水を抱く女/クリストアン・ペッツォルト監督
まず、男女の別れ話のような感じでフラれかけている女性は傷心状態だ。その彼女であるウンディーネは、ベルリンの博物館のガイドをしている。博物館近くのいつも立ち寄るカフェで彼氏を探しているが見つからない。代わりにそこで潜水士のクリストフと出合い、新たな恋に落ちる。激しく愛し合う仲になったものの、そういう時に最初の彼氏がよりを戻しに現れるのだった……。
後で知ったが、この映画の題材となったウンディーネという水の精の伝説があるらしい。最初はリアルな恋愛もつれのドラマかと思って観ていたが、しあわせの絶頂期に元カレが復縁を求めてくるあたりから様相が激変する。いきなりのダークファンタジー化する展開に戸惑うが、あえてすっきりした解答を求めない方がいいのかもしれない。それに、この展開で、心動かされることも確かだ。妙な映画を観てしまったということは言えるかもしれないが、それが悪い映画だったとは思えない。いや、これはいい映画なのだ。というか、結構だらだら続いていた愛し合う男女の場面をみせられていたのに、キリッと引き締まったような、シャープな印象の余韻が残るのである。
それにしても、他に女ができて別れようとしたにもかかわらず、その別れようとした女がしあわせにイチャイチャしていると、またよりを戻したくなる男(別に女でもいいが)というのはどういうものなのだろうか。実際にそういう話は聞くところも多い訳で、改めて映画で見せられて、ひどく混乱させられた。自分にとって、ぜんぶ欲しいというか、何か未練がましいものが湧いてきて、そうなってしまうということか。そうして、少なからぬそういう思いに引き回される関係というのも、どうしたものだろう。もっともこの映画は、そういう感情があるからこそ成り立っている訳なのだが……。
ということで、たまにはこのような知らない俳優だらけのドイツ映画もいいのではなかろうか。