ラブ&ドラッグ/エドワード・ズウィック監督
バイアグラを売るセールスマンの実話をもとにした作品らしい。性の薬を売ることで、自らも性には奔放な営業をしていたが、そういう中で一人の女性と恋に落ちる。これも性目的が第一だったらしいのだが、彼女には秘密の進行性の病気があって、そのまま付き合い続けることができるのか不安になり、お互いに苦悩することになるのだった……。
多少オーバーアクトでコメディ仕立てにしてあるが、問題はそれなりに重いものがある。病気なのでなんとかしたいという気持ちがあるのだけれど、そう簡単に改善できるものではない。その上進行性である。患者の会に出ることで、彼女は勇気を得るが、パートナーである彼には、逆に重いものがのしかかるような気がする。薬を売る仕事をしているので、医学業界にも詳しい。さらに営業成績は上がっていって出世のチャンスもつかめそうなのだ。このまま足かせにもなりかねない付き合いを、続けるべきなのだろうか……。
軽い男に捕まってセックスに至ることになるが、彼はおそらくセックスだけが目的だったのだから、どのみち深い愛の言葉を交わすことは無駄になる。愛してると言ってくれるようになるが、さらに自分も言いたいが、それが短時間でのことに過ぎないのであれば、このまま短時間で終わらせた方がいいのではないか。要約すると、心の葛藤はそんなところかもしれない。男の方は、性的に楽しんでいれば、それはそれで楽しいには越したことは無いが、今いる女性を愛している現実も、確からしい感覚がある。それを信じるべきなのか。どのみち変わり果てて苦しむ未来を、見切ってしまうべきなのか。出世もするし、決断すべきは今なのではなかろうか。ということか。さて結末はどうなるでしょうか。
セックスの時は自由に動けるようだし、しかしクスリの調子が悪いと、かなり動きが上手く行かなくなる。痙攣などもしてしまうようだ。たいへんに美しい人なので、すぐに恋人もできる。要するにどちらとも性的にはとても恵まれている男女なのだ。そういうこともまた、コメディ要素の軽さのようなことかもしれないが、選択肢が多いからこそ、その真実の愛を育むのもまた、むつかしい問題になっていく、ということなのかもしれない。
まあちょっとそれは贅沢な悩みなんじゃない? という気もしないではないけれど……。