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地域インフラはメーカーが作り出す

意思の力から存在の力

 一番大きいのは、今までは、資本主義ではないけど、上から来る、意思の力で出来たものが、下からの来る、存在の力に変わってくることです。意思の力で、個人の存在の力を出すわけにはいきません。下から湧き上がってくるものだから。

 国民国家も同じです。フランス革命の時に湧き上がってきた力を、ナポレオンという意思の力でかすみ取られた。本来は、それぞれの人がどうやって生きるのか、どうして、パワーを出していくのかという存在の力です。

 ムスリムが偉大なのは、意思の力で全体を変えながら、生活を変えていく。そのための指針を示した。現世の中でどうやっていくかを、お互いが助け合うという戒律を示した。それで存在の力を発揮させたことです。

 だから、ムスリムの征服の仕方も、意思の力は余分なものを取り除くだけにして、後は個人の任せるというものであった。自分が気がつけば、ムスリムに来るという方法を取った。それによって、一気に拡大した。

 アラブの春は、新しいカタチ、統合しながら、分化させていく、分化でもって統合を緩めていくという、新しい民主主義を出そうとしています。

 現時点では、組織としてのムスリム同胞団と軍とのはざまで、多数決の論理で答えを出せない状態ですけど。新しい組織力を新しい議論から作り出して、組織そのものを存在の力で否定するカタチになるでしょう。ベースはムハンマドは示している。

 一神教であるということを押し詰めれば、偶像崇拝も管理者が要らないということです。キリスト教みたいな形ではない。自分の心の中にどう持つのか。

分化から最終ターゲットへ向かう

 分化したからこそ、私は大きなことを考えられる。7つのジャンルで分化しています。最終ターゲットとしてのLL=GGというのは、分化された個人と統合するものが一つになることです。その姿をもっと、具体的に描きましょう。

 とりあえず、コミュニティを中心にやっていくけど、コミュニティそのものも分化するし、そして、組織も分化します。

 歴史ライブラリの発想は、LL=GGの到達点に向けて、全体の流れを見ていく。歴史は、時空間の時間の方の全体です。数学は、時空間の空間の方の全体です。両方とも合わせれば、時空間そのものになります。

メディアをネットワーク上に

 都市というところを変えていかないといけない。人が多いから、メディアから変えて、連鎖反応を起こさせます。新聞のデリバリーそのものが合変わります。マルチメディアそのものがネット上に乗ります。発信源である、新聞記者そのものも、このネット上に乗ります。それは地域という周縁部ではなく、都会という核から変えていく部分です。

地域インフラはメーカーが作り出す

 今や、車は単独ではありえない。インフラとの関係が非常に強くなっている。インフラまで、メーカーが作らないといけない。行政に対する主導権を持たないといけない。それは市民のバックアップがなければ、不可能です。そうでないと、メリットだけのタダ乗りは許されない。

 電子書籍における、アマゾンとかグーグルのメリットそのものです。インターネットそのものがインフラをつくるモノに対して、報酬を与える。ソニーが時代遅れになったのは、この構図を理解していないからです。だから、一業態での変革だけではすみません。生活を変えていく、民主主義を変えていく。

歴史の分化

 歴史の分化は時間軸だけど、これに地域を加えると一つのイメージがわきます。つまり、国みたいなもの、一つの集まりがどういうカタチで変わっていくのか、その変わっていく様相を色々な事例で、横に展開し合って、影響しあうことが分化なんでしょう。それが大きい単位なのか、小さい単位なのか。

 だから、北欧の社会保障体制はギリシャには、影響を与えないけど、ドイツに影響を与える。その上で、ドイツからギリシャに影響を与えるような関係になります。そうなると、その地域の時間軸を点とすると、それぞれが時空間に浮かんでいる形になります。

 一番、壮大な歴史の分化は星の歴史です。銀河宇宙は初期の段階から、ビックバンまで宇宙に拡がっています。それが分化そのものです。それによって、その形態のパターンが分かります。先が読めます。

 これは、諏訪での入社試験の口頭試問の時に、応えたものと同じです。自分でやってきたのは、色々なアイデアが時系列に、ランダムに並んでいるところから、先を読むのが数学であると述べた。哲学的過ぎて、理解されずに、落とされたけど。

 それが未来学者として、蘇っています。それが歴史の分化とつながるということは、ずっと、同じことを考えてきたということです。そう考えると、多元宇宙なんでしょうね。地球から見ると、一つに見えるけど、宇宙は多元です。

 四方教授が数学科を「多元数理」に変えたのは、正解でしょう。プレーンで見ては何も分からないけど、分化させて、統合化させることです。

 歴史という時空間を、我々の空間軸に持ってくることになります。その中に、大きな循環があり、次元の圧縮と拡張がある。今は、コード化の時代です。

生活編の目標

 第7章の生活編の目標としては、あくまでもすべてを知ることです。この世界に放り出された身としての目標です。全ての中には、そこにあることだけではなく、未来のこと、人類のことを含みます。

 私としては、本来、関係ないけど、自分を見ていくために、何のために放り込まれたのか、と言うところ、存在の力をどう見ていくかですね。この一瞬でしか生きていない人間として、人間かどうかよく分からないけど、それは一つの役割でしょう。

民族と国民国家の集合関係

 未来の方向はさほど、難しくはない。問題解決の方向は二つしかない。民族と国民国家が合わないのは、その二つが集合関係になっていないからです。

 その時はどうするのか? 集合の和とか積で考えればいい。小さな単位でまとめることと大きな単位でまとめることです。その二つをまとめたのが、分化と統合です。このカタチに向かいます。

 1648年の条約は、一つの国民国家のカタチだったけど、その答えを出す時が来ています。その間に武器の進化があり、二つの大戦があり、多くの人が亡くなった。民族と国民国家の不一致のために。

 数学的世界観というのは、そういうものかもしれない。数学と歴史が分かれば、未来は分かります。
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何のために、毎日を過ごしているのか?

朝、4時に感じたこと

 何のために、毎日を過ごしているのか? 今という瞬間だけを味わいながら。今、この時しか与えられないにもかかわらず、狭い所しか動けないと思っている自分。いやらしさを感じます。

 この一瞬はつながったものであると同時に、非連続なものです。急に変えることもできます。積み重ねをどう活かすか。積み重ねは壊すためにあるものです。もう一つは、バックキャスティングです。どういうカタチにしていくのか。

 だから、他の人もあるとしたら、私と同じ感覚を朝、向かえるはずです。それかもっと、外部に囚われているか。何のためにそこに居るのか? そして、この時間を過ごしているのか? それらはすべて、現実にあるのか、バーチャルなのか。

 やはり、ベースは独我論です。どう感じようとしても、人の感情も、人の目も見えてきません。

 現実とは何か? 存在すること。存在とは何か?

分化と統合

 分化が始まります。分化と統合で。その時に、次期システムはだれが責任もってできるのか? 何しろ、逆行しています。

 話の手順が違います。まずは、分化することです。それぞれのところが、自分のアイデアで動けるようにした上で、統合するのです。統合の力を弱くすることです。ローカルのアイデアを結集しないとできないという意味です。

 その意味では、2010年の設計によく似ています。分化すればするほど、統合が必要になります。その統合は、ドンドン、上に上がっていきます。その時に考えたのは、事務局の必要性です。

 そこは、ファシリテーションとインタープリテーションの拠点です。それをパートナーに任せたいと思ったけど、その時点ではダメでした。今なら、もう少しわかるかもしれない。そして、これが本来、パートナーがやるべきことです。

ポータルの取りあえずのターゲット

 本来のポータルも究極なカタチにはできない。取りあえずのターゲットまではどう持って行くのか。最終ターゲットだけは販売店とハッキリさせましょう。

時間の流れ

 時間にしても、時系列で流れているとは思えない。そうでないと、映画は作れないです。

 映画は、シーンを作っておいて、あとから時系列で合成します。東富士で通勤の時に感じたのは、これは合成だということです。

 それでみんな騙されている。デカルトぐらいですよ。われわれは騙されていると感じたのは。独我論も同じです。最初は、見えているもの、感じているのが、本当に現実なのか。

ミカロスの意味

 ミカロスの意味は、社会との関係を絶つ、絶たれるということです。内なる世界で完結させます。その寂しさそのものを表しています。

 それで、どんな形になっていくのか。どんな形にしていくのか。何しろ、ミカロスをしっかり、使いましょう。12月8日までの時限立法だから、集中することです。

 明日は絶対ミカロスの日です。見直す時はキーワードをもう一度、ハッキリさせます。特に第8章。

国民国家とグローバル化

 国民国家で国を規定したところから、少子化問題も出たし、エネルギーの問題も出てきた。移民とか国境の問題も出ていた。それは国にとっては大変だけど、グローバル化で企業などが国を超えてしまった。

 そして、グローバル化すればするほど、地域をどうしていくかで、皆の知恵を使っていくしかない。そうしないと、資本主義の典型みたいなグローバル化にやられてしまいます。

時間のコード化

 時間のコード化は唐突かもしれないけど、これは現実です。等比級数的に増えてきた人口。それでもって、急にまた減っていく現象。自分の近くにも、コードレベルの変化が多くあります。

 インターネットの世界は完全に、ツールがローカライズされています。一気に拡張し、変革させられます。だから、時間も等比級数的に圧縮されます。自然現象も同じです。

 バランスが崩れるというか、変わる時はそういうものです。暖流の流れが少し変わるだけで、様相はカタストロフィー的に変わります。北極海にしても、風向き一つで、一旦変わり出すと、一気に変わります。非連続性です。氷の上に乗っかっているホッキョクグマとは無関係です。

 人間は自分が変わらないから、変わらないと思っているだけです。それは相対から見ると、人間はどんどん、変わっていることになります。

 歴史のコード化は、137億年対40年です。すごい急降下です。
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イスラム・テロVSアメリカの今後

『ビンラディン抹殺指令』より アルカイダの後継者

ビンラディンが殺害された後、アルカイダ指導部はすかさず「今後も聖戦を継続する」と宣言した。

米軍がアフガニスタンで押収したアルカイダの内部資料には、「指導者が死亡した際は副官が新指導者に就任する」との内規が書かれており、本来ならナンバー2のアイマン・ザワヒリが跡目を継ぐことになる。

しかし、アルカイダ指導部からは、本稿執筆時点ではいまだザワヒリ後継の公式発表はない。これについては、「仲間を大切にし、人の話をよく聞いたビンラディンと違い、唯我独尊タイプのザワヒリは人望がない」「ザワヒリは側近をエジプト『ジハード団』時代からの部下で固めていて、サウジアラビアやアルジェリアなど他の地方の出身者グループから支持されていない」などとの観測が広がっているが、真相は不明である。

また、元アルカイダ構成員の証言として、一部メディアでは「アルカイダ防衛保安委員長のセイフ・アデルが指導者代行に就任している」との未確認情報も報じられている。アデルはアルカイダ草創期からの古参幹部で、イエメンの「アラビア半島のアルカイダ」など海外の細胞や支援者、連携するイスラム過激派などに太いパイプを持っているといわれている。98年の在ケニアータンザニア米国大使館連続爆破テロの首謀者のひとりとして、FBIが国際手配しているテロリストだ。

しかし、アルカイダそのものは、2000年代後半から低迷の一途を辿っており、ビンラディン殺害の前から、独自の戦闘力はほとんど失いつつあったことは前述したとおりである。ビンラディンの隠れ家にあったパソコンからは、新たなテロ計画がいくつも発見されているが、いずれも具体化にはほど遠いものだ。このままアルカイダが消滅することはなさそうだが、組織の建て直しにはまだしばらく時間がかかるだろ報復テロに蠢く親アルカイダ系組織

もっとも、イスラム過激派の世界では、ビンラディンの遺志を継ぐ勢力がすでに出てきており、アメリカに対する報復テロは今後しばらくは頻発することが予想される。

アメリカ情報機関もそうした。ポストーアルカイダ々勢力の動きに警戒を強めている。なかでも要注意な組織は5つある。1つは、アルカイダ中枢と直結しているイエメンの「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)。2つめは、アルカイダの別働隊を自称するアルジェリアの「イスラム・マグレブのアルカイダ」(AQMI)だ。

両組織とも近年は弱体化しつつあったが、それで逆に、ビンラディン殺害への報復を掲げることで求心力を高め、組織の再浮上を狙ってくる可能性が高い。この両組織はこの機会に、組織の存亡を懸けて激しい自爆テロ攻勢に出てくることが懸念される。

3つめは、アフガン駐留米軍との戦いに血道を上げているタリバンだ。オバマ政権は2011年7月からの米軍撤退方針を表明しているが、それに対してタリバンは、すでにビンラディン殺害の直前に、新たな反米攻勢に出ることを宣言していた。タリバンは今後もアフガン国内で、駐留米軍やカルザイ政権に対するテロを激化させるはずだ。

4つめは、パキスタン東部を拠点とするカシミール系過激派「ラシュカレ・タイバ」(正しい軍隊)である。

従来は、世界各地の自爆テロ志願者は、パキスタン北西部の部族地域を訪問し、アルカイダから自爆テロの訓練を受けることが多かったが、アルカイダが部族地域の安全圏を喪失して地下に潜ったことで、こうした自爆テロ志願者がアルカイダ指導部と接触し、訓練を受けることが難しくなった。

彼らはその代わりに、パキスタンの親アルカイダ系過激派組織と接触するケースが増えたのだが、そういった過激派のひとつがラシュカレータイバだった。ラシュカレ・タイバはもともとパキスタン軍統合情報局(ISI)の別働隊のような組織で、対インド・テロ専門のローカルな組織だったが、こうして世界のイスラム過激派と人脈を広げた。カシミール系組織には他にも「ムハマドの軍隊」(ジェイシ・ムハマド)など、よりアルカイダやタリバンと近い小規模な組織がいくつもあるが、そちらも事情はほぼ同じだ。

もっとも、ラシュカレ・タイバは08年にインドのムンバイで大規模派な無差別テロを起こし、約170人も殺害したことが大きな外交問題になってから、パキスタン当局の圧力で現在は活動が低迷している。
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21世紀エネルギー革命 市民に責任感を植え付ける

『21世紀エネルギー革命の全貌』より

ヨーロッパがもつ見通し(あるいは政策)

 そのような新たな情勢を考慮すれば、高度に集積したさまざまな能力を活かして、節度あるエネルギーを開発していく必要がある。それはヨーロッパの起業家にとって素晴らしいビジネス・チャンスにもなる。ヨーロッパは、この分野ですでにトップクラスに位置している。したがって、スマートなヨーロッパ市民が正しいエネルギー政策を推進できるようにするためには、またヨーロッパの産業界が回収に数十年もかかる投資を適宜実行できるようにするためには、そのような新たな情勢を予見し、これをつぶさに分析することが、きわめて重要になる。

 二〇〇八年にヨーロッパは、「気候変動・エネルギー政策パッケージ」のなかで、持続的で責任感のあるエネルギーに関する見通しを明示し、「二〇二〇年までの3×20の原則」(温室効果ガスの排出量の削減、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの開発)を打ち出した。ヨーロッパの人口、経済、政治の相対的地位の低下が不可避であろうとも、またヨーロッパ市民の間で不協和音が鳴り響いたとしても、ヨーロッパ連合は、非炭素化された未来について一つの見通しをもち、過去数十年間に疲弊した産業界のリーダーシップを取り戻すことができるだろう。

 ところが、ヨーロッパにそのような共通した見通しがあっても、(その発注者である)ヨーロッパ各国は、ヨーロッパ連合のためのエネルギー政策を実行しようとしない。たとえば、ドイツとイギリスの両国は、それぞれの隣国と緊密な協議もせずに、自国のエネルギー・システムを変更する決定を下した。エネルギーのヨーロッパ政府は、金融のヨーロッパ政府と同様に、きわめて重要であるにもかかわらずだ……。

不確実性と複雑性が渦巻くなかでの勇気ある政治

 二〇五〇年には、世界人口は二〇億人増えるため、農業(耕作地と農法)、水資源、エネルギー、気候変動との間で軋傑が生じる。さまざまな不確定要因が無数にある、そのような複雑性を「モデル化」することは難しい。たとえば、エネルギー資源の利用可能性(そしてそれらの地理的分布)、エネルギーの価格推移や技術進歩、中国、インド、そしてアメリカをはじめとする世界全体で得られる(あるいは得られない)政治的コンセンサスなどだ。

 このような闇の中を歩むためには、われわれはいくつかのシナリオをつくることによって、起こりうる未来を想像してきたが、どのシナリオにおいても、エネルギー価格は上昇する。国民は当然ながらエネルギー代の高騰に不満を述べるだろう。だが、各国政府は自国民にこの悪い知らせを、きちんと伝えようとはしない。今後、消費者である国民にエネルギー価格を「直視」させる勇気ある政治が求められている。こうした政治によってこそ、国民はエネルギーを賢く少なく消費するようになるだろう。すでに「カウントダウン」がはじまったのだ。省エネによってエネルギー価格の上昇を補填できないのなら、エネルギー代は、世帯の家計にとって大きな負担となる。「エネルギー不安定」は、国民の怒りを(さらに)呼び起こす。ヨーロッパ都市部では、エネルギー代をめぐり、デモ行進が繰り広げられるかもしれない……。

効率性、多様性、柔軟性

 熱、移動、機械、照明などのエネルギー効率を大幅に改善する研究は、不安に対する「特効薬」になる。というのは、エネルギー消費が減れば、問題は生じないからだ。エネルギーの不確実性に対しては、再生可能エネルギーの割合を増やしてエネルギー源を多様化させることも、将来のエネルギー政策の骨子になるだろう。また、「旧エネルギー」と「新エネルギー」がいがみ合うようなことがあってはならない。つまり、太陽光、バイオマス、風力は、調和のとれたエネルギー・ミックスのために、原子力や天然ガスと、今後も長年にわたって共存しなければならないのだ。これまでにないエネルギー源の組み合わせが誕生している。たとえば、発電の九〇%が水力のノルウェーにおいて、北海に風が吹くときに風力を活用するのだ。風力が稼働しているときに水力が貯蔵する電力は、風が吹かないときに利用できる。もう一つの面白い例は、アメリカのテキサス州だ。石油のチャンピオンであるテキサス州は、(カリフォルニア州よりもはるかに進んだ)風力発電のチャンピオンでもある。

情報、透明性、民主的プロセス

 それらの不安を克服するためのイノベーションを打ち出していくためには、国民の問で、理性的で明快な民主的な討論を活発におこなわなければならないだろう。そのためには公益を考慮するために、民主主義のプロセスを見直す必要がある。

 情報収集、報告書の作成、教育、専門家同士の議論、アイデアを出し合うことなどが必要だ。もちろん、それらを実行すれば充分ということはないだろう。つい最近では、ヨーロッパにおけるシェールガスと原子力の例からは、感情的な反応と合理的な判断が交錯して、リスクを序列化できなかった。必要に応じてそれらのリスクからいくつかを選び出すことが、いかに難しいかが明らかになったのだ。一部のロビイストは、エネルギー価格に影響をおよぼそうと画策している。よって、国および地域のエネルギー政策の決定には、公的討論の結果を反映させていかなければならない。
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臨時軍事費特別会計 なぜアメリカは日本に石油を売りつづけたのか

『臨時軍事費特別会計』より 日米の対立と相互依存

一九四〇年夏の転機

 盧溝橋事件からほぼ三年のあいだ、アメリカが表立って実施した経済措置は、一九三八(昭和十三)年七月の航空機・航空機用エンジン・航空機装備品に始まった〝モラル・エンパーゴ(道義的禁輸)〟--法律や行政命令で規制するのではなく、航空機やエンジン製造業者にそれら機材輸出の自主規制を道義的な観点から要請するという穏健な措置--だけであった。

 しかし、そうしたアメリカの対日経済政策は、一九四〇(昭和十五)年夏に転機を迎える。前年九月のポーランド制圧以後鳴りを潜めていたドイツ軍が、四月上旬にデンマーク・ノルウェーに軍を進め、五月に入りベネルクス三国を鎧袖一触、フランスに侵攻した。二十九日にイギリス軍がダンケルクからドーヴァー海峡に追い落とされ、翌六月の十日にイタリアが参戦、十四日ドイツ軍パリ占領、そして二十二日にフランスは降伏した。

 ちなみにヒトラーが臨席した降伏文書の調印式は、ピカルディー地方の都市コンピエーニュ近郊の森にわざわざ運びこまれた鉄道車輛のなかでおこなわれた。その車輛とは一九一八年十一月、第一次世界大戦で敗れたドイツが休戦協定に署名した同じ客車で、フランスのフェルディナンドーフオッシュ元帥が戦いのさなかに前線司令部として使用していたのだという。アドルフ・ヒトラー伍長の強烈な意趣返したった。コンピエーニュ市はパリ北東八〇キロにあり、北には第一次世界大戦の激戦地ソンムが、西北方には十四世紀から十五世紀にかけておこなわれた英仏百年戦争の戦場となったクレシーが、そして南には、一〇九五年教皇ウヌハヌス二世の呼びかけで十字軍の派遣を決定した宗教会議の開催地クレルモンがある。

 ヨーロッパにおける事態の急転は東アジアの情勢と日本の軍事・外交政策に影響を及ぼさずにはおかない。

 大陸では、ドイツ軍に呼応するかのように、五月から九月にかけ日本の陸海軍航空隊が重慶・成都など中国奥地に百一号作戦を展開して大規模爆撃を敢行、甚大な被害を与えている。しかし、なんといっても重要なのは、独伊と軍事同盟を締結したこと、および本国がドイツに降った仏印(フランス領インドシナ)と蘭印(オランダ領東インド)への積極策であろう。〝バスに乗り遅れるな〟というわけである。

 仏印は援蒋ルート・ハノイから山岳地帯を経て重慶にいたる米英による蒋介石政権への物資補給路-の阻止という純軍事的見地からはもとより、良質の石炭、不足する米の供給地として、また蘭印は石油・生ゴム・非鉄金属の供給地として日本にとって枢要な地域であった。仏印については、フランスの対独協力政権であるグィシー政権および仏印当局との交渉によって九月に北部仏印に兵力を進駐させることに成功したが、蘭印からの石油を筆頭とする物資調達の交渉は不調に終わった。

アメリカの対日経済制裁

 このようなヨーロッパにおけるドイツの電撃的勝利とアジアにおける日本の積極策に際会したアメリカは、みずからの防衛と与国支援のための軍備増強および軍需物資の本格的な対日輸出規制を開始する。軍備増強は後述するとして、ここではまず対日輸出規制について言及しておきたい。

 一九四〇年七月二日に成立した防衛強化促進法第六条-国防上必要と認めた場合、大統領は武器弾薬・機械器具・原料品の輸出禁止もしくは削減をなしうると規定--にもとづき、ローズヴェルト政権は軍需物資の本格的な対日輸出規制に乗り出す。即日アルミニウムをはじめ基礎的資材二十六品目、化学薬品十一品目、航空機部分品、工作機械などを輸出許可制品目に指定したのを皮切りに漸次規制の枠は拡大されていく。

 主なものを挙げると、七月二十六日航空機用ガソリン・潤滑油、一部等級の屑鉄(対日輸出の二〇パーセントに相当)が輸出許可制品目に追加、三十一日には西半球以外への航空機用ガソリンの輸出禁止措置が講じられた。さらに十月十六日以降、全等級の屑鉄かイギリスおよび西半球以外への輸出禁止となり、また十二月十日には鋼鉄製品が、翌一九四一年一月十日には銅類、錫、苛性カリ類が輸出許可制品目に指定された。

 このアメリカの措置が日本にとってどれほど深刻だったか。

 昭和十五年八月二日調製の企画院による「応急物動計画試案説明資料」は、屑鉄について「其後著しく鉱石法に転換したる本邦製鋼法も今猶全能力の四〇%は屑鉄法に依らざるべからざるの現況にして、屑鉄の輸入杜絶は直接之等製鋼設備の操業を著しく圧縮又は廃止せしむるの止むなきに至るべし」といい、また輸入機械類については、次のような判断を示している。

 由来機械類の輸入は米国よりのものが其の過半を占むるものにして、支那事変の勃発による日満支を通ずる国内軍需工業の大伸長と第二次欧洲戦乱に依る海上輸送路の封鎖等の影響により対米依存性を益々顕著にし、生産力拡充計画其他に於て生産計画の一部を変更するの余儀なきに至りたるものなり。然るに今又米国よりの輸入杜絶を想定するときは其の一部を独其他の欧洲に切替え得るとするも、機械設備の型式等の変更は生産計画の設計方式等を変更するものを生ずべく、又海上輸送以外には其の入手不可能のものあり、陸路にては個々の重量及全体的に量的の制約もあり其の混乱は数字的に見る以上のものなるべし……遺憾ながら米国よりの輸入杜絶を想定するは無謀に近きものと称するの外なかるべし。

 しかし、日本にとって死活的な、したがって制裁としてもっとも効果のある石油にたいする規制措置は進捗しなかった。
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