東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

社説:住宅弱者 誰も入居拒否しない社会に

2024年04月26日 | 法律知識
https://nordot.app/1155053615676523113

 「住宅弱者」をどう救うか。
 1人暮らしの高齢者が2050年に1千万世帯を超え、5軒に1軒の割合になるという国の最新推計が公表された。死別や未婚で頼れる身寄
りがなく、暮らしの根幹となる住まいへの入居を拒まれ、行き場をなくす人の増加が懸念される。
 単身高齢者らの住宅確保を支援するため、住宅セーフティーネット法改正案が今国会で審議されている。2017年に創設した高齢者、
低所得者らの入居を拒まない賃貸住宅を紹介する「セーフティーネット登録住宅」制度を拡充する内容だ。
 日本賃貸住宅管理協会の調査では、単身の高齢者の入居に拒否感がある大家は65%、実際に60歳以上の単身者の入居を断っている大
家は11%あった。大家側の理由は、孤独死と遺品の処理への不安、家賃滞納、認知症になった場合など入居後の課題の相談ができるか
といった懸念が背景にあるとされる。
 セーフティーネット登録住宅は昨春時点で、京都府約1万3千戸、滋賀県約1万千戸。制度創設後の新型コロナウイルス禍での停滞を
勘案しても、伸びを欠く。入居相談や家賃債務保証をサポートする居住支援法人の数も十分といえないという。
 障害者や低所得者、ひとり親世帯も家を借りにくい住宅弱者だ。児童養護施設を出た人も保証人を見つけるのが難しい。
 一方で、空き家は増えている。18年調査で京都府は17万戸、全国で846万戸に上り、総住宅数の1割を占める。住宅施策と福祉施策の
間に空いた大きな溝を埋めねばならない。
 改正法案は、入居後の見守りや一定の債務保証などサポートの強化で、大家の不安を軽減する狙いがある。国会審議を通し、実効性
を高めてほしい。
 国が同法で「住宅確保要配慮者」と定義するより幅広く、入居差別に苦しむ人たちがいることにも目を向けてもらいたい。
 同性パートナーの世帯、生活習慣の異なる外国籍の世帯、ヘルパーが頻繁に訪れる難病患者、刑務所を出所した人らである。差別や
偏見から家を借りにくい「住宅難民」ともいえよう。理不尽に住まいの確保を拒まれ続け、諦めている人の実態を十分に把握する必要
がある。
 府県営や市町村営などの公営住宅こそ、本来の住宅セーフティーネットにほかならない。
 連帯保証人が見つからずに入居できない人をなくすため、国土交通省が、公営住宅の募集に際して保証人規定を削除するよう全国の
自治体に要請したことは評価できる。京都府や京都市も保証人規定を除いた。
 民間賃貸住宅がいまだカバーできない住宅弱者の受け皿として、公営住宅が果たすべきことは多い。福祉施策と結びつけてさらに要
件を柔軟にし、入居後のサポートを充実させることが求められよう。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 違法・不当な保護行政が浮き... | トップ | 東京都が東借連など住宅運動... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

法律知識」カテゴリの最新記事