カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

純粋すぎて燃えるもの   バクマン。(実写版)

2018-10-21 | 映画

バクマン。(実写版)/大根仁監督

 高校生の二人が漫画雑誌の少年ジャンプ誌上で、人気投票の頂点を目指して奮闘する物語。原作の人たちも(高校生ではないが)コンビで漫画を製作しており、勝手な想像ながら、そのような制作秘話的な感じもある。まんが道ものというのは、漫画世界ではそれなりのジャンルになっている訳だが、当然彼らの日常的に行っている私小説的な側面があって、そういう部分に多くの読者は惹かれるところがあるのだろうと思われる。この作品はエンタティメントとしての爆発的な面白さがありながら、現在の漫画家たちの生態のようなものが事細かく分かるという点でも、非常に興味深く、また貴重な作品になっているように思う。僕なんかはこんな世界に住むのはまっぴらごめんだけれど、この世界を純粋に目指す(主に若者だろうけど)人達にとっては、この上ない作品なのではないだろうか。
 実写版なので漫画的な意味では、かえってデフォルメがむつかしいものと思われるのだが、集英社の編集部の様子というのは、恐らくかなりリアルなのではないか。ここだけでもかなり異常な世界があるのだけど、編集者という人達も、漫画に対して異常な情熱をもっていることが分かる。ある時は作者に対して巨大な障害のように立ちはだかることもあるが、時間のかかる漫画制作において、どれだけその作品が面白くなるのかという事にひたむきだという事が分かる。それは作者たちにとっては本当に命をすり減らす過酷な課題なのだが、その為に非常に質の高い作品が生み出される原動力になっていることも理解できる。日本が漫画王国である一番の理由は、ひょっとするとこのような現場のヒエラルキーがある所為なのかもしれない。もちろんこういう世界に向かない作家もいるのだろうけれど、実際にこの高校生たちも、ある意味ではタイミング的には向かないともいえるのだけど、異常な漫画世界で生きて行く厳しさと面白さが、ひしひしと伝わる作品なのではないかと思う。僕は男という事もあるのか、いわゆる男の子として燃えるものがあって、観ながら思わず声を上げてしまうような興奮があった。実際に書いているのは地道な作業に違いないのだけれど、非常にエキサイティングでスリリングで、なおかつ泣けるのだ。
 一つだけ思うことは、高校生で漫画家という立場は貴重なのかもしれないけれど、やっぱり学校は辞めて漫画を描いた方がいいとは思った。彼らは漫画の道で頂点を目指しているのであって、学校の勉強というのは、障害にしかならない上に、不必要なものである。本当に才能のある人間は、学校に行く必要などない。そういうことに彼らもまわりの人間も、もっと早く気付くべきだとは思った。まあ、作品上仕方のないことだけれど。
 少年ジャンプの3大原則は「友情・努力・勝利」なんだそうだ。世の中というのはそんな単純なものでは無いけれど、少年が生きて行く上では本当に必要なものなんだな、という事が改めて分かる。そういう要素に特化した物語とは何だ、という答えが、この作品そのものなのであった。
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