カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

過去の修復はどのようになされるか   金の糸

2024-06-04 | 映画

金の糸/ラナ・ゴゴベリーゼ監督

 娘夫婦とともに暮らしている作家の女性は、誕生日を迎えるが誰も気づいてくれていない。悲しい訳だが、孫もいるし、まあ淡々とした日常を送っている。そんな中昔の恋人から電話がかかって来る。要するに君のことは忘れていない、ということか。元カレは車イスで、少し前に妻も亡くなっている様子だ。
 アパートの住人には様々な人々がいる。若いカップルは喧嘩ばかりしている。そうした情景と近所づきあいの様子なども……。娘の姑が認知症になっているらしく、一緒に暮らすことになる。老作家とは、なんとなくウマが合わない様子だ。姑は、ソ連時代の高官だったようで、しきりに昔を懐かしむ。そうして昔偉かった時代のように、ちょっと威圧的なところがあるというか。ここに住んでいる周りの人は、そんな元高官に敬意を示している様子はあるようだ。昔の権力のある時代のよしみで、知り合いも多く、ちょっとした楽しい試みもあるにはあるのだが。そうして時々意識が混濁し、老作家とのあるいきさつを、つい口走ってしまうのだった……。
 まあ、なんというのだろう。よく分からない映画ではある。舞台は今のジョージアらしいが、ソ連が崩壊後、独立して、もうソ連時代とはまったく違っているはずである。そこに過去の遺物が舞い込んできて、この家族の歴史そのものを変えてしまった物事の真意が、明かされてしまうということである。しかしながらそのことは、いまさらどうしようもないことである。日本の金継をモチーフにした物語だということなのだが、要するに過去のことの感情の修復をあらわしている、と考えるべきなのだろう。
 それなりの雰囲気と、映画としての奇跡のような演出も光るものがある。だかしかし、それで楽しい映画ということにはならない。分かる人向けに分かられたらいいのである。そういう時間のつぶし方のできる人は観てもいいが、そうでない人は敬遠してかまわない作品であろう。
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