東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

管理会社が倒産し、敷金を持ち逃げしたが敷金の管理責任は

2008年11月29日 | 借地借家の法律知識
(Q)敷金の管理は誰の責任?
東京都 30歳代 会社員 女性


 分譲マンションを持ち主から賃借して住んでいます。初めは、間に管理会社が入っていたのですが、倒産したとかで、現在は、持ち主に直接家賃を払っています。

 先日、更新の際、入居の時に払った敷金の話が出て、管理会社の社長がお金を持ち逃げし、敷金が大家さんの手元に入ってきていないので、自分たちで管理会社と交渉して下さいと言われました。もちろん、大家さんも再三交渉はしてくれたようです。いきなり、そんなことを言われても、どうすればよいか分かりません。支払った敷金は、家賃の3カ月分ですので、私にとっては大金です。

 その管理会社は、現在も名前を変えて運営されているようですが、交渉したら返していただけるものでしょうか? また、その際どのように交渉すればよいのでしょうか?




(A)借り主に対する敷金の管理責任者は貸主です

(住宅ねっと相談室カウンセラー NPO役員 賃貸住宅コンサルタント 朝永 彰)


 分譲マンションということですから、家主さんも一般の方で、慣れていらっしゃらないのでしょうか。

 まずは、その家主の方にもお分かりいただきたいことは、借り主が支払った敷金の管理責任は、その借り主に対しては、家主にあるという点です。

 家主は、自らの代理人として管理会社に業務を委託していたわけですから、借り主が管理会社に支払ったお金は、家主に支払ったのと同じ法的効果があります。つまり、たとえ現実に家主が管理会社から敷金を受け取っていなくても、借り主に対しては、受け取ったものとして行動しなければならない義務があります。

 要するに、借り主である相談者が、直接、管理会社と交渉する必要は一切ありません。既に家主の代理人に敷金を支払ってあるという事実に基づき、退去時には、正々堂々と、家主から敷金を返してもらうように要求してください。その際、家主は、いったん自腹を切ってでも借り主に敷金を返却しなければなりません。

 かわいそうですが、家主は、明け渡し時ではなく管理会社が倒産した時点で、取り戻せるかどうかは別として、賃借人の敷金を管理会社から取り戻す行動をしなければいけない立場なのです。

他人に家を貸して、賃料を取るということは、このようなリスクを伴うものなのです。



[2006.3.15 掲載]   日経住宅ネット相談室


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アパートが競売になり、落札されたが入居者の権利は?

2008年11月28日 | 借地借家の法律知識
(Q) 入居しているアパートが競売になり、落札されました。新しい所有者は、「出て行って欲しい、敷金も引き継いでいない」と言っています。どうすればいいでしょうか。


(A) 抵当権設定登記がされている建物を借り、その建物が落札された場合、①平成16年4月1日以降にその賃貸借契約を締結した場合は、原則として新しい所有者(競落人)に賃借権が主張できず、退去を求められれば6か月以内に、建物を明け渡さなければなりません。なお、敷金の返還を新所有者に求めることはできません。②平成16年3月31日までに賃貸借契約を締結した場合(更新した場合を含みます)は、契約期間が3年以内の短期賃貸借であれば、競落後であってもその契約期間が満了するまでは住むことができ、敷金の返還も新所有者に請求することができます。

 ただし、差押(競売開始決定)後に、賃貸借契約や更新契約をした場合には、①②にかかわらず、競落(買受)人に賃借権を主張することはできませんので、新所有権から立退きを求められたら明渡しを拒むことはできません。



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隣家にはみ出た塀の撤去費用、全額負担に納得できません

2008年11月27日 | 借地借家の法律知識
(Q) 隣家との境界にある塀が、境界線を20cmほどはみ出していると隣家に指摘されました。わが家は1982年築ですが、私がこの家を中古で購入したのは12年前です。ですから、建築当時のことはまったくわかりません。隣家の人は、知り合いの弁護士から、こちらの全額負担で塀の撤去をしてもらえるといわれたそうです。はみ出ている以上、撤去しなければならないのは分かりますが、私も知りえなかったことですから、せめて折半にならないのでしょうか。


(千葉県市川市 男性 会社員 48歳)

(A)時効取得により、はみ出た土地があなたのものになる可能性があります 境界線を20cmほどはみ出している土地の部分については、あなたが時効取得できる可能性があります。そうなれば、あなたの全額費用負担での塀の撤去も、半額負担でのそれも、行う義務はないといえます。逆に、あなたが時効取得した部分の土地の所有権移転登記手続き請求を隣家に対してできるのです。


●10年間平穏で、「公然」「善意」「無過失」であることが条件


 時効取得の要件は、10年間所有の意思をもって、平穏に、しかも公然と他人の物を占有した者が、開始の時に善意であり、なおかつ過失がなかったときはその所有権を取得する、というものです。


 今回のご質問の場合、占有の開始はあなたが12年前に家を購入した時です。購入した時は、あなたは建物当時の事情をまったく知らなかったのですから、善意(この場合、法律用語では20㎝の土地が隣家の土地であったことは知らない、ということを意味します)、または無過失(知らないことに過失がないこと)であることです。一般的に見て、1982年建築の家に塀があって、現状のまま前主から購入したとすると、過失はなかったといえるでしょう。


 「平穏」とは、たとえば、暴力などによる実力行使によるものではないということです。「公然」とは、隠し立てすることなどのないことです。あなたの場合は、1982年建築の中古物件を購入し、塀も前主が住んでいた当時のままだとすれば、これらの要件に当たるでしょう。


●はみ出していたことを知っていても、20年たてば時効取得が成立


 なお、ご質問にある、あなたが建物の建築当時のことをまったくわからなかったという事情から考えにくいことですが、万一、あなたが20cmほど塀がはみ出していたことを知っていたとしても(法律用語では悪意といいます)、または、知らないことに過失があったとしても、平穏、かつ公然に所有の意思をもって20年間たてば、20cmの土地の部分の時効取得が完成します。


 あなた自身の占有は12年間ですが、前主の新築当時からの占有期間を加算することができ、通算すると26年に達しますので、同じく20cmの土地について、時効取得が可能なのです。時効取得をすると、前述したように、あなたは20cm部分の土地の所有権移転登記手続き請求を隣家にすることができます。


 1つの具体的な解決策として、あなたが時効取得をすることを譲歩して、隣家と話し合うことが考えられます。これはあなたの自由です。仮に、20㎝の土地については、わずかな面積であるとすれば、土地の取得を諦めることを条件に、「隣家の申し出通りの境界線に塀を作り直すことに応じる。ただし費用は隣家持ちで」ということも選択肢になるかもしれません。もちろん、応じるか否かはあなたの意思次第です。(読売 住まいの相談室より)


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東京の各組合の催し物と行事

2008年11月27日 | 東京借地借家人組合連合会
■城北借組 「西武デパート相談会」
 12月17日(水)・18日(木)午前11時~午後5時(午後1時~2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 12月19日(金)午後2時から城北法律事務所。担当田見高秀弁護士。相談者は要予約。連絡・(3982)7654。
■大田借組 「理事会」
 11月29日(土)午後6時半大田区消費者センター。「常任理事会」12月20日(土)午後6時半組合事務所。連絡・(3735)8481。
■多摩借組「定例法律相談」
 12月6日(土)午後1時半から組合事務所。担当山口真美弁護士。相談者は
電話で必ず要予約。連絡・042(526)1094。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から亀戸カメリアプラザ。連絡・(3640)4694。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。要事前連絡。連絡・(38
82)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。連絡・(3801)8697。相談者は要予約。
■世田谷借組「相談会」
 毎月25日午後2時~7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■北借組「法律相談」
12月3日(水)・17日(水)午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。連絡・(3908)7270。
■東借連 「秋季研修会」
 11月29日(土)午後1時半豊島区東部区民事務所。講師・田見高秀弁護士。 
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要件緩和検討を答申へ 老朽化マンション建て替え 規制改革会議

2008年11月26日 | 最新情報
 政府の規制改革会議は二十五日、年末にまとめる規制改革に関する答申の中で、老朽化マンションの建て替えに関し、現行法で義務づけられている要件を緩和する必要性を盛り込む方針を固めた。

 マンション建て替えの要件は、区分所有法で規定され(1)所有者の数(2)専有面積に応じて所有者に与えられる議決権-ともに、五分の四以上が賛成しての「決議」を行うことを義務づけられている。

 国土交通省によると、築三十年以上のマンションは全国に約六十三万件あり、十年後には約百七十二万件に急増する。

 これに対し、建て替えが実現した事例は、阪神大震災などによる建て替えを除き百二十一件にとどまっている。

 規制改革会議は昨年、要件が厳しすぎることが建て替えが進まない要因とみて、国交、法務両省に実態調査を要請。このほどまとまった結果では、築三十年以上のマンション約四百五十件の管理組合が回答。「五分の四」の緩和については、回答した組合のうち、人数要件で「緩和が必要」47・1%、「不要」38・2%、面積要件で「必要」37・8%、「不要」43・2%と意見が分かれた。

 要件緩和に対しては、政府内にも「本来なら全員が同意しなければならないのに、五分の四を緩めるのは難しい」といった慎重論がある。

 このため同会議は答申後も慎重に議論を進める。(東京新聞11月26日)

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賃料不払を理由に建物の鍵を交換した賃貸人の行為は、違法な自力救済行為に当たる

2008年11月26日 | 最高裁と判例集
東京地裁判決 平成16年6月2日
(判例時報 1899号 128頁)

《要旨》
 賃借人の賃料不払を理由に建物の鍵を交換した賃貸人の行為は、違法な自力救済として不法行為が成立するとしたものの、賃借人に損害が生じたとはいえないとされた事例


(1) 事案の概要
 室内装飾品類の販売等を営む法人Xは、平成10年10月、賃貸人Yとの間で建物賃貸借契約を結び、その建物を事務所兼倉庫として使用していた。
 しかし、Xは資金繰りが悪化し、平成11年3月及び4月分の賃料支払を遅延したうえ、Xの実質的な経営者Aが同年4月に、刑事事件で逮捕拘留されたため、業務の運営が困難になり、5月分以降の賃料を一切支払わず、その支払の目処も立たない状況に陥ってしまった。
 そこでYは、平成11年6月、Xに対して、未払賃料等合計298万円余の支払がなされない場合には賃貸借契約を解除する旨の意思表示をするとともに、その場合には本件建物の鍵を交換する旨通知したが、Xからの入金は期限までに実行されなかった。Yは本件賃貸借契約が解除されたという前提のもとに、この建物に赴き、居合わせた、Bの従業員の立会いのもとに、鍵の交換を行った。
 そのためXは、Yが鍵を交換した行為は違法な自力救済であり、これによって営業ができなくなったとして、債務不履行又は不法行為に基づき合計3,110万円余の損害賠償を求めて提訴した。

(2) 判決の要旨
 ①本件賃貸借契約は、契約解除通知および期限の経過によって、Xの債務不履行を理由とする解除により終了したものと認められる。
 ②本件鍵交換の予告はされていたものの、建物内の動産類の持出しの機会を与えることなく、Xが、事前事後において、承諾ないし容認したものとは認められないことからすると、本件鍵交換は未払賃料債権等の履行を促すために行われた、Xの占有権を侵害する自力救済に当たり、緊急やむを得ない事情は認められず、不法行為が成立するものと認められる。
 ③Xは、本件鍵交換によって、本件建物内に立ち入ることが困難となり、業務を遂行することが困難となったことが認められるが、本件鍵交換当時、Xが、逸失利益等の請求の前提となる正常な業務を遂行していたものと認めるのは困難である。
 ④したがって、Xの占有権を侵害する不法行為に該当する本件鍵交換によって逸失利益相当の損害が発生したとするXの主張は採用できない。


(3) まとめ
 本件では、賃貸人の賃貸借契約終了後の鍵交換行為について、「私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が損する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される」との最判昭40・12・7の示した一般的基準を引用して、違法な自力救済であると判断している。



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国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告」 「上昇地区」姿消す

2008年11月25日 | 最新情報
 国土交通省の「主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~」(08年第3四半期)が11月21日、発表された。それによると、調査150地区の全地区が横ばい又は下落となり、同年第2四半期(4月1日~7月1日)まで存在した「上昇地区」が姿を消した。地価LOOKレポートは、主要都市の高度利用地などの動きを把握し、先行的な地価動向を明らかにすることを目的に年4回の調査を行うもので、08年第2四半期調査に続き4回目。今年7月1日から10月1日にかけ東京圏65地区、大阪圏39地区、名古屋圏14地区、地方圏32地区の計150地区で、各地域の不動産鑑定士により実施された。このうち、マンションなどにより高度利用されている住宅系地区(42地区)と店舗、事務所が高度に集積している商業系地区(108地区)に大別されている。

 レポート結果では調査地区全体の85%に当たる128地区が下落。前回の同年第2四半期(調査100地区)の下落地区割合は38%で、高度利用地の地価下落傾向が鮮明となった。
 三大都市圏では、9割を超える地区で下落。大阪、名古屋圏で半分以上の地区で3%以上の下落となった。地価上昇の象徴的存在だった東京・丸の内や銀座中央でもマイナス3%から0%の下落となっている。
 地方圏では横ばい地区と下落地区がほぼ半数だが、福岡、仙台では調査した全地区で下落となった。
 6%以上の下落となったのは計5地区。内訳は、東京圏では新浦安、船橋駅周辺(共に千葉県)。大阪圏では丸太町、御池(共に京都府)。名古屋圏では丸の内(名古屋市)。このうち、新浦安は「ディベロッパーのマンション用地の仕入価格が厳しくなっていることから、取引価格が低下している」という分析が出されている。また、船橋駅周辺は「取引件数が減少し、取引価格が下落。利回りも上昇しており、地価下落傾向となっている」としている。
 地価下落傾向の要因について、国土交通省では「景気の停滞、新規分譲マンションの販売不振、投資・融資などの資金調達環境の悪化を背景に、土地需要が減退しており、加えて、オフィス空室率の上昇や賃料下落で収益力の低下傾向が要因ではないか」と分析している。
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自ら法律に反していながら法的救済を求めるのは信義則に反するとした事例

2008年11月25日 | 最高裁と判例集
 判例紹介

 自ら法律に反していながら法的救済を求めるのは信義則に反するとした建築距離違反の事例 (大阪地裁昭和63年9月26日判決、判例タイムズ695号)

 (事案)
 Aは甲土地、Bは乙土地をそれぞれ所持し両土地と隣接している。

 Aは両土地の境界線をイ、ロを直線で結んだ線であるとして境界の確定を請求し、同時にBが民法234条で定める建築距離である境界線から50cm空けずに建物を築造しているため、本来空地であるべき土地部分を利用できなかった損害賠償としてBに対し40万円の支払を求めた。

 BはAの主張する境界線を争い、Bの建築物が仮に民法234条に違反しているとしても、A自身も同条に違反しているから、Aの請求は認められないとして争った。

 (判決)
 「信義則上、およそ法的救済を求めんとするものは自ら潔きをもって来るべし、という要請があると解すべきであるところ、AはBに対し民法234条の遵守を求め、これに従わなかったとして賠償を請求しているけれども、右認定のとおりA自身も同条に違反しているので、それは右信義則に反することになる。一般に、信義則違反の事実が認められる場合で、強行法規が適用される場合には、その強行法規の強行性の程度、内容と法の目的に照らして衡量し、後者が前者に優位するときに限り信義則の法的効果を承認することができると解すべきである。」

 (寸評)
 判決は、民法234条のうち火災の延焼防止の目的は公益的要素の強いものであるが、隣地上の築造、修繕の便宜、日照、通風の確保等の利益の保護は利益的要素に属するとして、A、B双方の建物が耐火建築物であることを考慮し、本件では民法234条はそれほど強い強行性があるといえないとしている。

 強行法規に反した相手方の行為と信義則の関係につて参考となる事例であるので照会した。

(1992.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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85%で地価下落、上昇ゼロ 主要都市150地点調査

2008年11月21日 | 最新情報
 国土交通省が21日発表した主要都市の地価動向報告によると、全国の主な商業地、住宅地計150地点の10月1日時点の地価は、3カ月前の7月に比べ85%に当たる128地点で下落、15%の22地点は横ばいで、上昇地点はゼロだった。初回(今年1月)から継続調査している100地点で見ても、下落は90%と前回(7月)の38%の2倍以上に達した。

 米国発の金融不安による不動産投資の減退や景気後退を受け、地価の下落傾向が鮮明になった。今後の景気見通しでも、与謝野馨経済財政担当相が18日に2009年度の国内総生産(GDP)について「プラスになる自信はとてもない」と指摘するなど先行き懸念が高まっており、実体経済の悪化とともに地価はさらに下落を続けそうだ。

 3大都市圏別の地価動向では、下落地点の割合は東京圏が65地点のうち94%、大阪圏が39地点のうち92%、名古屋圏が14地点のうち93%と、いずれも90%を超えた。

 また地方圏は32地点のうち56%が下落。個別の地域では、福岡と仙台は市内の全地点で下落、札幌と広島市はそれぞれ下落か横ばい、那覇市はすべて横ばい。

(11月21日 共同)
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相続による所有権取得登記前の賃貸人の地位の継承は賃借人に対抗できない

2008年11月21日 | 借地借家の法律知識
 判例紹介


 相続による所有権取得登記前においては賃貸人の地位の継承を賃借人に対抗できず、賃料の不払を理由とする契約解除は効力が生じないとした事例 (東京地裁昭和63年10月3日民事第40部判決、未掲載)

 (事案)
 AはYに建物を賃貸していたが、この契約では、賃料の支払を2ヶ月でも怠った場合には何等のの催告を要せず契約を解除しうる約定が存していた。

 Yは昭和57年8月以降の賃料を支払わずにいたところ、Aは建物をXに譲渡し、Xは昭和61年10月2日に賃貸人の地位の継承により前記賃料不払を理由にYに対し契約解除の通知をなし建物の明渡しを求めて本訴に及んだ。

 YはAの所有権取得につき相続登記を経由していないから、家賃の支払を留保していたのであって、Aの賃料支払の催告は、右登記を経由していない間のものであるからYに対抗しえず、効力がないと争った。

 Xは、Yは相続登記前からAに建物の修繕要求をし、Aがこれを拒絶したため賃料を支払わないのであり、YはAが本件建物を相続したことを知った上でAの被相続人死亡後も3年間にわたりAに賃料を支払ってきたのであり、登記のないことを争うYの主張は理由がないと争った。


 (判示)
 「不動産を相続又は売買により取得した者は、その所有権移転登記を経由しない間、及び右の登記を経由した後であってもこれを賃借人が知らない間は、同人に対し、その所有権を取得したことにより賃借人の地位を継承したことを対抗することができないところ・・・・・・

 Aは被相続人の共同相続人の1人にすぎなく、Aが本件建物の全部を相続したのは昭和60年以降に共同相続人で協議した結果であること、昭和57年7月頃AがYに賃料を請求したのに対し、Yの弁済しなかった理由の1つが、Aが相続登記を経ていなかったことであること、ならびにYが前示のAおよびXの各所有権移転登記のなされていることを知ったのは昭和62年1月頃であることがそれぞれ認められる。

 YがAの本件建物の相続による賃貸人の地位の継承を認めて昭和57年8月から昭和61年9月分までの賃料及び遅延損害金の合計として79万8256円を供託したのは、Xから契約解除の通知のあった昭和61年10月2日以降であることが認められる。

 また、Aの被相続人死亡後も、Yが昭和57年7月分までAに本件建物の賃料を支払っていた事実は・・・・・被相続人の生前、Aが被相続人の代理人として賃料を集金していたので、同人の死亡後も同様に集金に来たAを共同相続人の代理者として同人に賃料を支払っていたにすぎず、Yが相続によるAの本件建物の賃貸人の地位を承認したものではない」として、Xの請求を棄却。


 (寸評)
 判旨に異論のない原則問題そのものであるが、日常の運動の中で忘れてはならない法律上の原則問題を思い起こしてもらう意味であえて紹介した。同種の紛争は多いので念のため。  1989.09.


(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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借家の保証人契約が合意更新の場合も効力が存続するとされた事例

2008年11月20日 | 借地借家の法律知識
建物賃貸借が更新された場合に当初の保証契約の効力が更新後も存続するとされた事例 (東京地裁昭和62年1月29日判決、判例時報1259号68頁)


 (事案)
 家主Xは借家人Aに対しその所有するマンションを英語教室として使用する目的で、期間2年、賃貸借契約終了後はAの費用で原状に回復し居住用マンションとして明渡すこと等の約定で賃貸し、YがAの一切の債務について連帯保証人になった。

 XとAは、その後賃料を改定し、その他の条件は従前のままとして、Yを加えることなく合意更新した。XとAはその後合意解約しAはXにマンションを明渡したが、Aには13カ月の賃料滞納があり、原状回復もしなかった。そこでXがAの保証人Yに滞納賃料と原状回復費用を請求した。

 Yは当初のXとの保証契約は賃貸借の合意更新後には及ばない、家主X には借家人Aの賃料不払いを保証人に通知すべき信義則上義務があり通常考えられる程度の延滞額を超える請求は無効である、といてXの請求を争った。

 (判例要旨)
 建物賃貸借は期間満了後も存続するのが原則であること、保証人も継続的に保証するものであることを認識していた筈であること、保証人の債務もほぼ一定しており更新後の債務について保証の効力を認めても保証人に酷ではないこと、などからしてXY間連の連帯保証契約の効力は合意更新後にも存続する。また、賃貸人には賃借人の賃料不払を保証人に通知すべき信義則上の義務はなく、仮にXがYにAの賃料不払いを通知したとしてもAが弁済しない限りYは全額を支払わなければならない。

 (短評)
 民法619条2項には「前賃借につき当事者が担保を供したるときはその担保は期間の満了により消滅す。但し敷金はこの限りにあらず」とある。これをそのまま適用すれば、当初契約の際保証人(保証人のことを人的担保という)になった人は、その契約に定められた期間内の債務についてのみ責任があり、更新後は関係ないと言えそうである。

 しかし、実際上は借家関係は更新により存続することが常識化されており、保証人も当然このことなどを理由に、借家権の続く限り保証責任も存続する、その考え方が判例上も支配的になっている。

 この判例は、保証人の責任は法定更新のみならず合意更新の場合も同じであるとしたものである。

 借家人には直接関係ない事例であるが(といっても保証人が支払えば借家人は保証人からの請求を免れ得ない)<保証人になるのは怖いですよ>ということを再認識するには好例と思い紹介する次第。

(1988.06.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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賃借人との明渡し交渉中に隣接住戸を取壊した行為が不法行為に当たるとされた事例

2008年11月19日 | 最高裁と判例集
(京都地判 平19・10・18 ホームページ下級裁判所判例情報)

家主から連棟式住宅の賃借人との退去交渉について委託を受けた業者が、その交渉中に隣接住戸の取壊しを行ったことが、賃借人に対する不法行為に当たるとされた事例(京都地裁 平成19年10月18日判決 一部認容 ホームページ下級裁判所判例情報)

1 事案の概要
賃借人Xの居住する連棟式家屋の家主Y1は、Y2(法人)に対し、当該家屋の明渡しに関するXとの交渉を委託した。Y2の従業員は、何度かX方を訪問して交渉したが明渡しの同意を得るに至らず、最後の交渉が行われた約2週間後、解体業者に命じて、X方に仕切り壁を隔てて隣接するY1所有の家屋の取壊しを行わせた。Xは、①交渉の過程におけるY2の従業員の発言が脅迫に当たること、②隣接家屋の取壊しは乱暴に行われXに不当な心理的圧力をかけるためのものであったことを主張し、不法行為に基づく精神的損害の賠償として200万円の支払いを求めた。

2 判決の要旨
①本件賃貸家屋は同一区画内に建てられたY1所有の4軒の家屋のうちの1軒で、4軒の家屋はいずれも昭和28年に建築されたもので、壁を接して2軒ずつ建てられたほぼ同一構造の木造2階建ての家屋の2組から成る。本件家屋の隣接家屋は、空家となっており、他の家屋の2軒のうち、1軒には訴外Aが居住し、他の1軒は空家であった。

②平成18年1月30日、Y2の従業員Bが初めてX方を訪れ、本件家屋の明渡しを求め、その後5回にわたって、A宅で、本件家屋の明渡しを求めるBと、これを拒むX及びAとの間で、協議が行われた。これらの協議には、Y2側ではBに加えてY2の代表者が同席することがあり、X側ではケアマネージャーのC氏又は市会議員のD氏が同席している。Xの供述によれば、1月30日の経緯は、①Xは突然のBの来訪に困惑して退去を求めたが、Bはなかなか退去しなかった②Xが、夕方にAが帰宅した後にAと一緒に再度話を聞く旨を約束をしてはじめて、Bは退去した③午後8時ころ、BがA宅を訪れ、Aに対して明渡し又は家賃の倍増を強い口調で求めたというものである。これに対しY2の代表者は、Bは丁寧な口調で本件家屋の明渡しを求めたと主張し、Bもその旨供述するが、2回目以降の協議の録音テー
プによれば、これらの協議の席上、BないしY2の代表者は「どんなことをしてでもあけてもらう」「強行手段でいかんならん」「おれとこかて力でいくで」等と発言しており、相当強行に明渡しを求めたものと推認されるところであり、Y2の代表者らの主張は採用できない。

しかしながら、Xが本件家屋の明渡しに最近の判例から 賃借人との明渡し交渉中に隣接住戸を取壊した行為が不法行為に当たるとされた事例(京都地判 平19・10・18 ホームページ下級裁判所判例情報)応じない意向で有った以上、Y2としては交渉の方法の一つとして強行姿勢を示さざるを得なかったともいえる。そして、2回目以降の協議においては、X側の立場で前記C氏やD氏のような男性が立ち会っていたことも考慮すれば、B及びY2の代表者の言辞が、不法行為を構成するに足るほどの違法性を帯びるとはいえない。

③隣接家屋の取壊し作業は、本件家屋と壁で接しているにもかかわらず、本件家屋に対する養生を全くなさずに、2階屋根の中央に穴を開け、窓枠や屋根を破壊し、1階の屋根瓦を落とし、壁を引き剥がすという手順で行われたことが認められる。Yらは、取壊し作業は通常の解体の手順に従って丁寧に行っていると主張するが、上記のような方法が解体作業の通常の手順であると認めるに足る証拠はない。作業に先立って行われた協議では、Y2の代表者及びBは、「そんだけどうしても抵抗しはんねやったら、うちはうちのやり方でするさかい」「それは力で出さなしゃあないやん」等と発言していること、また、本件家屋を原告から明渡してもらわない限り、跡地の利用ができないこと、及び、本件家屋の明渡しを受けた後に2軒一緒に取壊す方が作業も簡便で費用は少なくて済むはずであること、に照らすと、隣接家屋だけを先に取壊すのは経済的に不合理である。これらの事情と作業内容をあわせ考えれば、Y2による隣接家屋の取壊し作業は、Xに対する心理的圧力をかける目的で行われたと推認できる。

以上で認定した事実からすれば、隣接家屋の取壊しは、社会的相当性を欠く方法及
び目的によって行われたものであり、不法行為を構成するに足る違法性を帯びる。
Y1は、隣接家屋の取壊し作業がY2の不法行為を構成することを認識していたと
までは認められないが、本件家屋の明け渡しを受けていないにもかかわらず隣接家屋だけを取壊すのは経済的に不合理であること等からすれば、Y2の目的を認識しないで取壊し作業に承認を与えたことについて、Y1には少なくとも過失があるので、Y1も取壊し作業について、不法行為責任を負う。

④以上のとおり、取壊し作業の内容及びその他本件証拠に顕れた一切の事情を考慮すると、Xの蒙った精神的損害は50万円と評価される。

3 まとめ
本判決で問題となった賃貸家屋は2住戸1棟で構成される連棟式住宅で、戸界壁のみ隣接家屋と接している。隣接家屋の解体作業を養生をしないで実施された場合、賃借人の受ける心理的圧力は小さいものではなかったことが想像され、それゆえ、本判決では、不法行為が認定されたものであろう。連棟式住宅の建替えに際し、少なからず問題になり、注意を要すべき事例と思われる。


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地上げ屋が「土地を買うか借地権を売るかどちらかにしろ」と脅す

2008年11月18日 | 明渡しと地上げ問題
 荒川区東日暮里3丁目で約19坪の借地をしている竹本誠さんは今年の8月に更新を迎える事になっていたが、2月頃地主から今度土地を売ったので後はその人達と話し合ってほしいと連絡が入った。

その後、KKニーズと名乗る社員が二人を訪ね、「土地を買うか借地権を売るかどちらかかにしろ」と言われ地上げ屋と判明。竹本さんは組合に入会し、買取りを断ったところ「更新料150万円、地代は現行の倍額の3万円を支払え、当社の言うことを聞かなければ裁判でも何でもする。其の時には大変な費用がかかる」と脅かされた。竹本さんは、今後話し合いは組合事務所以外ではしないと頑張っている。
(東京借地借家人新聞より)


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適正地代の算出法はあるのか

2008年11月17日 | 地代家賃の増減
(問) 適正な地代の算出方法はあるのか。

(答) 地代の算定方式は法定されておらず、絶対的な算定方式というものは見当たらない。地代は当事者間の協議によって定めるのが原則であり、当事者間の合意額が適正地代であるというのが借地借家法の建前である。従って特段の事情がなければ地代は原則として公租公課を下回らない合意額であれば、それが適正地代であると言える。
 裁判では適正地代の算定方法として ①スライド方式 ②積算方式 ③差額配分方式 ④賃貸事例比較方式 ⑤公租公課倍率方式等がある。だが、どれも一長一短で万人が納得するような算定方式はないというのが現状である。裁判の実務では複数の方式によって求められた地代を総合的に検討する総合方式が定着している。
借地人が簡単に地代の目安を算定出来るというのは前記の方式では⑤であろう。地代と公租公課(固定資産税・都市計画税)の関係を統計処理した調査結果から東京23区の地代と公租公課の倍率は住宅地では概ね3倍前後で、商業地ではその2倍前後とされている。
 03年4月1日から借地人・借家人等は、都税事務所で固定資産課税台帳の①「閲覧」及び②「土地評価証明書」の交付が受けられるようになった。交付を受ける場合、借地人であることを確認出来るものを持参する必要がある。例えば賃貸契約書や賃借料の領収書等である。身分証明書(運転免許証・健康保険証)も持参した方がよい。
①固定資産税額は固定資産税課税標準額×1・4%(年間)で②都市計画税額は都内23区では減額措置が採られているので都市計画税課税標準の特例額×0・3%(年間)で求められる。
①と②の合算額を2~3倍すれば地代の概算額が算定出来る。この方式は東京簡易裁判所の「調停にも使用され、地代の調停は住宅地では3・1倍前後、商業地では2・4倍前後で成立している。
なお最高裁判所事務総局から91年12月付の「民事調停の適正かつ効率的な運用に関する執務資料」で「最終合意賃料が公租公課の2~3倍に収まっているときは、加減要素として考慮しない」と記載されている。言い換えれば地代は公租公課の2~3倍の範囲内であれば適正と言える。 (東京借地借家人新聞より)


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地上げ屋登場で借地借家人組合の出番です

2008年11月14日 | 明渡しと地上げ問題
 葛飾区高砂で二代に渡り借地をしている渡辺さんは、土地を買ったと称し、地主の委任状を持った不動産会社の来訪を受けた。

 買ったと称する会社はさくら住宅(株)、来訪者はその会社の委任受けた三和住宅(株)で、委任状の内容はさくら不動産販売(株)の所有の不動産の管理・賃貸料集金及び仲介その他一切のことに関してその行為を委任するとの内容である。

 この二社は知る人ぞ知る地上げ屋。渡辺さんは、譲渡に関して聞いたところ、登記はまだされていないとのこと。名うての地上げ屋の物件ともなれば素人では太刀打ちできないのが現状である。相手の要求が何かと知る必要があり、まずは葛飾借組をも窓口に交渉することにした。 (東京借地借家人新聞11月号より)



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