以前はお客様にお勧めする万年筆が自分が使っているものと同じものだったとしても、その事実は絶対に明かさなかった。
お客様から「何でお前と同じペンを使わなあかんねん」と思われるかもしれないと思ったし、何か押しつけがましいような気がしていました。
会社のいた時は、同僚や上司がそんなふうにお客様に言っているところを見ると、「何て慎みのないヤツ」だと思っていました。
要するに自分の美学がそれを許さなかった。
齢をとってツラの皮が厚くなったのか、自分の店ということで役割が違うことを認識したのか、何となくもうそれも許されるようになってきたかな?と思うようになりました。
自分が使って良いと思ったこと、欠点などをお客様にお伝えした方がいいと思ってから、自分が使っているペンを積極的にお勧めするようになりました。
店主が個人的に使っている万年筆を片っ端から勧められたら、お客様はたまらないと思うけれど、、共感し合える仲間を増やしたくて自分が使っている万年筆をよくお勧めしている。
どの万年筆も良いところがあれば、欠点と言えるところがあって、欠点がないという万年筆は良い部分もそれなりのものだろうと思っている。
初めて使う万年筆には定番と呼ばれるスタンダードなものをお勧めするけれど、ある程度使われている方には多少使いこなしに工夫が必要だったりするクセの強いものをお勧めしたりします。
万年筆の使いこなしと言っても、相性の良いインクを見つけるということや、ペン先が乾かないような工夫のような簡単なことだけど。
同じペンを持って共感し合えたり、使いこなしなどの情報交換ができるととても嬉しく、それが超メジャーな万年筆でなければより仲間意識が強くなるような気がしているので、あまり売れていないとか、日本の輸入代理店が在庫を持っていないからあまりお店に並んでいない万年筆を知ると、それを3か月待ってでも当店に並べたいと思う。
当店は万年筆を使う人を増やすために開店して、その目的は今も変わっていないけれど、個人的な野望も芽生えてきて、同じペンを使う、共感し合える仲間を増やしたいと思うようになってきました。