私は、70年代にピストルズの記事を通してシド・ヴィシャスを知り、
寄り添うように彼のそばにいたナンシー・スパンゲンのことも、
そうした記事の写真を見て、ほぼ同時に覚えた。
彼らのことは、その衝撃的な死をも含めて忘れがたく、
88年に公開になった映画『シド・アンド・ナンシー』も観に行った。 89年夏にNYに行ったときは、事件の現場だったチェルシーホテルに行き、
その帰りに書店で、ナンシーの母デボラ・スパンゲンの著書である、
『And I Don'T Want to Live This Life』を偶然見つけて、買った。
映画『WHO KILLED NANCY』では、大勢の人々の証言を追い、
ニューヨーク市警の捜査資料を洗い直して、
ナンシーの死の真相に迫ろうと試みているようだ。
『And I Don'T Want to Live This Life』を久々に手に取った途端に、
このような映画が公開されるとは、やはり私はなんとなく、
シドとナンシーに呼ばれているみたいな気がした。
死後三十年を経て、なお強烈な、ふたりなのだった。