東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

住居確保給付金の拡充と改善を求め厚労省に緊急要請

2020年09月30日 | 新型コロナ被害と家賃 住宅支援
 新型コロナウイルスの影響で、会社の倒産・休業で仕事を失ったり、賃金が激減する人が急増する中で、住居を失う恐れのある人の家賃を補助する「住居確保給付金」の制度が4月から緩和され、前年度の21倍に当たる8万2千件超に支給決定が激増。コロナの影響が長期化する中で年末には給付金を打ち切られる恐れもあり、最長9ヶ月の支給期間の延長や支給額の見直し等を求めて、住まいの貧困に取り組むネットワークは9月25日に厚生労働省に緊急申し入れを行いました。

 要請行動には、ネットワークの世話人の稲葉剛氏、坂庭国晴氏、ネットワークのメンバーの全借連の細谷紫朗事務局長他が参加しました。国会議員の日本共産党の宮本徹衆院議員も同席しました。

 要請内容は、①支給期間が最大9ヵ月であるため、収入が回復しないまま支給期限を迎え、家賃が支払えなくなる。支給期間を少なくとも1年間に延長すること。また、公営住宅やセーフティネット住宅への転居を支援する。②収入要件が生活保護水準であるため制度対象外になる人が多く、申請すら受け付けてもらえていない。収入要件の現行基準を改め、公営住宅入居収入基準などに引き上げる。③支給額の上限額を見直し、支払い家賃額に見合った支給額に引き上げる。④この制度の実施主体の窓口になっている「生活困窮者自立相談支援機関」の人員を大幅増や支援を行い、負担軽減と迅速な受付、支給が行われるように改善する。⑤住宅確保給付金の予算を大幅に増額し、財源を確保すること。また、給付金利用者の実態を全国的に調査し、制度の拡充・改善を行い、全国的な「家賃補助制度」の実現につながるよう検討すること以上。

 厚生労働省社会・援護局地域福祉課の担当者は、給付金の急増を受けて、第2次補正予算の予備費で219億円を追加していると指摘しましたが、給付期間の延長や制度の見直しについては明確な回答がありませんでした。同制度が失業等によって生活が困窮し、家賃が支払えなくなった人を生活保護に至る前に、就労により自立を促す制度であると強調していました。
 稲葉氏からは「コロナ以前に作られた制度であり、現状に合っていない。コロナは何時終息するか分からない中で、この制度が最後の頼みの綱という方が多く、それが打ち切られると寒い冬の時期に路頭に迷う人が出かねない」と訴えました。

 住まいの貧困に取りくむネットワークには住居確保給付金問題で以下の様な相談メールが寄せられ、厚労省の緊急申し入れ当日紹介されました。

 「私もコロナで収入が減り、6月~7月の収入でなんとか食べるだけ生活しており、住居確保給付金を5月から受けて今は延長しました。コロナ前もダブルワークで生計を立てていましたが、1つの仕事がダメになり、この先の仕事の見通しはまだありません。月に6万~7万円では本当に生活できません。住居確保給付金を9ヵ月でなく、もっと長くしてもらえるように政府に働きかけて下さい。私は一人暮らし50歳の女性です。このままでは自殺を考えるようになっている日々です」。

 このような声は全国各地で起きています。現制度では、もはや限界であり、コロナ禍では対応できません。全借連では、家賃に困窮する人達が住まいを失わないよう、住居確保給付金制度の抜本的な改善、恒久的な「家賃補助制度」の創設等をめざして、国会請願署名運動を開始します。

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借地借家問題市民セミナー 9月26日(土)立川市女性総合センター

2020年09月24日 | 借地借家問題セミナーと相談会
借地借家人のためのやさしい法律の学習会と相談会 相談しておけばよかった!………というケースが必ずあります。

こんな問題で悩んでいませんか?

◎賃貸借契約の更新、更新料の請求
◎借地上の建物の増改築、修繕
◎地代・家賃の増額と減額請求
◎賃貸住宅の老朽化・耐震不足を理由とす
 る明渡し
◎ブラック地主問題(借地の底地の不動産業者への売却)
◎賃貸住宅の原状回復、敷金の返還
◎大規模災害が起きた場合の借地権・借家権
◎コロナで修業、家賃が支払えない。店の売上が激減、家賃を減額できないか。


日時 9月26日(土)午後1時30分から

会場 立川市女性総合センター5階第2学習室

※組合役員が親切に相談にのります。 借地借家人の権利は借地借家法・消費者契約法などで守られています。

東京多摩借地借家人組合

電話 042(526)1094
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東借連相談事例で夏季研修会開催

2020年09月24日 | 学習会と交流会
9月6日(日)豊島区内において東京借地借家人組合連合会の夏季研修会が開催されました。

 参加者は20名でコロナ禍で会場定員の半分しか入場できませんでしたがほぼ会場いっぱいとなりました。

 東京借地借家人組合連合会の高橋雅博事務局長の司会で進行し、細谷紫朗会長が開会挨拶をしました。城北借地借家人組合の阿部大乗組合長からも挨拶をいただき開会となりました。

 講師に東京借地借家人組合連合会常任弁護団の種田和敏弁護士を迎え、非常に興味深い話を聞くことが出来ました。
 参加したある組合員さんは種田弁護士に委任し裁判で更新料問題を闘ってきました。高等裁判所の判決では地方裁判所の判決を覆し逆転勝訴したとの報告がありました。

また、問題を11問出し、3択で選び解説を受けました。
 特に相続に関することと契約書の特約条項については、参加者からの質問が多く、契約書の特約条項で相続時の名義変更料を支払う特約があった場合はどうなるのかという質問もありました。
組合員の皆さんはまず、新聞を読み、学習交流会に参加し、問題がおきた際焦らず初期対応をできるようになっていただきたいと思います。
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全借連第2回Zoomオンライン会議 全国各地の相談事例も交流

2020年09月17日 | 借地借家人組合への入会と組合の活動
 コロナ禍で、全国から組合の役員が集まることができない中で、7月に続いて8月27日午後7時から第2回Zoom会議を、東京・京都・兵庫の5名の役員をオンラインで結んで、開催しました。

 全借連の細谷事務局長の司会で、会議が行われ、全借連が8月21日に行った事業者向けの「家賃(地代)支援給付金」制度の改善で経済産業省の中小企業庁に対して行った要請と交渉の結果が報告されました。

家賃支援給付金の制度改善を要請

 コロナの緊急事態宣言で休業したり、営業の自粛を要請され、飲食店など店舗を借りて営業している自営業者は家賃など固定費の支出にも困窮する中で、持続化給付金に続いて家賃の3分の2が補助される「家賃支援給付金」は与野党が国会で合意して作った制度ですが、申請に当たって、2020年3月末の時点で有効な賃貸借契約書の写しの提出が必要で、提出ができない場合には契約の成立を証明する家主の自著による「証明書」を提出しなければならず、家主や地主とトラブルをかかえ、法定更新している賃借人にとって契約書の写し等の書類の提出は、賃貸人の協力が得られないと申請することが困難です。

 日本では、様々な給付金の申請で、制度が複雑な上に、申請に当たって様々な書類を提出しなければならず、国は賃借人の事情を十分の理解していない、確定申告書などで救済すべきである。このままではコロナ

で深刻な打撃を受けている自営業者の借地借家人は救済されないと強く国に訴えました。

 また、第2回Zoom会議では、最近の借地借家人の状況や相談事例等も交流されました。東京からは借地や老朽借家を狙った、底地買いと地上げ事件が増えていること、関西の元祖地上げ屋から東証一部上場の不動産業者まで様々な業者が参入し、「底地を買い取るか、借地権を売るか」の2者択一を求められ、「買わない。借地を継続していきたい」と主張する借地人には、「この土地を他に転売する」と脅してくるなどの事例が報告されました。業者が借家に対しては僅かな立退料の提供で明渡しを強要し、立ち退きを拒否すると「家賃の大幅な値上げ」を要求し、それも拒否すると調停や裁判をかけてくる事例も関西では発生しています。

 毎年の8月1日の組合員現勢の登録では、残念ながら全国的に組合員が減少し、組合の組織の存続が大変厳しくなっています。役員が高齢化し、切実な相談がある中で組合を解散するところも出ています。組合員を増やし、組織の存続をどうするか、組合のない地域に組合をどうやって設立させるか等を議論しました。(多摩借組ニュース)
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借地や老朽借家を狙った底地買い事件が急増

2020年09月14日 | 底地の売買 地上げ
 コロナ禍の中で、借地や老朽化した借家を狙った底地買い買い事件が各地で多発している。首都圏の東京、神奈川、埼玉、千葉までターゲットになっている。底地買い事件は、通常の土地取引と比べ、利益の幅が大きいため、東証一部上場の不動産会社から地上げ屋と呼ばれる業者まで幅広く参入している。基本的な手口は「底地を買うか、借地権を売って明け渡すか、借家を明渡すか」の選択を迫る。借地借家人組合には様々な業者からの相談が寄せられている。

 バブルが崩壊して、底地買い・地上げ事件が組合に頻繁に相談が寄せられるようになったのは、2000年以降である。バブル時代と違って底地買い業者のT社は、地主から底地を安く購入し、関西の地上げ屋を使って借地借家人を脅して、地主の底地を高く借地人に売りつけるか、借地権を安く購入する。借家の場合は僅かな立退料で追い出す手法をとっていた。

 T社はその後、本社を大阪から千代田区永田町に移し、脅しの手法はさらにエスカレードし、2014年には三鷹市の借地人Mさんが底地の買取りも借地権の売却にも応じないと交渉を拒否すると、「貸したものを返せ」と近所に聞こえるように大声で怒鳴り、Mさん夫妻の後を追跡し、嫌がらせを行った。Mさんは組合に入会し、東借連の弁護団と相談し、T社に対し面談禁止の仮処分を行い撃退した。T社は、脅しを行った社員を辞めさせ、同様な脅しは行わなくなったが、強面で強硬な主張を繰り返す態度は変わっていない。

 東証一部上場のS社のホームページを見ると、地主に対し、底地を所有していても収益性がないのにも関わらず、相続税評価額が高く、相続すると資産を減らしてしまう。早期の底地の売却を勧め、権利関係が複雑で、借地権者が複数いて維持管理煩わしさから解放されたいとの地主の悩みに応えている。同社は地代の集金・契約書の作成・更新料の受領支援等の管理もサポート料を取って行っている。地代の集金は受取地代の10%程度を報酬として受け取っている。

 2000年代当初は、底地買い業者はT社の独壇場だったが、現在は数多くの業者が参入するようになり、競争が激しくなり、地主に対するセールスも活発になっている。借地や老朽借家は何時底地買い業者に売却されるかわからない。
(東京借地借家人新聞より)
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ローン破綻!家賃が払えない!… 身近に迫る“住居喪失クライシス”

2020年09月11日 | 新型コロナ被害と家賃 住宅支援
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4456/index.html

新型コロナの影響が長引く中、多くの人が「住居を失う危機」に直面している。不動産会社には住宅売却の相談が殺到。収入の減少の
長期化で住宅ローンが支払えなくなり、自宅を手放す人がここにきて続出しているというのだ。さらに、賃貸住宅の家賃が支払えなく
なった人向けの支援制度「住居確保給付金」の申請件数も急増。給付金は最長9か月で打ち切られるため、年末にかけて住居を失う人
がますます増えると懸念されている。番組ではローン破綻や家賃滞納の厳しい現実、制度の問題点などをルポ。住まいを失う危機にあ
る人をどう支えていくべきか、様々な現場を通して考えていく。

出演者
石井光太さん (ノンフィクション作家)
稲葉剛さん (つくろい東京ファンド代表)
武田真一 (キャスター) 、 栗原望 (アナウンサー)

ローン破綻!家賃が…コロナで住まいを失う

都内の不動産会社です。「住宅ローンが払えない」という相談が連日寄せられています。
明誠商事 飛田芳幸さん
「ご相談の伺いをできればと思いますので。」
この日、訪れたのはイベント関連の運送会社で働く50代の男性。
飛田芳幸さん
「ボーナスも7月は全く?」
運送業 男性(50代)
「ないですね。」
飛田芳幸さん
「ゼロですか?」
男性
「はい。このまま復帰しなければ、たぶん11月で…って感じですね。」
飛田芳幸さん
「えっ、11月で何かあるんですか?」
男性
「もう、終わりですね。」
飛田芳幸さん
「会社終わり?」
男性
「うん。」
感染拡大で大規模イベントの中止が相次ぎ、収入が大幅に減少。自宅の売却を迫られています。
飛田芳幸さん
「売っても1,000万円だから、要するに(借金が)700万円くらい残ってしまう。」
5か月ローンを滞納したため、遅延損害金も発生。自宅を売却しても多額の借金が残るといいます。
飛田芳幸さん
「借金を払わないということになると、自己破産という話になるんですよ。全く払いきれないとなると。」
男性
「はい。」
懸命に働いてきたという男性。まさか、自己破産に追い込まれるとは思ってもみませんでした。
男性
「仕事もこういう状況で見通しが立たない。もうさすがにちょっと、どうにもならないという感じですね。」
こうした深刻な相談は、8月以降、急激に増えているといいます。
飛田芳幸さん
「給付金とか貯金があって、いっときは5月、6月、7月は落ち着いてきて、8月になってからコロナの影響でもう我慢できず、返済
がどうしても難しいと。貯金も今ほとんどないという方の相談が8月からかなり増えて。相談はどんどん増えていくと思いますね。」
住まいの喪失は、家族の暮らしにも大きな影響を及ぼしています。8月にマイホームの売却を決めた、建設業の男性です。
「おいくらで購入しましたか?」
建設業正社員 男性(40代)
「2,700、2,800万円だったと思う。結婚を機に購入しました。子どもができれば、やっぱり広いほうがいいのかなと思いまし
て。」
10年前に35年ローンでマイホームを購入。妻と小学生の息子の3人で暮らしてきました。
「一番気に入っている場所はどこだったんですか?」
男性
「やっぱりリビングですよね。やっぱり家族と一緒にいますからね。」
毎月の支払いは9万円。しかし、感染拡大の影響で建設現場の仕事が減り、月収は3分の2に。夏のボーナスも大きく減り、ローンの
支払いが苦しくなったのです。
男性
「早いうちに手を打って、売って、そのお金を多少なりとも子どもに少しでもかけられればいいかなと思って。やっぱり何か売る日が
近づくにつれて、受け入れられなくなってきますね。いつも、夢なのかなとか、そんな感じですよね。」
先月(8月)22日。男性は、売却の契約書に印鑑を押しました。
明誠商事 飛田芳幸さん
「これでもう書類は全部、売買契約書、重要事項整いました。」
引っ越しの期限は、今月(9月)下旬。子どものことを考え、今の地域から離れた場所に借りられる部屋を探しています。
男性
「子どものお友達も家知っていますし、『何で変わったの?』って言われたら言えないでしょうし。だったらね、学区外に行って、誰
も知らないところで、そういうこと言われないように。友達はいちから作らなきゃならないんですけど。子どもと寝ているんですけど
ね、いつも。そのときは、ああって考えますね。」
賃貸住宅に住んでいる人たちにとっても、事態は深刻です。都内の福祉事務所です。
フリーランスデザイナー(40代)
「お金を使い切ってしまったので。もう数百円なので。次の月から(家賃を)どうしようという感じなので。」
申請するのは、「住居確保給付金」。仕事を失った人などに家賃を支給する、5年前にできた制度です。
給付金の支給期間は原則3か月。その間に新たな仕事を見つけるなどして、生活を立て直してもらうのがねらいです。しかし、新型ウ
イルスの影響が長期化し、収入回復の見通しが立たない人が相次いでいるのです。
相談員
「お仕事どんな状況ですか?」
ホテル勤務 男性(50代)
「以前よりもだいぶ仕事がない状況というか、ゼロです。」
相談員
「皆さん苦労されている。心配ですけどね。」
ホテルで働く50代の男性。6月から給付金を受けていますが、3か月たった今も収入が回復していません。この日、支給期間の延長
を申請しましたが、給付金を受けられるのは最長でも9か月間。それまでに生活を立て直さなければなりません。
男性
「宿泊業界、どこも厳しいと思います。やっぱりここまで続くとは誰も思ってなかったと思いますし。預貯金の面でも、このままいく
と底をついてしまうので、不安だらけですね。」
9か月の支給期間内に仕事が見つからず、住まいを失う危機に直面している人がいます。
神奈川県に住む30代の男性。以前は国家公務員でしたが、病気で退職し、去年(2019年)11月から給付金を受けていました。
元国家公務員 男性(30代)
「申請をしたときにですね、最初の3か月以内に仕事を決めて復帰するぐらいの予定でいたので。」
しかし、新たな職を探していたさなかに、新型ウイルスの感染が拡大。50社以上応募しましたが採用されず、給付金は7月で打ち切
られました。
男性
「就職活動できれば元の生活に戻れるんじゃないかと思っていたんですけれども、やはり9か月という上限があるということで打ち切
られてしまって、困っているところですね。住居確保給付金という名前なのに、住宅が確保されないという状況になってしまっている
ので、もうホームレスになるしかないのかなと。」

家賃が払えない…コロナで住まいを失う

武田:新型コロナによる生活困窮の実態を取材されている石井さん。住まいを失うということは、場合によっては命の危機につながる
ことでもあると思うんですけれども、石井さんは改めてどう捉えてらっしゃいますか?
石井さん:生活が困窮するということにおいて、家を失うというのは最後の最後に来ることなんですね。実際は、家を失う前にたくさ
んのものを失って、生活が破綻しているというケースがあります。例えば、僕が知っている場合ですと、ローンを払えないので実家に
お金を借りる。でも借りすぎて、実家のほうから逆に取り立てをされてしまっている。あるいは、配偶者との間にいさかいが絶えなく
て、DVが起きてしまう。そして離婚になってしまう。子どもはそういった状況を見て、家に居場所が見つからず出ていってしまう、
家出してしまう。そういったようなことが起きてしまうんですね。現状、こうしたことはたくさん起きています。そういう人というの
は、いくつものトラブルを抱えながら「新しい仕事を見つけなさい」、あるいは「新しい家を見つけなさい」と言われても、なかなか
できない。例えば1か月間に1,000件の方が1,000人が家を失っていると考えれば、その何倍もの数が、家を失う前に、今言っ
たような状況になっているということを考えなければならないと思っています。
武田:「8月になって再び相談が増えている」ということばがとても心に残ったんですけれども、3月から継続して取材している、社
会部の横井さん。この家賃や住宅ローンの支払いが滞ってしまう、困難になってしまうというケースは、今どうなっているんでしょう
か?
横井悠記者(社会部):今も増え続けています。NHKが全国36の自治体に調査したところ、住居確保給付金の申請件数は、7月ま
での4か月間でおよそ5万件。去年の同じ時期の90倍に上っていることが分かりました。
また、最初の3か月では生活を立て直せず、支給期間を延長した人も全体の半数以上に上っていて、住居喪失の危機が日増しに深刻さ
を増していることがうかがえます。
次に住宅ローンですが、住宅金融支援機構によりますと、計画どおりにローンを支払うことが難しくなり、返済条件を見直して月々の
返済額を減らした件数は、3月は2件でしたが、5月以降急増し、8月も1,000件近くに上っているということです。
支払いが滞りますと、先ほど紹介した男性のように、損害金が発生して返済額が膨れ上がり、ついには自宅の売却を迫られるというこ
とにもつながりかねません。金融機関の多くが返済条件の見直しに応じていますので、支払いに困った場合は、まずは金融機関に相談
することが必要です。
武田:生活困窮者の支援活動に取り組んでいる稲葉さん。危機は長引いていますね。稲葉さんのもとではどうですか?
稲葉さん:7月の下旬からコロナの感染が再拡大していますけれども、実はそれに比例するかのように、私たちのもとに寄せられる生
活困窮の相談というのが、再び増加傾向にありまして、いわば“貧困の第2波”とも言える状況になっています。
コロナの経済的な影響が長期化、深刻化する中で、飲食業や宿泊業を中心に事業を縮小したり、あるいは倒産、廃業に追い込まれたり
という企業が増えておりますけれども、こうした職場で働いていた方々の中から、非正規の方を中心に、仕事を失って、住まいまで
失ってしまうというような相談が相次いでいるという状況になっています。そして、こうした人たちを支える仕組みとして住居確保給
付金があるわけですけれども、住居確保給付金の支給期間というのが最大でも9か月ということになっております。今、利用されてい
る方の多くが、この春から利用されていますので、そうすると年末年始には支給はストップしてしまうという状況になってしまうの
で、支給期間の延長を含めて、この制度を拡充していくということが求められているというふうに考えています。
横井記者:今、お話しいただいた住居確保給付金は、生活の頼みの綱となっています。ただ、申請が急増する中で、自治体の相談窓口
が今、危機的な状況になっているんです。

住居喪失クライシス 公的支援もひっ迫!

住居確保給付金の申請が殺到している、大阪市内の自治体の相談窓口です。
大阪市への申請件数は、ことし(2020年)7月までの4か月間で6,000件余り。去年の同じ時期の270倍に上ります。人手
が足りず手続きも煩雑なため、対応が追いついていません。窓口の負担は深刻です。
大阪弁護士会が府内の相談員に行った調査では、75%が「体も気持ちも疲れ果てた」と回答。「退職を考えた」という人も43%に
上りました。
退職を決めた相談員
「日中は相談者からの電話が鳴りやみませんし、常に差し迫った相談者が来る。相手の方から『死ね言うんか』とか、『こんな対応し
かできひんのか』と。ストレスがずっとある状態なので、もう辞めるという選択肢しかないのかなって。」
調査を行った弁護士 小久保哲郎さん
「相談員の皆さんが限界に達する中で、悲鳴のような声がたくさん寄せられています。このままいくと“相談崩壊”、もう相談現場自
体が持ちこたえられなくなって、市民の相談を受け止められなくなるんじゃないか。」

“相談崩壊”を防ぐために

横井記者:ご覧いただいたような状況は、大阪だけではなくて、全国でも起きています。NHKのアンケート調査でも「多忙で職員の
数が足りない」「退職する職員がでてきている」という回答が相次ぎました。生活に苦しむ人たちを支える側も疲弊し、十分な支援が
行き届かない状況になっているんです。
武田:“相談崩壊”ということばがありましたけれども、支える側の相談の窓口を改善していくには、どんなことが必要なのでしょう
か?
稲葉さん:“相談崩壊”を防ぐためには、相談員の方の負担を軽減するということが急務だというふうに考えています。そのために必
要なことは、2つあると考えております。
1つは、相談員の数を増員する。そして、待遇を改善するということが必要だと考えています。実は、相談員の方の中には“官製ワー
キングプア”ということばがありますけれども、非正規で年収も200万未満という方も多いので、そうした方々に対してきちんと待
遇を保障すると。それによって、相談に集中できるような体制というのを作っていく必要があるというふうに思います。
もう1つは、実は、この住居確保給付金の申請手続きが非常に煩雑であると。たとえば、収入が減少したということを証明する書類な
ど、10種類程度の書類を持ってこなければ申請できないということが、相談者だけでなく相談員にも負担になっているという問題が
あります。何度も来ていただいて、書類を持ってきてもらうということ自体が、相談員にとっても心理的な負担になってきているとい
うことがありますので、思いきってこの申請手続きを簡素化して、収入要件と資産の要件だけでシンプルに利用できるような“家賃補
助制度”に替えていくということが求められていると考えます。
武田:支える側も疲弊し、深刻さを増す住居喪失クライシス。民間企業や団体も支援に動き始めています。

住宅を失わせないために 民間の取り組み

千葉県に本社がある、家賃保証会社です。保証会社は、入居者から契約料を受け取って保証人となり、家賃の滞納があれば一時的に立
て替えます。このため、入居者の生活が破綻しないよう、さまざまなサポートを用意しています。
入居者
「日雇い行ったりね、そういうのもせんと、もう生活やっていかれへんから。もうギリギリの生活です。」
クラウドファンディングなどで資金を集め、収入が減った人や、ひとり親世帯を対象に、最大10万円を支給します。生活を立て直
し、その先も家賃を払い続けてもらうためです。
担当者
「これでエントリーできましたので。」
入居者
「そんなの(普通は)何にもないから、一瞬疑うわ、えーって。ありがとうございます。」
さらに、家賃の支払いが難しくなった場合には、住居確保給付金の申請にも同行しています。飲食店を長年経営してきたこちらの女性
は、営業自粛が続き、収入が激減。自宅の家賃が支払えなくなっていました。
飲食店経営 女性
「資産も全部なくしてしまって、本当にお恥ずかしいんだけど、このたびお世話になることにしたんです。」
日本賃貸保証 奥出勝也さん
「お客様からお伺いしているのが、4月、5月の収入が全くゼロの状況と伺っていたんですよ。そこについての収入の証明とかは、の
ちのち書類で用意すればいい形になりますよね。」
申請に必要な書類や記入方法などを、きめ細かくアドバイスします。
女性
「(支援の手続きを)どうやって、どのようにしたらいいか分からないものですから。ネットもできないし、それですべてが後手後手
になっている状態でしたので。すごく頑張ろうという気持ちが起きてきました。」
奥出勝也さん
「市の制度とか国の制度っていうのは、伝わりきらないところはあると思います。なるべく不備がなくスムーズに支給されるように、
サポートしていきたいと思います。」
すでに住まいを失った人を支援する、民間のプロジェクトも始まっています。新たな住まいを見つける際に壁となるのが、敷金などの
初期費用です。
ビッグイシュー基金 高野太一さん
「住まいを失ったり困窮する人って、めちゃくちゃ増えてくるだろうなってことで。やっぱりそういう方々に直接現物を給付するとい
う形で(入居の)初期費用を出すということ。」
このプロジェクトでは、民間企業からの寄付金を原資に、住まいを失った人に最大30万円を支給。敷金や礼金、家具の購入費など入
居にかかる費用に充ててもらっているのです。生活困窮者を支援する全国19の団体と連携しています。
LGBTハウジングファースト(ぷれいす東京) 生島嗣さん
「転居費用っていうのは、すごく大きなハードルになっているというのはあると思いますね。今2、3人くらい(支援したい)候補者
がいるので、順次ご提案しながら。」
支援団体の一つを訪ねました。60代の男性。3月に飲食店を雇い止めになり、一時は路上生活を余儀なくされていました。仕事がよ
うやく見つかり、今はアパートを探しています。
不動産会社
「お家賃としては、大体5万円台から6万円台。5万円台が理想という捉え方でよろしいですか?」
飲食業 男性(60代)
「はい、結構です。」
今回、プロジェクトの支援で入居の初期費用のめどが立ち、家探しは大きく前進しています。
不動産会社
「これで絞り込んで、ちょっと多めに図面を出していって、だんだん絞り込んでいこうと思います。」
男性
「そうですね。なんかおもしろくなってきました。今この勢いがあるときに、一気に家を探すことまで進めたい。」
栗原
「30万円の支援というのは大きいですか?」
男性
「もう、とてつもなく大きいです。これは貸し付けではなく支援ということなので、いつか恩返しできればいい。支援されるだけで終
わることなく、それを返すくらいの気持ちで働いていきたいと思います。」

いま必要な支援とは

武田:取材に当たった栗原さん、どんなことを感じましたか?
栗原:プロジェクトの支援を受けた男性の話を聞いて印象に残ったのは、「私は運がよかった」ということばです。本当にはっとさせ
られました。この方は支援にたまたまたどり着いただけで、その裏には支援からこぼれ落ちている人がたくさんいるということを意味
しているわけで、この“運”ということばに、問題の根深さがあるというふうに感じました。
武田:稲葉さんがほかに今、必要だと思う支援が具体的にあるそうですけれども、どんなことでしょうか?
稲葉さん:住まいを失った方々の相談支援をする中で、今見えてきた課題としては、通信手段の確保という問題があります。生活困窮
者の方々の中には、すでに携帯電話などを失っている方も多く、そうすると、今の社会では電話番号がないと、なかなか仕事を探すに
も住まいを探すにも、大きなハードルになってしまうという問題があります。そこで、つくろい東京ファンドでは「つながる電話プロ
ジェクト」という取り組みを始めておりまして、スマートフォンを2年間無償貸与する。これによって公的な支援であったり、あるい
は住宅・仕事へのアクセスを容易にしていくという環境づくりを考えております。
栗原:困っている方がたくさんいる状況だと思うんですけれども、改めて支援の窓口をご紹介していきます。家賃が払えないなど、住
まいを失いそうになったときの相談窓口として、厚生労働省では住居確保給付金に関してのコールセンターを設置しています。こちら
の番号におかけください。
そして先ほどご紹介した入居の初期費用を支援するプロジェクトについては、こちらのホームページからアクセスできます。
武田:住宅を失った方々が、「まさか自分が」と口々におっしゃっていたのが印象的だったんですけれども、ウィズコロナの時代、暮
らし方や社会のあり方について、私たちはちょっとずつ慣れている一方で、これから多くの方が、この住居喪失という現実に直面して
いくんじゃないかという不安も感じるんですが、石井さんは今何が必要だと感じていますか?
石井さん:初めに申し上げたように、家を失うということは、それ以外にたくさんの問題を家族が抱えてしまうということなんです。
そこにおいて、例えばNPOに住宅の部分だけ支援してもらって、何とかなるということではありません。やはりそこには、トータル
の支援というのが必要になってきます。
僕が知っている例ですと、家を失うことによって子どもが居場所を失って、深夜はいかいをするようになってしまった。そのときに、
学校は必死になってその子に対してきちんと家庭訪問をしてあげる。例えば塾だとか習い事などの月謝を低くしてあげる。あるいは、
クラブの友達や近くの保護者が、その子たちを家に呼んであげる。つまり、地域で支援するということが、どうしても欠かせないこと
なんですね。
現状でコロナの状況というのは、本当に被害を被った人と被らない人に分かれます。だけど地域支援というのは、困っている人を支え
るということなんです。今必要なのは、誰が困っている困っていないではなくて、地域全部が今言ったような状況を把握して、困って
いる人に対してトータルで支援をしてあげるということだと思っています。
武田:稲葉さん、まだまだ継続して支援するということが必要だと思うんですけれどもこれ以上、住居喪失を広げないために今後必要
となるような施策とはどんなことでしょう?
稲葉さん:私たち全国の民間支援団体は、工夫を凝らしながら、多くの方々にご協力いただきながら支援活動を展開しておりますけれ
ども、やはり民間の力には限界があるというふうに考えています。国に対して私たちは、きょうは住居確保給付金の問題を中心にお話
ししましたけれども、例えばほかにも、民間の空き家を借り上げた形での住宅支援であったり、特別定額給付金10万円の再支給など
が考えられるべきだと思っております。
そして、最後のセーフティーネットである生活保護。残念ながら生活保護にはマイナスイメージがついて回っておりますので、政府か
らの積極的な「困っている方は生活保護を利用してください」という広報も必要とされている。そうした形で、あらゆる政策手段を総
動員しなければ、今の危機は乗り越えられないと考えています。
武田:たくさんの施策・政策、社会全体での助け合い。そういったもので何とか乗り切ってほしい、そういう状況を作らなければいけ
ないと思いますね。

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借地借家問題市民セミナー 9月26日立川市で開催

2020年09月10日 | 借地借家問題セミナーと相談会
地借家人のためのやさしい法律の学習会と相談会 相談しておけばよかった!………というケースが必ずあります。

こんな問題で悩んでいませんか?

◎賃貸借契約の更新、更新料の請求
◎借地上の建物の増改築、修繕
◎地代・家賃の増額と減額請求
◎賃貸住宅の老朽化・耐震不足を理由とす
 る明渡し
◎ブラック地主問題(借地の底地の不動産業者への売却)
◎賃貸住宅の原状回復、敷金の返還
◎大規模災害が起きた場合の借地権・借家権
◎コロナで修業、家賃が支払えない。店の売上が激減、家賃を減額できないか。


日時 9月26日(土)午後1時30分から

会場 立川市女性総合センター5階第2学習室


※組合役員が親切に相談にのります。 借地借家人の権利は借地借家法・消費者契約法などで守られています。

東京多摩借地借家人組合

電話 042(526)1094
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「家賃払えない」給付金申請が90倍に 新型コロナ影響

2020年09月09日 | コロナと家賃滞納
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200909/k10012608001000.html

新型コロナウイルスの影響が長期化し、家賃の支払いに苦しむ人が急増しています。NHKが全国36の自治体にアンケート調査したと
ころ、仕事を失った人などに家賃を支給する「住居確保給付金」の申請件数がことし7月までの4か月間で5万件近くとなり、前の年の
同じ時期のおよそ90倍に上っていることが分かりました。
「住居確保給付金」は、仕事を失うなどして家賃が払えなくなった人に、自治体が一定額を上限に家賃を支給する制度です。
NHKは、感染者数が多い上位10の都道府県のうち、人口の多い東京23区や政令指定都市など合わせて36の区や市にアンケート調査を
行い、「住居確保給付金」の申請件数を独自に集計しました。
その結果、ことし4月から7月までの給付金の申請件数は合わせて4万9266件で、前の年の同じ時期のおよそ90倍に上っていることが分
かりました。
支給期間は原則3か月間で、それまでに収入が回復していない場合は最長9か月まで支給期間を延長することができますが、最初の3か
月では生活を立て直せず、8月分から支給期間を延長した人が全体の56%に上っていることも分かりました。
生活困窮者の支援にあたっている立教大学の稲葉剛客員教授は、「経済危機の長期化で家賃の支払いに困っている人が増えているが、
9か月の給付金の支給期間が年末年始で切れ、路頭に迷う人が大量に出てしまうことも懸念される。感染収束の見通しが立たない中、
国は支給期間を延長するなど、制度の見直しを検討するべきだ」と話しています。

窓口に申請殺到

「住居確保給付金」の申請を受け付ける都内の区役所の窓口には収入が途絶え家賃の支払いに苦しむ人たちが殺到しています。
このうちホテルで働く50代の男性は、外国人観光客が激減して勤務のシフトに入ることができなくなり、感染拡大の前には月に20万円
近くあった収入が7月と8月はゼロになりました。
貯蓄を取り崩しながら生活していますが、ホテル側の経営悪化で、休業手当は支払われておらず、収入が回復する見通しも立っていな
いということです。
このため男性は6月から給付金を受けていますがさらに3か月、支給を延長してもらうために申請に訪れていました。
男性は「給付金の支給期間は最長でも9か月ですが、それまでに収入が回復するのか、不安しかありません。感染が拡大した4月ごろよ
り今のほうが経済状況は悪化していて貯蓄ももうすぐ底をついてしまいます。受給期間をもう少し長くしてほしいです」と話していま
した。
飲食店で働く40代の女性は、4月と5月はゼロだった収入が6月に10万円程度まで一時、回復しましたが、7月に入り感染が再拡大したこ
とでシフトにほとんど入れなくなりました。
このため7月の収入は再び6万円ほどに落ち込み、給付金の延長を申請したということです。
女性は「5月に給付金を申請したときは、『3か月たてば収入が安定して前の生活に戻れるかな』と考えていましたが、このままでは貯
蓄もなくなり本当に生活が厳しいです。給付金が受け取れなくなくなれば家賃が払えなくなるのでどうすればいいのか焦っています」
と話していました。

働き盛り世代に影響大

今回のアンケートでは、ことし7月までの4か月間に住居確保給付金の支給が決まった人の年代や世帯数、申請の理由についても調査し
ました。
年代の内訳を見ますと
▽30代が27%と最も多く、
▽30代未満と40代がそれぞれ23%、
▽50代が17%、
▽60代が8%、
▽70代が2%となっていて、
働き盛りの世代を中心に幅広い年代の人たちが家賃の支払いに苦しんでいる実態がうかがえます。
また、世帯数の内訳をみますと、
▽単身世帯が68%と大半を占めていますが、
▽2人世帯と3人以上の世帯もそれぞれ16%に上っていて、
ファミリー層にも影響が広がっていることが分かります。
厚生労働省は、ことし4月20日から、「離職や廃業で仕事を失った人」だけでなく、「休業などで収入が減少した人」も支給の対象に
していますが、申請理由の内訳は休業などによる減収が74%離職や廃業が26%でした。

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