東京多摩借地借家人組合

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民間借地借家問題の現状と強制明渡し

2015年01月30日 | 明渡しと地上げ問題
 民間借地借家問題の現状と強制明渡し

  東京借地借家人組合連合会  事務局長 細谷紫朗


年々減少する借地、借地の供給につながらなかった定期借地権

 借りている土地の上に建物を所有している借地人が年々減少している。総務省の平成20年の土地住宅統計調査によると、全国の所有地2904万世帯に対して、借地が129万世帯(4・3%)、借地の内容を見ると、一般借地117万世帯(3・9%)、定期借地権など12万世帯(0.4%)となっている。平成15年と比較しても43万世帯も減少している。かつて全国の持家で昭和38年に同統計調査で借地の割合が29・1%、東京圏では46・7%と持家の2軒に1軒は借地であった時代と隔絶の感がある。
平成3年に借地借家法が改正され借地の供給が促進されると期待された定期借地権は全く効果がなく、借地人は50年の期限の到来で借地上の建物を取り壊して明渡し義務が発生し新たな問題が予測される。

急増する底地買い、借地人の弱みに付け込む悪質な手口

最近、こうした借地で貸している土地を所有していても「不良資産」となり、相続しても何らの活用もできないと宣伝し、借地の買い取りを申し出る底地買い業者が急増している。これらの不動産業者が地主から買い取る値段は通常の底地価格の3割から1割程度と安く、数十件借地をまとめて買い取るケースが多い。
底地買い業者の手口は、旧地主から手紙で○○不動産に底地を売却したとの一片の通知が借地人宅に送られ、直後に借地人宅を訪問し、今後の地代は借地人宅に毎月集金に来る。地代の集金に来る以上、借地人は業者の面会を拒否することができず、業者からは「私どもは借地をこのまま貸すために買ったのではない。底地を買い取るか、買い取れなければ借地権を売ってほしい」としつこく売買の交渉を迫られる。業者の中にはバブル時に地上げ屋の残党もいて、関西弁で大声でまくしたてられると多くの借地人はノイローゼ状態になり、業者の条件を認めてしまうケースが多い。組合では借地人に対し、業者が集金に来ても「交渉は組合に行って」と交渉は一切しないようアドバイスしている。地代を組合が預かって集金に来させる場合もある。
最近の事例では、借地人が底地の買い取りを拒否すると「貸さないから返せ」と脅迫し、借地人宅を突然に訪問し、面会を拒否しているにもかかわらず玄関のチャイムを何度も鳴らしたり、大声を上げて罵声を浴びせたり、借地人の自宅前に「この土地売予定(借地人付)」との立看板を立てたり、借地人の後を付きまとったりと悪質な追い出し行為が起きている。組合では顧問弁護士を通じて「面談強要禁止」の仮処分申請し、借地人に対し電話や面談の強要明渡しの強要をしないこと等を約束させ和解する事例も生まれている。
東借連では地上げ問題の学習交流会を開催し、底地を業者に買い取られて不安な思いをしている借地人の交流を図り、底地買い業者の悪質な行為にについて国に対して法的な規制を求めて運動していく考えである。
借地人が高齢化する中で、子供がいても借地であるために親と同居しないケースが多く、建物の老朽化が進み借地人が一代限りとなり、空家になる事例も多く、借地権の活用が今後大きな課題となっている。

 借家の老朽化と耐震性を理由にした明渡し請求の急増

平成25年の住宅・土地統計調査では、空き家は全国で820万戸と過去最高となった。空き家の内で賃貸用の住宅が429万戸と空家の50%を超えている。賃貸用の空き家が急増する一方で、まだ十分に住むことが可能なアパートやマンションを取り壊して、新しく賃貸住宅に建て替えたり、相続税対策としていつでも売却可能な更地にして、駐車場として貸し出すなどの動きも見える。
東借連に昨年寄せられた借家の相談253件中「明渡し」の相談は110件で43%を占めるなど明渡しの相談が急増している。明渡しの理由は、老朽化と耐震性を理由にするものがほとんどで、「1981年の新耐震基準を満たしていない」、「大地震が起きたら建物の倒壊の危険がある」等と説明している。
また、耐震補強工事をすることは過大な費用がかかると拒否している。
消費税増税の影響で住宅の新規建設が大きく落ち込む中で、賃貸用の住宅の建設は活発になっている。住宅メーカーが開催する相続税対策セミナーには、今年1月からの相続税の増税を心配する資産家に賃貸住宅の建設で借金をして節税することを勧めている。そこでは住宅メーカーが現在居住している借家人の追出しを請け負う事例が多く見られる。そもそも住宅メーカーの社員や不動産業者が家主から依頼されて立ち退きを迫ることは法律行為であり、弁護士法違反に当る。

 借家の明渡しには正当事由が必要だが、僅かな立ち退き料で退去させられている

しかし、家主が借家人に対して直接明渡し交渉を行なうことはほとんどなく、管理会社やサブリース会社に丸投げし、明渡しを専門に請け負う業者を使って、家賃の数カ月分の立ち退き料で追い出しを行なっている。
不動産適正取引推進機構の賃貸住宅管理会社に対するアンケート(平成24年6月)のよると、賃貸人の事情による解約申し入れで立ち退き料0円が21.5%、0円~6か月未満が72%で、僅かな立ち退き料で退去させられている。
不動産業者の中には、借家人の法律知識のないことに付け込んで、2年契約の途中で3ヶ月の予告で賃貸借契約を解除したり、「今なら○ヶ月分の立ち退き料を支払うが、期間が満了するまで住み続けるなら無条件で立ち退いてもらう」等巧妙な言い方で借家人に明渡しを同意させ、立退き同意書にサインさせている。
借地借家人組合では、家主の明渡し請求には契約期間の満了する6カ月から1年前に予告すること、期間満了時に明渡しを求める正当事由が必要であり、単に建物の老朽化・耐震性のみで明渡しが認められるわけではなく、
正当な事由のない明渡しに反対している。

 高齢単身者の3分の1が借家、深刻な高齢者への入居制限

 高齢者のいる世帯が居住する住宅の82・8%が持ち家で、借家が17%を占め持ち家居住が多い一方で、高齢単身世帯では借家の割合が33.9%と3分の1を超えている。
これらの高齢者は老朽化した借家に居住し、劣悪な住環境の中で暮らしている。
兵庫県の借地借家人組合の調査によると、昨年1年間の組合入会者79名中35名44・3%が明渡しの相談で、60代から80代が実に74%を占め、単身者が71%と多い。高齢で単身者の借家居住者が明渡しの問題で借地借家人組合へ助けを求めていることが分かる。
「明渡しを求められても、移転先の家賃が高額で負担できない」、「公営住宅に住みたいが何度も応募しても当選しない」、「高齢者だけで住むというと不動産屋から敬遠される」「息子や娘が近くに住んでいるなどの条件が満たされないと賃貸住宅を斡旋してもらえない」等の高齢居住者の切実な声が上がっている。
東京都が昨年8月に募集した単身者向け住宅の応募倍率は56・8倍、シルバーピアは77・8倍と家族向けの住宅の応募倍率と比較しても異常な倍率であり、高齢者が安心して住み続けられる低家賃住宅が圧倒的に不足している。
 民間賃貸住宅に暮らす高齢者の明渡し問題は、経済的な理由だけでなく、環境が変わったり知り合いがいなくなることで、家に引きこもったり、孤独死にもつながる重大な問題である。現在東京都が取りまとめを行なっている「高齢者居住安定確保プラン」においても「民間賃貸住宅においては、高齢者の入居を拒まない住宅や高齢者向け住宅も供給されている一方、単身の高齢者や高齢者のみ世帯は不可とするなどの入居制限が行われている状況が依然として見られます」と指摘している。同プランの基本的な方針では「高齢者の入居の円滑化」では、「民間賃貸住宅について、高齢者が不合理な入居制限を受けることなく、市場を通じて、ニーズに応じた住まいを円滑に確保できるよう、東京シニア円滑入居賃貸住宅の登録の促進などを行います」とあるだけで、具体的な支援策はない。
 政府は民間住宅の空家等活用し、改修工事に補助して低廉な賃貸住宅を供給する「住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業」が今年度創設され、予算が措置された。1戸当たり50万円(共同住宅用1戸100万円)を限度に工事費用の3分の1が補助されるというが、これらの補助のみではたして低所得者の高齢者が入居できるのか極めて疑問である。家賃を引き下げるには家賃補助などの制度との組み合わせが必要ではないだろうか。

 耐震性不足マンションの敷地売却制度の成立で追い出される高齢者

 大都市ではマンション居住者が増加し分譲・賃貸のマンション居住は40%を超え、平成24年末現在のストック数約590万戸で、旧耐震基準に基づき建設されたものは約106万戸といわれている。築40年を超えるマンションは20年後には264万戸となる見込みである。老朽化したマンション居住者の高齢化が進み、昭和45年以前のマンションでは高齢者のみ世帯の割合は50・3%を占めている(国土交通省調査)。同時に古いマンションほど借家の割合も増加している。
 昨年、地震に対する安全性が確保されていないマンションの建替え等の円滑化を図るために、マンション及び敷地の売却を多数決(5分の4以上)により行うことが可能となるマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部改正案が国会で可決された。耐震性不足の認定は申請に基づき特定行政庁が行い、デベロッパーである買受人の買受計画(マンションの買受・除去・代替住宅の提供・あっせん)が認定されると、マンション敷地売却決議で買受人であるデベロッパーに売却され、デベロッパーが耐震不足マンションを建替えれば容積率が緩和される仕組みになっている。なお、買受計画の認可は都道府県知事又は市長とされている。複雑な仕組みになっているが、同決議が5分の4以上の区分所有者の賛成で可決されると決議に反対する区分所有者の区分所有権は時価で買い取られる。区分所有者は分配金取得計画に基づき分配金を取得し、借家人は補償金が支払われ借家権が消滅する。同決議が可決すると明渡しの正当事由について争えない。デベロッパーが新たにマンションを建設すれば、再入居も可能となるが、僅かな分配金を取得しても再入居できる居住者は一部に限られることが予想される。老朽化が進み建て替えが困難な分譲マンションが今後デベロッパーに買い取られ、高齢化したマンション居住者と借家人が強制的に追い出される仕組みとなっている。借家人や高齢のマンション居住者の転居先の確保等について、買受人のデベロッパー任せにすることなく、行政がしっかりと関与し居住の安定確保についての支援策を講じることが必要である。以上

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賃料減額請求マニュアルつくりました

2015年01月21日 | 地代家賃の増減
 バブル時に高額な地代・家賃に値上げさせられ、近隣の地代・家賃と比べても著しく高額な賃料を減額するための手続きとやり方を全借連でパンフレットにしました。ぜひご活用ください。昨年、山梨県の大月市で地主との交渉で地代を3分の1に減額させた事例も生まれています。この事例では、地代に占める公租公課が実に50倍だったことが調査で判明し、相談した組合員と組合役員が粘り強く交渉した成果です。パンフは組合事務所で1部100円で販売しています。

電話 042(526)1094
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行政未把握 「無届け介護ハウス」急増

2015年01月21日 | 最新情報
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150118/k10014775231000.html

 介護が必要な高齢者が増え続けるなか、法律で義務づけられた届け出を行わないまま空き家などで高齢者に介護サービスを提供する有料老人ホーム、「無届け介護ハウス」が行政が把握しないまま急増していることが、NHKの取材で分かりました。
 今後高齢者の数が全国で最も増加する東京では、その数は都が把握している3倍以上に上り、専門家は「行政の指導や監督が及ばず虐待や事故などの発見が遅れるおそれがあり、行政はニーズがあることをきちんと受け止め実態を把握すべきだ」と指摘しています。
 高齢者を入居させて食事や介護などのサービスを提供する施設は、「有料老人ホーム」として都道府県への届け出が法律で義務づけられ、国のガイドラインでは個室の整備や広さに応じた防火設備の設置が定められています。
 ところが、届け出を行わないまま介護などのサービスを提供する施設は、おととし10月時点で全国の自治体が把握しているだけで911と前の年の2.3倍になっています。
 ただ、住民などからの情報の提供以外に自治体が把握する方法はなく、実態は明らかになっていないのが現状で、NHKは、今後高齢者の数が全国で最も増加する東京で地域包括支援センターにアンケート調査を行うなどして独自に調べました。
 その結果、有料老人ホームに当たるのに届け出を行っていない施設は都内に少なくとも86か所あり、都が把握している3.6倍に上りました。
 多くは空き家になっている一軒家やマンションの空室、使われなくなった社員寮などを利用した「無届け介護ハウス」で、家賃を低額に抑える一方で介護サービスを提供することで介護報酬を得ていました。
 事業者の8割近くは自治体や医療機関から高齢者を紹介されていて、特別養護老人ホームなどの介護施設が不足するなか、届け出を出していないいわば「違法状態」となっている施設が、1人暮らしや所得が低く行き場をなくした高齢者の受け皿になっている実態が浮き彫りになりました。
 取材に応じた無届け介護ハウスの多くは、ガイドラインで定められた個室などの居住環境や防火設備などの安全対策が不十分でした。
 届け出を行っていないことについて、取材に応じた事業者の多くは「個室の整備などのガイドラインの基準を満たすにはコストがかかるため」と答えました。
 高齢者の住まいの問題に詳しい医療経済研究機構の白川泰之研究主幹は、「行政の指導や監督が及ばず虐待や事故などの発見が遅れるおそれがあり、行政はニーズがあることをきちんと受け止め実態を把握すべきだ」と指摘しています。

無届け介護ハウス 「実情に応じ指導を」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150120/k10014823891000.html

 法律で義務づけられた届け出を行わないまま空き家やマンションなどで高齢者に介護サービスを提供する有料老人ホーム=「無届け介護ハウス」が、自治体が把握している以上に東京都内にあることがNHKの取材で明らかになったことについて、塩崎厚生労働大臣は実態の把握を進め実情に応じて届け出を指導するよう自治体に求める考えを示しました。
 高齢者を入居させて食事や介護などのサービスを提供する施設は「有料老人ホーム」として都道府県への届け出が法律で義務づけられ、国のガイドラインでは高齢者の居住環境や安全を守るため個室の整備や広さに応じた防火設備の設置が求められています。
 こうした届け出を行っていない施設についてNHKが東京都内で独自に調べたところ、都が把握している3.6倍に上る86か所あることが明らかになりました。
 これについて塩崎厚生労働大臣は20日の閣議のあとの記者会見で「これまでも届け出を出していない施設で事故が起こっている。そのようなことがないよう万全を期していかなければならないと考えている」と述べました。そのうえで、実態の把握を進め、施設の実情に応じて届け出を指導するよう自治体に求める考えを示しました。


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“無届け介護ハウス”急増

2015年01月20日 | 最新情報
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2015_0119.html

介護が必要な高齢者が増え続けるなか、法律で義務づけられた届け出を行わないまま、空き家やマンションなどで高齢者に介護サービスを提供する有料老人ホーム、“無届け介護ハウス”が急増していることがNHKの取材で分かりました。
行政の目が届かず、地域にも閉ざされていると虐待や事故の発見が遅れるなどのリスクも指摘されています。
超高齢社会を迎えるなか、高齢者のついの住みかをどう確保していけばいいのか。

取材班の横浜放送局・角田舞記者と首都圏放送センター・辻英志朗記者が解説します。

民家に多くの高齢者が~無届け介護ハウスの実態~

今後、高齢者の数が全国で最も増える東京。
普通の一軒家に多くの高齢者が暮らしているという情報を得て取材を始めました。

東京・江戸川区の住宅街にある2階建ての民家の室内にはベッドが所狭しと並べられ、70代から90代までの男女7人が生活していました。
中には、寝たきり状態の人もいて、ヘルパーが常駐し、介護サービスや食事を提供します。
1か月当たりの利用料金は15万円ほどで、空き家を利用しているため、一般の有料老人ホームと比べると格安だということです。
8畳の相部屋で生活する86歳の女性は、自宅で1人暮らしをしていましたが、体調を崩して入院したのをきっかけに1人暮らしが難しくなりました。
女性は、「ほかに行くところがなかったから入居した。ここがいちばんいい」と話していました。
1人暮らしや所得が低いため行き場をなくした高齢者を受け入れているこの施設ですが、実は法律で義務づけられた届け出を行政に行っていない有料老人ホーム、“無届け介護ハウス”なのです。
本来、高齢者を入居させて介護などのサービスを提供していれば、有料老人ホームとして都道府県に届け出ることが法律で義務づけられ、国のガイドラインでは、個室の整備や広さに応じた防火設備の設置が求められています。
この施設では、ガイドラインで示している個室の整備や廊下幅などの基準を満たせないため届け出を行っていません。
低料金で高齢者を受け入れるにはコストを抑える必要があるため、基準を満たすための改修工事には踏み切れないといいます。
施設を運営するNPO法人の宇井米司理事長は、「私たちは行き場のない高齢者を受け入れている。基準を満たすことも難しく、規制をされると入居しているお年寄りたちも困ってしまう」と話していました。

急増する“無届け介護ハウス”

届け出を行っていない施設を巡っては、6年前に群馬県渋川市で10人が死亡した火災をきっかけに、国も都道府県を通じて実態調査を進めています。
その数は、おととし10月時点で把握しているだけで911と、前の年の2.3倍になっています。
しかし、民家やマンションを利用している施設も多いうえ、住民などからの情報提供以外に自治体が把握する方法はなく、実際はさらに多くの施設が存在する可能性があります。
そこで、NHKでは、今後、全国で最も高齢者の数が増加する東京で、地域包括支援センターにアンケート調査を行うなどして独自に調べました。
その結果、有料老人ホームに当たるのに届け出をしていない施設は、都内に少なくとも86か所あり、東京都が把握している数の実に3.6倍に上ることが分かりました。
多くは空き家になっている一軒家や、マンションの空室、使われなくなった社員寮などを利用した“無届け介護ハウス”で、家賃を低額に抑える一方で、介護サービスを提供することで介護報酬を得ていました。
なぜ、急速に”無届け介護ハウス”が広がっているのか。
その背景を探るため、患者を無届け施設に紹介したことがあるという病院を取材しました。

受け皿不足が背景に~退院後の行き場所がない~

東京・調布市の多摩川病院では、救急病院などから患者を受け入れるなどして地域の医療を支えています。
入院患者は160人余り。
早く退院できるようリハビリに力を入れています。
ところが、最近、回復しても自宅に戻るのが難しく、退院できない高齢者が相次いでいるといいます。
体調を崩して去年8月から入院している76歳の男性は、10月には退院できる状態にまで回復しましたが、1人暮らしで重い認知症のため自宅に戻れないままです。
患者の退院を支援する部署では、スタッフが地域の介護施設などに毎日電話をかけ、男性のように退院できる状態になったおよそ50人の受け入れを依頼していますが、施設によっては、数百人が順番を待っているところもあり、退院先はなかなか見つからないといいます。
この日電話した施設も200人が入所を待っている状況でした。
厚生労働省によりますと、特別養護老人ホームへの入所を希望している高齢者は全国で52万人余りに上り、希望してもすぐに入れないのが現状です。
さらに、ことし4月からは、入所が原則、要介護3以上の介護の必要性が高い高齢者に限定されます。
一方、民間の事業者が運営する有料老人ホームは、入居の際に一時金が必要だったり、毎月の利用料が高額だったりする施設が多く、所得が低い高齢者が入るのは難しいのが現状です。
高齢者の受け入れ先が限られるなか、多摩川病院では、過去にどうしても退院先が見つからなかった患者を送り出したケースもあったということです。
多摩川病院地域連携室の金澤富士子看護師長は、「届け出がない施設への紹介は入所後適切に対応してもらえるのか相当不安があるので原則行っていない。しかし、今後、収入が少ない人など受け入れ先が見つからない場合は、本人と相談して無届けの施設への入所を検討することも出てくる可能性がある」と話していました。

“無届け”が抱えるリスク

行き場のない高齢者の受け皿になっている“無届け介護ハウス”。
しかし、高齢者の居住環境が守られなかったり、安全が脅かされたりするなどのリスクと隣り合わせです。
NHKが無届けの施設がある全国の市区町村にアンケート調査を行ったところ、去年までの6年間に、▽施設の職員などによる入所者への虐待が25件、▽事故が25件、▽火災が2件起きていました。
また、施設の情報を地域の住民などに公開していると答えた自治体は、僅か2%にとどまっていて、外部の目が届きにくくなっている実態が伺えます。
高齢者の住まいの問題に詳しい医療経済研究機構の白川泰之研究主幹は、「行政の指導や監督が及ばず虐待や事故などの発見が遅れるおそれがある」と指摘したうえで、「行政はニーズがあることをきちんと受け止め実態の把握に努めるとともに基準を満たしていなくても、まずは、事業者に届け出を出してもらうなど適切な指導をしていくべきだ」と話しています。

介護保険制度のはざまで

介護保険制度が始まってことしで15年。
介護が必要な高齢者を社会全体で支え合うという理念は実現されているのでしょうか。
今回の取材で明らかになったのは、介護が必要になった際、1人では自宅で暮らせず、介護施設にも入れない高齢者の存在と制度のはざまで広がる“無届け介護ハウス”の実態でした。
ある“無届け介護ハウス”の経営者が話していた「制度が実態に追いついていないなかで、代わりに自分たちが受け皿になっている。無届け介護ハウスはいわば”必要悪だ”」ということばが、今の状況を端的に示しています。
超高齢社会を迎え、今後、ますます介護が必要な高齢者が増えていくなか、ついの住みかをどう確保していくのか、改めて考える時期に来ていると思います。

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生活保護188億円削減 家賃と光熱費引き下げ

2015年01月17日 | 最新情報

厚生労働省は十四日、生活保護費のうち家賃に当たる「住宅扶助」の基準額と、冬場の光熱費増加分の「冬季加算」をそれぞれ引き下げることを決めた。二〇一五年度予算案でそれぞれ国費分三十億円ずつを減らし、計六十億円の削減となる。物価が上がるなか、受給者の生活は苦しくなる。 (鈴木穣)


 一五年度の生活保護費は二兆八千六百三十五億円で、一四年度当初に比べて百八十八億円減。安倍政権は昨年六月にまとめた骨太方針に生活保護費の削減を盛り込んだ。生活扶助は一五年度までの三年間で、計六百七十億円を削減。さらに住宅扶助は一五年から三年間で百九十億円減らす。


 住宅扶助は地域ごとに上限額が定められ、その範囲内で家賃として給付される。東京二十三区の単身世帯で月額約五万四千円。家賃の下落に合わせて減額を決めた。


 減額幅は地域や家族構成などで違う。特に少人数世帯の増加に伴い二人世帯の上限額を抑えた。減額対象になる受給世帯は、約百六十万世帯全体の二割前後とみられる。七月から実施する。


 家賃上昇が続く東日本大震災の被災地は多くのケースで増額する。また、厚労省は良好な住環境確保に国の最低居住面積水準(単身で二十五平方メートル)を満たす住宅の一定程度の確保を目指す。冬季加算は地域で額が違うが、全国の全受給世帯に給付されている。今回の見直しでは加算期間を地域により五~七カ月と幅をもたせるが、光熱費の必要額より多く給付されている地域を減額する。三人世帯で一シーズン1~20%減る。北海道や東北、北陸などの雪国で減額幅が大きい。


 除雪費用や暖房器具購入費などの増額も合わせて実施する。しかし、受給者の支援団体からは寒冷地で光熱費を給付する期間が短くて、実態に合っていないとの声が出ている。

(東京新聞2015年1月15日)
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1月の無料法律相談会

2015年01月15日 | 借地借家人組合への入会と組合の活動
一緒に考えれば解決策が見つかります

◎組合員の相談は無料です。
 予約制です。相談者は契約書・
領収書・請求書等の資料をお持ちください。
◎日時 1月17日(土)午後1時30分~4時
◎会場 組合事務所
◎担当 組合顧問 大浦郁子 弁護士
         (三多摩法律事務所)


電話 042(526)1094
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老朽化と耐震性を理由にアパートの明渡し 立退きの補償は僅か家賃の2~3か月分

2015年01月15日 | 明渡しと地上げ問題
渋谷区笹塚に住む川鍋さん(仮名)は今年の9月に突然老朽化と耐震性を理由にアパートの賃貸借契約を解除する旨の通知を受け取った。その文書には「3ヶ月後の12月には退去するよう」記載されていた。おかしいと考え、インターネットで組合の存在を知って相談した。組合では解約の通知は6ヶ月前に通知しなければならない、その上で「正当な事由』がなければならないことなどを説明した。管理会社に通知すると平成28年の契約期間まで住み続けてかまわないが更新を拒絶するとの返答。また、本来は立退きの補償はしないが2~3ヶ月分の賃料を補償料として支払うと言ってきた。川鍋さん「これではとても引越しはできない。現在でも修理修繕をしていない個所もあるので、修理修繕をさせながら立退きの交渉をしていくつもりです」といって組合に入会した。

(東京借地借家人新聞1月号より)

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第1回住まいカフェ開催 お互いの悩みを共有しよう!

2015年01月14日 | 学習会と交流会
 組合員同士の住いの悩みや生活の悩みを共有し、何でも気楽に語り合える場として第1回の「住まいカフェ」を12月20日(土)午後1時半から組合事務所において8名の参加で開催しました。

 おいしいコーヒと紅茶を飲みながら、参加者の自己紹介の後、2名の組合員と1名の組合員以外の参加者より、現在抱えている問題などを報告してもらい、今後の対応などを相談しました。

 組合員のMさんより、賃貸住宅に今年入居したばかりに、「くしゃみの音がうるさい」、「引っ越した直後に荷物を共用部分に置いてすぐ片づけなかった」、「ドアの閉める音がうるさい」、「大声で家主の名前を呼んで連呼した」等々わけのわからない理由で家主から賃貸借契約を解除され提訴され、Mさんは現在弁護士を代理人に立て東京地裁立川支部で裁判を継続している状況が報告され、異常な家主のイジメに負けないようみんなでMさんを激励しました。

 一人で横暴な地主や家主と闘っている組合員の交流の場として、また家主や地主との交渉の経験等を次回の以降の住まいカフェでも交流していきたいと思います。住まいカフェでは、借地借家問題以外でも今後様々なテーマで『ミニ学習会』も行ってみたいと考えています。組合員の皆さんから学習会のテーマのご希望がありましたら、組合事務局にどしどしお寄せ下さい。(東京多摩借組ニュース1月号より)
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27年度評価替え前に地代40パーセントの値上げ

2015年01月14日 | 地代家賃の増減
 足立区千住地区で宅地35坪を賃借する八城さん(仮名)は昨年11月に地主より27年度固定資産税の評価替えを理由に本年1月分より1・4倍増の地代改定通知書が送付された。八城さんは知人の紹介で組合に相談。

昨年6月に本年5月分まで1年分を支払っているにもかかわらず、地主は税理士と協議した結果、評価替えで増税になると一方的な理屈を展開している。組合では値上げには応じず、27年度分土地評価証明書で検討する旨の回答を助言した。

(東京借地借家人新聞より)


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今年は組合創立40年、組合飛躍の年に

2015年01月08日 | 借地借家人組合への入会と組合の活動
 新年明けましておめでとうございます。今年は、戦後70年の年ですが、私たちの組合も創立40年を迎えます。

 多摩地域に待望の借地借家人組合の事務所を設けるために、1975年(昭和50年)7月に東借連三多摩事務所として立川市羽衣町に組合事務所を設立し、当初は立川借地借家人組合として発足し、その年の12月に創立総会を開催し、理事6名と細谷事務局長を選出し、組合がスタートしました。

創立10年後に組合の名称を現在の東京多摩借地借家人組合に改称し、三多摩地域全体の借地借家人の権利を守る砦として40年にわたり運動を継続してまいりました。

 今年5月に開催する予定の第33回定期総会では創立40周年の記念の総会として、皆さんとともにお祝いしたいと思います。また、昨年3月~11月まで8カ所で行った組合員学習交流会には、多くの組合員の皆さんにご参加いただき、横のつながりのなかった組合員同士の交流と学習がいくらかできたかと思います。今年も多摩の各地域で学習交流会を開催できるよう計画していく予定です。今後も皆さんのご支援・ご協力をよろしくお願い致します。


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賃貸マンションの明渡し僅かな立退料では移転できない

2015年01月08日 | 明渡しと地上げ問題
借家で明渡し問題にかかわる理由が、東日本大震災以後建物の老朽化に耐震を加えて来る事例が多くなっている。大田区中馬込地域に所在する賃貸マンションを賃借中の小野さんと秋庭さんも同様の理由で明渡しを求められたが、両氏は正当な理由とは認められないと拒否。貸主は弁護士を介して、事務所としての使用は契約違反と主張。10数年前から前貸主に承諾を受けていることも無視し、100万円の立退料を提示してきた。アパート並みの立退料では移転できないと主張し、移転に必要な経費を請求して奮闘している。組合役員と相談しているので心強いと両氏の一言。

(東京借地借家人新聞より)

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