カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

オオスズメバチの冷徹な世界

2022-09-11 | Science & nature

 日本における野生の生き物が原因とする死者被害のトップは、スズメバチによるものだという。クマやヘビではなくハチだというのが、なんだか意外な気もするけれど、同時になるほどと納得がいくものでもある。それほどスズメバチに刺されることは恐ろしい。
 スズメバチはスズメほどもある大きなハチであるという意味と、スズメバチの巣の模様がスズメの羽の模様のようだという説の二つがある。しかしながらスズメバチには当然種類がいくつもあり、大きさも様々だし、巣の模様も同じではない。そうではあるが普通のハチよりは大型で、あのような危険な黄色の奴であるという雰囲気は、似ていると言えば似てはいる。僕も勘違いをしていたのだが、それらの区別を厳密にはせずに、一番大きくて狂暴なオオスズメバチも、軒下などに大きな巣を作るものだと考えていた。ところがオオスズメバチはそのように目立つところには巣を作らず、籔林の中の地中であるとか、木の根元にできる空洞のその奥だとか、廃材資材などが積み重なった奥の中空であるとか、ともかく、人の目の届かない場所にひっそりと、しかし近づくと恐ろしい場所で繁殖しているのだという。
 特に大きなオオスズメバチも他のハチと同じように、社会性の強いきずなで結ばれており、女王蜂を頂点とするその娘たちにの協力によって増えていく。しかし繁殖はそれなりに厳しいものがあり、女王蜂が巣作りをして卵を育て、そうしてハチ社会を大きくしていけるかは、むつかしい苦難の連続があるようだ。いくら狂暴で個体としては力が強いとはいえ、卵や幼虫を狙って食べる生き物は数多い。最初は単体である女王蜂は兵隊蜂が育つまでの間は、自分で食事はとらなくてはならないし、そうしながら巣作りと卵と幼虫を育てることをしなくてはならない。軌道に乗せられるまでが、まずは相当な難関であるようだ。
 まず卵から育てる段階で、早く孵った幼虫を育てる際にも、栄養がいきわたらなければ、なんと他の卵や幼虫をつぶして、食べ与える。女王蜂がそれを見極め、自分で殺して団子状に食べやすくして幼虫に与えるのである。強い個体を確実に育てるために、そのような犠牲を伴う冷徹な判断を、女王バチはするのである。
 そうしてあるていど繫栄して数を増やしても、今度はその個体数や新たな生命を育てるために、さらに大量の栄養源となる食べ物を求めるようになる。ふつうに兵隊のハチたちが個別に集めてくる昆虫などでは、間に合わなくなるということかもしれない。そうすると同じハチの仲間たちを襲って、そのコミュニティ自体を崩壊させ、幼虫や卵を奪い、戦って死んでいったハチたちを、かみ砕いて団子状にして食料にして運んでいく。オオスズメバチはハチミツを育てる養蜂家の最大の敵であり脅威である。また、そのように比較的弱いハチだけでなく、自分たちに近いスズメバチの巣でも襲うことがある。たとえ個体の力の差があるとはいえ、相手もスズメバチであり、いくらかの返り討ちも食らうことがある。そうであっても相手が諦める程度までは犠牲を払いながらも攻撃して、陥落を狙って殺戮を繰り返すのである。まさに仁義なき戦いである(何をもってハチの仁義とするかは不明)。
 他の国にもスズメバチはいないわけではないが、日本のオオスズメバチのような最強のものは居なかったらしい(特に南米など)。だが人間の活動の中にまぎれて外来種としておそれられる存在になり、Japanese jiant hornet などと言われていたが、特定の地域を嫌悪するヘイトクライムを誘発させるとして Northern jiant hornet などに言い換えられているのだという。日本の由来のものが、他の地域のものより弱いだけであるというのも、何かの思い違いなのかもしれない。
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