東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

毎日フォーラム・言いたい/聞きたい 棗一郎 日本労働弁護団闘争本部長、弁護士

2021年02月17日 | コロナと労働・生活相談
https://mainichi.jp/articles/20210205/org/00m/010/006000d

公共事業で困窮者の仕事の創出を

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化するなか、昨年末から今年にかけて、国内有数の繁華街、東京・新宿に「年越し支援・コロ
ナ被害相談村」が開設された。相談者のほとんどが職を失い、しかも前職は派遣やパートなど非正規の雇用だった。実行委員の一人で
日本労働弁護団闘争本部長の棗一郎弁護士は「コロナ禍による経済危機はサービス業、運送、流通など広範囲に打撃を受けている。公
共事業の仕事を失業者に紹介するなど国、自治体が積極的に雇用を生み出すことが必要だ」と説く。(明珍美紀)

 --大都市圏に緊急事態宣言が再発令され、生活困窮者の支援が急務です。今回のコロナ被害相談村の特徴は。

 相談村を訪れた人々の直前の雇用は、ほぼ非正規雇用でした。2008年のリーマン・ショックでは輸出、製造業が打撃を受け、「派遣
切り」などの問題が起きました。今回のコロナ禍は極地、局所的ではないし、特定の産業に限られているわけではない。飲食店、旅
館、ホテルなどのサービス業、運送、流通業など広範囲に影響が及び、派遣、パート、有期雇用といった非正規雇用全般で失業者が増
大していると推測されます。
 2番目の特徴としては、女性の相談者が増えたことが挙げられます。相談村は新宿の歌舞伎町にある都立大久保公園で行い、相談者
の数は年末年始の3日間(20年12月29、30日、21年1月2日)で計344人。うち女性は約2割で、主にシングルマザーと独身女性で
す。女性専用のブースを設け、相談員も全員女性で対応しました。
 リーマン・ショックの時は、「自立生活サポートセンター・もやい」などのNPOをはじめ、労働組合、私たち労働弁護団が協力
し、初めて「年越し派遣村」(08年12月31日~09年1月5日)を(東京の)日比谷公園で実施しましたが、女性は数人でした。

 --相談の内容は。

 「日雇いの派遣だったがコロナ禍の影響で仕事がなくなった」「アパレルメーカーに勤めていたが契約を打ち切られた。アパートの
家賃も滞納している」など、切羽詰まった状況です。元建設作業員の50代半ばの男性は実際に住む場所を失い、「ネットカフェに寝泊
まりしていたが、手持ちの現金が底を尽きて野宿をしている」と訴えました。
 女性の場合は、やはり非正規で職を失い、雇用保険は入っていないか、切れたままの状態の人が大半。東南アジアを中心に、外国人
の相談が24人。これは、外国人労働者の就労支援団体や、技能実習生の問題に関わる弁護団などを通じて情報が回りました。
 相談は、12月29日の1日目が58人、翌2日目が125人、3日目の1月2日は161人と、情報が浸透するに従って増えてきました。もっ
と続ければ、数は膨れ上がったと思います。

 --言い換えれば、相談村のことを知らずにいた人がいた。

 相談村の宣伝方法は、主にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)とテレビの報道番組での紹介でした。けれども利用
料金が払えずスマートフォンを止められている人がたくさんいる。新宿駅周辺などで(相談村の)ビラを配布しましたが、それでも行
き届いたとは言えません。やはり、人づて、口コミで集まってきた。必要な人に必要な情報がなかなか届かない。こうした「情報弱
者」の問題も改善しなければなりません。

 --相談者にはどのような対応をしたのでしょうか。 

 住む家がない場合は、東京都の「TOKYOチャレンジネット」という支援制度を紹介しました。居住、生活、就労の支援と資金の
貸し付け相談に応じ、宿泊場所も一時的に提供します。
 あとは生活保護の申請の手伝いですね。住む場所がない、実家にも帰ることができないならば、選択肢として生活保護があります。
ところが、「生活保護だけはいやだ」と言う人が大勢いるのです。

 --その理由は。

 自助努力が足りない、社会の脱落者という負のイメージがあるのかもしれません。「自助、共助、公助」の順番を掲げた現政権にも
問題がある。けれども、困窮者が生活保護を受けることは、生存権を保障する国において当然の権利。生活を再建して次のステップに
進むためのつなぎの措置と考えてほしい。
 相談村は「共助」にあたりますが、いまは、共助でも、救援しきれないところまで来ています。

 --各地の支援体制は。

 「コミュニティーユニオン全国ネット」に加盟する各地のユニオンが年越しの支援を行いました。例えば、三重の「ユニオン三重」
は外国人労働者のために、餅つきをして正月料理を提供し、兵庫の「伊丹ワーカーズコープ」のユニオンも年越しそばを出して就職先
の紹介などの支援活動をしたと聞いています。

 --国や自治体への要望は。

 「GoToキャンペーン」などの経済活動より雇用と生活支援を優先してほしい。具体的な提案としては、国、地方自治体が持って
いる公共事業の仕事を、生活困窮者に紹介する。
 就労支援の一つに、労働組合などが行う労働者供給(労供)事業があります。通常の労働者供給は賃金のピンハネや強制労働の危険
があるため職業安定法で原則禁止され、許可制となっていますが、営利事業ではない労働組合は例外として認められています。こうし
た労供の活用や、さまざまな仕事に役立つ職業訓練も充実させる必要があります。
 自治体に関しては、生活保護をはじめ各給付制度の窓口に、ある程度経験を積んだ職員を配置してほしい。適切なアドバイスができ
るだろうし、担当者の温かいひと言に救われることがあります。

 --今後の支援活動は。

 このまま感染が収まらないと、緊急事態宣言が延長される可能性があります。年度末は雇用契約の切り替え時期なので、大量の失業
者が出るかもしれません。
 今回、相談村の実行委員会に参加した支援団体、労働組合とさらに体制を強化し、年度末に向けて国への要請行動を予定していま
す。
 政治の大切な役割は、国民から集めた税金を適正に予算配分し、みんなの役に立つように使うこと。納税者として声を上げなければ
いけません。
 私は中央大学の学生時代、学園紛争で壊れた自治会の再建運動に力を注いでいました。民主主義に至る歴史をひもとくと、労働組
合、すなわち労働者の権利、生活が守られていることが民主的な国づくりに必須であり、そういう仕事に関わりたいと弁護士になりま
した。
 これからの日本を支えていく若い人、私にも高校2年と小学5年の2人の子どもがいますが、若者たちが自由な思考と批判精神を持
ち、弱い人を助けていく。そんな社会を創造していきたいですね。

 なつめ・いちろう 1961年長崎県生まれ。中央大法学部卒。96年弁護士登録。日本マクドナルド店長残業代請求訴訟、日本郵便労契
法20条事件などの労働事件を労働側で担当。日本労働弁護団で労働立法運動や社会労働運動に尽力し、2008年末から翌年の「年越し派
遣村」では事務局長を務めた。
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「扶養照会」が壊す家族の絆〜最後のセーフティネットが「権利」になるために

2021年02月12日 | 貧困と格差
扶養照会が生活保護の申請への大きな壁になっていることは間違いない。いわば、扶養照会は生活保護申請をさせないための「水際作戦」の機能を果たしてしまっていると言えるのだ。
雨宮処凛作家・活動家
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60238879c5b6d78d444ae7b4

「私が鬱で退職療養中に、25年間音信不通だった父の扶養照会を、数年間にわたり毎年受けました。DVや貧困など不幸なかつての家族生活を思い出し、照会があるたびに精神状態が不安定になりました。同時に親の面倒を見れない自分の経済状況に罪悪感と、恐怖と不安で落ち込みました。照会があったことは母にはもちろん話していませんし、誰にも相談できず返事もできませんでした。生活保護を受ける父も照会はつらかったと思いますし、それを知って助けられずに逃げていた私もつらかったです。将来、こんな思いをする子供が出てきてほしくないです」
この言葉は、「つくろい東京ファンド」が募集した「扶養照会に関する体験談」に寄せられたものである。
扶養照会とは、ある人が生活保護を申請した時に、役所からその親や子ども、兄弟に「金銭的に面倒をみられませんか?」と連絡がいくこと。貧困問題に関わって15年になるが、どんなに困窮しても「家族に連絡がいくのだけは避けたい」「今の状況を知られたくない」と、扶養照会が壁となって生活保護申請を拒む人と非常に多く会ってきた。実際、この年末年始の困窮者向け相談会でつくろい東京ファンドがとったアンケートにもそれは現れている。
165人から回答を得たのだが、そのうち、現在生活保護を利用していない人は128人。生活保護を利用していない理由を聞いたところ、もっとも多かったのが「家族に知られるのが嫌だから」で、34.4%にも上ったのだ。20〜50代に限定すると、実に42.9%がその回答を選んだという。
また、親族に知られることがないなら生活保護を利用したいと答えた人は、39.8%。これだけ見ても、申請への大きな壁になっていることは間違いない。いわば、扶養照会は生活保護申請をさせないための「水際作戦」の機能を果たしてしまっていると言えるのだ。
それでは、そんな扶養照会をされて「わかりました。私が金銭的に援助します」と答える人はどれくらいいるのだろうか。2017年の厚労省調査によると、46万件の扶養照会のうち、金銭的な扶養がなされることになったのはわずか1.45%。ほとんど意味がないのである。このことに関しては、生活保護の現場で働いている人、働いていた人からも、「意味がない」という声が寄せられている(「扶養照会に関する体験談」より)。
「扶養照会は弊害が大きいことが明らかです。『家族に面倒をかけたくない』という思いから相談に訪れた住民が、『生活保護なんてみっともないことやめて10万円送るから帰ってきなさい』と老親に言われて涙している場面に立ち会ったことがあります。制度の末端を担いながら、はたしてこれが社会保障のあるべき姿なのかと疑問に感じました」
「面接相談で、扶養照会は住所がわからなくても、戸籍とって附票から住所探して送りますと言うと、申請を躊躇する人を何人も見ました。ケースワーカーとして扶養照会を送ると、激怒した電話をもらい二度と連絡してくるなと言われたり、長い長い手紙に相談者からどれだけ迷惑をかけられたか綴ってこられたり、反対にビリビリに破られた扶養照会用紙が返信されたりと非常にストレスでした。扶養、仕送りが実現したことは一度もありません。(中略)ストレスフルで、手間なだけの事務、なくしてほしいです」
「私たちも必要のない業務にはうんざりです。ご家族への謂われなき軋轢、決定的に絆を断ち切るかもしれない業務は本法の目的に反しています」
現場で働く人からの言葉通り、扶養照会は家族関係を壊すものでもある。
家族との関係が悪いから、音信不通でまったく関わりがないから連絡しないでほしいという人がいる一方で、関係がいいからこそ心配させたくない、生活保護への偏見が強い田舎に住む老いた親を驚かせたくない、偏見ゆえに「縁を切る」と言われるのが嫌だから知られたくない、という思いはとても理解できる。しかし、残念ながらそんな声が聞き入れられることはなかなかない。よって、家族関係を壊される人まで出ている。
「扶養照会のおかげで母と姉と連絡がとれなくなりました」
「病気のため生活保護を受けることは知らせていたし理解もされていた。でも扶養照会の封書が行ってから交流もあり仲良かった兄弟達と気まずい関係になり疎遠になった」
「扶養照会の書類の文面が非常に居丈高なもので、まるで親族を放置するならあなたも犯罪者だよ、とでも言いたげな書類になっています。それを断りもなく送られたものだから、80代の母は、震え上がって電話をかけてきましたし、子育て中の妹は、何でうちの給与証明まで貰ってこなきゃいけないの! と激怒」
「親には事前に相談してあったが、妹には言っていなかったため(連絡がいくことを知らなかった)、妹が激怒し揉めて、親兄弟との縁がほとんど切れてしまった」
扶養照会が家族の絆を断ち切ってしまったケースだが、自分の家族に置き換えても、もし役所からそのような連絡が来れば、仲が良かったとしても一気に様々な軋轢が生じるだろうことは想像に難くない。
一方、DVや虐待があったのに連絡されてしまったという信じがたい例もある。父親によるDVで15歳の時に母とともにシェルターに逃げて父親と縁を切った女性からの声だ。
「申請時、父親に扶養照会すると言われ、DVにより逃げているのでやめてほしいと伝えましたが、規則なので扶養照会しなければ申請は受けられないと言われ、仕方なく了承しました。福祉事務所からの扶養照会により、父親に居場所がバレてしまい家に何度も押しかけられました。こどもの出産手当一時金を父親の口座振込に変更され奪われたり、保護費を奪われたり、家の中の家電等も奪われました。今は転居し安心して暮らせていますが、あの時の恐怖は忘れられません。DV加害者への扶養照会は禁止にしてもらいたいと願います」
女性の恐怖は想像して余りある。この福祉事務所には猛省してもらいたい。ちなみに彼女は「扶養照会しなければ申請は受けられない」と言われているが、これはまったくの間違いだ。扶養照会しなくたって申請は受理されるべきものであるし、DVや虐待がある場合、扶養照会はしないことになっている。が、これも、厳密に禁じられているわけではない。現状の通知では、DVや虐待のある場合、「直接照会することが真に適当でない場合として取り扱って差し支えない」という文面になっており、扶養照会そのものが禁じられているわけではないのだ。
また、日本の「扶養義務」が広すぎるという問題もある。フランスやスウェーデン、イギリス、アメリカなどでは、扶養義務があるのは「夫婦」と「未成熟の子に対する父母」のみ。これが日本の場合、父母や子、祖父母、兄弟姉妹まで加えているという状態で、さすがは「自助、共助」という「家族に丸投げ」の国であると言うしかない。
そんな扶養照会に対して、見直しを求めてネット署名が始まったのが1月16日。2月7日までに3万5806人分の書類が集まり、8日、厚労省に提出されたのである。
この日、つくろい東京ファンドと生活保護問題対策全国会議によって出された要望書には、扶養照会について、「申請者が事前に承諾し、かつ、明らかに扶養義務の履行が期待できる場合に限る」という内容の通知を出すことが一番目に書かれていた。
署名提出後の話し合いでは、DVがある場合の照会は、「しなくていい」ではなく明確に禁止すること、現状で扶養照会が水際作戦に使われてしまっていることについてなどが支援団体側から話された。
ちなみに東京都の通知では、本人が固く拒んでいるときは扶養照会をしないよう書かれているという。まずはその一文が厚労省通知にもあれば現場はだいぶ変わるだろう。
また、扶養照会については厚労省の通知で定められているだけであり、この通知さえ改正すればいい話なので、そこに「申請者が事前に承諾し、かつ、明らかに扶養義務の履行が期待できる場合に限る」と入れてしまえばいいのだから簡単な話だ。それで膨大な事務手続きはなくなり、扶養照会にかかる郵便代なども削減でき(年間46万件だとそれだけでもすごい額になる)、生活保護を利用する本人も家族も嫌な思いをしなくて済むのだからいいことづくめではないだろうか。
国会でもこの問題が注目される今だからこそ、長らく多くの人を苦しめてきた扶養照会を見直してほしい。
はからずも昨年末、厚労省は「生活保護の申請は国民の権利です」と、利用を促す呼びかけを始めた。
「でもこれが解決しないと、生活保護は権利にならないんですよ」
つくろい東京ファンドの稲葉剛さんは話し合いの場でそう口にしたが、この言葉がすべてを言い表している。
ゆくゆくは、生活保護という名前を変えることも必要だろう。韓国はすでに20年前、生活保護から生活保障法に変わった。生活保護問題対策全国会議の小久保哲郎弁護士によると、フランスでは生活保護ではなく「積極的連帯所得」と名前だという。なんだそれ、カッコいいじゃないか。
コロナ禍で、多くの人が仕事を失い、収入減に喘ぐ中、最後のセーフティネットの使い勝手が良くなることはみんなの安心につながるだろう。署名(「困窮者を生活保護制度から遠ざける不要で有害な扶養照会をやめてください」)は2月下旬まで募集しているので、共感した方は、ぜひ署名してほしい。

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「部屋を貸せない」と言われたら

2021年02月10日 | コロナと家賃滞納
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210209/k10012855591000.html

新型コロナウイルスは、暮らしに欠かせない住宅に、影響を及ぼしています。
テレワークの普及で、都市部から郊外へ移る動きもあります。
その一方で、収入が減って家賃の支払いに苦労する人、より家賃の安い住宅に移ろうとしても、入居を断られてしまう人もいます。
コロナ禍で不透明ないま、誰もが直面する可能性があります。(経済部記者 長野幸代)

賃貸住宅の現場に変化が

年度の変わり目を控えたこの時期、街の不動産会社は1年で最も賃貸住宅の仲介が増えます。しかし、都内のこの店舗で、目立って増
えているのが部屋の解約です。
「地元に帰る」、「安い部屋に引っ越す」といった理由が多いということです。
家賃の支払いに困った入居者からの相談や、国が行う家賃支援の給付金の申請に関わる手続きも増えているといいます。
鵜澤代表
「家賃の支払いが難しい。給付金を申請したいが、どうすればよいかという相談が、何件も寄せられています。リーマンショックや東
日本大震災のあとも、こんなことはありませんでした」
業界団体の「日本賃貸住宅管理協会」が去年行った調査では、会員企業の48.7%が感染拡大の影響で「賃料減額請求が増えた」。
26.7%が「解約(退去)が増えた」と答えています。

急増する住まいの給付金申請

国は、仕事がなくなって収入が減少した人などに対して、家賃を給付する生活支援を行っています。「住居確保給付金」制度です。
給付額は自治体や世帯の人数によって違いますが、例えば東京23区では、単身世帯は月5万3700円、2人世帯は6万4000円が、賃貸住宅
のオーナーなどに振り込まれます。家賃を支援している間に、仕事を探し、生活を立て直してもらおうというのが制度のねらいです。
全国の支給件数は、2020年度は、去年4月から12月までの9か月間で、過去最大の11万9265件に上っています。2019年度は3972件、リー
マンショック後の2010年度でも3万7151件でした。件数を見るだけで、コロナの影響の厳しさが見えてきます。

給付金があるうちに、コロナの収束を

1月に給付金を申請した夫婦に話を聞きました。住まいは築30年余りの、およそ20平方メートルの1ルームマンションです。夫は69歳で
年金生活。妻はプロの歌手でコンサートやイベント会場、飲食店などで歌い、月に15万円ほどの収入を得ていました。しかしコロナ
で、イベントの中止が続き、妻の収入はほとんどなくなってしまいました。
今は夫の年金と貯金、それに給付金が頼りです。
年金生活の男性
「給付金は本当にありがたいです。妻は歌の仕事以外はしたことがありません。給付金が切れるまでに、とにかく感染が収束して、歌
の営業を再開できることを願っています。それまでは自粛して切り詰める毎日です」

いつか来る支給終了

給付金の支給期間は原則3か月ですが、コロナ禍の2020年度中は最長12か月まで延長されています。
しかし、去年4月に申請して受給してきた人は、仕事が見つからなかった場合でも、ことし3月分で支給は終わります。
コロナの影響で過去最高に増えた給付金の支えがなくなった時、家賃を滞納する入居者が増えるのではないかと懸念する声もありま
す。

「部屋を貸せない」をなくすには

コロナの影響で収入が減り、より安い部屋へ引っ越そうと考える人も増えています。
しかし、生活の状況が厳しいがゆえに「部屋を貸せない」と入居を断られることもあります。こうしたケースを少しでも減らしたいと
始まったサービスがあります。
住宅情報サイトを運営するライフルは、新型コロナウイルスが感染拡大した去年4月に、特設のページを設けました。
掲載するのは、部屋の間取りや駅からの距離といった物件情報ではありません。
所得の減少などで住まいに困る人たちの家探しに前向きに取り組むと、表明している不動産会社の情報です。ページを開設以降、アク
セス数は増加を続けています。

住まい探しに親身なドアを

ライフルでは、おととし11月に「FRIENDLY DOOR」というサイトを設け、年齢や収入などを理由に“入居を断られがち”な立場の人た
ちーー高齢者、シングルマザー、外国人といった人たちの、住まい探しに理解のある会社、全国の2475店の情報を載せてきました。こ
れをコロナをきっかけに拡充したのです。
プロジェクトのリーダー、キョウ・イグンさんは、サイトに込めた思いを、こう話しています。
キョウさん
「例えばパートを減らされて収入が減り、家賃の支払いが負担になる事態は、コロナ禍では誰が直面してもおかしくないと思います。
自分から望んだ事態ではないので、いろいろな立場の人をはなからお断りとせず、オーナーに丁寧に説明したり交渉したりと、間に
入って住まい探しに親身になってくれる人に出会えるドア、という思いを込めています」
キョウさんは、家賃の滞納などを心配するオーナーや不動産会社の不安を減らそうと、セミナーなども開催しています。高齢者やシン
グルマザーの住まいの支援を行うNPOの代表などを講師に招いて、受け入れの拡大につなげようとしています。
NPOやソーシャルワーカーなどとつながって、家探しを支援する仕組みを作ることができないかも模索しています。
キョウさん
「雇用情勢など、自分たちの取り組みだけではどうにもならないことも多く、はがゆく感じることもあります。しかし住まいに困る人
たちの問題を、自分のこととして考える人が増えれば、少しずつ解決につながっていくと思います。最終的な目標は、こうしたサイト
がいらなくなることです」

住まいに困らないために

取材の中で、国が進める「住宅セーフティネット制度」の強化も必要だという指摘がありました。高齢者や所得が低い人などの入居を
拒まない住宅として、オーナーが都道府県に登録すれば、改修費用などの補助を受けることができる仕組みです。増加する空き家を
セーフティーネット住宅として積極的に活用していくことが必要だという意見もありました。
誰もが住まいに困らないよう、どのような取り組みを積み重ねていくか。コロナがわたしたちに突きつけた課題だと感じます。

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住まいの貧困に取り組むネットワークが住生活基本計画(全国計画)案に対しパブリックコメント提出

2021年02月03日 | 国と東京都の住宅政策
 国の住宅政策の基本方針を定める「住生活基本計画(全国計画)」が見直しの時期に差し掛かっています。 
 現在、「住生活基本計画(全国計画)の変更(案)」へのパブリックコメントの募集が行われています。

 「住生活基本計画(全国計画)の変更(案)」に関する意見の募集について


 住まいの貧困に取り組むネットワークでは、2月1日に下記のパブリックコメントを提出いたしました。 
 パブリックコメントの募集締め切りは2月9日です。当ネットワークの意見を参考にしていただき、多くの方にパブリックコメントを出していただければと思います。 
 ご協力よろしくお願いいたします。

*********************

   住まいの貧困に取り組むネットワークが提出したパブリックコメント        

【該当箇所】

1. はじめに
2. 第1 住生活をめぐる現状と課題」
3. 目標5

【ご意見】

1. 基本的な問題点

 変更案は以下の国民の住生活にとって不可欠な課題等の記載がなく、「国民の住生活の安定の確保」を図るべき「住生活基本計画(全国計画)」(住生活基本法第15条)とはいえない基本的な問題点がある。

(1)「はじめに」および「住生活をめぐる現状と課題」には、コロナ禍のもとでの国民の住生活の困難、困窮についての記述が一切ない「現状と課題」となっていること。

(2)「国民の住生活の安定の確保」の最大の課題である「住居費負担、家賃負担」およびその軽減施策についは、変更案全体を通じて記述がなく、何のため、誰のための「住生活基本計画」かという根本問題がある。

(3)国民の住要求の第1である公営住宅について、「目標5」では「住宅セーフティネットの中心的役割を担う」としているが、公営住宅の現状と課題、中心的役割を果たしていく施策の記述も全くない「全国計画」である。

 以上の重要問題について、「変更案」を全面的に見直し記述すべきである。

 以下それぞれの項目について意見を述べる。

2.「はじめに」について

 分科会の「中間とりまとめ」では、「新型コロナウイルス感染症の感染、拡大を契機として、・・・、今後の経済情勢や雇用情勢によっては、居住の安定確保が一層求められる場面が生じる、・・」としていた。
 この当然の提起と記述からも、「新型コロナウイルス感染症の拡大」による住生活の実態について、「住居確保給付金」の支給の増大、家賃の滞納、住宅ローン返済の滞納、住居を失う人々の増加などを明記すべきである。

3.「現状と課題」について

 前記コロナ禍の住宅問題を「はじめに」と合わせ分担して記述するとともに、「住居費、家賃負担」の現状と課題を明らかにする必要がある。「全国計画」は「住宅・土地統計調査」(2018年)の結果を反映、利用することになっている。「この調査結果は、住生活基本法に基づいて作成される住生活基本計画などの諸施策の企画、立案、評価等の基礎資料として利用」することになっているが、それらの反映は全体を通じて見られない。

 特に「民営借家、公営借家、UR・公社の借家」の家賃負担の推移と現状を明記すべきである。そして、「公的借家」の戸数の推移と現状も示し、借家の課題を記述すべきである。

4.「目標5」について

 「住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティネット機能の整備」としているが、変更案は「安心して暮らせる」施策になっていない。

 第1に、前記の「公営住宅」について、新規建設と供給(借上げ、買取りを含む)、現行制度の改善など抜本的拡充・強化の施策を示す必要がある。第2に、「セーフティネット住宅の・・・家賃低廉化の推進」とあるが、殆ど機能していない状況の中で、全国的な家賃補助制度の創設を提起すべきである。

 なお、分科会(第53回)の委員の意見として、「セーフティネットの中の家賃低廉化というのは非常に大きなポイント。特に、住宅確保要配慮者において、家賃低廉化ということをどう進めるががポイントとなる」としている。
 この意見に示されるように、当面「家賃低廉化」の抜本的拡充、改善を明記し、実行すべきである。

 第3に、「住宅確保要配慮者の入居・生活支援」については、前記分科会で、「居住支援法人をどう育てるか、居住支援法人をこれからどう考えていくか、もう一歩踏み込んで・・」との委員の意見が出された。これに対する具体的な記載はない。各地の居住支援協議会と居住支援法人の役割を重視し、公的賃貸住宅入居者への居住支援を包含した活動を行っていく必要がある。そのための育成補助、各種援助策を具体化し、明記すべきである。

5.「在留外国人」の「住生活の安定の確保」について

 「住生活をめぐる現状と課題」で「在留外国人の数は約293万人となっているが・・・」などと述べているが、「目標5」で「多言語化した契約書等の普及啓発」というだけである。外国人の住生活安定確保の基本的施策を明記する必要がある。
 
【理由】 

 各項目にそれぞれ、理由を含めた意見として記述している。



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更新料支払い義務なし 旧借地法に基づき更新を請求

2021年02月02日 | 契約更新と更新料
 八王子市明神町1丁目で51坪を借地している伊藤さん(仮名)は、昨年12月に地主の土地の管理を任されていると主張する不動産コンサルタントとなるO 氏から土地賃貸借契約期間更新手続きとして、伊藤さんの土地は道路に面していない土地として更地の50%を減して、60%の借地権価格の5%の約50万円の更新料を請求されました。

 伊藤さんは昨年末組合に相談し、年明けにOコンサルタント宛に次のような更新請求通知書を提出しました。「賃貸人との間で作成した土地賃貸借契約書には、契約の更新に当たって、更新料を支払う旨の合意はなく、更新料を支払う法的義務はありません。賃借人は旧借地法第4条第1項に基づき土地賃貸借契約の更新を請求致します。なお、異議がありましたら賃借人代理人宛にご連絡をお願い致します」。

通知を出して2週間が経過しましたが、地主のコンサルタントからは組合に何らの異議も連絡もありません。本年1月1日から20年間土地賃貸借契約は法定更新されました。(多摩借組ニュースより)

更新料請求でお困りの方は

東京多摩借地借家人組合まで

電話 042(526)1094
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