,私が担当した,築40年で新耐震の物件の明渡し請求の判決です(東京地方裁判所令和5年8月1日判決,大家側からの異議申立てはなく,確定しています。

この判決では,まず,大家の必要性について,「原告は,本件建物のような築年数の古い建物は今後も貸室としての競争力が相対的に低下していくといえることから,本件建物を取り壊し,新たに建物を建てることを計画しているところ,原告の目的や資産活用,土地の有効利用の観点からは,本件建物を時代の要請に沿った建物に建て替えることについても一定の合理性があり,原告が営利目的で本件建物を必要とする事情は一定程度認められる。しかしながら,上記認定事実によれば,本件建物の現状は,原告が指摘する付属施設や設備等について,相応の不具合は認められるものの,建物の躯体部分に関する老朽化には当たらない程度にとどまっている。」としました。また,借主の必要性については,「他方で,被告が,今後も本件貸室に継続して居住する必要性については,本件建物の立地する地域の住宅事情等に鑑みても,代替不可能であるとか,必要不可欠とまではいえないものの,原告の上記必要性との比較においては,なお相対的に高いものであるといえる。」としました。さらに,立退料については,「本件解約申入れは,原告による立退料の提示をもってしても,相当な立退料の支払により正当事由が補完され,これが認めらえるべきものとまでは言い難い。」としました。
今後も使える,良い判決だと思います。(弁護士 種田和敏)

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