カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

激しいが、それだけ情動的なんだろう   バーニング劇場版

2020-05-11 | 映画

バーニング劇場版/イ・チャンドン監督

 男は、幼馴染だというパントマイムの上手い女性と関係を持つようになる。その後彼女はアフリカに旅行に行き、帰ってくるとものすごくお金持ちでただ遊んでいる男とともに現れる。三人は時々会って話をする。ある時二人は男の家に遊びに来て、ワインを飲んでマリファナを吸う。そうして金持ちの男は、時々ビニールハウスを焼く(ことを趣味のようにしている)ということを告白するのだった。
 原作は村上春樹の短編で、前半部分のほんの一部で小説と同じようなシチュエーションがある。しかしその他は、原作を借りた別物語と言っていい。原作は納屋を焼くのだが、金持ちの男はビニールハウスを焼くことになっている(実際に焼いているかはよく分からないが)。
 何か意味深ではあるが、そこに意味があるのかどうかもよく分からない。いや、むしろ小説の方がそういう感じであって、映画の方にはそれなりの結末がある。だから納屋を焼く意味や、失踪した女の状態も、考え方ではあるけれど、結論はあるといえる。だからどうなのか、というのはやっぱりわからないのだけれど…。まあ、それでいいという作品なんだろうと思う。
 名作めいていて、そうしてやはりなかなかの見ごたえのある演出である。しかしまあ、人を選ぶことは確かで、これに感動する人は、だいぶ特殊な人だろう。ミステリ仕立てだが娯楽作品ではなく、やはり文学に近いということだろう。スジを追うだけでは、ほとんど内容が無い。早回しして展開を読んでも、だからどうしようもないのだろうと思う。あらすじを知ったところで、この映画の意味するところは読み取れないからだ。それが面白いかどうかを分けるところなのだろう。妙に長いが、この長さを必要とすることに意味があるわけで、この嫌な感じをジワリと肌に染み付けるようなことを、監督はしたいのだろうと思う。
 ということで、僕は村上作品の中でも、特にこの話はなぜか好きで、というか特に印象に残る話だから、映画も比較して楽しめたほうかもしれない。違う話だが、なるほどね、と思うからだろう。そんな風にこの小説を読んでなかったな、と思うからだろう。僕としては納屋を焼きたい気持ちはわからないが、そういう人がいるというのも、許容していい。だからこのような結末にはならないだけのことで、たぶん冷たい人間なのである。そういう意味では、この映画にはいくらか人間味がある村上解釈なんじゃないかな、と思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

みじかくても中毒になるかも・1

2020-05-11 | なんでもランキング
 本を紹介するのは日常的にしているのだが、私淑(厳密には直接教えはお受けしてますけど)している先生に、何となくお声がかかったことは気にかかっていたし、しかし自分なりのやり方で、と考えているうちに、一定の制限をかけながら厳選して少ない数を紹介しようとしていたはずなのに、どんどん増えていってしまった。でもまあ、今のところ7日間ではなく、十数日間で済みそうなところまでまとまりを見せ始めている。だいぶ端折ってしまってもったいない気分もあるけど、まあ、どのみち仕方のないことである。数日間おつきあいくださるとありがたいことです。



 ということなんだが、まずはちょっと要望を聞くというか、いわゆる本を読まない人から、軽いものでとっかかりやすい本を紹介してくれ、と言われることがある。本を読みたいとは思っていていも、読み続けるのがつらいんだそうだ。その気持ちはみじんも理解できないが、なるほど、短編小説の類なら、傑作がたくさんある。人によっては気に食わないものがあるかもしれないが、一つくらいは食いつきがあってもいいのではないか。それでハマって読書好きになってくれると、巡り巡っていつかは、面白い本を僕に紹介してくれるかもしれない。ぜひお願いします。

 ということで最初に紹介するのは、ものすごくベタで申し訳ないが、星新一である。傑作は多いが、どれから読んでも短いので、いつの間にか数編読んでしまうのではないか。「おーいでてこーい」が教科書などで紹介されているので、すでになじみのある人も多いかもしれないが、まとめて読んでも面白いのである。
 僕は正直言って読書感想文に短い話を読んで手早く仕上げようと思って、星新一に手を出したクチである(小学生の考えだ)。しかししっかりハマって、短編に限っては当時手に入るものは全部読んだ。結局どの話を感想文に書くのか大いに悩んだのであった。当時はエヌ氏のシリーズが好きだったかもしれない。
 さて、大人になって読み返すと、意外に文学性が高いことに驚く。そうして普遍性のある話も多い。こういう作品こそ、読まれ続けるべき作品なのではなかろうか。
 あと関係は無いが、子供のころ眉村卓とか都築道夫とかも読んでいたが、本棚から見つけることができなかった。どこ行ったんだろ。



 紀田順一郎篇のアンソロジーは愛読した。写真は海外篇だが、ここではシュテファン・ツヴァイクの「目に見えないコレクション」をあげたい。ツヴァイクは歴史ものが著名だが、短編集もある。(追伸:これも見つかったのであげておきます)





 日本篇では、野呂邦暢の「本盗人」がいい。ちょっとしたミステリ作品を読むより、野呂作品に浸る方がいいのではないか。これはシリーズであるらしく、「愛についてのデッサン―佐古啓介の旅」という本の連作の一つだという。
(追伸:手に入ったので写真上げておきます)




 さらに紀田には「謎の物語」という編著もある。これもものすごく面白い。結末が分からないのに面白いとはどういうことか、ぜひ試してください。そうして読んだら、きっと人に話して聞かせたくなるだろう。

 話して聞かせたくなる話を量産しているのは、ロアルド・ダールだろう。写真の本に収録された話では無いが(Ⅰに入っている)、なんと言っても「南から来た男」は傑作だ。僕は吉行淳之介のエッセイで高校生の時に初めてこれを知り、その時から何度か買って読んでいるはずだ。けれど手元に無いのは、ひとに貸しているからだ。貸す度戻ってこないのは、手放すのが惜しくなったか、読んでいないかだろう。実に惜しいことである。(後で見つかるが、どうも二冊持っていた可能性が高い。写真上げておきます)




 さらに戻ってこない短編集に「キス・キス」がある。それに収録されている「ミセス・ビクスビーと大佐のコート」 も傑作だ。
 ダールには児童書にも傑作が多いが…、とにかくたくさんあるんで、もう勝手に読んでください。

 ミステリ作品で世界的に評判が高いのは、下記の作品群である。この中でもW・W・ジェイコブズ「猿の手」は、ものすごい傑作だ。恐ろしい話だが、ジワリ来る余韻にしびれて欲しい。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする