永遠に僕のもの/ルイス・オルテガ監督
美少年カルリートスは、人のものを盗っても罪の意識のかけらもない。捕まれば厄介なので逃げはするが、豪邸などに忍び込み、我が物顔で家の中のものを物色し、盗んでいく。そうして嘘も平気でつく。転校先の学校で、不良少年のラモンに、おそらくだが同性愛的に惹かれる。彼も彼の家の父親も、たいした不良ぶりで、拳銃を家の中で撃つなどして仲良くなる。意気投合後には、一緒に銃器や宝石などの窃盗を繰り返すようになり、大儲けする。しかしカルリートスの行動は行き過ぎており、彼らも警戒するようになるのだったが……。
なんとこのモデルになった実際の事件や少年がいるらしく(現在も還暦すぎで服役中)、かなり脚色はされているだろうものの、これらの事件でアルゼンチンでは相当に有名なものであるらしい(そりゃあそうだろう)。主演の少年(青年?)は実際の人物に真似てあるわけで、中性的で蠱惑的な不良ぶりである。こんなのが近くにいるのは迷惑だろうが、その周りの人間は、何かその魅力に遠巻きながら憑りつかれていくものがあるようだ。まあ見ている日本人の僕にとっては、どのみち接点など無いだろうから、どうでもいいか。
しかしながら破滅的に犯罪を繰り返し、人までも殺してしまう破天荒ぶりに、観ていてホトホト呆れてしまう。馬鹿なのには違いないが、タガが外れているので、そんなことはどうだっていいのである。特に家庭環境が荒れているということでもなく、普通の家に生まれた美少年で悪魔なのである。それだけでも結構漫画的なので、事実が無ければとんだ作り話である。
元は英語のヒット曲がスペイン語でガンガン流れて、演出的には、なかなかに爽快かもしれない。いや、爽快というよりその破滅的な危うさに、なんだか目が離せなくなるような、保護的な視点が生まれてくるものかもしれない。周りにいる悪い奴らが透けて見えて、そんな極悪なものなんてものの価値が、うすっぺらくさえ感じられる。
元は英語のヒット曲がスペイン語でガンガン流れて、演出的には、なかなかに爽快かもしれない。いや、爽快というよりその破滅的な危うさに、なんだか目が離せなくなるような、保護的な視点が生まれてくるものかもしれない。周りにいる悪い奴らが透けて見えて、そんな極悪なものなんてものの価値が、うすっぺらくさえ感じられる。
70年代などにアメリカなどでニューシネマが流行った訳だが、そういうカウンターカルチャーとしての反抗というものと、まるで別の次元の悪というものがそこにはある。もちろんハリウッドやヨーロッパとも少し別の、映画的な匂いがあるわけで、それらの作品に無意識で作られたものでは無かろう。しかしそうして出来上がったこの作品の、なんとも言えない差異というものがあって、妙なものを観てしまった満足感があった。まあ、このためにずっと刑務所で暮らすことになるんだから、やはり愚かなことだけれど……。