最近の円安水準をめぐって様々なトピックが生まれている。以前なら当然のように日本の牛肉は高価で海外産とは価格差が開いていたが、ロース肉に関しては既にアメリカ産が日本産より高くなっているという。100円ショップでは品数が減り、100円以下で仕入れられる商品が激減。文房具では例えばノートなどぺージ数が減らされ、かご等の取っ手が無いなどのシンプルなプラスチック製品に様変わりしている。そもそも既に100円均一ではない、という形態の店だったりすることもある。
一世帯当たりの支出が、昨年比10万円を超えるという試算もあり、海外旅行は激減。特にこれまで好まれてきたハワイは、人気ランキング圏外に墜落。代わりにハワイ物産展などの催しは盛況で、そのようなイベントの売り上げは伸びている。行けないのだから、せめて国内でハワイ気分を、という事らしい。九州で北海道物産展が盛況なのと、似ているということか(違うかも)。
円安傾向の理由として、そもそも米国との金利格差がある。日本円で預金するより米国ドルで預金した方が、金利差額で有利なのだ。100万円の預金が日本では年1万にもならないが、米国だと4万円ほど増える。個人はともかく、大きなお金を動かしている企業など、持っているのならドルへ転換するだけで利益が増えるわけだ。
円安傾向により大企業の多くは、大きな利益を上げている。必ずしも国内生産で輸出を伸ばしている企業のみではない。これは詳しくはないのだが、利益を出しているところは、海外で再投資をしているという事らしい。そうやって日本円がさらに逃げていくという構図になる。そうするとせっかく利益を出していても、日本自体に還元されにくくなるということもあらわしている。
日本では人不足にあえいでいる訳だが、そういう意味では、日本人向けのサービスをしているところのみ、人手が足りていないという事でもありそうだ。一般的に人手不足なると賃金は上昇する。しかしながら大企業と中小企業との賃金格差は開いているとされ(一般的には賃金上昇は比例して当然なのだが)、中小が賃金を上げられないのは、賃金を上げて利益を確保できないからなのである。輸入資材や輸送その他諸経費高騰がある為に、安易に価格を上乗せすることもできず、利潤幅が無いから、人件費もあげられないのだ。賃金の上がらない世帯が、インフレの商品を買えないのは明らかで、消費が伸びてもいかない。格差の開く中の負の循環が生まれようとしている。
という訳で面白くない話なのだが、僕らは円安が進む中で相対的に国際社会の中の国として貧しくなっている。でもまあ日本人全体がだいたいにおいて等しく貧しくなっているように見える間は、そう大してその貧しさに気づかないものかもしれない。問題は、明確に日本人同士に格差が開き、その差が努力で縮めることが出来ないと感じられるようになることだろう。そうなると、最悪は日本人同士でテロが起こるようになる場合もあるかもしれない。これは政府がどうのという事ではなくて、意地でも賃金を、価格を、上げるより仕方ないのではなかろうか。