カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

まさにお勧め傑作(2020年をふりかえる)

2021-01-26 | なんでもランキング
 
 「脳外科医マーシュ」は、医療現場の話を書いた本人の告白のような本なのだが、下手なミステリ小説を読むよりもスリリングで、そうして臨場感や哀愁が漂っている。実に正直な人らしく、恐ろしい失敗談もちゃんと書いている。恐らく当事者も読んでいるはずで、ものすごい勇気のある行為ではないか。そうして、この医療の大変な現場を思い、敬意とあこがれを持つのではないか。いや、とても僕にはできないことではあるのだけれど……。
 「おかしな二人」を読んで、僕は岡嶋二人のファンになった。でもずいぶん前の人たちだったんですね。僕は国産ミステリを見下している訳ではないのだが、あんまり読んでなかった。そうしてこれで後悔することになった。だってこんなに面白いものを知らなかっただけなのだ。まあ、徐々に取り戻していかなければ。
 「イタリアンシューズ」はミステリ作家が、ミステリではない人間ドラマを描いたもの。でもまあ、ミステリの要素はふんだんにあって、先が気になる。親子の再生の物語でもあるし、いや、自分自身を取り戻すお話なのかもしれない。北欧の暗い世界が、じわじわと馴染んで離れがたくなるだろう。
 「井上陽水」の詩は、日本語で聞いていると不思議な言葉遊びのような感じがあって、そんなに意味深であるとは思えなかった。いや、意味深なんだろうが、よく分からない。ところが、英訳してみると、なるほど、そういう意味だったのか! と分かるのである。著者の内面とともに、陽水の詩の広がりがほとばしる。

 ということで、振り返りは一応終了。昨年もいろいろ面白かったな。今年もいろいろ面白いといいですね。まあ、少しは時間がありそうで、そうしてこれは奇跡的なことかもしれないので、もっと楽しんでいくよりないと思います。単なる現実逃避かもしれないけれど、それが自らの豊かさの広がりになるのなら、それはそれで儲けものではないですか。

脳外科医マーシュの告白/ヘンリー・マーシュ著(NHK出版)
おかしな二人/井上夢人著(講談社文庫)
イタリアン・シューズ/ヘニング・マンケル著(東京創元社)
井上陽水英詩訳詩集/ロバート・キャンベル著(講談社)
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