転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



家の郵便箱にときどき勝手に突っ込まれている無料ペーパーを
昼に帰宅した主人が、食卓についてから、読んでいた
(この男は結局今でも昼食を食べに家に帰っているのだ)。

まず主人は、『サイキック有資格者のいるサロン!』という広告に
「サイキックに資格の有無があったのか~!!」
と、ウケた。
私も、そんな資格があるとは知らなかった。
くぁ~、め~、は~、め~、っハーーーっっ!!
と、有資格者の方が、特別な波動を込めて下さるんでしょうか。
一度、施術されてみたいような、みたくないような。

それから主人は更にページをめくると、占いの箇所に目を通し、
来月の自分が幸せか不幸せかを確認したあと、
その下にあるエッセイ風の文章を読み始めた。
どうやら、そのページに掲載されている「来月の運勢」を占った、
占い師さんの文章らしかった。
が、主人は、しばらくして、
「・・・わからん。日本語が、難しい」
と顔をあげた。

****************

ころもんはフランス人だから日本語読めないんだな、
と思いながら、私が問題の文章を手に取ってみた。
書き出しは、こうだった。
『最近、父と弟の愛人達のような、夫に取り付いて離れない、夫の愛人に苦しめ続けられている不倫の相談が急増しています』。

どうやら筆者の父親と弟にはそれぞれ愛人がいるということのようだ。
で、その愛人たちは執拗で、容易に離れないタイプである、と。
このような話が世の中にも多いらしく、占い師である筆者は、
夫の不倫に悩む妻からの相談が、最近は特に増えたと感じている、
・・・と私には読めるのだが、違うのかな?

連載モノでもないのに、いきなり「私の父と弟の愛人達のような」と
振られても、大半の読者は困惑するしかないと思うのだが、
字数に限りのあるページだから仕方がなかったのかもしれないと私は思った。
が、続けて読んでみたら、そんな一筋縄で行く文章ではないことがわかった。

妻子ある人との恋愛に罪悪感も覚えず、自分の欲望だけを追うのは最低だ、
という意味のことを述べて、不倫関係を楽しむ女性達を糾弾したあと、
『本妻の夫が、本妻子を犠牲にさせられ、先祖や親や姉達親戚を悲しませて苦しむのも一切構わず、その男の体で楽しめる残忍な神経の愛人に愛はなく、それが出来た残忍な心は、老いて癌になれば、父にすら向けられました』。

うぅむ。コレはかなりツラい。
「筆者の弟が不倫をしていて、愛人のせいで筆者たち家族は苦しめられた。
しかし愛人であった女性のほうには真の愛情はなく、体の関係だけだった」
というあたりまでは、だいたい読み取れるのだが、
そのあと唐突に出て来る、『老いて癌になった』のは、誰???
それを機会に、この愛人は、筆者の弟だけでなく、
筆者の父にまで色目を使うようになった、というふうに読めるのだけど、
『老いて癌になった』のが筆者の弟さんなら、
そのお父さんはもっと老いているわけで(爆)、
とすると、愛人本人が『老いて癌になった』の?
それとも、『老いて癌になった』のは筆者の父のほうで、
愛人女性は老人の苦悩につけ込んで二股を始めたということ?
あれ、でも冒頭で『父と弟の愛人達のような』とあったよね?
すると、そもそも筆者の家庭に関わった愛人って、何人???


道に迷っている私にはお構いなしに、文章は更に続く。
ここからが恐るべき長文だ。
『・・・本妻子の生きるための生活費と、生活外の自由に使えるお金で遊び廻り、女のくせに、女の幸せを壊して、女としての反則で、男の生理機能と精神構造と、人間的弱さや愚かさの弱みにつけ込んで、本妻夫婦の信頼関係を壊し、本妻子の生活を脅かし、いつまでも離れなければ、本妻子に与えている全てをよこせと、本妻の夫を追い込んでいるのと同じ、・・・(中略)・・・愛人達がチヤホヤしても、本妻の子達を愛するわけがなく、父や弟にチヤホヤするのも、父や弟が、本妻子や母親を護るために・・・』

やっと這い上がれそうになっては、また元の木阿弥に戻るという、
アリ地獄で際限もなく苦悩させられているような気分だ。
数えてみたらなんと18行にもまたがって、一文が続いていた。
「。」が一度も出て来ないまま、およそ390字ほど文が続くのだ。
400字詰原稿用紙とゆーのがありますが、原稿用紙ほぼ一枚全部が一文って。

わかったのは、弟や父に愛人がいたせいで、
筆者の家庭がドロ沼だったということだ。
筆者はそのような不幸のもとになる不倫を真の愛だなどとは絶対に認めない。
男には弱さと愚かさがあり、そこに付け入る女には打算と欲望があり、
男の妻子を不幸に突き落とすそのような男女関係からは、
決して幸福な恋愛も祝福に満ちた未来も生まれようがない、と
(女性側にだけ特に厳しい見解だ・汗)。

ったく、こんだけ丁寧にこのエッセイを解読しようとした人間は、
とりあえず広島市内では私ひとりなのではあるまいか。
ちなみに最後の一文だけは、それまでのアリ地獄がウソのように、
あまりにも、光り輝くばかりに明快だった。

『不倫に嵌っている方は、一秒も早く脱出を!!』

メデューサもドラゴンも倒さなかったのに、うっかり洞窟脱出できた気分♪

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