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Monster(18巻)/浦沢直樹著(小学館)
作家の浦沢直樹は知らなかったわけではない。日本を代表する人気作家でストーリーテラーだという話は聞いたことがある。しかしまあ、僕は大人になってからそんなに熱心に漫画を読んでこなかったので、作品を通して読んだのは初めてだったようだ。うわさ通りというか、これだけのスケールで物語を描けて、当然だが絵も非常に上手い。自身も手塚治虫のファンだというが、まさに手塚漫画をさらにドラマチックにしたような素晴らしい作品といっていいだろう。知られた作品をさらに称えてもそんなに意味は無かろうが、これでファンがつかないなんてことはありえないことだろう。
もっともあえて言うならば、ここまで話が長い必要は無かったかもしれないという気はした。物語が始まってからのスピード感とエピソードの重厚感というのが、やはり後半少し失速する。というか、やはり収縮させるだけのけじめのようなものをいかにつけるかということが、少し気になってしまったのかもしれない。それでも当然やり切れているとは思うものの、主人公に人が殺せない足枷のようなものが残ってしまい、その他のキャラクターにしてもそれぞれに妙な縛りが発生されたようにも感じた。冷酷はスパッとそれでいいし、温情はしつこくそれでいい。そういうことは好みの問題だとは思うものの、長い作品というものの難しさを感じさせられるのだった。
とはいえ、この物語の魅力は、そのようなキャラクターの魅力によるところが大きい。幾重にも絡んだ関係において、それぞれがそれぞれの個性で行動をする。そうしてそのことがまるで計算されたかのように、様々な事件の結末に収斂されていく。この構成力を成す力量は並外れたものがある。またその仕掛けにおいての工夫は、アッと驚かされる見事なものだ。読者はいつの間にかその驚きのままに物語に酔って、そのまま読み進めるより術を失う訳だ。
そういう訳で、病み付きになるような時間の無い人には、むやみにお勧めできない。だからと言って時間が出来ることを待つような愚かな人間には、紹介する意味も無いのかもしれないが…。