サッドヒルを掘り返せ/ギレルモ・オリベイラ監督
ドキュメンタリー映画。マカロニ・ウェスタンの名作といわれる「続・夕陽のガンマン」のロケ地において、撮影当時の埋もれていた墓所を再現するために、ファンが集まって遺跡発掘みたいに掘り起こしていく物語。観光地でもなんでもないくぼんだ荒れ地になっているが、この映画ファンにとっては、いわゆる巡礼場所として重要なところになっていたらしい。この場所を発掘しようと思い立った数人の呼びかけに、様々な人々が共感して協力してくれる。夕陽の監督さんはすでに故人になってしまっているが、撮影当時の逸話も含め、撮影を知る人々のインタビューなどを交えて、映画の魅力もたっぷりと語られる。単なるヒット作を超えた伝説の映画であるだけでなく、いかに革新的に人々の心をとらえていったのかが理解されていくことだろう。そうしてそのようにして共に汗を流してくれるだけでなく、支援してくれる著名人の輪も広がっていくようだった。好きな人にはたまらない魅力だけではなく、この聖地自体が、人々に大きな連携をもたらしてくれる素晴らしい土地に変貌していくようだった。
そうして掘り起こされて撮影された当時の様子も再現された土地で、そのラストシーンが仲間たちによって演じられ、記念撮影し、そうして巨大スクリーンを設置して、また夕陽の映画を見るのだ。この地に来ることが叶わなかった関係者のインタビューも添えられており、これに集まったファンも、思わず感動してしまうサプライズまで用意されている。ドキュメンタリー作品にもかかわらず、この構成自体に、大きく心を動かされる人も多いのではなかろうか。そうして、映画というのは一体何かということまで、考えさせられることになるのであろう。少なくとも僕は、映画というのは、映画を撮るという制作側の人間の情熱を超えて、生き続けられる作品であることに驚いてしまった。娯楽作品の持つ面白さというだけでは、すべてを語りつくすことのできない魅力が、この映画を取り巻く人たちを、いわば魔法に包んでいくようだった。