カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

漫画篇、この枠で語りきれない(2020年をふりかえる)

2021-01-24 | なんでもランキング

 漫画を読んでいて思うのだが、当たり前だが文字だけでは味わえない、文学性がある。漫画の力はそこにあるのだが、しかしこの時間のかかる表現方法を、よくぞ文化的に根付かせてくれたものだな、と思う。こういうのは、漫画という文化が、文学より格下のサブカルチャーだからこそ這い上がってできた功績ではないかと思う。クールジャパンとして格が上がると、段々と衰退するのではないかと勝手に懸念している。
 ところで「遥かなる町へ」だが、素直に感動したのである。48歳の男が中学生になると、楽しく切なくなるのである。そうして人生の悲哀を知る。まさに名作である。
 「太陽のイジワル」はちょっとびっくりした。ちょっとした表情で、様々な感情が語られている。いや、漫画はそういう表現方法を様々にとっている訳だが、その切りとり方が実に見事というか、あっぱれというか、やられました。お話もよく練られて面白いです。
 「娚の一生」は、僕とそんなに変わらない年頃の男が、少し年齢の離れた女にはどうみられているのか、という感じも確かめたかったのだが、まったく僕とは違うタイプで、確かめようがなかった作品。まあそれでもいろいろ面白いのだが、少しわかったのは、オジサンというのは、限りなくお爺さんだということかもしれない。残りの人生頑張ってまいりましょう。
 高橋留美子は、「めぞん一刻」は熱心に読んでいたのである。それからずいぶん離れていた。少年誌らしいアクションもあるが、時折女の意見が女なのだな、とよく分かる。我が強いのである。それに男の姿が、男が考えるよりちょっと男らしい。これが理想像なのだろう。
 「金の国」は理想像すぎる話かもしれないが、なるほど、西洋的な細部はよく書き込まれている。アニメーション的というか映画的というか、その世界にいつの間にかいざなわれていくような快感がある。こういうのが、絵の好きな人が描いた絵というのかもしれない。
 「僕の姉ちゃん」は、絵的には、これまで紹介した漫画たちとは対極にあるデフォルメ世界だ。女性の描いた絵なのに、きれいな女性というのが限りなく記号的にきれいなのかどうかさえよく分からない。しかし内容はショッキングで、否応なく崖から突き落とされる。その後の心配は一切されない。僕にも姉がいるが、幸いなことに年齢が離れている。だからこのような姉は知らないのだが、知らなくてしあわせだったのだなと改めて思う。世の中には、妙なしあわせがあったものである。

遥かな町へ/谷口ジロー著(小学館)
太陽のイヂワル/惣領冬実著(講談社)
娚の一生/西 炯子著(小学館)
人魚の森/高橋留美子著(小学館)
金の国水の国/岩本ナオ著(小学館)
僕の姉ちゃん/益田ミリ著(マガジンハウス)
コメント
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