カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

「かわいい」は理解できるし分からない

2023-11-18 | Science & nature

 ヒトに飼われるペットの多くは、長年人とのかかわりの中で、いわゆる成熟した大人になってもなお、ひとになつく。野生動物はだから、ひとに飼われるようになっても、そうそうなつくことは無い。オオカミと犬は、遺伝的には同じだが(だから交配も可能だ)、もはや同じ種だとは言い難いほど違う。犬はオオカミには戻らないし、オオカミが犬化するには膨大な年月が必要だろう。このひとになつくという性質は、ネオテニー(幼形成熟)であると言われている。オオカミも子供のころには、好奇心が旺盛で警戒心が薄い。しかし成長するにしたがって、そういうした性質を失っていく。ひとはそういう性質を持ったオオカミの交配を繰り返して、今のイヌ化に成功したのだろうと考えられている。そうしてそういう性質を持った犬の形状も、耳は垂れ気味になり、どこか丸みを帯び、穏やかな顔つきになっていった。要するに子供の性質のまま成長し成熟したのである。
 そうした子供のままの姿を、ひとは「かわいい」と感じる。この可愛さは保護の対象となる愛情形勢にもつながっているものと考えられる。実はヒト自体もネオテニーの要素を持っていて、遺伝的にはチンパンジーやゴリラとはそんなに遠くないにもかかわらず、成熟した大人になってもなお、子供のころのままのように毛が薄く子供っぽい要素をたくさん残したままである。
 ところがこの可愛らしさというのは、文化によって少し様子が違うことも分かっていて、日本のかわいいと諸外国のかわいいは、ちょっと様子が違うことも知られている。今や日本の「kawaii」はそのまま英語としても通じるというが、それは日本のアニメ文化が広く海外でも人気を博しているからである。しかし気を付けた方がいいのは、そのままの日本のかわいいが通用している訳では無くて、あくまでアニメなどのデフォルメしたものの要素の中でかわいいは好ましいが、人間そのもののかわいいは、少し意味が違うのである。
 もっとも日本であっても、年頃の男の子などにいつまでも可愛いというと、嫌われる可能性はある。つまり可愛いという言葉の中には、「未熟」などマイナス要素を含んだニュアンスがある。Cute という単語には、日本のかわいいよりもその要素が強いと言われていて、大人の女性を対象に安易に使うのは危険だともいわれている。馬鹿にしているとも捉えられかねないのである。大人の女性には、同時にセクシーさが求められていて、そう思われるのが当たり前の文化なのである。日本だとかわいいは、セクシーさも兼ねてはいるのだが、そういうものは、妙な屈折感のあるエロと勘違いされるかもしれない。
 ということなのだが、日本文化というのは、そういう意味で文化の中にネオテニーが入っているようにも感じられる。若い女性に特に多いと思われるが、何を見ても感想は「かわいい」だったりする。かわいいの意味があまりにも多様で、いったいどのように解釈したらいいのか、いささか戸惑う思いがする。
 何かの機会にそういう話になって、ある女性からそれは明確に違うと諭されたことがある。同じかわいいではなく、明らかに語気が違うし、語尾の伸ばし方が違う。ちゃんと使い分けている、という事でありました。だから、それが分からないと言っているのだが……。
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