Mに入ってもらってから、いかに地味なことの繰り返しである店の仕事を続けてもらうかということを考えている。
そんな子じゃないと分かっているけれど、外から見たら優雅な仕事に見えたかもしれないけれど、入ってみると結構地味で、しんどい作業の繰り返しだということに嫌気がさしていないだろうかなどと、心配したりします。
でも店の仕事というのはそんなもので、実は毎朝Mがしている掃除が最も大切な仕事で、それよりも先にするべきことなどないということを知ってもらって、そこにもやり甲斐を感じてもらいたい。
掃除ができているから、自信を持ってお客様をお迎えすることができるというのは、茶会の朝に茶室を履き清める亭主の心構えと同じだと思う。
私が会社で働いていた時、苦労させて妻に申し訳なかったけれど、給料の額を気にしたことがなかった。
自分で企画したコトや商品が実行できて、お客様の反応をすぐに知ることができることはとても面白く、失敗も多かったけれど、こんなに面白い仕事はないと思っていた。
まさにやり甲斐のある仕事で、金銭的な見返りを気にしたことはありませんでした。
よく労働時間と給料のワリが合わないと不平を言う人がいたけれど、販売というのは時間のかかる仕事で、他の時給で働く仕事とは同じように考えられないものだと早くに気づいていました。
始めるための能力や才能などはそれほど要求されないけれど、向いていないと続けられない仕事。
休みの日や家に帰ってもそれについて考え続けて、思いついたことを仕事時間に実行してみる仕事なので、オンオフの切り替えとか仕事とプライベートを切り離して気分転換したいと言う人には全く向かない仕事だと思います。
そういう割り切りができずに辞めていった人たちもたくさん見てきたけれど、それぞれの仕事の事情を理解せずに、自分の権利ばかり主張する人はどこに行っても長続きしないのではないかと思うこともあります。
そんなふうに言うと、根性論を社員に押し付ける創業社長の典型のようになってしまうけれど、私がMに見せることができるのはそういう仕事と、生き方で、自分ではそれが一番幸せな生き方だと思うからMに入ってもらった。
少し話が反れるけれど、その人の今までの人生で得た経験や趣味などが思わぬ形で発揮できたりするのが、小さな店での仕事だとも思っています。
残念ながら私はそういうものをあまり持ち合わせていなけれど、好きなことがあってのめり込んだもののある人は、それが必ず役に立つと思っています。
拘束時間は長いし、休みは少なくてそれが嫌な人も多いと思うけれど、店で働くということは本人次第でやり甲斐のある楽しいと思える仕事なのではないかと思っています。