アンダーカレント/今泉力哉監督
夫と共に銭湯を営んでいたが、夫は突然失踪してしまう。しばらく休業していたが、堀という男が住み込みで働いてくれることになり、一時的にも、という感じで銭湯を再開する。そうして友人が探偵を知っているということで、失踪した夫を探してもらうことにするのだった。
思わせぶりな長尺を多用したカットが連続され、正直言ってかなり退屈な作品。一定の効果はあるのかもしれないが、つまらないので失敗しているのではないか。様々な謎も明かされていくが、意外な面もあるんだけれど、だからと言ってそれがどうしたの? って感じも無いではない。そのような演出だし。長時間付き合わされてこれでは……、という気分になってしまうためだろう。残念である。設定自体は、なるほど少しは悪く無さそうで、怪しい探偵で面白くなりそうにもなるが、やはりならない。あえて面白くしない方針でもあったのかもしれない。監督の過去作はそれなりに面白いので、考えすぎたのかもしれない。
銭湯が舞台の映画なりドラマというのはあんがい多くて、ひとはどうして銭湯にロマンを感じるのか、というのはテーマになるかもしれない。温泉でなく銭湯というのがいいのかもしれないくて、滅びゆくロマンがあるのだろう。映画でもまだ廃材のマキをつかっていて、重油も検討しているけど、その方がお湯が柔らかい、などと言っている。そんなもんかね、とは思うが、そう思っている人と、そう感じる人が世の中には居る、ということだろう。それが銭湯を、なんだかいいものとして支えている感情の一つになっているのではなかろうか。
物語のテーマとして、ひとの本心というものがあるのだが、本心が表面と違うのは当たり前のことである。同じように見える人は、同じように見えるように表現しているだけのことだろう。そんなことは誰にも理解されようがない。分かりようが無いからである。そうしてそれであるからこそ、人間は生きていけるのではなかろうか。まあ、そういうことを言いたい映画では無そうなのだが……。