東京多摩借地借家人組合

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家を借りられない…生活保護受ける「住宅弱者」の苦悩

2022年04月11日 | 貧困と格差
 https://mainichi.jp/articles/20220406/k00/00m/040/205000c

新型コロナウイルスの流行による不況で、仕事を失って家賃を払えなくなったり、会社の寮に住めなくなったりするなど、住まいを失う人たちが少なくない。そうした人たちや単身高齢者、障害者など、住宅を借りづらい「住宅弱者」は、貸す側からすると、家賃の未払いや孤独死などのリスクがあり、貸すことをちゅうちょするという。賃貸住宅を借りるのに苦労した当事者に実情を聞き、支援の在り方を考えた。【道下寛子】

コロナ禍で失業、住居探しに苦労

 東京都内の30代女性は、沖縄・石垣島のリゾートホテルで住み込みで清掃の仕事をしていたが、2020年10月、コロナ禍により仕事を失った。都内の貧困支援を行う団体を頼って東京へ。生活保護を申請して受給し、アパートを探したが、なかなか見つからなかった。団体が探してくれた物件の中から4件を見学。3件は断られ、残りの1件は当初は断られたが、家主らとの話し合いで入居できた。だが、同じアパートに暮らす家主の高齢夫婦は過去に家賃を滞納された経験があったため、家賃に対して厳しかったという。

 家主は女性が職を見つけられないことを気にして、たびたび部屋を訪ね「仕事決まったの?」「決まったら教えて」と言ってきた。家賃未払いの不安を払拭(ふっしょく)してもらうため、生活保護の住宅扶助費を福祉事務所から代理納付してもらうことにしたが、その後も、ゴミ出しのたびに「そんなに求人が厳しいの?」などと聞いてくることが約5カ月間続いた。聞かれることが苦しくなり、次第に自宅から出ないようになった。元々患っていたうつ病が悪化し、転居することにした。

「入居可能」は10件に1件

 新たなアパートを探すため、不動産仲介業者に行って物件を探してもらったが、生活保護受給者が入居可能な物件は10件に1件程度。業者の担当者には「ほとんど断られてしまいますが、落ち込まないでくださいね」と言われた。担当者が目の前で電話したが、生活保護と伝えると、すぐにやり取りが終わってしまうケースも多かった。結局、2件を見学することができ、そのうちの1件に代理納付を条件に入居できた。

 女性は「生活の基盤は家だということに気付きました。そこに安心感を得られないと、安定して仕事などで活動することは厳しいです」と話す。女性は週3日、東京に来る時に助けてくれた支援団体で事務の仕事をし、月に3回、自治体から委託された仕事をしながら、うつ病の治療をしている。「週5回働き、生活保護から抜けて、これまでお世話になった人たちに恩返ししたいです」

「事故物件しか紹介できない」

 東京都豊島区の男性(47)は自営業だったが無職となり、20年11月に都内の別の支援団体の施設に入りながら生活保護を受給し始め、アパートを探した。インターネット検索で、生活保護受給者が入居可能な物件を探した。サイト上で生活保護受給者が「入居可能」と書いてあっても、電話してみると「今はお断りしています」と言われてしまう。「入居可能」となっていることを伝えても「(前の入居者が部屋で死亡した)事故物件しか紹介できない」と返された。

 他の物件でも、サイトに家賃4万円と書いてあったが、電話すると「今はそこは借りられない。6万7000円の物件ならある」などと話され、福祉事務所に住宅扶助費が上乗せできるか聞いてほしい」と言われたという。東京都によると、車椅子を利用するなど、やむを得ない事情がある場合、住宅扶助に上乗せできる特別基準がある。だが男性は、自分の場合は該当しないと考えて諦めた。これら2件も含め、ネットでは生活保護受給者が入居可能な物件を5カ所見つけたが、全て部屋を見学できなかった。

百数十件のうち内覧可能は十数件

 その後、支援団体から、住宅弱者の家探しをするコンサルタント会社「Well-being.Tokyo」を営む柿本志信さん(51)を紹介された。柿本さんは男性の物件を探す上で、百数十件の物件について、生活保護受給者の入居が可能か連絡したが、そのうち内覧が可能だったのは十数件だったという。その中から、今のアパートに入居することができた。

 男性は「しょうがないのかな、と半分は分かっています。(家主や不動産会社からすると)面倒なことになりそうな人よりは、普通の人を取りたいのは分かります。でも、住むところが決まらないのはつらい。私は支援団体とつながっていたから良かったの…

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車上生活者の目撃相次ぐ「道の駅」…滞在しないよう指導すると「次は別の人が寝泊まり」

2021年12月02日 | 貧困と格差
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211126-OYT1T50074/

 生活に困窮して家を失い、車上生活を余儀なくされる人がいる。道の駅や量販店の駐車場などを車で転々とするため、行政による把
握が困難で、支援の手が届きづらい。新型コロナウイルスの影響で仕事や収入を失う人が相次いでおり、新規感染者数は落ち着いてい
るものの、本格的な経済の回復は遠い。今後、追い込まれる人が増える恐れがある。(藤岡一樹、北島美穂)

仕事激減

 「そのまま死んでいたかもしれない」。高松市の男性(49)は今年8月、市内の路上で車から降りた際に意識を失い、病院に運ば
れた。39度の高熱で、検査の結果、新型コロナウイルスの感染が判明した。
 男性は昨年9月から、軽乗用車で寝泊まりする生活を送っていた。もともと運転代行の仕事をしていたが、昨春以降、飲食店の営業
自粛で仕事が激減。17万円あった月収が7万円に減った。さらに、昨年5月に同居していた母親が亡くなり、母親名義の借家を退去
させられた。新居を借りる貯金はなく、車上生活をしながら仕事をするようになったという。
 未明に仕事を終えると、道の駅の駐車場に車を止め、運転席のシートを倒し、仕事着のジャンパーを毛布代わりに眠った。客商売で
清潔にする必要があり、銭湯に通い、ガソリン代もかさんで貯金はできなかった。ハローワークで寮付きの仕事を探したが、何度も不
採用になった。
 男性は20日間ほど入院した後、支援団体の助けで生活保護の受給が決まった。車は処分することにし、市内のアパートで暮らしな
がら運送関係の仕事を目指している。男性は「家がある当たり前の暮らしを取り戻せた。仕事を探し、生活を立て直したい」と話し
た。

目撃相次ぐ

 厚生労働省の調査によると、全国のホームレスの数は今年3824人で、5年前から4割近く減った。しかし、調査は自治体の職員
らによる目視のため、移動する車上生活者は数字に含まれていない可能性が高い。
 広い駐車場やトイレがある道の駅では、車上生活者とみられる人の目撃が相次いでいる。愛媛県内の道の駅の担当者は「後部座席に
大量の荷物を積み、夕方から朝まで滞在し、日中はどこかにいなくなる。滞在しないよう指導するが、しばらくすると別の人が寝泊ま
りしている」と話す。
 高知県内のある道の駅では今年7月、従業員が車上生活をする50歳代の男性を発見し、地元の社会福祉協議会(社協)に連絡。社
協の職員がおにぎりを持って男性に会いに行き、住む場所を用意した。この男性も1年前に仕事を失い、車上生活をしていたという。
 社協の担当者は「男性は何度も『恥ずかしい』と繰り返していた。もっと早く相談に来てくれれば……」と話す。

孤立

 コロナで減収した人については、家賃の一部を支給する制度がある。家を失い、新たに家を借りる場合も利用できるが、敷金や駐車
場代は対象外だ。利用期限があり、長引くコロナ禍で、受給できなくなっている人が相次いでいる。
 困窮者が無料や低額で身を寄せられる施設も各地にあるが、車を保有したまま受け入れるところは少ない。
 静岡市のNPO法人「POPOLO」は、夜間に道の駅やパチンコ店の駐車場を巡回し、2018年度以降に約40人の車上生活者
を支援した。駐車場を併設した宿泊施設も運営している。
 法人によると、車上生活者は閉じられた空間で孤立を深め、自ら行政などに助けを求められないことが多いという。鈴木和樹事務局
長は「行政が積極的に把握し、プッシュ型の支援が必要だ」と話した。

「生活保護なら車処分」誤解

 車上生活者が生活を立て直すため、「最後の手段」になるのが生活保護だ。しかし、「車を必ず処分しなければいけない」という誤
解も根強い。
 生活保護法は、受給要件として資産の処分を求め、資産にあたる車の保有は原則認められない。一方、厚労省は通知で、公共交通機
関の利用が困難な場合や障害者は、通勤や通院などに必要であれば認めている。
 各自治体の資料を読売新聞が分析したところ、全生活保護受給世帯に対する車の保有割合(2018年度)は、新潟県(3・6%)
や秋田県(3・2%)など地方で高く、大阪府や愛知県(ともに0・1%)など都市部で低い傾向にあった。しかし、青森県(0・
4%)や和歌山県(0・3%)など地方でも低い県があった。
 生活保護制度に詳しい大阪弁護士会の小久保哲郎弁護士は「生活再建のために車が必要な人はいるが、誤解から申請をあきらめてし
まう人もいる。行政は車を持ちながらでも受給できるケースがあることを周知するべきだ」と指摘する。

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現場に沿う弱者支援を コロナ禍の社会保障拡充へ集会

2021年06月11日 | 貧困と格差
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-06-09/2021060914_01_1.html

 コロナ禍で明らかになった脆弱(ぜいじゃく)な社会保障制度を市民の立場から変えようとする集会が7日、国会内で開かれまし
た。「公正な税制を求める市民連絡会」主催で、日本共産党の清水忠史衆院議員ら野党議員やオンライン参加者を含めて100人が参
加しました。
 社会的弱者の支援に関わる人たちが困窮が深まる現場を報告しました。ジャーナリストの竹信三恵子さんは女性相談会での経験を踏
まえ、支援制度が女性に届いていないことを示しました。「多くの女性は非正規雇用で労働組合もないため支援を受けられることも知
らず、弱い立場に置かれてきたため自分から発信できない」と指摘。従来の支援制度が男性向けに設計されていることも理由に挙げま
した。「ふつうに働いてきた人が明日アパートを出なければならないようなことになっている。女性に支援が届くパイプをつくらなけ
ればならない」とし、貧困女性を対象にした全国的な実態調査の必要性を強調しました。
 高等教育無償化プロジェクトFREEのメンバーは、学生の困窮に関する報道が減った昨年夏以降、学生の困窮は悪化したと指摘。
「労働者として保護されず切り捨てられた。二つのバイトを掛け持ちしなければやっていけないのに、二つとも切られた」と述べまし
た。バイデン米大統領が教育ローン返済免除の方向性を示していることに触れ、「日本もどうすればできるのか考えてほしい」と訴え
ました。
 つくろい東京ファンドの稲葉剛代表は、政府の困窮者支援制度が現金給付でなく貸し付けが中心であることを批判。反貧困ネット
ワークの瀬戸大作事務局長は入管収容施設を仮放免になった外国人が「住まいから追い出されている」と報告しました。
 同会共同代表の宇都宮健児弁護士が貧困対策と財源についての議論を提起し、野党議員は消費税引き下げや法人税の累進化などを検
討中であると説明しました。

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貧困に悩む女性を、支援する女性たち「相談会には生理用品もお花も」/手持ち500円、派遣切り。コロナ貧困の女性に伝えたい「生活保護を遠慮しないで」

2021年05月31日 | 貧困と格差
https://joshi-spa.jp/1083334

 コロナ禍で、女性の自殺率や実質失業率が上がっている今、女性同士による助けあいの輪が広がっています。
 今年2021年3月13(土)~14(日)日には、東京都・新宿区立大久保公園で「女性による女性のための相談会」が開催されました。
この相談会を実行したのは約60名にも及ぶ女性スタッフ。
 看護師、保育士、心理カウンセラー、弁護士、労働組合スタッフ、DV被害、セクシュアルマイノリティのための相談員など、専門性
を持ったスタッフが集結してテントを設置し、生活、労働、子育て、DV被害や性被害など幅広い相談を受け付けました。
 マッサージ、衣料品、食料品(野菜や果物)、生理用品、シャンプー、基礎化粧品、花などの無料支給品を配布し、キッズコーナー
も設けて子連れの女性でも気兼ねなく訪れることができる画期的な相談会として大きく注目を浴びた「女性による女性のための相談
会」。
 ツイッターでも相談者の喜びの声が多数投稿されています。この相談会の実行委員のひとりであり、長年労働問題に取り組んできた
ジャーナリストの松元千枝さんに、コロナ禍で困窮する女性についてお話を聞きました。

「女性が現れなかった」過去のコロナ相談会

――2020年の年末から2021年年始にかけて、大久保公園で行ったコロナ相談村での経験から、女性のための相談会の必要性を感じ発足
されたと聞いています。

松元千枝さん(以下、松元)「2020年の夏以降、コロナ禍でますます深刻化された貧困問題が浮き彫りになり、各地で多くの対面・電
話・LINEなどの相談会が開催されてきました。2020年11月に労働組合が行った日比谷公園での相談会は『2008年の派遣村(※)になる
のではないか』とみんなで話をしていました。私と仲間が応援に行くと、女性専用テントがひとつあったのでテントのなかで待ってい
たのですが、誰も来ないんですよ!
 私が見た限りでは全体の来場者のうち、女性はたったの2、3人。スタッフも女性に対応できるように準備していたのに。困窮してい
る女性は男性よりも多いはずなのに、女性の姿が見えない。不思議だ、とみんなで話していました」
※「年越し派遣村」…リーマンショック後の、2008年12月31日から2009年1月5日まで、派遣切りされた労働者らが年を越せるように、
日比谷公園に開設した避難所。505人の相談者のうち、女性はわずか5人だった。

女性が入りづらい雰囲気だった

――それはどうしてでしょう?

松元「開催者も来場者も男性が多い上に、冬だったので黒っぽいジャケットを着用していました。だから、外からパッと見ると、黒っ
ぽい男性ばかり大勢。女性には非常に入りづらい会場だった、と気づいたんです。
 その反省もあったので、2020年から2021年にかけて、日本労働弁護団有志と各労働組合が新宿区立大久保公園で開いた『年越し支
援・コロナ被害相談村』では、女性弁護士と女性相談員がいることを大々的に宣伝しました。すると、3日間で60名以上の女性が見え
て、来場者全体の2割を占めたんです。これをきっかけとして、女性専用テントの必要性を感じました」
たとえば“生理の貧困”は男性には話しづらい

男性に生理用品のことは相談しづらい

――それが今回3月に開かれた『女性による女性のための相談会』に繋がったわけですね。約60名もの実行委員が集まったと聞きまし
た。

松元「はい。『年越し支援・コロナ被害相談村』のスタッフだった女性およそ20人と、『やはり、男性相談員には、生理用品など女性
特有のニーズは話せないよね』、『次は女性だけでやろうよ』という話になり、最終的に60人が集まったんです。一応、みなさんに声
を掛けを始めたのは私ですが、この委員会は縦のつながりはなく、横のつながりで作られているので、代表者は置いていません。支援
団体で、こういう形は実は珍しいんです」

経済基盤がないままスタートした相談会

――「経済的基盤がないまま始めた相談会だった」と聞きました。

松元「こういう大規模な相談会をやるときは、スタッフが所属する組織を通して資金を集めたりしますが、今回の実行委員会の女性た
ちは個人としての参加でしたので、経済基盤がないままスタートしました。寄付に頼るしかなかったのですが、予想以上に寄付が集ま
り本当に感謝しています」

――今回、スタッフの皆さんはなぜ個人で参加したのでしょう?

松元「組織の規模が大きいほど、ひとつのことを決定するにも手続きに時間がかかります。今回、『組織を脱いで集まろう』と号令を
かけたわけではなかったのですが、なんとなく、みんな個人で参加してくれました。組織や肩書きにとらわれないのも、女子だからで
きたことかもしれません。実行委員の60人を含め、2日間で合計200人ものボランティアがスタッフとして参加しました」

DV夫が相談会について来ることも…

――『女性による女性のための相談会』は、公園の出入り口を1カ所の女性専用にし、相談ブースのテントは外部から中が見えないよ
うに目隠し布を取り付けたとか。

松元「60人の実行委員は日本労働弁護団の弁護士、労働組合や市民団体の活動家、女性支援グループなど個人の集まりですが、これま
で活動してきたなかで、女性が求める“安心安全な相談会”のあるべき形をずっと心のなかで温めていたように思います。活動の各現
場でも女性は少数派なので、どうしても男性視点の設定になってしまうんですよね。今回は、『相談に来る女性のプライバシーを守
り、意思を尊重する』ことを最優先し、公園の出入り口を一箇所に限定した上に、メディア取材も規制しました」

――なぜ、そこまでする必要があったのでしょう?

松元「相談者のなかにはDVから逃げている人もいます。手元やシルエットだけでも、写真や映像から個人が特定されると命の危険につ
ながることもあるので、絶対に当事者を撮影しないように努めました。なかには、相談会について来るDV夫もいると聞きます。そんな
状況では、女性は相談したいことでも相談できませんよね。今回も、男性と一緒に来た女性がいたので、DV夫かどうかは分かりません
でしたが、男性には出入り口の外で待ってもらいました」

相談に来た女性たちの事例

●70代女性
「家族からの暴力で家を出て、友人宅にいます。住むところを探しているけど、保証人がいない。緊急連絡先が身内でないとダメとい
う条件がある。その2点の条件がネックとなり、住むところが見つかりません」

●50代女性
「夫の暴力で離婚したいです。母親に相談したら、『あなたが我慢した方がいい』と言われ、20年以上我慢してきました」
→離婚の具体的な法的な手続きについて案内。

女性にしか分からない女性のニーズ

――会場にはお花も置かれていましたね。

松元「今回、私も驚いたのは、『相談会にはお花があるといいよね』と言う声が上がったことです。男性主導の相談会では、まずそん
な声は出て来ません。
 それに、支給する物にも、生理用品を含め女性ならではの目線が活かされていたと思います。例えば、男性主導だと、調理できない
インスタント食品を支給しがち。ネットカフェや路上で生活している人たちには、こうした物かすぐに食べられる物が必要ですが、女
性相談者には子どもや家族がいる人も多く、栄養のことも考えているだろうから、生野菜や自分で料理できる食品がいいと話し合いま
した」

野菜や果物の配布にも嬉しい一工夫

――自分で好きな野菜や果物を選べるのがいいなと思いました。

松元「私たちがまとめて渡すのではなく、八百屋さんで自分が選びながら持って行けるようなお店、もしくは小さなマルシェみたいな
雰囲気にしました。幸いなことに、農民運動全国連合会の女性農家さんたちが全国から白米、野菜、お花などを2日間ではさばけない
ほどたくさん送って下さったんです。
 しかも、『5キロの重さの白米は重すぎて持ち帰るのが大変だろう』と2合ぐらいずつに小分けにして送って下さった! そういう心
遣いは本当に嬉しかったです」
就活に必要な基礎化粧品や白シャツも用意

――洋服やバッグなどの寄付もあったとか。

松元「相談者の女性たちは、仕事がないことによる生活の困窮に苦しんでいます。長期化するコロナ禍で、仕事をクビになったり、雇
い止めに遭ったりしている人が多い。いざ就職しようにも、就活には身だしなみが必要です。そういうわけで、基礎化粧品、ストッキ
ング、就職活動用の白シャツ、PCが入る通勤用のバッグ、パンツ、マスクなどを企業から寄付してもらいました」

――確かに女性ならではの視点ですね。2日間で125件の相談があったと聞きましたが、どのような年齢層の女性たちが困窮しているの
でしょうか?

松元「年齢を言わない、年齢をこちらから聞かない場合もあるので100%正確ではないかもしれませんが、手元にあるデータ上では40~
50代の女性が多かったです。コロナ禍で打撃を受けた飲食業などのサービス業に従事していた女性たちが雇用から押し出されて、日雇
いの職に就いたというケースも多いのではと思います」

●相談に来た30代・シングルマザーの事例

「2020年秋にコロナの影響により会社都合で退職させられました。子供の食費や制服にお金がかかるし、失業給付もそろそろ切れそ
う。公的制度や支援団体の情報を教えてほしいです」
→住居確保給付、緊急小口資金の制度や、支援団体を紹介。緊急小口資金は借金をすることになり返せないから使えないと思っていた
が、住民税非課税世帯は免除などがあることを知り、自治体の窓口に行くことになりました。

来月の家賃が払えない

――女性が就く日雇いの仕事とはどんなものでしょう?

松元「男性の場合は製造業系や現場系の日雇いが多いようですが、女性の場合はイベント系が多いですね。イベントの給仕係や準備
係。その他、コールセンターや在宅でできるラベル貼りなど。イベントは1回につき数時間の就業なので、1日8時間労働だったとして
も最低賃金(東京都)であれば8,000円ほどの収入にしかなりません。
 そういう人は複数の派遣会社に登録しているので、どこかの派遣会社から仕事が入るかもしれないと毎日自宅で待機しているんです
よ。そして気がついたら、1ヶ月まるで仕事がなく、来月の家賃が払えないという状態に陥ってしまう現状があります」

※後編は「ジェンダー規範で区別された求人」「小池都知事との面会」「ハードルの高い生活保護受給」の話へ続きます。

【取材協力】
松元千枝(まつもと・ちえ)
「女性による女性のための相談会」実行委員、ジャーナリスト、メディア協同組合「Unfiltered(アンフィルター)」エディター、法
政大学法学部メディア分析非常勤講師、東京大学大学院情報学環学術支援員。英字記者、海外通信社の東京特派員を経て独立。共著に
『マスコミ・セクハラ白書』(文藝春秋 2020年)、共同翻訳には『世界を動かす変革の力 ブラック・ライブズ・マター共同代表か
らのメッセージ』(明石書店 2020年)、『ストする中国』(彩流社 2018年)がある。

<取材・文/此花わか>

手持ち500円、派遣切り。コロナ貧困の女性に伝えたい「生活保護を遠慮しないで」
https://joshi-spa.jp/1083335/

 コロナ禍で女性の自殺率や実質失業率の上昇が取りざたされるなか、今年2021年、3月13(土)~14(日)日に東京都・新宿区立大
久保公園で「女性による女性のための相談会」が開催されました。スタッフは全員女性、相談者は様々な悩みを抱えた女性たち。
 衣料品、食料品、生理用品、花などの無料支給品を配布。女性ならではの目線が活かされた相談会に注目が集まりました。
 「コロナで派遣契約が終了。数年働いた職場だったのでショックでした」と話す女性は、仕事が見つからず、この日の所持金は数千
円。「家族内のトラブルで家を追い出され、ネットカフェで寝泊まりしています。生活保護を受けてアパート暮らしをしたいです」と
相談に来た女性もいました。
 前回に引き続き、この相談会の実行委員のひとりであり、長年労働問題に取り組んできたジャーナリストの松元千枝さんに、コロナ
禍で困窮する女性について話を聞きました。

生活保護受給のハードルを高くしてきた役所の水際作戦

――相談者が生活保護を受けられるように、役所へ付き添いもされたとか。

松元千枝さん(以下、松元)「生活保護を受給させないようにしてきた役所の水際作戦のせいで、男性も女性も生活保護を受けること
が“悪”だと刷り込まれています。手持ちが500円しかなくても、皆さん『もうちょっと頑張ってみます』と言うんですよ。そんなと
きは『仕事が見つかって、給料が入れば生活保護を打ち切ればよいだけなのだから受けても大丈夫。生活保護は、憲法で守られた私た
ちの権利なんですよ』と説明しています」

――困窮していても生活保護を受けたくない人も多いと聞いています。

松元「このコロナ禍で初めて厚生労働省が『生活保護は国民の権利だ』という広告を打ち出して、やっと社会の意識が変わってきまし
たが、役所にひとりで行き、生活保護の担当者に聞かれるままに質問に答えていったら、申請できなかったという話はよく聞きます。
 生活保護を申請すると14日以内に支給の可否が決まるはずなのに、『1ヶ月ぐらい施設に入って、そこで観察を受けてから可否が決
まる』と周りの人から聞いたと言って、そのように思い込んでいる女性もいました。実際、実行委員のひとりがその女性に付き添って
役所へ行き、申請をしたら1週間以内に支給が決まりました」

とにかく申請することが大切

――でも、実際に現金が500円しか残っていなくて、1週間や2週間も待てない人はどうすればよいのでしょうか?

松元「生活保護の申請をした後は、可否が決まる間、食費として1日1,000円が支給されます。それに加えて、ネットカフェやホテルに
滞在している人には宿泊料が支給されたり(保護の受給が決まると、その月の保護費から差し引かれる)、無料低額宿泊所や施設など
に入居することもできます。
 ネットには間違った情報が氾濫しているので、まずは行政のホームページを読み、相談会や支援団体に同行支援をお願いしたほうが
よいでしょう。生活保護申請書も現在は民間のNPOのホームページからダウンロードして、記入したものを役所に持参することができ
ます。役所は申請自体を断ることはできません。申請時には面接もありますが、とにかく申請すれば審査手続きは進むので、申請する
ことが大切です。数年前まで、役所では申請書が市民の手が届かない、職員のカウンターの奥にに置かれていたぐらいですから……」

自分のことは後回しにしてしまう女性が多い

――役所は意図的に申請書を提出させないようにしていた、と?

松元「昔は申請に行くと、面接されて申請書を簡単に提出させてはくれなかったんですよ。いまでもまだこういった傾向があって、時
としてニュースにもなりますが大分改善されました。とはいえ、今回女性の相談会を始めた一番の目的は、『(女性も)相談してもよ
いんだよ』と女性に発信したかったから。女性は常に社会で『お世話をする役目』を担わされています。相談会に来ても、自分の夫や
親や子どものことについて相談はしても、自分のことは後回しという女性が多いです」

相談者の女性のほとんどが暴力の被害者……

――今回の相談会で松元さんが発見したことは何だったのでしょう?

相談者の女性の殆どが暴力の被害者……
「女性による女性のための相談会」では会場の出入り口を1カ所に限定し、外部から見えないように目隠し布を取り付けプライバシー
を確保。付き添いの男性は外で待ってもらいました。

松元「来場した女性たちの多くが、何かしらの暴力をこれまで受けてきたことです。虐待、セクハラ、性被害、DV、パワハラ…幼い頃
から大人になるまでに、人生のどこかの時点で暴力を受けています。痴漢が原因で男性と一緒に仕事ができなくなり、就ける仕事が限
定された女性もいました。

 会場には『生活』、『仕事』、『法律』、『家庭と家族』、『心と体』などの相談ブースを設置していましたが、『法律』や『仕
事』の相談ブースに来た方の話を聞くと、夫によるDVを受けて精神を病んでしまっていて、『心と体』の相談ブースにも立ち寄るな
ど、複数の相談を利用された女性が多かったです。とにかく、相談者のほぼ全員が暴力を受けていたんです。これは男性の相談会では
ありえません」

性別で区別される研修・就職支援

――生活保護を受けながら生活を立て直すために、どのような公的支援があるのですか?

松元「コロナ禍で設置された『TOKYOチャレンジネット』という、行政による研修・就職支援があり、『年越し・コロナ被害相談村』
ではそこに 女性を繋げていったのですが、ひとつ問題がありました。そこで提供される支援が性別で区別されているんです。
 男性には警備、建設、フォークリフトの運転免許が取れる研修がありますが、女性は介護職を勧められました。私も今回初めて知っ
たのですが、暴力を受けたことのある女性は、他人と近距離になる介護職に就けないと言っていました。虐待やDVの被害者の多くに
とって、介護職は恐怖と苦痛でしかないんですよね。必ずしもそうとは限らないのに、女性は“誰かのお世話”をするのが上手だと思
われている。フォークリフトの運転は女性でもできますが、ITや簿記など、他にも女性が働きたいと思えるような選択肢を広げてほし
い。そういった提言も行政にしていきたいと思っています」

小池都知事との面会で言われたこととは?

――松元さんと実行委員会は、相談会開催の2週間ほど前に小池都知事と面会をされたようですが、どんなお話をされたのでしょう
か?

松元「介護職以外にも研修や就職先を広げてほしいとお話したら、『介護職は人員不足だから』と。そして、『コロナ禍で感染防止の
ために一生懸命努めていますのでご協力をお願いします』と言われました。相談会にもお誘いしたのですが、残念ながらお見えになら
なかったです」

――今年3月23日の閣議で決定された、新型コロナウイルスに関連する政府の支援策のひとつに、地域で女性支援を行う団体に最大
1,125万円を自治体を通じて支給するため、13億5,000万円が計上されました。これについてどう思いますか? 

松元「これまで女性支援をしてきた団体には非常に喜ばしいニュースですが、民間に予算を出すよりも、行政でできるところは行政が
きちんとするべきだと思っています。応急処置的な制度も必要ですが、女性の貧困の根底に眠る、女性の雇用や暴力について行政にで
きることがもっとあるはずです」

あまりにも根深い、男女の格差

――なぜ根本的な解決に行政は取り掛からないのでしょうか?

松元「福祉の分野でも民間団体や業者に事業の一部を委託しているように、ノウハウがある民間に任せた方が適切だと思っていたり、
行政も人手不足だという問題があります。行政は福祉政策の人員も予算もカットしてきました。その結果が、現在、コロナ禍で福祉に
繋がっていない困窮者が増えている理由のひとつだと言われています。
 男女格差、非正規問題、マイノリティ差別は一刻も早く改善される必要があります。とりわけ、男女格差は賃金・収入格差にはっき
りと現れていますから。
 もともと正社員でも女性は、結婚して子どもを産むと仕事を辞めざるを得なくなる人も多い。日本の育休制度は世界と比べても悪く
はないのに、男性の取得率が低いですよね。男性だって本当はとりたいのに、企業文化がそれを許さない。そういったジェンダー規範
から見直していく必要があります。
 そもそも、採用時に性別によって総合職と一般職に分けたり、就職に年齢制限を設けるなど、日本の社会には女性の選択肢が少な
い。女性政治家が少なく、政策自体に女性目線が欠けていることも問題ですね。そして、あるべき姿の社会を報道するメディア側にも
意思決定の場に女性が少ない、という点も問題だと思っています」

わずかな貯金で、何も支援を受けられない女性も

――今回の相談会で、松元さんが衝撃を受けた事例はありますか?

松元「コロナ禍が継続して福祉制度の狭間にいる女性が存在していることです。
 ある女性は、DVが原因で離婚をしましたが、離婚時の財産分与で少しの貯金と手に職もありました。けれども、コロナ禍になって失
業し、登録型の日雇い派遣の仕事をしていましたが、それもなくなりました。
 DVで精神を病んでいるので、障がい者年金をもらってはいますが、それは家賃に消えていく。家賃以外の食費や光熱費、あと月5万
円ほど稼ぐことが彼女の課題になっていました。貯金も100万円を切っていましたが、預貯金は世帯の最低生活費の半分以上あると生
活保護は申請できないんです。
 結局、家賃を削るしかないという結論にいたりましたが、ご本人もすでに都営住宅などの抽選に何度も応募されているんですが当た
らず。相談員の私たちもどうすればよいかわららなくて、一緒に頭を抱えました。会場にある支給品をできるだけ持って帰ってもらう
しかないかと想っていたんですが、ご本人は『こんなに親切にしてもらったのは初めて』だと言って喜んでいました。
 コロナ禍が長期化しているせいで、あらゆる制度を利用しても困窮状態から抜け出せなかったり、生活保護を受けられない女性もい
るんです」

「あなたの責任ではない」と知ってほしい

――活動家ではない私たちが女性の貧困を改善するために、何ができると思いますか?

松元「一番重要なのは、意識改革だと思います。簡単なことではないですが、生活困窮している人には『自分たちのせいでこうなった
わけではない』と意識してほしいし、彼女たちの責任を追及する人にも立ち止まって考えてほしいです。暴力を受けたのも、貧困に
陥ったのも、すべてが自分の責任ではないことを自覚して、誰かに相談して支援を求めてほしいです。これは誰に対しても言えること
です。
 私たちは何でも自己責任だと思わされているし、そういう考えに慣らされてしまっている。もし、なんでも自分の責任だと信じる
と、他者への眼差しも厳しくなってしまいがちですよね。そのため、社会に問題提起をしなければいけないときに、声がひとつになり
づらい。
 自己責任ではなく、国が社会をよりよくし市民の命と生活を守るために、政策を変えていかなくてはならないのだ、という方向へ意
識を向けることが必要です。私たちは、憲法25条で基本的生活を保障されているのだから、国には私たちの生活を保護する義務がある
ことを皆さんに認識してほしい」

コロナ以前の世界に戻してはいけない

――コロナ収束後、困窮する女性たちをとりまく環境はどのようになると予測しますか?

松元「コロナ以前の世界に戻してはいけないと思っています。男女格差や非正規問題、マイノリティ差別のあった世の中に戻してはい
けない。これまで、声も上げることができない被差別コミュニティもありました。困窮していない、特権を享受している人々が取り残
されたコミュニティと一緒に声を上げるべきなんです。今がまさに、社会のあり方を変えていく機会ではないでしょうか。政治に訴え
るだけではなく、私たちひとりひとりが意識を変えていってこそ、社会に変革を起こせると信じています」

【取材協力】
松元千枝(まつもと・ちえ)
「女性による女性のための相談会」実行委員、ジャーナリスト、メディア協同組合「Unfiltered(アンフィルター)」エディター、法
政大学法学部メディア分析非常勤講師、東京大学大学院情報学環学術支援員。英字記者、海外通信社の東京特派員を経て独立。共著に
『マスコミ・セクハラ白書』(文藝春秋 2020年)、共同翻訳には『世界を動かす変革の力 ブラック・ライブズ・マター共同代表か
らのメッセージ』(明石書店 2020年)、『ストする中国』(彩流社 2018年)がある。

<取材・文/此花わか>

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「扶養照会」が壊す家族の絆〜最後のセーフティネットが「権利」になるために

2021年02月12日 | 貧困と格差
扶養照会が生活保護の申請への大きな壁になっていることは間違いない。いわば、扶養照会は生活保護申請をさせないための「水際作戦」の機能を果たしてしまっていると言えるのだ。
雨宮処凛作家・活動家
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60238879c5b6d78d444ae7b4

「私が鬱で退職療養中に、25年間音信不通だった父の扶養照会を、数年間にわたり毎年受けました。DVや貧困など不幸なかつての家族生活を思い出し、照会があるたびに精神状態が不安定になりました。同時に親の面倒を見れない自分の経済状況に罪悪感と、恐怖と不安で落ち込みました。照会があったことは母にはもちろん話していませんし、誰にも相談できず返事もできませんでした。生活保護を受ける父も照会はつらかったと思いますし、それを知って助けられずに逃げていた私もつらかったです。将来、こんな思いをする子供が出てきてほしくないです」
この言葉は、「つくろい東京ファンド」が募集した「扶養照会に関する体験談」に寄せられたものである。
扶養照会とは、ある人が生活保護を申請した時に、役所からその親や子ども、兄弟に「金銭的に面倒をみられませんか?」と連絡がいくこと。貧困問題に関わって15年になるが、どんなに困窮しても「家族に連絡がいくのだけは避けたい」「今の状況を知られたくない」と、扶養照会が壁となって生活保護申請を拒む人と非常に多く会ってきた。実際、この年末年始の困窮者向け相談会でつくろい東京ファンドがとったアンケートにもそれは現れている。
165人から回答を得たのだが、そのうち、現在生活保護を利用していない人は128人。生活保護を利用していない理由を聞いたところ、もっとも多かったのが「家族に知られるのが嫌だから」で、34.4%にも上ったのだ。20〜50代に限定すると、実に42.9%がその回答を選んだという。
また、親族に知られることがないなら生活保護を利用したいと答えた人は、39.8%。これだけ見ても、申請への大きな壁になっていることは間違いない。いわば、扶養照会は生活保護申請をさせないための「水際作戦」の機能を果たしてしまっていると言えるのだ。
それでは、そんな扶養照会をされて「わかりました。私が金銭的に援助します」と答える人はどれくらいいるのだろうか。2017年の厚労省調査によると、46万件の扶養照会のうち、金銭的な扶養がなされることになったのはわずか1.45%。ほとんど意味がないのである。このことに関しては、生活保護の現場で働いている人、働いていた人からも、「意味がない」という声が寄せられている(「扶養照会に関する体験談」より)。
「扶養照会は弊害が大きいことが明らかです。『家族に面倒をかけたくない』という思いから相談に訪れた住民が、『生活保護なんてみっともないことやめて10万円送るから帰ってきなさい』と老親に言われて涙している場面に立ち会ったことがあります。制度の末端を担いながら、はたしてこれが社会保障のあるべき姿なのかと疑問に感じました」
「面接相談で、扶養照会は住所がわからなくても、戸籍とって附票から住所探して送りますと言うと、申請を躊躇する人を何人も見ました。ケースワーカーとして扶養照会を送ると、激怒した電話をもらい二度と連絡してくるなと言われたり、長い長い手紙に相談者からどれだけ迷惑をかけられたか綴ってこられたり、反対にビリビリに破られた扶養照会用紙が返信されたりと非常にストレスでした。扶養、仕送りが実現したことは一度もありません。(中略)ストレスフルで、手間なだけの事務、なくしてほしいです」
「私たちも必要のない業務にはうんざりです。ご家族への謂われなき軋轢、決定的に絆を断ち切るかもしれない業務は本法の目的に反しています」
現場で働く人からの言葉通り、扶養照会は家族関係を壊すものでもある。
家族との関係が悪いから、音信不通でまったく関わりがないから連絡しないでほしいという人がいる一方で、関係がいいからこそ心配させたくない、生活保護への偏見が強い田舎に住む老いた親を驚かせたくない、偏見ゆえに「縁を切る」と言われるのが嫌だから知られたくない、という思いはとても理解できる。しかし、残念ながらそんな声が聞き入れられることはなかなかない。よって、家族関係を壊される人まで出ている。
「扶養照会のおかげで母と姉と連絡がとれなくなりました」
「病気のため生活保護を受けることは知らせていたし理解もされていた。でも扶養照会の封書が行ってから交流もあり仲良かった兄弟達と気まずい関係になり疎遠になった」
「扶養照会の書類の文面が非常に居丈高なもので、まるで親族を放置するならあなたも犯罪者だよ、とでも言いたげな書類になっています。それを断りもなく送られたものだから、80代の母は、震え上がって電話をかけてきましたし、子育て中の妹は、何でうちの給与証明まで貰ってこなきゃいけないの! と激怒」
「親には事前に相談してあったが、妹には言っていなかったため(連絡がいくことを知らなかった)、妹が激怒し揉めて、親兄弟との縁がほとんど切れてしまった」
扶養照会が家族の絆を断ち切ってしまったケースだが、自分の家族に置き換えても、もし役所からそのような連絡が来れば、仲が良かったとしても一気に様々な軋轢が生じるだろうことは想像に難くない。
一方、DVや虐待があったのに連絡されてしまったという信じがたい例もある。父親によるDVで15歳の時に母とともにシェルターに逃げて父親と縁を切った女性からの声だ。
「申請時、父親に扶養照会すると言われ、DVにより逃げているのでやめてほしいと伝えましたが、規則なので扶養照会しなければ申請は受けられないと言われ、仕方なく了承しました。福祉事務所からの扶養照会により、父親に居場所がバレてしまい家に何度も押しかけられました。こどもの出産手当一時金を父親の口座振込に変更され奪われたり、保護費を奪われたり、家の中の家電等も奪われました。今は転居し安心して暮らせていますが、あの時の恐怖は忘れられません。DV加害者への扶養照会は禁止にしてもらいたいと願います」
女性の恐怖は想像して余りある。この福祉事務所には猛省してもらいたい。ちなみに彼女は「扶養照会しなければ申請は受けられない」と言われているが、これはまったくの間違いだ。扶養照会しなくたって申請は受理されるべきものであるし、DVや虐待がある場合、扶養照会はしないことになっている。が、これも、厳密に禁じられているわけではない。現状の通知では、DVや虐待のある場合、「直接照会することが真に適当でない場合として取り扱って差し支えない」という文面になっており、扶養照会そのものが禁じられているわけではないのだ。
また、日本の「扶養義務」が広すぎるという問題もある。フランスやスウェーデン、イギリス、アメリカなどでは、扶養義務があるのは「夫婦」と「未成熟の子に対する父母」のみ。これが日本の場合、父母や子、祖父母、兄弟姉妹まで加えているという状態で、さすがは「自助、共助」という「家族に丸投げ」の国であると言うしかない。
そんな扶養照会に対して、見直しを求めてネット署名が始まったのが1月16日。2月7日までに3万5806人分の書類が集まり、8日、厚労省に提出されたのである。
この日、つくろい東京ファンドと生活保護問題対策全国会議によって出された要望書には、扶養照会について、「申請者が事前に承諾し、かつ、明らかに扶養義務の履行が期待できる場合に限る」という内容の通知を出すことが一番目に書かれていた。
署名提出後の話し合いでは、DVがある場合の照会は、「しなくていい」ではなく明確に禁止すること、現状で扶養照会が水際作戦に使われてしまっていることについてなどが支援団体側から話された。
ちなみに東京都の通知では、本人が固く拒んでいるときは扶養照会をしないよう書かれているという。まずはその一文が厚労省通知にもあれば現場はだいぶ変わるだろう。
また、扶養照会については厚労省の通知で定められているだけであり、この通知さえ改正すればいい話なので、そこに「申請者が事前に承諾し、かつ、明らかに扶養義務の履行が期待できる場合に限る」と入れてしまえばいいのだから簡単な話だ。それで膨大な事務手続きはなくなり、扶養照会にかかる郵便代なども削減でき(年間46万件だとそれだけでもすごい額になる)、生活保護を利用する本人も家族も嫌な思いをしなくて済むのだからいいことづくめではないだろうか。
国会でもこの問題が注目される今だからこそ、長らく多くの人を苦しめてきた扶養照会を見直してほしい。
はからずも昨年末、厚労省は「生活保護の申請は国民の権利です」と、利用を促す呼びかけを始めた。
「でもこれが解決しないと、生活保護は権利にならないんですよ」
つくろい東京ファンドの稲葉剛さんは話し合いの場でそう口にしたが、この言葉がすべてを言い表している。
ゆくゆくは、生活保護という名前を変えることも必要だろう。韓国はすでに20年前、生活保護から生活保障法に変わった。生活保護問題対策全国会議の小久保哲郎弁護士によると、フランスでは生活保護ではなく「積極的連帯所得」と名前だという。なんだそれ、カッコいいじゃないか。
コロナ禍で、多くの人が仕事を失い、収入減に喘ぐ中、最後のセーフティネットの使い勝手が良くなることはみんなの安心につながるだろう。署名(「困窮者を生活保護制度から遠ざける不要で有害な扶養照会をやめてください」)は2月下旬まで募集しているので、共感した方は、ぜひ署名してほしい。

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あさがお不動産、生活弱者を中心に70戸満室

2020年08月12日 | 貧困と格差
https://www.zenchin.com/news/70-10.php

 賃貸仲介・管理を行うあさがお不動産(東京都豊島区)では、母子家庭や生活保護受給者などの生活弱者の客付けに熱心に取り組んで
いることに共感するオーナーからの管理受託が相次いでいる。足元の3カ月で管理物件は45件から70件まで増え満室中だ。

客の容体を把握しトラブル防ぐ

 宇山大紀社長は、生活弱者の客付けに力を入れている理由について、「生活弱者はオーナーや管理会社から入居を断られるケースが
少なくない。こうした人たちの部屋探しをサポートしたかった」と話す。こうした宇山社長の思いに共感して、所有する物件の管理を
任せたいと申し出るオーナーが徐々に現れ始めた。客付けした物件の管理会社と競合しないように配慮しつつ、物件の管理受託を増や
している。
 同社では、かつてアルコール依存症の入居者が入居初日に酔っぱらった勢いで壁を破壊してしまい、隣人に迷惑をかけたことがあっ
た。他にも、幼少期に親から受けた虐待でPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていた30代女性が、内見時に押し入れを目にした途
端、突然「お母さん」と発し、その場で立ち尽くすこともあった。
 こうした経験を教訓にし、日常生活に支障が出うる可能性がある場合は事前に管理会社に伝えることで、トラブルを防ぐことがで
き、同業者からの信頼を獲得している。
 宇山大紀社長は、「設立から約10年が経ち、都内各地の管理会社とのパイプが太くなった。生活弱者が希望するエリアをスムーズに
案内できる体制を築くことができている」と語る。

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コロナ感染再拡大「生活困窮者の相談が増えた」

2020年08月06日 | 貧困と格差
https://www.nikkansports.com/general/news/202007310000596.html

新型コロナウイルス感染の再拡大を巡り、弁護士や支援者がつくるグループが31日、東京都内で記者会見し「ここ2週間で生活困窮者
の相談が増えた」と訴えた。

一律10万円の特別定額給付金や貯蓄を生活費に充てていたが底を突いたり、勤務先の飲食店や接客業の客が再び減って収入が激減した
りした人が多い。

住まいの支援をしている「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事は、緊急事態宣言が解除されて仕事を再開したものの、感染再拡
大の影響でまた働けなくなった事例も出ていると説明。「8月以降、生活保護の申請が増えるのではないか」と指摘した。

グループは8月8日に「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る なんでも電話相談会」を開く。4月と6月に続き、今回で3回
目。これまで6000件以上の相談を受けた。午前10時から午後10時まで、無料で利用できる。番号は(0120)157930。(共同)

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稲葉剛さん「コロナで貧困拡大、リーマン以上」 「つくろい東京ファンド」代表に聞く

2020年06月09日 | 貧困と格差
https://www.tokyo-np.co.jp/article/34074

 新型コロナウイルス感染拡大で、雇用情勢が大きく悪化している。空き家、空き室活用による低所得者支援を行う一般社団法人「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事は本紙のインタビューで「貧困拡大のスピードが速く、政府の経済対策が追いつくかは疑問だ」と警鐘を鳴らした。失業などで収入が減った場合に家賃を補助する住居確保給付金の拡充や、生活保護を利用しやすくするための対策が急務だと指摘した。
 政府は感染拡大対策として、全ての国民に一律十万円の特別定額給付金を支給するが、稲葉氏は「諸外国に比べて少なすぎる。三カ月くらい連続で出すべきだ」と求めた。
 二〇〇八年のリーマン・ショックの際は、派遣切りに遭った労働者らに食事や宿泊場所を提供する「年越し派遣村」が東京・日比谷公園に設けられた。稲葉氏は当時と現在を比較し「貧困の拡大のスピードも規模もはるかに上回っている。先の見通しが立たないという恐怖を感じる」と話した。 (編集委員・上坂修子)

稲葉剛さん「福祉の崩壊始まっている」 インタビュー一問一答
https://www.tokyo-np.co.jp/article/34072

 新型コロナウイルス感染拡大が景気、雇用に与える影響は二〇〇八年のリーマン・ショック当時を上回るのか。同年十二月末から〇九年一月にかけて東京・日比谷公園内に設けられた「年越し派遣村」など、生活困窮者支援に長年取り組んできた一般社団法人「つくろい東京ファンド」の稲葉剛代表理事に、現状や見通しを聞いた。 (編集委員・上坂修子)

 −新型コロナの感染収束が見通せない。

 「三月ごろから、家賃が払えないという話が出てきた。最初に観光業や飲食業、文化・芸術関係の自営業やフリーランスの収入が激減した。四月に緊急事態宣言が出されてネットカフェにいた人が居場所を失い、『つくろい』には百七十件のメール相談が寄せられた。今は製造業で派遣切りが始まっている。貧困拡大のスピードも規模も、当時をはるかに上回っている」

 −四月の完全失業率は二カ月連続で悪化。三月の生活保護申請件数は前年同月比7・4%増だった。

 「生活保護申請者が増えているのに、自治体は総務省から感染対策で窓口に出る職員を削減しろと言われており、職員が少ないところに多くの人が訪れている。(窓口で申請を拒む)『水際作戦』が平常時より悪化している印象だ。福祉崩壊が始まっている」

 −生活保護を受けやすくするにはどうすべきか。

 「この間、生活保護のオンライン申請の導入を訴えているが、厚生労働省は消極的だ。ドイツは生活保護の受給要件を緩和し、担当閣僚が動画で『困っていたら制度をどんどん使ってください』と広報している。日本もやるべきだ。最後のセーフティーネットである生活保護をフル活用するしか手はない」

 −急ぐべき施策は何だと考えるか。

 「『ハウジング・ファースト(住まい優先)』だ。住まいを失わないための支援強化と、失った人への住宅支援の両方が重要だ」

 −政府は経済的に困窮した人の家賃を補助する「住居確保給付金」の支給要件を一部緩和した。

 「支給される家賃の上限は東京二十三区だと二人世帯で月六万四千円。中所得者層でも家賃を滞納せざるを得ない状況になりつつあるのだから、期間を限定して支給上限を撤廃すべきではないか。民間の賃貸住宅を行政が借り上げる『みなし仮設方式』による住宅の現物給付も必要だ」

 −特別定額給付金は一律十万円支給になった。

 「良かったが、他国に比べて少なすぎる。三カ月くらい連続して出すべきだろう。休業補償の拡充も、貧困拡大のスピードに追いつくことができるか疑問だ」

<いなば・つよし> 1969年、広島市生まれ。東京大卒。在学中から平和運動、外国人労働者支援活動に関わる。2014年までNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」理事長。立教大客員教授(居住福祉論)。

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家主が隣の代替建物を修繕して、従前と全く同じ条件で生涯賃貸で貸すと約束させ転居

2020年05月21日 | 貧困と格差
 大田区鵜の木に居住する小林さん(仮名)は不動産業者より、居住する建物を買い取ったと通告とともに明渡しも求められた。息子の勧めで組合への加入が幸いした。明渡しには応じられないと伝えるとともに、今後の交渉は組合を介することを申し出た。

 業者は他の借家人にも明渡して頂いており、小林さんが明渡せば宅地の有効利用ができるという。移転費用は補償するというが、高齢の小林さんは引越しは困難と返答した。業者は近隣には代替え物件が探せないので、組合に協力を求められた。住み慣れたこの土地が良いことは当然のことであり、隣の空家の修繕工事を行うことで小林さんを説得ができると伝える。建築業者でもある不動産業者の行った工事で、建物は広くなり風呂も設置された。家賃も値上げせずに、従前と同一の金額で小林さん夫妻は生涯住み続けられることになった。
(東京借地借家人新聞より)
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全国ひとり親居住支援機構、入居するシングルマザーの孤立を防ぐ

2020年05月21日 | 貧困と格差
https://www.zenchin.com/news/post-5103.php

 NPO法人全国ひとり親居住支援機構(神奈川県横浜市)は、15日、同NPOの会員事業者が運営する母子シェアハウス入居者向けに『心の電話相談室』を開設した。

無料で保健師に電話相談

 月に2回、21~23時の間に保健師が電話で無料相談を受ける。入居者の精神的支援や孤立化の防止が目的だ。シェアハウスという住
まいだからこその対人関係の悩みから、たわいない会話、今回のコロナ禍で減収し家賃支払いが厳しいといった相談にも乗る。
 行政にも電話相談窓口はあるが、「入居するシェアハウスに付帯しているサービスと入居者が感じることで、相談へのハードルを下
げることが狙い」と同NPOの秋山怜史代表理事は話す。

 対応する保健師は病院などで勤務する現役の保健師で、女性やシングル世帯への支援経験がある人だという。住居自体への相談や
「住居確保給付金」などの支援制度については、保健師が電話を受けている間に相談者に確認の上、秋山代表理事にチャットで確認し
回答する。

 同NPOでは、同サービスに先駆けて入居者と会員企業を対象に、NPOの顧問弁護士による電話相談を行っている。離婚相談や事業者と入居者間のトラブルなどの相談などに応じ、初回の電話相談が無料となっている。

 同NPOの会員企業が運営する母子シェアハウスの入居者のうち半数以上が非正規雇用のため、新型コロナウイルスの影響により「家
賃支払いが厳しい、収入減による不安への相談があるだろう」(秋山代表理事)と見込んでいる。

 同NPOは2019年7月に設立し、11日現在で会員企業数は19事業者。運営する母子シェアハウスは19棟105室。

NPO法人全国ひとり親居住支援機構
神奈川県横浜市
秋山怜史代表理事(38)
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組合の業務 5月1日から5月6日まで休業します

2020年04月30日 | 貧困と格差
 新型コロナ感染拡大に伴い、5月1日から5月6日まで組合の業務は休業します。ご相談やお問い合わせは5月7日以降ご連絡ください。
  なお、5月23日に府中市で予定していました「借地借家問題市民セミナー」は中止致します。

電話 042(526)1094
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《新型コロナ》雇用縮小、宿泊先が休業 行き場失う生活困窮者 NPO、市民団体の支援も

2020年04月24日 | 貧困と格差
https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15875634619219

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、生活困窮者の日常が脅かされている。休業や営業自粛で雇用環境が縮小しているほか、ネット
カフェなど低料金で宿泊に使える居場所も休業が相次いでいるためだ。こうした困窮者を支援するNPOや市民団体は、行き場を失った
人に住まいや食事を提供する取り組みを進めている。

■所持金底突く

「住む所と食事を得られて一安心。ほっとしているし、ありがたい」
今月16日夜、つくば市内にある閑静な住宅街の2階建て住宅で、40代の無職女性は息をついた。
女性は2月いっぱいまで、県内で宅配便の荷物を仕分ける派遣労働者として働いた。深夜勤務は心身にこたえ、疲労も蓄積した。さら
に新型コロナの影響が広がった3月になると派遣の仕事を切られた。
家庭の事情で県内の実家にいられなくなった。短期の仕事を繰り返しながら、県内や首都圏を転々とした。週単位の短期賃貸マンショ
ンにも滞在したが、管理会社から「次の予約が入っているため出てほしい」と言われ、泊まる場所がなくなった。
女性は、県南地域のネットカフェを探して寝泊まりした。ネットカフェの利用料金は24時間3千円。感染におびえながら、10日ほど過
ごしたところで所持金が底を突いた。ネットカフェも営業自粛の対象になり、泊まれない。役所に相談し、シェアハウスを紹介され
た。

■衣食住を確保

シェアハウスの家賃は月3万円。敷金・礼金はなく、光熱費込み。保証人がいなくても入れる。
食事は、寄付された食品を提供する「フードバンク」を利用することができる。当面の衣食住には困らなくなった。
女性は今後、自立を目指すつもりだ。以前働いていた派遣の仕事に就こうと思ったが、「応募が殺到して漏れてしまった」。
現実は厳しい。「何とか生活していきたい」と前を向く。

■支援で再生を

住宅を提供したのは、県指定居住支援法人で、生活困窮者らを支える一般社団法人「LANS(ランズ)」(つくば市)。シェアハウスは4人
が入居できる。現在、女性2人が生活している。2年間入居できる契約だ。
浅井和幸代表理事は「ここで支援を受けながら、生活を立て直してほしい」と希望する。
女性は昨年、長年勤めた仕事先で肋骨を折り、仕事を休んだ。労災も出ず、その後は短期の仕事が続いた。
「一度つまずくと仕事も生活も厳しくなり、困窮につながる」と浅井さん。生きていくには最低限の預貯金が必要となる。常勤で働け
るよう後押しし、「その人にとってどんな生活がいいか、希望に添う形で支援できれば」と考えている。
国は、コロナ関連で収入が減った低所得者向けに、家賃などを補助する制度も用意する。しかし、補助の割合が国と自治体の折半のた
め、制度のない自治体では困窮者が補助を受けられない事情もあるという。
浅井さんは「本当に苦しい人にとって家賃補助は大事。国や自治体には迅速で柔軟な対応をしてほしい」と強調した。(綿引正雄)
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生活保護申請増加、札幌市・足立区3割増 新型コロナで失業、収入激減

2020年04月24日 | 貧困と格差
https://mainichi.jp/articles/20200422/k00/00m/040/172000c

新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退が懸念される中、失業などで生活保護を申請する人が増えている。政府などが一斉休
校や外出自粛を求めた3月から影響が出始め、東京都足立区や札幌市では2月と比べて3割増となった。福岡市は微増で大阪、名古屋両
市も増加の見込み。こうした影響は緊急事態宣言が発令された今月以降、各地に広がるとみられ、支援団体は「収入が激減し、5月の
大型連休後には、わずかに残った所持金が底をつき、追い詰められる人がさらに増えるのではないか」と指摘する。
 厚生労働省の統計によると失業者数は1月時点で約206万8000人。近年、生活保護を受給する人は減少傾向にあるが、感染の拡大に
伴って一部の自治体では3月以降、相談や申請をする人が増え始めた。足立区では申請者が219人と前月に比べて34%増えた。また、い
ずれも前月比で札幌市も566人で32%増、川崎市は306人で11%増、福岡市では404人で3%増となった。3月分の件数を集計中の大阪市
や名古屋市も担当者が「窓口の相談や申請は増えている」と話す。
 貧困問題に取り組む各地の支援団体が共同で今月18、19日に実施した全国一斉の電話相談には約4800件の相談があった。感染拡大の
影響で営業不振に陥ったとして雇い止めされた、というものや「生活費が尽きた。今すぐに生活保護を受けられるのか」などの内容が
多かった。相談してきた埼玉県内の50代男性は、歩合制のタクシー運転手として働いていたが、外出自粛の影響で仕事が急減。月収の
手取りは5万円に減り、生活保護の申請を考えている、と苦境を語った。
 電話相談にあたった猪股正弁護士は「蓄えも少なく収入が激減して生活費の確保に悩み、生活保護を利用せざるを得ない人が多いよ
うだ」と話す。厚労省は対策として今月7日、生活保護の受給申請の要件を判断する際、より柔軟に対応するよう自治体に通知。本来
は自動車を保有していると受給が認められないが、一定の条件下では一時的に認めることなどを盛り込んだ。【矢澤秀範、村田拓也】

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<参院選>隠れ住む「貸倉庫難民」 非正規労働者「ここは底辺」

2019年07月19日 | 貧困と格差
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201907/CK2019071802000162.html階段を上り、二階のフロアに通じるドアを開けると、狭い通路の両側にドアがずらり。二畳ほどのスペースが薄い板で仕切られている。「グオーン」と空調の鈍い音が響き、踊り場にある共用のトイレや洗い場からはカビの臭いが漂う。


 ここは東京二十三区内にある三階建て雑居ビル。にぎやかな商店街にひっそりたたずみ、「レンタルルーム」や「レンタルスペース」と呼ばれる貸倉庫となっている。


 「非正規労働者が増え、貸倉庫にまで住むようになった」。生活困窮者の支援者からそんな話を聞いた。窓がない、仕切りの素材が燃えやすいなど住居としての建築基準を満たさないが、利用料金の安さから住み着く人が出てきたという。


 夕方、仕事終わりとみられる作業着姿の人や、弁当を手にする人がビルの鍵付きの玄関に吸い込まれていく。運営会社から住むのを禁じられており、利用者の口は一様に重いが、「絶対内緒ですよ」と、二十代の利用者が鍵を開けてくれた。


    ◇


 午後六時すぎ。幾つかの部屋から物音が聞こえる。Tシャツ、短パン姿の中年の男性はリラックスした様子で用を足しに出てきた。


 招き入れてくれた男性によると二十四時間出入りが可能でほとんどの部屋に人が住んでいるという。部屋の中を見ることは拒まれたが、ホームページによると約百室あり、窓がない部屋もある。一部屋の契約額は月三万円程度だ。


 運営会社は「物置」や「休憩室」としての用途を示し、住むことは禁じている。だが利用者にとってはアパートより月の支払いが安く、敷金や礼金もない。毎日、入退室手続きが必要なインターネットカフェに比べても、月単位で借りられ、荷物を置いて仕事に行けるため便利。職場の口コミなどで広がり、住む人が増えているという。


 男性は道路整備のアルバイトで日銭を稼いでいる。「住んで一カ月ぐらいだが、ここは底辺。狭いし、汚いし、早く抜け出したい」と吐き捨てるように言った。


 後日、都内で同じ会社が運営する同種の雑居ビルを訪ね、一階のコインシャワーから出てきた四十代男性に話を聞いた。定職がないため不動産屋からアパート契約を拒まれ、一年前から住んでいるという。今は知り合いの親方の下で建築現場で働き、月の収入は二十数万円。「親方からの仕事がなくなれば、働く場所もなくなる」と、髪を拭いていたタオルで顔を覆った。


 雇い止めされた非正規労働者らが寮などを追われ、インターネットカフェで寝泊まりする「ネットカフェ難民」が、世間に知られるようになって十年以上がたつ。生活困窮者を支援してきた立教大大学院特任准教授の稲葉剛さん(50)は「今はネットカフェだけでなく、貸倉庫やサウナ、二十四時間営業のファストフード店などに居住が広がり、実態が見えづらくなっている」と指摘する。


 安倍晋三首相は、完全失業率が民主党政権下の4%台から2%台に改善したことを「アベノミクス」の成果だと強調しているが、昨年の国の調査では、雇用者のうち四割が非正規だ。


 「団塊世代の大量退職で働き口はあるけれど、労働者は相変わらず低賃金で、雇用も不安定」と稲葉さん。「狭い部屋で寝泊まりすれば体を壊すし、孤立感からうつっぽくなる。生活保護に至る前に、低家賃の公営住宅や家賃補助制度を設けるなどの住居対策が選挙のもっと大きな争点にならないと」と訴えた。


 コインシャワーで出会った四十代男性は「頭が悪いから政治はわからない」と投げやりだが、将来は不安だ。最近、同じ現場で働く高齢者に自分の未来が重なる。「物覚えが悪く、作業も遅い。それでもうちで働けなくなればホームレスになると親方も分かっているから、クビにできない」


 「俺はそうはなりたくないけど、酒や遊びを控えても金はたまらないし、体もきつくなってきた。どうやってこの生活から抜け出せばいいのか」。力なく話し、倉庫への階段を上っていった。 (原田遼)


<生活困窮者の住居> 「オフィス」「倉庫」などとして貸し出され、実際には多人数が寝起きしている建物を、国土交通省は、住居の建築基準を満たさない「違法貸しルーム」と定義。昨年は防火や採光の設備が足りていないとして、全国の都道府県などが1458件の貸主に是正指導した。一方、東京都は2016年度にネットカフェやサウナなど夜通し営業する店舗で実態調査し、住居を失い寝泊まりしている利用者が都内に1日4000人いると推計を出した。


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脱貧困強制社会~働いた分だけしあわせに生きたい 東京弁護士会がプレシンポ

2018年08月23日 | 貧困と格差
 東京弁護士会主催による第61回人権擁護大会プレシンポジウム「脱貧困強制社会ー働いた分だけしあわせに生きたい」が8月18日午後1時30分から東京弁護会の会議室で開催された。

 ジャーナリストの藤田和恵氏は「私たちは『貧困強制社会』で生きている」と題して基調講演を行った。藤田氏は、非正規雇用で働く若者の労働実態について、有給休暇も社会保障のもなく残業代も長時間勤務も野放しな無法地帯の実態を明らかにした。ネット社会では自己責任論が蔓延し、貧困の人達が声を上げることすら奪っていることが強調された。パネルデスカッションでは林治弁護士のコーディネーターで首都圏青年ユニオンの佐藤和弘事務局次長、弁護士の竹村和也氏も参加し、貧困をなくすために労働組合の役割や住宅政策などについて議論した。(東京借地借家人新聞より)
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