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東大教授が教える独学勉強法/柳川範之著(草思社)
著者は父の仕事の関係で子供のころブラジルやシンガポールにいるなどして、通信教育などの傍ら独学で勉強してきたという経験が下地にあるようだ。現在も研究生活をしているために、事実上独学が続いているということなのだろう。
長いスパンで勉強や研究をするうえでの、心構えやその実際を説いているものが多い。勉強の前にそれなりに準備段階を経て、そうしてテーマや目的のようなものにあまり縛られずに、多少の融通をきかせながら、自分なりに考えたことを大切にして勉強しよう、という話である。本人がそうしてきたからこそ、そのようなことが大切だということを言いたいのだろう。ちょっとできる人だからできる方法という気もしないではないが、いわゆる根性論ではないし、目標の立て方があいまいなのは意外だとは思うが、それはそれで妙な束縛は無いし、考えてみれば独学なんだから自由に勉強したらいいじゃないか、ということらしい。人から与えられた答えを探して勉強するスタイルからの脱皮を奨励している。要するに受験勉強のようなものと、おおよそ対極にあるような勉強法のようなものだ。もっとも、受験勉強だって、本来はそのようにすべきだという考えがあってのものだろう。
社会人になったら勉強しなくてもよい筈は無い。多かれ少なかれ勉強は続いているようなもので、いわゆる座学としての勉強は卒業した人が多いだろうけれど、自分なりに本を読んだり、自分なりに何か調べて物事を研究するようなことは、学者でなくとも誰でもやっていることかもしれない。それでも何か模索しながら、自分なりにやり方を会得するにも、それ自体に疑問があったり、何か不安を抱えている人が居るかもしれない。そういう人に対しては、やはりこのような自由な独学のやり方を読むことで、参考になることもあるだろう。この著者自身があまり廻りの空気を読むような人ではないようなところがあって、そういうところも含めて、なかなかに面白がりながらやり方を学べると思われる。薄く文字数も少ない本なので、気楽に読んで参考にしたらいいだろう。