カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

老いとは何かも分かるし、受け入れもできるかもしれない   すごいトシヨリBOOK

2020-05-24 | 読書

すごいトシヨリBOOK/池内 紀著(毎日新聞出版)

 著者は昨年78歳で没。ドイツ文学者として著名で、エッセイも人気があった(よく雑誌で目にしていた)。ラジオなどでも取り上げられて人気のあった本らしい。この本は語り起こしのようで、編集者が上手くまとめたのだろう。著者の本は昨年末に一種のブームのようなことになり、さらに死の直前に書かれていたものが、売れたのだが、記述に誤りがあると議論があり(おそらくだが、ヒトラーのことを記述してあるので、神経質になる研究者が多いのだと思う。また一般的な大衆も。さらに著名なドイツ文学者だから、やり玉に挙がった可能性も高い)絶版状態となり、価格は高騰したが今でも売れている。その訂正に追われ死期が早まったのではないかという話も聞くが、正誤までは僕は知らない。
 ということで、たぶん買ったのだろうと思う。本棚にあったので改めてパラパラ読みだして止まらなくなった。面白いからである。医療の考え方や、お金に関する考え方(一般庶民的ではないが。しかしそれも高齢者特有とも取れなくはない)など、ちょっとは考え方に同意しかねるところもあるが、それでも思わず失笑したり、フムフムと感心したりする。年寄りの生態は僕なりに知らない訳ではなかったが、思わず膝を打つことしきりであった。また、僕自体の老いに対する認識も新たにした。男性である自分自身のことを考えても、下の話などは身に染みるものがある。笑わされながら、ものすごく参考になる生き方かもしれない(考え方)。
 普通の年金暮らしの人と比べて、どれくらいの比較が必要なのかは分からないのだが、やはりものすごくお金のかかる生活をしているということではないということだろう。それでも、何か決定的に豊かさが違う雰囲気がある。それはマイペースに日々を過ごしていることに加えて、多少は編集者やかつての教え子などの、若い人とのつながりが見て取れることと、やはりドイツ文学者としての、知的な生活の一面が見て取れるということだろう。しかし年寄りとしての自慢話のような雰囲気が一切なく、さらに何か若い気追ったところも無いのである。そうしたバランスは、語り下ろし的な編集者のフィルターがあるのかもしれないが、読む者にとっても,たいへんに受け止めやすい内容なのではなかろうか。正直言ってこの本のネタで、ずいぶんいろんな話の広がりが持てそうな予感がした。そういう意味でセンスある生き方であり、静かな共感の持てる内容だと思う。そうしてたぶん、多くの人の老後の理想でもありそうである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする