花・伊太利

日々の生活に関する備忘録です。

やってみなはれ

2010-02-09 23:43:01 | Weblog
 キリンビールとサントリーの経営統合が流れたことの関連記事を、今日の朝日新聞夕刊で読んでいると、サントリー社員のコメントが載っていました。曰く、「発泡酒が登場した頃からは、低価格競争が激化し、とにかく得意先の奪い合いになった」、「将来は統合も必要なのかなあと思うけど、今月の売り上げをどうするかで現場は必死。経営陣とはまるで別世界で、破談で動揺する人なんていないよ」、だそうです。
 この記事を読んで思い出したのが、このブログでも取り上げたことのあるリチャード・セネット氏の著書「それでも新資本主義についていくか」でした。セネット氏はこんなことを書いています。「何らかの葛藤状態に直面すると、人の注意は長期的視野よりも目先の環境に釘づけになる傾向がある。・・・(中略)・・・このような葛藤にとらわれたとき、その人の中で『専一的注意』(focal attention)が喚起される。読んで字の通り、目先の必要に焦点を合わせ、一つの問題に注意を集中させることである。」 これはまさしく、「今月の売り上げをどうするかで現場は必死」といった状態を指しているのではないでしょうか。
 続けて、セネット氏はこうも書いています。「『どこへも着けない』『いつも出発点』 これが、意味のなさそうな成功と向き合わされたり、努力しても報酬を得ることが不可能なことを見せつけられた人の実感である。こうした感情の動きのなかで、次第に時間が止まっていくように感じられる。この苦悶のただ中に立たされた人間は、『現在』の囚人となり、ジレンマのために身動きが取れなくなる。」
 朝日新聞が紹介したサントリー社員のほんの短いコメントで、サントリーの社内事情が分かるわけなどあろうはずもありませんが、「やってみなはれ」の企業風土は残り続けて欲しいものだと思います。ちなみに同じ朝日新聞夕刊の記事には、「サントリーは体育会系で熱意がすごい」という、北新地のバーのママの言葉も載っていました。

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