カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

強い男も泣いている   クライ・マッチョ

2022-11-04 | 映画

クライ・マッチョ/クイント・イーストウッド監督

 何しろ演じているイーストウッドも90を超えているわけで、最初の登場からかなり危なっかしいし、声の張りもない。元ロディオのヒーローだったカウボーイが、何らかの問題を抱え、ろくに仕事もできなくなり、事実上、隠居の身にやつれている。そういう時に、元雇い主の多少問題のある男から、メキシコにいる息子を連れ帰って欲しいという依頼が来る。メキシコには別れた妻がいるが、息子を虐待しているし、取り戻して一緒に暮らしたいのだという。昔の恩義が無い訳でもない頼みごとなので、ボロの車に乗り込み、単身メキシコの国境を渡る。そうして今は豪邸に住んでいる雇い主の元妻の家に行ってみると、すぐに捕まり、息子は野生児のような聞き分けの無い人間で闘鶏に熱中し、賭け事や盗みや、そういうことをやってろくに帰って来ることは無い。連れ帰れるもんならやってみろ、という感じになる。実際に闘鶏場に行ってみると、ちょうど警察からのがさ入れが行われ、人々は散り散りになってしまう。そういう中なんとか見つけて話をしてみると、その息子もテキサスのカウボーイの仕事にも興味があるようなのだった。じゃあ帰ろうということになるのだが、そうなると母親の刺客から追われるし、誘拐として警察に間違われる可能性もある。車は盗まれるが、これも警察には届けられない。仕方ないのでこちらも誰かの車を盗み、逃避行する。そのたどり着いたあるまちで、受け入れてくれる素晴らしい女性と、荒くれ馬の調教を欲している牧場が見つかるのだった。
 いわゆるロードムービーで、行く先々で老人はちょっとした技能で奇跡を起こせる。お金も大して無いのだが、人々から求められる仕事ができる。追手の問題はあるにせよ、打ち解けて桃源郷の生活を送ることも可能なのである。少年にも年頃のガールフレンドができたようだ。さて、本当にこのまま国境を渡り、テキサスに行くべきなのだろうか。
 老人はさておき、少年はパスポートも持ってないだろうし、いくら陸続きのメキシコとはいえ、トランプ時代に国境の壁が厚くなったのではなかったか。いろいろ考えさせられるが、正規の方法で国境越えは極めて難しそうに思われる。そういう謎解きが待っているのかもとは思ったが、まあ、そういうことでもなかったけれど。
 イーストウッドが、本当によぼよぼになりながらもスクリーンに出ていることに価値のある映画と言っていいだろう。お話は単純でご都合主義だが、そういうことに何か言っても始まらない。ひとの顔面にパンチを食らわせるし、乗馬はするし、女性とダンスを踊りキスを交わす。それが楽しくない訳がないのである。年をとっても夢のような生活はできる。ただしクイント・イーストウッドならば、なんだけどね。
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