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2011-01-10 | 投稿・投書・私の意見

多様な生物育む  湿地 干潟


干潟などの湿地は多様な生物を育み、その力で自然環境を浄化します。そこは漁業、農業にも活用され、「生命のゆりかご」として市民から親しまれて います。現在、日本を含む160カ国が加盟するラムサール条約(国際湿地保護条約)は、湿地を開発や埋め立てから守る役割を果たしています。千葉県の三番 瀬(さんばんぜ)と宮城県の蕪栗沼(かぶくりぬま)地域のとりくみを紹介します。


“宝の海”守る運動広く/東京湾三番瀬

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東京湾の最奥部に残された自然豊かな干潟・浅い海を三番瀬といいます。千葉県浦安市、市川市、船橋市、習志野市に囲まれた約1800ヘクタールの海域。有名な東京ディズニーランドの近くです。

三番瀬は、江戸時代から漁民の暮らしを支えてきました。スズキやカレイなどの稚魚が育ち、スズキの水揚げ量は日本一です。アサリなどがわき、ノリ養殖は「三番瀬産」として評判で、「宝の海」といえます。

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東京湾で巻き網漁を営む、大野一敏さん(71)は船橋市漁業協同組合の組合長です。

「東京湾の干潟の90%が埋め立てられた。貴重な三番瀬がなくなってしまうと、東京湾の生態系も壊滅的な被害をうけ、再生不能となりかねない。祖先が命がけで守ってきた海を、孫子の代まで引き継ぎたい」

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(写真)三番瀬の恵み、アサリなどを採る人たち=千葉県船橋市

大野組合長は「そのためにラムサール条約に登録し、保全するのが一番よい」と、力をこめます。

「宝の海」を守る東京湾の漁民の活動は、1950年代に盛り上がりました。本州製紙による黒い水(排水)事件に浦安の漁民が立ち上がり、58年、水質保全法などの制定の契機になりました。その後、運動は三番瀬のすぐ近くの谷津干潟をラムサール条約に登録しました。

三番瀬は、何度も埋め立て計画の対象とされました。1990年代、三番瀬の保全を求める県民の世論が大きく広がり、2001年、埋め立て計画は白 紙撤回になりました。しかし、堂本知事(当時)は干潟の保全ではなく「再生」としたために、人工干潟造成の余地を残し、「(三番瀬を通る)第2湾岸道路は 必要だ」と言い続けました。

これに対し、三番瀬をラムサール条約に登録し、恒久的に保全しようと、たたかいが盛り上がっています。千葉県弁護士会は昨年9月、2012年にラムサール条約登録を求める声明文を発表しました。

同11月には、「みんなで守ろう三番瀬!集い」(船橋市)が開かれ600人が参加。自治会、学生サークルなど200を超える団体から賛同がよせられ、船橋市観光協会などが後援しました。サッカー日本代表・前監督の岡田武史さんのメッセージも紹介されました。

昨年末には、2004年からスタートした「三番瀬を守る署名ネットワーク」(田久保晴孝代表)がとりくむ署名が14万人近くになりました。

三番瀬で渡り鳥などの観察を40年続ける、田久保さんは語ります。

「多様な生物を守り、持続可能な漁業、温暖化の緩和をはかる願いが広がっている。船橋市漁協の登録促進の決議が大きな役割を果たした。三番瀬再生会議(県の諮問機関)が昨年6月、船橋地域の先行登録を期限を決めて打ち出したのも画期的です」

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日本共産党は、県民とともに運動に参加、激励し、県議会でも地元議会でも奮闘してきました。

丸山慎一、岡田幸子両県議をはじめ、地元4市議団は市川市の人工干潟化の造成現場を視察。また、志位和夫衆院議員の浜田文秘書らを介してラムサール条約登録で環境省から聞き取り調査などをおこないました。

丸山県議は「森田健作知事のもと、開発の動きが加速している。県議会で過半数を占める自民党は第2湾岸道路の必要性を強調し、三番瀬再生会義への 攻撃や人工干潟化の促進を求めている」と指摘、「三番瀬はいま正念場を迎えている。大型開発推進の逆流を許さず、ラムサール条約登録・保全への県民世論を 大きく広げるときです」と、強調します。(小高平男)


“鳥に選ばれた”水田/宮城県北部蕪栗沼周辺

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宮城県北部には、蕪栗沼を含め三つのラムサール条約湿地があります。国内で越冬するガン類の約9割がこれらをねぐらとし、その周辺にはガン類の採食地でもある水田地帯が広がっています。

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(写真)蕪栗沼で休息するハクチョウと氷上のオオヒシクイ=宮城県大崎市

蕪栗沼周辺ではラムサール条約湿地に登録される以前から「ふゆみずたんぼ」の取り組みが行われてきました。ふゆみずたんぼとは、有機栽培などの環境に配慮した農法を行いながら、収穫後の冬も田んぼに水を張る取り組みです。

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出発は、この地域に集中してしまったガン類を分散化することでした。その後、ふゆみずたんぼには水辺の生物多様性を高め、生き物の力を活かした新しい農法を可能にし、農業と生き物の共生を可能にする三つの働きがあることが分かりました。

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(写真)田んぼの生きもの調査をする子どもたち=宮城県大崎市

農家の、ガン類に対するまなざしも変わりました。害鳥と考えられてきたガン類は、環境にと ても敏感な生き物です。私たち「日本雁を保護する会」は、ガンを追い払うよりもガンに選ばれた田んぼの豊かさを売り物にする、ふゆみずたんぼのような農業 のほうが、農家に大きな恩恵をもたらすと、地元農家に提案してきました。その結果、ガン類は地域の資源という認識が広まってきました。

田尻町(合併して大崎市に)も、ガン・カモ・ハクチョウ類による鳥害補償条例をつくって心配を取り除くとともに、ふゆみずたんぼに取り組む農家を支援する環境直接支払いを始め、鳥の被害よりもずっと大きな恩恵を得る仕組みを具体化してきました。

発想を転換すれば、このようにマイナスをプラスにすることができます。ここでは国、自治体、NPOなどが協働し、さまざまな方策がとられ地域づくりに活用されています。

蕪栗沼では、ラムサール条約登録を地域づくりに活かすための話し合いを利害関係者の間で重ねてきました。そして、地域づくりに役立つという考えに合意し、2005年に田んぼをふくむ世界で初めてのラムサール条約湿地となりました。

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条約湿地内の田んぼでは、「ふゆみずたんぼ米」をはじめ環境に配慮した米作りが、農家に経済的な恩恵ももたらしています。

ふゆみずたんぼの実践を容易にする環境配慮型エリアを広く設置する新しい考えの圃場(ほじょう)整備事業も始まりました。

沼に近い田んぼは鳥の被害が多いので、鳥はいないほうが良いと考えていた農家も、田んぼの鳥が農業に大きな恩恵をもたらすことを実感できるようになってきました。

(日本雁を保護する会、ラムサール・ネットワーク日本 呉地正行)


ラムサール条約の「賢明な利用」とは

釧路公立大 小林聡史教授

ラムサール条約は、イランのカスピ海の近郊都市・ラムサールで採択(1971年)されたのでこの名前がついていますが、国際湿地保護条約ともよばれます。

その中心点は、干潟などの湿地の恵みを地域の住民が利用し、活(い)かすことです。ラムサール条約でいう「賢明な利用」とは、漁業や農業などの振 興に活用することも含まれます。湿地が自然豊かに保全されるための「道具」とも言えます。条約湿地になると鳥類の生息地や生物の多様性もいっそう保全し、 さらに地球環境の改善にも役立ちます。

カキで有名な北海道の厚岸湖・別寒辺牛(あっけしこ・べかんべうし)湿原や、ヤマトシジミの漁獲量日本一の島根県・宍道湖(しんじこ)などは、その実例としてあげられます。

ラムサール条約のデルマー・ブラスコ事務局長(当時、2001年)が三番瀬を視察したさい、漁業者や市民に持続可能な「賢明な利用」をわかりやす く知らせることの大切さを話しました。「三番瀬は今のままでも、条約湿地の条件を十分にそなえている」と発言したことが印象に残っています。