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すーさんの山日記

山と釣りとテレマーク
八幡平の登山情報

火怨(かえん) 高橋克彦著

2007-12-05 01:41:47 | 読書
火怨〈上〉―北の燿星アテルイ (講談社文庫)
高橋 克彦
講談社

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吉川英治文学賞受賞作。
時は奈良から平安へと移り変わろうとする末法の世。恐々とする都人。天皇は大仏建立を成就せんがため、それにほどこす金箔を陸奥の黄金に求めた。
東北地方の朝廷支配の最前線多賀城を中心に搾取が行われ、蝦夷の人々は謂れのない差別を受けなければならなかった。
朝廷支配に対し、それまでも近隣の蝦夷たちは小さな抵抗を続けていたが、伊治(現在の築館)の鮮麻呂の反乱をきっかけに、胆沢(現在の奥州市)の阿弖流為(アテルイ)を中心に奥六郡の蝦夷が結束する。物部氏の後ろ盾を得て、阿弖流為は朝廷軍に対抗すべく組織的軍隊を作り上げていった。大軍を繰り出してくる朝廷軍の執拗な攻撃に対して、阿弖流為たちは20年の長きに及ぶ抵抗を繰り広げる。阿弖流為の右腕となって働いた母礼(モレ)の策略もあり、最後まで負けることはなかったが、繰り返される戦で疲弊していく農民たちの姿に耐えられず、阿弖流為は自分の首と引き換えに、陸奥六郡の平和を手にすることを選んだ。
謂れのない偏見からの解放、戦のない世の中を夢見て阿弖流為たちは戦った。そしてその思いは時を経て、安倍貞任、藤原経清、清衡らに引き継がれて、奥州藤原文化として開花するのである。
内容はザッとこんな感じではないかと思うが、これは東北人高橋氏から見た歴史観であり、史実に多少の脚色がほどこされているものの、同じ東北人としてひじょうに共感出来る作品であり、胸が熱くなる思いであった。自分にも、この人たちの血が流れていると思うと、今まで以上にこの土地が愛おしくなり、そして郷土のことをもっと知りたくなるのである。
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炎立つ(ほむらたつ) 高橋克彦著

2007-11-11 10:59:38 | 読書
炎立つ〈壱〉北の埋み火 (講談社文庫)
高橋 克彦
講談社

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盛岡在住、高橋克彦さんの著書。NHK大河ドラマとして放送され、ご記憶の方もいらっしゃるかと思います。
最近、歴史に再び興味を持ち始め、そして地元の山を案内する機会も多く、その歴史的背景を詳しく知ることで、「もっと面白い案内が出来るのでは?」ということで「炎立つ」です。前九年の役、後三年の役、奥州平泉の盛衰。高橋さんはそのへんを蝦夷側の視点から、安倍貞任、藤原経清、藤原清衡等の人物と通し、鮮やかに描いています。
古くからみちのくの人たちは、蝦夷として中央から虐げられながらも強く生きてきました。そんなご先祖様の活躍に感謝し、尊敬し、この岩手の地でしっかり腰を据え、ご先祖の苦労に報いることの出来るような男になりたいですねえ。
歴史小説を読んで思うのは、作者の主観が入るものの具体的な人物描写で感情移入しやすいということ。時代の流れやつながりがよく分かるということ。高校生ぐらいの受験生には、年表丸暗記の歴史だけじゃなく、ぜひとも歴史小説を読んでいただきたい。具体的にイメージ出来、歴史の流れもつかめ、もっと歴史が面白くなるはずです。
そして、岩手の方々には高橋克彦さんの歴史小説をオススメします。
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TBS系列 「輪違屋糸里」 浅田次郎原作

2007-09-11 00:17:59 | 読書
「輪違屋糸里」TBS系列で2夜連続で放送されましたが、ご覧になりましたか?
女性の側から見た新撰組という今まであまり無かった切り口で、本で読んだ時は切なく、そして面白く読むことが出来ました。しかし、どうしても映像化すると、物足りなくなるのは仕方ないんでしょうか?それに、大河ドラマのキャスティングがどうしても頭から離れず、伊藤英明の土方歳三、中村獅童の芹沢鴨にはとくに違和感を感じました。大河ドラマの「新撰組!」はインパクトありましたからねぇ。
ドラマはこんなもんだとして、原作「輪違屋糸里」はぜひ一読おススメです。そして「壬生義士伝」もあわせて読めば、もう思いっきり泣けます。
浅田次郎さんには、よく泣かされてます。



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邂逅の森

2007-07-13 00:50:52 | 読書
邂逅の森

文藝春秋

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直木賞受賞作。
タンザパパからいただいて、しばらくは積読でした。スイマセン。
しかし読み始めるや、熊谷さんの世界へグイグイ引き込まれていきました。
マタギのしきたり、狩猟方法、当時の歴史的背景など丹念に資料を読み込んで、現地にも足繁く通われたと思われます。
秋田の阿仁、山形の大鳥。今では想像もつきませんが、明治から大正にかけて興隆を極めた鉱山があったんですね。松尾鉱山もまた然り。
そして、人間の根っこの部分の描写。ストーリーの面白さ。ただのマタギ文化の紹介的な小説ではありませんぞ。

14日~29日まで中国ツアー第2ラウンドです。
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ミニヤコンカ奇跡の生還

2007-06-24 01:46:54 | 読書
ミニヤコンカ奇跡の生還

山と溪谷社

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今度、仕事で四川省大雪山脈のトレッキングに出かけるにあたって、久し振りに本棚から引っ張り出して読んでみた。

ミニヤコンカのピークにアタックをしかける松田と菅原。しかし、悪天候と高山病で登頂をあきらめた2人に待っていたのは、より困難を極める下山だった。
それに追い打ちをかけるような無線の故障。山頂直下から交信が途絶え、もはや誰もが2人の生存の可能性が無いと判断し、登山隊は撤収。しかし、彼らは生きていた。彼らは仲間を信じて下山するが、仲間はもういない・・・。
下山途中、松田は菅原と離れてしまう。松田は19日間朦朧としながらも、凍傷に痛む足を引きずりながら下山し、麓に住むイ族の男達に奇跡的に助けられる。しかし、菅原は後の遺体捜索隊に発見される。
1982年の出来事である。当時はすごくセンセーショナルな報道がなされたことを今でも覚えている。
成功例から学ぶことは多い。しかし、失敗例、このような遭難事故から学ぶことはもっと多い。遭難はミステイクの積み重なりで起こる。そのミステイクが多ければ、甚大な事故になってしまう。
そして、この2人の生死を分けたものは何だったのか?最後は、「生きようとする気持ち」だったんじゃないんでしょうか。生と死を分ける局面で、私はこういう気持ちをもち続けることが出来るのか?
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岳人3月号

2007-02-15 01:13:19 | 読書
岳人3月号36~37ページに文章書きました。
それ以外でも山スキーの情報満載ですので、書店でお買い求めいただき、読んでみて下さい。


八甲田の雪崩のニュース。
ガイドという仕事の難しさ。
自然に翻弄される人間の無力さ。
山はそんなに甘くない。
つねに100%の人間はいない。
人を責めることは簡単だが、
いざ自分がそういう場合に正しい判断が出来るか?
つねに謙虚に。
自然の前では、我々は皆等しくちっぽけで、
やはり無力なんだ。
自然の中に入る以上、山岳技術、滑走技術を高めていく努力を怠ってはいけない。
そして、臆病じゃなきゃいけないんだろう。

亡くなられたお二方のご冥福をお祈りいたします。





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開高健 ビデオエッセイ「河は眠らない」1985

2006-12-28 20:30:48 | 読書
この間の田沢湖出張の際、Yさんにお借りしたビデオです。内容はというと、開高健氏がアラスカでキングサーモンを釣りながら、酒をラッパ飲みしながら、人生訓をぐだぐだと語り続けるというもの。1時間ビデオです。
これがまた、酒を飲みながら見るとひじょうにいい。アラスカの美しい景色。針葉樹の緑、水の流れ、氷河をいただく山々。
そして、開高健氏の断定的な押し付けがましい語り口。これもまたいい。私にもあれぐらいの、押し付けがましさが欲しい…憧れます。
女性の方にはただただ退屈なビデオだと思いますが、男だったら理解できる世界ではないでしょうか?
圧巻は、最後に60ポンド(約27kg)のキングサーモンを釣り上げるシーン。酒を飲む手が止まります。このビデオのジャケットのヤツがそれです。鮭の切り身がどれだけ作れるんでしょうか?
85年制作、生産中止のビデオですので、中古ビデオ屋で見かけたら、ぜひご購入を!
ちなみに、85年当時で14,800というお値段のビデオです。

開高健
1930年 大阪市生まれ
釣りに関する著書多数
1989年 食道腫瘍に肺炎を併発し死去
享年58歳



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天切り松 闇がたり

2006-11-03 00:46:27 | 読書
闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉

集英社

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浅田文学の真髄ここにあり。ぜひ読んでみてください。
あまり今時じゃあないかもしれない。
粋、侠気(おとこぎ)、義理人情。
大正時代の東京を舞台に活躍する義賊「目細の安吉」一家の物語である。
あまりぐだぐだ解説しても仕方ないので、文庫本第2巻「残侠」より抜粋。
「男てえのは、理屈じゃねえ。おぎゃあと生まれてからくたばるまで、俺ァ男だ、俺ァ男だと、てめえに言いきかせて生きるもんだ。よしんばお題目にせえ、それができれァ、理屈は何もいらねえ。さ、言ってみな」
「俺ァ、男だ」
「もういっぺん」
「俺ァ、男だ。俺ァ、男だ」

文庫本全3巻
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蝉しぐれ

2006-10-19 14:02:25 | 読書
蝉しぐれ

文藝春秋

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藤沢周平氏の著書「蝉しぐれ」、最近、NHKでドラマの再放送をご覧になった方も多いかと思います。
舞台は架空の藩・海坂藩で、藤沢氏の出身の鶴岡(庄内藩)がモデル。
主人公は海坂藩普請組の牧文四郎。お家騒動に加担した咎で父は切腹させられるが、父は切腹の直前の面会で文四郎に「父を恥じてはならぬ。」と言い残して死んでゆく。
亡骸は罪人としての扱いをうけ、文四郎は父の亡骸を大八車に乗せ、自ら家まで運ばなければならなかった。家の前には急な坂が待ち受け、文四郎一人の手では何ともしがたい。そこに現れるのが、お互いに密かに思いを寄せる幼なじみのおふくである。二人で大八車を引くシーンは、ドラマでは一番の泣かせ所であった。
父の亡き後、牧家は碌を下げられ長屋住まいの身となり冷遇されるが、文四郎は剣の稽古に励み、まっすぐに成長していく。おふくは海坂藩の江戸屋敷奉公が急に決まり、自分の思いを伝えるべく文四郎に会いに行くが、結局会えず、江戸へ旅立つのであった。その後、おふくは藩主の側室となり、文四郎の妻となることはなかった。
碌も戻され、元服も済み、剣の稽古も積み立派な青年となった文四郎は、父の死がすべて家老里村の企てによるものだと知るが、文四郎もまた権力争いに翻弄されることになってしまう。そして、藩主の子を生んだおふくの元に里村派の刺客が指し向けられるが、文四郎が命がけでおふくを救い出す。
幼なじみ・おふくとの叶わぬ恋の結末は・・・
大筋はこんな感じでしょうか。
剣、仲間との友情、叶わぬ恋・・それぞれに細かい描写で、想像力をかき立てられます。そして、泣けます。
「義を見てせざるは勇無きなり」という言葉を思い出しました。
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国家の品格 

2006-08-21 21:46:49 | 読書
国家の品格

新潮社

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著者の藤原正彦さんのお父様は、山岳小説の巨匠新田次郎さん。藤原さんは数学者。話しの内容は山とは関わりないですが、ベストセラーということもあり、書店で平積みになっているのを購入。
タイトルからすると、なんだか小難しい話ばっかりでつまらなそうに感じるかもしれませんが、ひじょうに読みやすく、内容も素晴らしい。ひじょうに共感出来ました。これからの子育ての参考にもなりました。
藤原さんの言いたいことは何か?
武士道精神の見直し。卑怯なことを許さないということ。ダメなものはダメなのだ!ということ。大勢で一人をいじめたり、弱いものいじめたり、万引きしたり。
国語力アップ。ゆとり教育が始まってからというもの、日本人の学力は年々低下の一途を辿るばかり。すべての思考は言語によって行なわれ、国語力の低下は思考力、判断力、理解力の低下にもつながってくるのである。たとえ英語が流暢に喋れるようになっても、話しの内容が薄っぺらでは、国際的に尊敬される国家にはなり得ない。
藤原さんが言いたいことをかいつまんでみると、こんな感じでしょうか。
この本の帯にもありますが、「すべての日本人に誇りと自信を与える!」一冊であります。そんなに難しい本ではありません、この夏、ぜひ読んでみて下さい。


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