カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

特権階級の社交界を覗く   舞踏会の手帖

2021-01-07 | 映画

舞踏会の手帖/ジュリアン・ディヴィヴィエ監督

 おそらくお金持ちでずいぶん年配の夫だったのだろう、夫が亡くなって若くして未亡人になった美しい夫人が、20年前当時自身が16歳だったころにデビューした社交界のダンスパーティで自分を誘った男たちを記した手帖をもとに、当時愛をかわした男たちを探して回る旅に出るという物語。
 20年の月日を経て、男たちの境遇は様変わりしている。あるものは当時から非常に魅力的だった夫人にふられて自殺したものや、うらぶれて病気になったような者もいる。おそらく未亡人は、それらの男たちをふったうえで、一番資産家で手堅い年上の男を選んだのであろう。舞踏会で出会った男たちの中に、ひょっとしたらほんとうのしあわせをつかめたかもしれない夢を追っているのかもしれない。
 一人二人と探し求めていくうちに、20年という歳月と、現在の残酷な現実を向き合うことになる。そうして最後はどうなるのか? ということになるが、まあ、確かによくできているお話かもしれない。
 1937年のフランス映画だが、その華やかさのためか、戦中戦後と日本では二回にわたって封切られたものだという。当時の日本人が、このきらびやかな異国の世界を、どのような感情をもって観たものであろうか。日本にも貴族はいたのかもしれないが、本場のヨーロッパのフランスにおける貴族というのは、文化も違うことながら、その華やかさのレベルは段違いであったことだろう。おそらくその憧れと、畏敬の視点がまじりあって、この皮肉な物語を味わったのではあるまいか。必ずしもハッピーなお話では無いものの、そのような映画的な娯楽が、当時の大衆の欲するところと同調したのかもしれない。
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