東京多摩借地借家人組合

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耐震不足を理由に契約解除・更新拒絶を認めなかった事例

2014年11月27日 | 最高裁と判例集
耐震性の不足を理由とする契約解除・更新拒絶請求を認めなかった事例
(東京地判平成25年12月25日)

1 事案の概要
 建物は昭和53年築の居住用マンションであり、賃借人はその一室を賃借して居住している。賃貸借契約書には、「天災、地変、その他賃貸人の責によらない事由により、賃貸借物件を通常の用に供することができなくなったと賃貸人が認めたときは、本件賃貸借契約は当然に消滅する」という終了特約があった。耐震性能調査では、図面上は耐震壁があるとされているが実際には存在しない、梁の鉄筋本数が耐震基準の2分の1から3分の1程度であることなどから、「震度6弱程度の地震にみまわれた場合、構造体に損傷が発生する可能性が高い」との結果が出ている。
 賃貸人は、この調査結果を踏まえて、①終了特約に基づく契約の終了と、②期間満了による更新拒絶(立退料の提供あり)を主張して、賃貸人に対し明け渡しを求める裁判を起こした。

2 裁判所の判断
⑴終了特約による契約解除の主張について
 建物の状態については、先の耐震調査結果を踏まえて、「耐震構造上の問題があって、マンションの入居者のほか第三者の生命、身体へ危険を及ぼす危険性を有している」と認めた。しかし、終了特約については、「(賃貸人は)賃貸借の目的物に瑕疵がある場合には、その瑕疵を修繕する義務を負っている(民法606条1項)のであり、終了特約が直ちに賃貸借契約が終了するという賃借人にとって著しく不利益な効果をもたらすことを踏まえると、終了特約の『通常の用に供することができなくなった』状態とは、賃貸人において通常の用に供するための修繕をすることが不可能な状態であることをも要する」と判断した。そして、賃貸人が耐震補強(修繕)工事を行うことは多額の費用を要すると主張している点について、どのような耐震補強工事が可能または不可能なのか、どれだけの費用がかかるのかなどについて「なんら具体的な主張立証をしていない」として否定し、終了特約に基づく契約終了を認めなかった。
⑵更新拒絶の主張について
 賃貸人が住居として使用しているだけでなく、生計を維持するための事業(笛の稽古場)としても使用していることから、近隣で同様の使用が可能な物件を探すことは困難が予想され、自己使用の必要性は高い。他方、建物については解体して新たな建物を建築する必要性があることは否定できないとしつつも、(1)で述べた耐震補強工事を行うことが不可能であるか否か等が明らかにされていない状態では、立退料の提示があることを考慮しても、なお更新拒絶には正当事由がないと判断して、契約解除を認めなかった。

3 コメント
 ここ数年、建物の老朽化に加えて、耐震性に問題があるとして建物賃貸借契約の更新拒絶を求める事例が増加傾向にあると思われる(本紙565号で紹介した事案(←白石先生ご紹介の東京地裁立川支部判H25.3.38)など)。本事例から、耐震性能検査で建物に問題点が指摘されたとしても、取り壊しではなく補強工事によって対応が不可能か、可能であっても多額の費用がかかることを賃貸人側で具体的に明らかにしなければ容易には契約解除が認められないことが分かる。賃貸人から耐震性能不足を理由とする立退請求を受けた場合、話を信じて簡単に受け入れるのではなく、このような観点から賃貸人側の理由を具体的に精査することが必要であるといえる。(弁護士 松田耕平)
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空家対策特措法が臨時国会で成立

2014年11月21日 | 最新情報
19日午前の参議院本会議で「空家等対策の推進に関する特別措置法案」(空き家対策法案)が原案通り可決、成立した。そのまま放置すれば倒壊など著しく危険、著しく衛生上有害な状態になるおそれがある、著しく景観を損ねているなどの空き家を「特定空家等」と定義。特定空家等に対して、市町村が所有者に対して適正管理を指導、命令、勧告でき、命令などに従わない場合は一定の手続きで行政代執行を行うことができる。

 また、市町村は所有者を特定するために固定資産税の情報を利用することや空き家を調査するための立入調査が可能になる。固定資産税の特例の扱いは、法律では内容が明記されていないが、政府・与党は空き家について特例を解除して税負担を重くする方向で検討する。(住宅新報)
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借地契約書の更新料支払条項には要注意!

2014年11月20日 | 賃貸借契約
三鷹市野崎で150坪を借地しているSさんは、インターネットで組合を知り、10月末に相談に来ました。相談の内容は、今年の5月に借地契約の期間が満了し、地主から更新料を請求されているが、どうしたらよいかという相談でした。

15年前に、更新料として785万円支払ったが、事業がうまくいっていない。最近、息子さんが事業を引き継ぎ、何とかやり繰りしているが、前回のような高額な更新料は支払えないとのこと。実は契約書に更新料を支払って更新する旨の特約があり、更新料の金額については明記されていませんが、地主と「協議の上支払う」と書かれています。借地人にとって大変不利な特約だが、更新料を支払わないためには法定更新にもちこみ、更新料の協議に応じないよう助言しました。契約書の作成に当っては、更新料を支払うことの約束などしないよう注意しましょう。

(東京多摩借組ニュースより)


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全国連絡会が第4回学習交流集会開催 大本氏を講師に戦後の住宅政策を学習

2014年11月19日 | 借地借家法改悪
 借地借家法改悪反対全国連絡会の第4回全国学習交流集会は、11月15日午後1時30分からUR王子5丁目団地集会場において全借連をはじめとする住宅4団体他から65名が参加して開催された。主催者を代表して田中祥晃会長が開会挨拶を行い、「戦後の住宅政策と私たちの運動は密接な関連がある。しっかりと学習し、歴史的な観点に立って今後も運動していこう」と訴えた。

 基調講演は、日本居住福祉学会副会長・前東京経済大学教授の大本圭野氏より「戦後における日本の住宅政策の歴史と課題~21世紀の居住福祉政策確立に向けて」と題して講演がされた。

 大本氏は、日本の住宅政策の特徴として、①持ち家政策中心、②土地施策不在、③経済政策的で社会政策的側面が少ない。

④自治体における住宅政策不在、⑤住宅政策に参加民主主義が不在、労働組合運動の抑制によって企業を支援、⑥住宅建設中心の住宅政策、⑦一般住宅の管理・運営は自助努力に、⑧居住に関して総合的視点で政策化されていない以上を指摘した。
 とくに、日本の国家、政府の体質は戦前戦後も変わっていないとし、「大震災で被災しても国家の財政を住宅に支出しないで自助努力にまかせている」、「住宅政策は人間を人間として見る視点がなく、経済成長のための労働力確保、景気浮揚の駒としてしか見ていない」と述べ、全く「ヒューマンではない」と強調した。

 質疑の後、全借連・公住協・公社自治協・公団自治協の4団体の代表が各団体の直面している問題や運動の取組みについて報告がされた。全借連は中村敬一副会長が民間賃貸住宅の実態について報告し、非正規雇用の増大で年収200万円以下の勤労者は賃貸住宅の家賃を支払うことが困難で、全借連では憲法13条・14条・25条・27条に基づき、民間賃貸住宅でも安心して住み続けられるために、民間賃貸住宅憲章を作成し、適切な住居費と家賃補助や追い出し行為の禁止等を求めて運動していることを発言した。
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東借連加盟組合の催し物と行事案内

2014年11月17日 | 東京借地借家人組合連合会
■城北借組「西武デパート相談会」
 12月10日(水)・11日(木)午前11時~午後5時(午後1時~2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。連絡・(3982)7654。
■多摩借組「定例法律相談会」
 12月6日(土)午後1時30分から組合事務所。相談者は要予約。
 「学習交流集会」
 11月月22日(土)午後1時半から八王子労政会館。連絡・042(526)1094。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から組合事務所。
 「学習相談会」
 11月30日(日)午後1時~3時、梅田地域学習センター2階会議室。連絡・(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。相談者要予約。連絡・(3801)8697。
■大田借組「日帰りバスツアー」
 11月30日(日)。栃木県大谷石採掘場跡地・桜山公園冬桜等を見学。連絡・(3735)8481。
■東京地方自治研究集会「憲法を守りいのちかがやく東京へ」
 12月7日(日)午前9時30分から午後4時30分、明治大学リバティタワー。

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父親一人で居住する借地権、将来どうしたらよいか

2014年11月12日 | 借地借家の法律知識
埼玉県に住む五十嵐さん(仮名)は、インターネット情報で借地借家人組合の存在を知って相談にきた。

新宿区原町の実家の借地問題で、表通りから駐車場に入る路地の通り沿いに13坪の土地を祖父の代から借地していた。借地には現在、父親が一人で住んでおり、子供である本人たちはそれぞれ家を所有しており、将来この建物を使用する予定はないということであった。地主に返還することも検討しているとの話であった。

組合の相談では、①地主に返還するとなると更地にして返還するのが原則で、解体費用などで百万単位の多額の費用を要することになる。②地主との間で借地権の買取りを話し合い合意ができれば多額の解体費用を負担せずに済むかもしれないが、合意ができない恐れもある。③第三者に借地権付き建物として譲渡することができる。但し、地主の承諾を得るか裁判所の承諾が必要なこと。④老朽化した建物を賃貸として貸すことができる。この場合、基本的には地主の承諾を必要としない。説明を受けた五十嵐さん「参考になりました。兄弟でじっくり相談してみます」と話した。

(東京借地借家人新聞より)


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固定資産税・都市計画税の31倍の地代増額調停即決取り下げに

2014年11月10日 | 地代家賃の増減
大田区仲六郷地域で宅地約56坪を賃借中の亀田さんは、地代増額請求を拒否して地代を供託中。
この程、調停裁判となり先日の東借連の秋季研修会で学んだことを生かすチャンスとなった。高額
な地代の減額を主張しようと、固定資産税等を調査すると増額請求額は31倍である。怒りを通り
越してあきれるばかりだ。調停の当日、現行地代が高額で減額を伝え始めると、裁判官や調停員が申立は増額なのでと、亀田さんの発言を制止して「調停を終了する」と宣言する。キョトンとする亀田さんに、申立人の増額請求には問題があるので取下げさせるという。

書記官作成の調停終了通知書を交付された。減額はできなかったが、短時間で取下げの即決に感動
したと、亀田さん組合事務所に報告した。

(東京借地借家人新聞11月号より)
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坪10万円の高額な借地更新料請求 

2014年11月07日 | 契約更新と更新料
 足立区興野で約45坪の宅地を賃借している飛田さん(仮名)は本年9月に30年間の借地契約の期間満了に伴い、地主から450万円の更新料を請求された。

 前回の更新時は建替え承諾も得て、更地価格の3%で合意更新した。今回は地価も下落しているにもかかわらず、高額の更新料請求に納得がいかず組合に相談をした。

 組合では、土地賃貸借契約の期間が満了したからといって契約が終了するのではなく、法律では地主に正当な事由がなければ前契約と同一の条件で更新されたものとみなされると説明した。また、契約書に更新料支払い約束がなければ、払う必要もないと付け加えた。(東京借地借家人新聞より)


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生活相談Q&A:こうべ賃貸住宅あんしん入居制度 /兵庫

2014年11月04日 | 最新情報
◇連帯保証や安否確認で高齢者らの居住を促進


 Q 賃貸住宅への入居を考えているが、家主から連帯保証人を立てるように言われています。連帯保証人を頼める人がいないのですが、何か良い方法はないでしょうか。(70代・女性)

 A ご高齢の方の中には、家賃の支払いに不安はないのに、賃貸借契約の際に、「連帯保証人がいない」「住戸内での事故が心配だから」など、家賃の支払い以外の理由で断られてしまった経験がある方もいるのではないでしょうか。このような現状を踏まえ、神戸すまいまちづくり公社は、神戸市内の民間賃貸住宅に新たに入居する方、または入居中の方を対象に「連帯保証」や「残存家具の片付け」「安否確認」等のサービスを提供することで、貸す方、借りる方それぞれの不安解消をはかり、民間賃貸住宅への円滑な入居を支援する「こうべ賃貸住宅あんしん入居制度」を創設しました。

 この制度は、神戸すまいまちづくり公社が選定した民間事業者が、有償でサービスを提供します。

 「連帯保証サービス」「残存家具の片付けサービス」「安否確認サービス」を三つの基本サービスとしており、必要なサービスを組み合わせて利用することができます。

 「連帯保証サービス」は、神戸市内の民間賃貸住宅に入居する際、事業者が終身にわたり、連帯保証人となるサービスです。

 「残存家具の片付けサービス」は、利用者がお亡くなりになった後に、生前の契約に基づいて住宅内に残された家財の片付けを行います。

 「安否確認サービス」では、住宅内に生活動作を感知するセンサー等を設置し、センサーが異常を感知したとき、または、携帯式の端末から利用者が通報したときに、サービス事業者が必要に応じて、出動員の駆けつけや救急車の出動要請などの緊急対応を行います。

 いずれも事業者ごとに利用条件や料金が異なりますので、より詳細なサービス内容や費用等については、すまいるネットまでお問い合わせください。(神戸市すまいの安心支援センター<すまいるネット> 078・222・0186)

毎日新聞地方版 10月30日
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独居高齢者に見守り付き住宅紹介 京都市がモデル事業

2014年11月04日 | 最新情報
 高齢者の孤立や孤独死を防ぐため、京都市は1人暮らしで住み替えを希望している高齢者に、地域の社会福祉法人による見守りなどのサービスが一体となった住宅を紹介するモデル事業を来月から始める。福祉の専門職員が定期的に高齢者を訪問し、生活相談に乗る。市によると、こうした取り組みは全国初といい、高齢者の安心な住まい確保に努める。

 対象は見守りや生活支援が必要な1人暮らしの65歳以上で、住み替えを希望している人。現在、家族と暮らしていて住み替えで1人暮らしを希望している人も対象になる。

 モデル地域は北、右京など市内4区で、高齢者の入居を拒まない市内の不動産業者がモデル地域内の賃貸住宅を紹介する。市から委託を受けた六つの社会福祉法人の職員が、それぞれの担当地域で入居者に対して週に1回以上の見守りや生活相談を行う。緊急時に備え、24時間連絡が取れる体制も整える。

 背景には、孤独死や家賃滞納への懸念から高齢者が賃貸住宅への入居を拒まれるケースがある。

 2010年度に京都府などが行った府内の宅地建物取引業者約3490社へのアンケートでは、半数が賃貸住宅の家主から高齢者の入居を断るよう言われたと回答した。理由は「病気や事故の不安」が89%、「火の始末や水漏れの不安」は68%だった。

 市によると、京都市内の1人暮らしの高齢者は10年に約7万世帯で、05年より約1万世帯増えた。市長寿福祉課は「高齢者が1人でも安心して住める環境を確保したい」としている。

 (2014年10月30 京都新聞)
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