東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

ハウスコムの仲介物件 入居半年後に明渡し請求 組合に入会し明渡しを撤回させる

2013年07月24日 | 明渡しと地上げ問題
町田市の共同住宅に昨年5月に入居したOさんは、ハウスコムの仲介で契約した時に、契約書では「更新は可」となっていて、長く住めることを確認して契約しました。

 ところが、その年の11月に家主は大東建託の社員とともにOさんを訪問し、お知らせの文書というものを渡してきました。文書は「前略、私は貴殿に下記建物を賃貸いたしておりますが、当該建物は地震などによる建物の倒壊も危惧され、また建物倒壊等による事故に対しましても責任を負いかねますので、今般当該建物を取り壊す決断を致しました。」という全く勝手な内容でした。

 1週間後に大東建託社員からOさんに電話があり、明渡し承諾書に署名・捺印するよう求めてきましたが、Oさんは内容証明郵便で明渡しを拒否しました。そして12月に組合を訪れて、今後の対処について相談しました。組合からは、「契約期間が平成26年5月まであり、それまでは家主は明渡しの請求はできないので、明渡しに応じる必要はない。Oさんが明渡しを拒否しているのに弁護士ではない大東建託社員が明渡し交渉を行なうことは弁護士法違反の犯罪に当る。」とアドバイスしました。

 Oさんは、今後の交渉は組合と行ってほしいと大東建託に伝えました。すると大東建託からの連絡はピタリと止まり、代わりに家主の代理人の弁護士から組合に「明渡し条件の交渉をしたいので、Oさんの移転条件を聞かせてほしい。」という電話が来ました。

 Oさんと協議した移転条件を家主側弁護士に伝えると、こちらが提示した条件で支払うのは無理との回答で、交渉は決裂しました。自分の要求が通らなかったからか、家主はOさんの連帯保証人であるお父さんに連絡し、「賃借人が法外な明渡し条件を言っている。」等と筋違いのクレームをしてきました。Oさんのお父さんは「それは賃借人の問題なので、こちらには関係ありません。」と相手にしませんでした。

 そして先頃、家主側弁護士から組合に「大東建託は手を引いたので、明渡し請求は撤回します。」と電話がありました。今回の明渡し請求は退けましたが、家主がまた別の業者に依頼する可能性もあり、Oさんは今後も理不尽な要求には、毅然として対応するつもりです。


借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

電話 042(526)1094
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「改正 罹災法(案)と課題」 森 信雄弁護士が解説

2013年07月23日 | 地震と借地借家問題
1 はじめに
 従来、大規模災害の際に適用される借地借家法の特別法として「罹災都市借地借家臨時処理法」(以下「罹災法」と言う。)があったが、本年4月、政府はこれに代わる「大規模な災害の被災地における借地借家特別措置法案」(以下「改正案」と言う。)を国会に提出した。

 主な内容は、(1)優先借地権制度の廃止、(2)優先借家権制度の廃止と従前賃貸人による通知制度の新設、(3)借地人保護のための規律の改正・新設、(4)被災地短期借地権の新設であるが、字数の関係上、罹災借家人に関する見直し(上記(1)及び(2))と今後の課題に絞って述べる。

2 罹災借家人に関する制度の見直し
(1)優先借地権制度の廃止
 罹災法では、建物滅失時の借家人が地主に申し出て優先的に土地を賃借することができる、あるいは、借地権者に申し出て優先的に借地権を譲り受けることができる制度があるが(2条、3条)、改正案はこれを廃止するとしている。
 過去の適用例を踏まえ、災害を契機に借家権が借地権に昇格することの弊害が指摘されてきたからである。

(2)優先借家権制度廃止と通知制度の新設
 罹災法では、建物滅失後に再築された建物につき、滅失時の借家人が優先的に賃借できる制度がある(14条)。
 改正案はこれを廃止し、同地上に建物を再築した従前賃貸人が、災害指定の政令施行日から三年以内に同建物を賃貸しようとする場合、旧借家人(知れている者)にその旨を通知するべきものとしている。
 罹災借家人に元の場所で生活再建する機会を与える趣旨である。

3 今後の課題
 改正案によれば、罹災法と比較し、罹災借家人の地位は弱まる。罹災法は戦後処理の臨時法として制定された後に大規模災害にも適用されるようになり、様々な問題点が指摘されてきた点に鑑みれば、見直し自体はやむをえない面もあるが、罹災借家人の権利擁護に遺漏があってはならない。

 第1に、被災者のための公的賃貸住宅の建設や公的補助を伴う既存建物の活用といった公的制度の充実が図られるべきである。

 第2に、優先借家権制度を廃止し事前通知制度を導入するにしても、権利行使の機会を実質的に保障するには、再築者に対する資金補助や新建物の借家人に対する家賃補助といった施策が必要となるであろうし、新しい賃貸条件を巡る紛争を迅速かつ適正に解決する仕組みの整備も必要になると思われる。



全国借地借家人新聞より


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

借主のための賃貸借契約の法律知識学習会のご案内 7月27日武蔵野公会堂

2013年07月19日 | 借地借家人組合への入会と組合の活動
 土地や建物を借りていると、思わぬ時に賃貸トラブルの巻き込まれることはよくあります。「大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然」とは古い昔の話、今では賃貸の管理はすべて不動産管理会社にまかせ、古き良き時代の大家・店子の関係とは無縁な世知辛い世の中になってしまいました。そんな時、役に立つのは法律知識で、借地借家法や民法・消費者契約法など知識があると貸主や貸主の代理の不動産業者と対等に交渉することが可能です。借地借家の賃貸借契約について基本をみなさんと一緒に学習し、交渉する力を強くしましょう。みなさん、お気軽にご参加下さい。(参加無料です。定員40名)

◎日時 7月27日(土)午後1時開場、1時半開会

◎会場 武蔵野公会堂2階・第2会議室

◎講師 東京多摩借地借家人組合事務局長 細谷 紫朗

◎講演内容「借地借家の賃貸借契約の基礎的な法律知識」

主催・連絡先 立川市柴崎町4-5-3いわなビル101 

  東京多摩借地借家人組合

 電話042(526)1094   FAX042(512)7194
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脱法ハウス規制だけではなく、低所得者への住宅支援の強化を

2013年07月17日 | 国と東京都の住宅政策
 脱法ハウス問題は、住まい連・住まいの貧困に取り組むネットワークによる実態の解明と告発、国土交通省と自治体等への要請行動によって、大きな社会問題となり、マスコミでも大きく報道されています。

 ネットワークに寄せられた情報提供に基づき分析した結果、事務所ビル・戸建て住宅、マンション棟を改造した脱法ハウスは、都内で96棟、1100室あることが判明しました。これらのハウスは「レンタルオフィス」「貸倉庫」という名目で、多人数の人を住まわせ、窓もなくベニヤ板だけで仕切った極端に狭い部屋(一人当たり2・7㎡~5㎡)を1㎡当り1万円ぐらいで貸しています。

 国土交通省と各自治体では、建築基準法に違反している疑いがあるとして6月から調査を開始していますが、立ち入り調査に強制力がないなど実態の把握に現場では苦悩しています。シェハウスやゲストハウスなど賃貸住宅に当てはまらない物件に対する新たな法律による規制が求められています。また、まともな賃貸住宅に入居するための礼金・敷金・仲介手数料など初期費用や家財道具の購入や連帯保証人が確保できない低所得者への支援がないことによって、脱法ハウスなど劣悪な施設が「受皿」になっていることが大きな問題となっています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法成立

2013年07月17日 | 地震と借地借家問題
 罹災都市法は、災害時にも適用され、これまで30回程度にわたって適用事例がある。平成7年に発生した阪神・淡路大震災にも適用されたが、戦後の臨時立法当時の法体系と現代の借地借家の実情に整合しないなど様々な問題点が指摘され、日本弁護士会からの反対もあって2年前の東日本大震災に適用されず、平成24年9月から法制審議会で罹災都市法の見直しが審議されてきた。
 
 建物滅失後の借地権対抗力

 今回の特別措置法は、大規模な災害の被災地において、災害により借地上の建物が滅失した場合における借地人の保護等を図るための特別措置を定めた法律で借地借家法に優先する。当該災害を「特定大規模災害」として政令で指定され、適用すべき措置及び地区が指定される。(第2条)
 借地権の対抗力の特例では、借地借家法第10条第1項の場合において建物の滅失があっても、その滅失が特定大規模災害によるものであるときは、政令の日から6か月間は第3者に対抗することができる。なお、6か月が経過した後は、借地権者がその建物を特定するために必要な事項等を土地の上の見やすい場所に掲示する時は、政令の日から起算して3年間は借地権を第3者に対抗することができることになった。(第4条)

 従前借家人への通知制度

 特定大規模災害で建物が滅失していても借地権を譲渡又は転貸することができるようになった。ただし政令施行から1年以内借地人は裁判所に申し立てを行なえば、地主の代諾許可を与えることになった。(第5条)
 特定大規模災害で借家人が借りている建物が滅失した場合、従前の賃貸人がその敷地上に新たに建物を築造し、または築造しようとする場合、政令施行の日から3年以内にその建物の賃貸借契約の締結を勧誘しようとするときは、賃貸人は従前の賃借人のうち知れている者に対し、遅滞なくその旨を通知する義務が生まれる(第8条)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脱法ハウス:「シェアハウス」類似28件 23区内に集中

2013年07月16日 | 最新情報
 東京都江戸川区の分譲マンションの一室で浮上した「シェアハウス」改築計画で、主導する東京・銀座の業者が都内や近県で手掛けているとする類似31物件の詳しい所在地が、業者作成の資料から分かった。都内区部に28件が集中。繁華街の多い新宿、渋谷両区と下町の台東区に4件ずつあり、区外では多摩地域2件、埼玉県1件となっている。今後これらの物件でも江戸川区のケースと同様、消防法令上の問題などが浮上する可能性もある。

 このシェアハウス運営業者は江戸川区のマンション管理組合との5月の話し合いで「150室を管理している。今まで消防から問題にされたことはない」などと説明。6月には手掛けているとする31物件の資料を提示していた。

 国土交通省はこうした「脱法ハウス」の調査を全国の自治体に指示しており、一部の物件については自治体が把握し、消防・建築基準法令を満たしているかどうか調査に乗り出しているとみられる。

 また、国交省はこの調査指示に加え、江戸川区のようなマンション改築型の物件も法令違反の疑いが強いとして、マンション管理会社の団体に情報提供を求めている。だが、同様の住宅ビジネスを展開する業者は他にもいるとみられ、国や自治体の調査は難航も予想されている。【加藤隆寛】

(毎日 7月14日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今なぜ憲法96条改正なのか 多摩借組が憲法学習会を開催

2013年07月11日 | 学習会と交流会
 東京多摩借組は、7月10日午後6時30分から立川市女性総合センターにおいて14名が参加して「憲法学習会」を開催した。講師の組合顧問弁護士で三多摩法律事務所の大浦郁子弁護士は「なぜ今憲法96条改正なのか~危険な改憲の動きと自民党改憲案の問題点」と題して講演した。

大浦弁護士は、96条改憲の先にあるものとして自民党の改憲案は、恒久平和主義の否定、基本的人権の制限など憲法の基本原則を否定するものであることを指摘した。講演の後、参加者から活発な質疑応答が行われ、現憲法の豊かな人権規定の学習の継続を確認した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

憲法96条改正は国民へのだまし討ち 弁護士 枝川充志

2013年07月10日 | 政治経済
 来たる7月の参議院選挙で憲法96条改正が大きな争点となっています。
 96条は憲法改正の手続要件を定める規定です。そこでは、衆参議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が改正を発議し、国民の過半数の賛成が得られた場合、改正ができるとされています。96条改正とは、このうち「総議員の3分の2」の要件を「総議員の2分の1」にしようというものです。
 しかしこれはあまりにも姑息なやり方で、国民を欺くものと言えます。なぜでしょうか。
 そもそも憲法は、個人の自由を保障しています。権力者が個人の自由を制約しようとするとき、これに歯止めをかけるのが憲法なのです。ですから、権力者にしてみれば自らに歯止めをかける憲法を変えたい、それには「総議員の3分の2」の要件はハードルが高すぎる、ならばハードルを下げればよい、ということで改正要件を「総議員の2分の1」に変えようとしているのです。
 しかし憲法が「総議員の3分の2」の賛成による発議を求めたのは、「正当に選挙された国会における代表者」(憲法前文)で3分の2の合意が形成されるまでに熟慮と討議を重ねなさい、少数意見を含めて十分な判断材料を有権者に提供しなさい、という役割を国会議員に課している点にあります。
 ですから、ハードルを下げてあとは国民に判断してもらう、というのでは、多数をとった権力者が思いのままに憲法を変えられるのと同じことになるのです。「96条が設けている憲法改正権への制限を96条自身を使ってゆるめることは、憲法の存在理由そのものに挑戦すること」(96条の会)に他なりません。
 また改正手続きを緩和し本当に手をつけたいのは平和主義を定める9条です。しかしいきなりこれに手をつけるのはあまりにハードルが高く国民投票で否決される可能性があります。そこでまずは改正手続の緩和なのです。ここに国民へのだまし討ちがあるのです。
 加えて今の国会の構成は衆参とも違憲と判断されています。「正当に選挙された」(憲法前文)とは言えない国会議員がまずやるべきことは、96条改正ではなく、選挙制度の違憲状態を解消することです。
 96条改正後の、個人の自由が権力者によって意のままに制約される社会とはどんな社会でしょうか。今の憲法はそんな社会を想定していません。ですから、96条改正を阻止するよう一人一人が声をあげ、「現在及び将来の国民」(97条)に対する責任を私たち自身がしっかり果たしていく必要があります。(全国借地借家人新聞より)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

毎日社説: 脱法ハウス 行政が「住」の受け皿を

2013年07月10日 | 政治経済
毎日新聞 2013年07月09日 02時33分


 倉庫や貸事務所として届けられながら、実際には狭い空間を仕切って作った個室に多数の人が住む「脱法ハウス」が問題化している。

 近年、東京など大都市圏で目立つが実態は不明だ。一つの建物に数十人から100人を超える人が住んでおり、火災が起きれば多数の犠牲者を生みかねない。建築基準法や消防法に反するケースもあるようだ。

 太田昭宏国土交通相は、都道府県や政令市などに実態調査と報告を求めた。現状の把握は、対策の必要性を判断する第一歩で、当然の措置だ。報告を踏まえ、こうした施設に対する法や規制のあり方を早急に検討してもらいたい。

 5月に閉鎖された東京都内の施設の場合、薄い壁で仕切られた個室に窓はなく、約1・7畳の居住空間に1畳の寝台が付いているだけだった。キッチンとトイレは共同だった。

 運営業者は、ホームページで「話題沸騰中のシェアハウス」と宣伝していたが、消防などには「24時間利用可能な貸事務所だ」と説明していたという。

 建築基準法や消防法、自治体の条例などは、互いに補完し合いながら防火対策を定める。共同住宅は事務所などに比べて規制が厳しい。法の隙間(すきま)に目をつけた商法と言える。

 実際、この運営業者は、こうした実態が報道されたとたん、施設を閉鎖したり、「住民」に閉鎖通告をしたりした。脱法的であることを認識していたとしか思えない行為だ。

 入居している年齢層は幅広いが、20〜30代も多い。敷金や礼金、連帯保証人が不要で、入居手続きも簡便だ。就職のためには住所が必要なため、「脱法ハウス」に住民登録をしていた人も少なくない。

 経済が低迷する中で、職も住むところもない人が若者を中心に激増した。路上やネットカフェなど本来、人が住む場所でないところに多くの人が住まざるを得ない現実を直視しなければならない。需要がある以上、一部の業者の行為を貧困ビジネスと批判するだけでは済まないのだ。

 危険な施設が閉鎖されるのは当然だが、受け皿がなければ追い出された人は路頭に迷ってしまう。

 市町村や区など住民に最も近い立場にある行政がまず、当事者の声を聞き住宅政策を見直してもらいたい。

 公営住宅などは、高齢者が優先されるため、働く世代が入りにくいとかねて指摘される。また、生活保護受給者や職がない人に対する支援策と比べ、低収入の生活困窮者に対する「住」の支援が不十分だと言われる。条例の整備などを通じ、「住」支援を前進させてほしい。また、背景に社会構造の変化がある以上、国も明確な施策を示すべきだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

更新料と地代値上げで地主が調停裁判起こす

2013年07月09日 | 契約更新と更新料
豊島区高松に住む杉本さん(仮名)は、祖父母の代から借地して70年以上経過している。
昭和12年に契約書なしで契約し、期間の定めがなく最初の更新は30年後の昭和42年で法定更新となった。以後、20年ごとの更新で平成19年に期間が満了。契約書の作成もなく、地代は近隣の相場からすると安い方だった。

しかし、地主が代替わりし、すでに法定更新しているにもかかわらず、更新料の請求と地代の値上げを請求してきた。更新料について支払い義務は存在しないと拒否する旨を通知すると弁護士が代理人となって調停を起こしてきた。古くなった建物の建替えも検討していたので調停の場で話し合うことにした。地主側が提出した更新契約書案は建物の増改築は地主の承諾事項、更新料は路線価の10%を支払うなど極めて借地人に不利な内容で拒否することにした。しかしながら今回の更新料請求については建替え承諾料として支払うことも含め話合いは継続することにした。

(東京借地借家人新聞より)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(憲法は生きているか 2013参院選:1)家族 孤立、支え合えない

2013年07月08日 | 最新情報
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201307050831.html

参院選で改憲の是非が大きな争点になっている。立ち止まってよく考えたい。この国でいま、憲法は生かされているだろうか。


 「ああ父さん、この街で生きてたんだ」

 北九州市で暮らす西原吾郎さん(41)に、市の福祉事務所から封筒が届いたのは4年前のことだ。父宣幸(のぶゆき)さん(64)が生活保護を申請するにあたり、息子として扶養できるかを問う書類。もう17年近くも音信不通だった。

 幼い頃に両親が離婚し、父の実家に引き取られた。祖母が死に、酒びたりの父との生活が嫌になった。二十歳で家を出て、ずっとひとりで生きてきた。

 半導体工場の派遣工として、各地を転々とした揚げ句、派遣切りにあう。自分だってしんどかった。

 「支援できません」と返事を出す。携帯に福祉事務所から留守電が入っていたが、折り返さなかった。

   ●  ○  ○

 宣幸さんは路上生活から脱しようと必死だった。

 長距離トラックの運転手をしていた頃は、羽振りがよかった。体を壊しタクシー運転手になってからも、夜遊びや競輪の誘惑に負けた。息子が出て行った後、家賃が滞り、今度は自分が追い出された。

 製鉄所に近い海沿いの空き地に小屋を建て、缶を集めて小金にした。深夜のラジオが唯一の話し相手。

 「死んだら、泣いてくれる人間はおるんかな」

 生活保護の受給を勧めてくれたのは、奥田知志牧師(49)が代表を務めるNPO法人・北九州ホームレス支援機構。アパートを紹介され、放置自転車の管理の仕事に就いた。秋には生活保護を卒業できそうだ。

 親子の糸は2年前、つながった。正社員の職を得た息子が、父親を訪ねた。汚れた作業着姿が、昔の自分にそっくりだと、宣幸さんは思った。いま3カ月に一度、顔を合わせる。

 奥田牧師は、これまで2千人以上のホームレスの再起を手伝ってきた。「ハウス(家)は取り戻せても、ホーム(家族)のもとに帰れるのはまれだ」。教会の祈祷(きとう)室の棚の上、行き先のない骨箱が、年々10体ほど増えてゆく。

 「あの人とはもう関係ありませんから」。ようやく捜しあてた身内が、そう言って電話を切る。

   ○  ●  ○

 東京都立川市の都営アパート7階の一室で、昨年3月、95歳の母とひとりで介護をしていた63歳の娘が、ともに遺体で見つかった。

 母は認知症で、娘が病死した後、衰弱死。生活保護や介護サービスは受けていなかった。当時の自治会長は「娘が一緒なので心配ないと思っていた」。

 昨年1月には札幌市で。姉(42)に続いて、知的障害のある妹(40)が凍え死んだ。姉は生活保護の相談窓口を3度訪ねたが、申請には至らなかった。全国で似た例が相次ぐ。

 憲法25条は、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営むことを保障するよう国に求める。本当にそうなっているだろうか。

 「家族は、すでに支え合う力を失っている。なのに福祉を背負わせ、しがみついているのが現実。もう限界だ」。NPO法人・自立生活サポートセンター「もやい」の稲葉剛代表(44)は言う。

 同じ立川市の都営大山団地。1600世帯のうち、高齢の単身世帯が4分の1を占めるが、2004年以降の孤立死はゼロだ。

 自治会事務所に、24時間対応の窓口を設けた。向こう三軒両隣の住民同士で、ポストに郵便物がたまっていないか確かめる決まりもつくった。「遠くの親戚より近くの他人って昔から言うでしょ」と、自治会長の佐藤良子さん(71)。

   ○  ○  ●

 日本国憲法は、明治憲法下の「家」制度を否定して生まれた。女も男もみな一人の個人として尊重され、多様な生き方を、幸福を、追い求める権利を持つ。そう定めて、日本は戦後を歩み始めた。

 憲法が制定されたころは5人家族が平均的な姿。1世帯あたりの人数は10年に2・5人を下回り、家族は半分に縮んだ。今では男性の5人に1人が生涯結婚をしない。1人世帯が「夫婦と子どもからなる世帯」を上回り、最も多い家族の形になった。(矢島大輔)


 ■自民草案は互助を課す

 少子高齢化が進み、家族の形が変わる中、健康で文化的な生活をどう支えるか。

 自民は公約で「自助・自立」が第一と強調。昨年発表した改憲草案では、前文で「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」とした。家族の絆が薄れているとして24条1項に家族の規定を新設、「家族の助け合い義務」を定めた。

 安倍政権は生活保護の削減・抑制も打ち出した。先の国会で提出した生活保護法改正案は、家族の資産や収入を確認する手続き強化が特徴。自民、公明、民主、維新、みんな、生活が法案に賛成したが、共産、社民が「保護が必要な人が申請しにくくなる」と反対した。会期末の混乱で廃案になったが、政府は参院選後の国会に出し直す考えだ。


(朝日 7月6日)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

慣習を理由とする地主の更新料請求が裁判で棄却された事例

2013年07月05日 | 契約更新と更新料
自らが所有する二七八件の賃貸地のうち二四三件で借地人からの更新料授受があったとして、更新料を支払う旨の契約書上の条項がない借地契約につき、慣習を理由とする地主の更新請求が棄却された事例(平成二四年一二月二〇日判決:判例検索ソフト・ウェストロージャパン掲載)

[事案の概要] 原告は、東京都内(江東区)の土地約三八坪の貸地につき、一坪当たり更新料約五万円が相当として更新料約一九〇万円を被告借地人に請求した。平成四年三月の前回更新のときは、名義書替料を割賦で支払うとの念書が差し入れられ、被告の先代から原告の先代に400万円が支払われた事実があった。

[判決] 原告の請求棄却。平成四年の名義書替料の支払いは更新料の支払いであり、そのとき平成二四年の更新時に更新料を支払うとの合意があったと原告は主張したが、判決は、契約書の更新料支払特約の条項がないが、合意があったなら契約書にその旨記載されれば足りるはずであるとして、原告の合意の存在の主張を退けた。原告はさらに、「少なくとも東京都内において,既に更新料支払の慣行は五〇年近く継続しており,現在では,賃貸人の請求に基づく更新料支払について商慣習又は事実たる慣習が成立している」と主張し,原告又は関連会社が東京二三区及びその近郊において所有していた居住用一戸建建物所有目的の底地二七八件について更新料支払の有無を調査したところ,二五七件につき更新料支払の有無の確認がとれ,そのうち約九五%に当たる二四三件では更新料が支払われていた」との原告元代表者の陳述書を提出した。

 これに対し、判決は、「陳述書添付された『更新料データ』と題する一覧表を検討すると,確認できた借地契約書に更新料支払の記載がないにもかかわらず、更新料支払の事実が認められるのは,二五七件中┉┉一一件のみ」である。「その余は、借地契約書に更新料支払が明記されているか(二六件),又は、借地契約書に更新料支払の条項があるか否か未確認であるというのであるから,東京二三区及びその近郊においては、借地人は、更新料を支払う旨の賃貸人との個別の合意がない場合であっても,商習慣又は事実たる慣習に基づき当然に更新料の支払義務を負うとは未だ認められ」ないとして、結局、地主の更新料請求を認めなかった。特約がないのに更新料支払の慣習があるからとして更新料を請求することは認められないことは、既に判例上確定しているが、一つの事例を加える判決である。(弁護士 田見高秀)

(東京借地借家人新聞より)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする