転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



ロメロがレット・バトラーほど年齢の高い男だとは思わないが、
明らかに、主役のエリオより年長の男性だということが
ゆうひ(大空祐飛)くんの演技から自然に伝わってきた。
エリオが、情熱的で眩しい、いかにも青年らしい存在であることに較べ、
ロメロは、財力も社会的地位も兼ね備えた、陰のある大人の男性だった。
オペラグラスを持っていなかったので、細かいことはわからなかったが、
ゆうひくんの演じるロメロは、芝居の流れが能動的な場面でも、
冷たく硬い表情を維持していたところが多かったのではないだろうか。
舞台の雰囲気やロメロの風情からは、そのように見えた。

最初にロメロを良いと思ったのは、別邸での夜会の場面の立ち姿で、
私の観たい・私好みの、男役の上着ラインが、実に綺麗に見えた。
「ただまっすぐ立っているとき、どんな男役に見えるか」
というのが、究極的な試金石みたいなものだと私は常々思っていて、
今回のロメロには、その点で「!」と心惹かれるものがあった。
ただ、このときは、ゆうひくんだと全然気づいていなくて、
『誰か知らんが、さすが、花組の男役だなぁ』
とひたすら自分勝手な感慨にふけっただけだったが
(高汐巴の時代以来、私の中では『花組の男役』というのが、
宝塚男役のエッセンスを体現する用語みたいなものだ(殴))。

そのあと、しばらく、ビセントとメリッサの道ならぬ恋のほうに
話の力点が、一旦、移動してしまったような印象があって、
私はこのあたりはビセントが二番手だと勘違いして観ていた。
ビセント(愛音羽麗)には破滅的な美しさがあって、とても良かった。
年齢だけでなく役柄的にも、本来はロメロよりビセントのほうに、
主役に準じる味付けとか場面構成などが与えられているようだし、
もっと濃く演ってもおかしくないのでは、と観ながら思ったが、
後半、ビセントの登場場面がなくなり、軽い扱いになってしまうので、
芝居全体のバランスを考えると、難しいところだったのかもしれない。

メリッサを巡ってビセントと争う司法長官がまた、実に端正で
ロメロほどの年齢は感じなかったが(でも本当はオッサンなのでは?)
誰が演じているのかと思ってあとで調べたら、こっちは眉月凰だった。
エリオ、ロメロ、ビセント、司法長官のセバスチャン伯爵、
それにエリオの師アントン(夏美よう)、と、
どちらを向いても型の見事な二枚目が並んでいて、
こういうものが観られる組はやはり豪華でいいなあと思った。

さて、ビセントとメリッサの後を辿るように、
その後、エリオとエバも危険な恋に身を投じるのだが、
エバを愛人にしていた(「妻」でないところが良い!)ロメロは、
これを看過できず、自身の愛と誇りを賭けて決闘を申し込んでくる。
芝居では、エリオの葛藤がとても丁寧に描かれていて、
まとぶん(真飛聖)は勿論、文句なしの好演だったと思うのだが、
私は、ここでロメロのほうの内心が吐露される場面がほぼ無いというのが、
柴田先生の計算なのか、主役じゃないから仕方ないのか(!)と、
客席で再び悶々としてしまった。
ロメロみたいに誇り高い大人の男が苦悩するところって、
観てみたいではありませんか(殴)!
ゆうひくんが、エリオの前では、感情を露わにするぎりぎり手前で、
ようやく踏みとどまったような演技を見せているので、よけいに!
エバもロメロには逆らえず、一旦、連れて帰られたわけだが、
あのあと、どうなったと思います(殴)!?


(続)

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