元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

研ぎの美しさ

2012-04-26 | 仕事について

マニアック過ぎる話なので、今まで避けてきたイリジュウムの研ぎの話。

自分が書きやすいと思った万年筆のペン先をルーペで見る癖があったのは、ペン先調整をする前からでした。

たくさんのペン先のイリジュウムの形を見て思ったのは書きにくい理由は見えるけれど、書きやすいと思ったものには様々な形があるということでした。

どのような形にすれば最上の書き味になるかはまだまだ探究中ですが、さまざまなペン先の研ぎの中で最も美しいと思っていて、許されればそれに近付けたいと思っているのは角研ぎ以前のペリカンのイリジュウムの研ぎ方です。

筆記角度やペン先の向きなど限定されるので多少調整で合わせるか、書く人がペンに合わせるかしないといけなくて、今の丸研ぎのペン先の方が扱いやすいのかもしれませんが、角研ぎのルーペから見える美しさは丸研ぎの比ではありません。

角研ぎの中でも60年代から70年代前半まで作られたペリカンM60のペン先はほとんどのものが美しい。

もちろん書き味も素晴らしい。

ペリカンM60は総14金張り(キャップだけ金はM30といいます)のあまり大型ではないボディにあまり大きくはないペン先の吸入式万年筆です。

デザインなどそれほど優れたものではないと思っていますが、その書き味は秀逸です。

もちろん書き味は好みがあるものですので、押し付けはできませんが、私は良い書き味のひとつの正解をこのペリカン60に見ます。

委託販売に2本のペリカン60が今揃っています。売れてしまった時は悪しからず。34000円です。