カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

ケーキを数えず買いたい

2022-11-23 | 

 そこのケーキ屋のケーキはみな小ぶりで、よく見ると小さな細工がいろいろと施してある。それは薄い板状のチョコレートだったり、飴細工だったり、ナッツや木の実のようなものかもしれない。クリームの盛り付けや、ハーブの葉っぱのようなものもある。午前中から寄ったからかもしれないが、種類は多いが、個数は必ずしも多くない。売り切れて列に空白もできているようだ。大きいままのホールケーキは見当たらず、注文品限定なんだろうか。ショーケース以外にも、焼き菓子が別の棚にあるようだ。
「お店は一人でやってらっしゃるんですか?」と聞くと、
「いえ、時間帯でバイトがもう一人」という。
「いや、作るのは……、とにかく、手が込んでるなと思って」
「ああ、割に合わないんですけどね」と言って店主らしき人は、笑った。
 確かに値段は一個400円台の後半が多いし、なかには600円台のものもある。ふつうのショートケーキよりさらに小ぶりなので、割高で高級感のあるものなのかもしれない。いくつか買えば、すぐにいい金額になるだろう。
 僕はケーキなどを買わない訳ではないが、それは自分が食べるためということでは、ほとんど違う。おみやげであり、贈答品である。時には自分でも食べるが、それは誰かから出された時だし、このようなお店で選んだものを食べようと思って買ったことというのは、ちょっと思いつかない。今回はつれあいが買うので付き合っているわけだが、今回もちょっとしたお祝いがあるので、ケーキも、ということなのだろう。他のプレゼントもたぶんありそうだ。
 そういえば、子供のころには、外が暗くなってから、ケーキを買いに行った記憶がある。父が仕事から帰ってきて、それからケーキを買いに行ったのだ。たぶん誰かの誕生日とか、お祝いの為だったのかどうか。きょうだい連れだって、喫茶店兼ケーキが当時はあって、そこのショーケースに並んでいるショートケーキを、選んで買ってよかった。一人一つか二つか忘れたけど、とにかく好きに選んでいい。選ばなければ、父が並んでいる種類に適当に指さして買ってしまう。数学が得意だったと自慢していたけれど、数を数えている風では無かった。そうやってたくさんのケーキを買うこと自体が、父にとっては楽しかったのだ(たぶん)。
 僕もできることなら、数を数えずにケーキを買ってみたいな。今ならそれが、たまにだったらできるのではないか。しかしながら、ケーキを選んでいるのはつれあいの方である。僕はそれを眺めているだけなのである。
 まあ、それでも楽しんでいるかもしれない。その選ばれているケーキの一つは、今日のお祝いの時に、僕の一つにもなるのかもしれない。いったい何を、僕は食べることになるんだろうか。
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