カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

奇妙な動機の一致点   彼女たちの犯罪

2024-06-29 | ドラマ

彼女たちの犯罪/菊池健雄・高橋名月・古畑耕平監督

 裕福な医者に嫁いだ女と、その医者と不倫関係にある女と、不倫女の大学時代の後輩で今は刑事の女と、医者の嫁の友人で自殺願望のある女が、その利害関係の中にあって人の入れ替え自殺を行う、というミステリを軸に展開される人間ドラマである。医者の男は学生時代から憧れの人だったようで、不倫女はそのまま結婚したいと望んでいる。男も妻とは別れて結婚すると言っているが、そうはしない。一方妻の方は、夫婦関係は冷めているのみならず、姑などの関係に疲れていて、慰謝料さえもらえれば、むしろ離婚したい。基本的にはその利害が一致する状況に自殺願望の女がいるので、自分とすり替えて成りすまししてもらうと、お互いに希望が叶うのではないか、という訳だ。そのプランを発案したのは警察の後輩で、後に何故そんなことをしてくれたのかも明かされることになるのだった。
 最初は会社内の人間関係のいざこざがあったり、嫁姑の嫌な感じがあったり、自殺願望のアンニョイな感じだったり、女であることの大変さのような物語なのだが、すり替え自殺が実行されると、一気に警察の捜査が意外な方向に発展し、皆が窮地に陥ることになる。しかしながらそこからが実際のドラマの展開の意外な真相にも発展していく訳で、なるほどドラマ的な尺でなければ語ることのできないミステリだと言える。
 実際に殺人的なすり替え自殺だったのだが、もう後戻りすることはできない。計画通りなら警察の捜査が及ばない筈なのだが、奇妙な証拠が見つかり、警察の女の上司がことのほか優秀で、さらに警察内にも奇妙な情熱のある刑事が居たりして、計画が狂いまくる。しかし物語はその入れ替え殺人の謎解きだけに留まらず、医者の先輩や彼女らの学生時代にまでさかのぼった怨念にまでつながっていたのである。さらに妻にはまだ秘密があって……。
 さすがに複雑な糸が絡まりすぎている感はあるが、そうでなくちゃこんな手の込んだ計画を、そもそも実行する動機にはならなかったのかもしれない。途中で女たちの思惑が一致したりもするわけで、ちょっと変なところもある。終わりもこれで良かったのか、正直言ってよく分からない。もっと罪を償うべきは、もっとそれなりの罪のかぶせ方があったのではなかろうか。
 とはいえ、観ているときはとても面白い。ドラマを見続ける動機を維持する仕組みは、このような展開あってこそのものであろう。
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