思いのこし/平川雄一朗監督
道路に飛び出してきた男をはねた上に反対車線に乗り出して他の車両と衝突してしまい死んでしまった四人だったが、はねた男が無事だった上に何故か死んでしまった四人はこの男とだけは普通に接することが出来るらしいことが分かる。事故だから突然死んでしまった訳で、それなりに生前にやり残した感のあるために成仏が出来ていないということかもしれない。幽霊と交信ができるが基本的にどうしようもない男が奔走することになる基本路線はコメディだが、いわゆる幽霊が現世世界と縁を切る為のドラマが感動的であるというつくりである。テレビドラマのような映画なのだが、広末涼子らがポールダンサーとしてセクシーダンスを踊るということと、主演の岡田将生が女装などして奮闘するのが見どころである。実際に岡田の悪い男ぶりはなかなか似合っていて、多少わざとらしいが、金に執着があるために無理難題にチャレンジしていく様は、それなりに楽しい。特に最初の死んでしまった新婦の代わりに結婚式に臨む姿は、デミ・ムーアが主演したゴーストを少しばかりバカっぽくして再演したような楽しさがあった。後のエピソードはちょっと現実離れしすぎて蛇足といっても良かったが(まあ、それが映画のほとんどだが)。
原作小説(「彼女との上手な別れ方」岡本貴也著(小学館))があるらしいが未読。多少設定は変えてあるところはあるようだが、基本的には同じような人助け(金のためだが)をする話らしい。
最初の頃にこのダメ男が派手に車にはねられるのに、ほとんど無傷でさらに幽霊と普通に話したり接したりできるという設定があったので、四人の成仏と共に彼も死んでしまうのだろうと勝手に思っていた。実は彼も幽霊だったというか。それは僕が勝手にそう思っていただけのことなんだが、そうなった方がいいような気がしたのは、この男のダメっぷりが更生されていく物語の〆としてそれがふさわしく思えたからだろう。物語はそうはならない訳だが、四人目の一人息子を幽霊として長く見守っていきたいと願っていた女は、その願いとは違う形で成仏できることになる。そのためにはやはり男は生きていく必要が出てきたのかな、と納得したのだった。それはおそらく原作者の考え方であろうからそれでいいので、終わった後もいい余韻にはなったのかと思う。