カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

過去の馬鹿な自分の払拭のために   恋のから騒ぎ

2012-05-27 | 映画
heath ledger singing "cant take my eyes off you"



恋のから騒ぎ/ジル・ジェンガー監督

 今となっては亡くなったヒース・レジャーの初主演映画として紹介されることの多い映画だけれど、当時の米国では大ヒットしたにもかかわらず日本では劇場公開が見送られたからに他ならない。要するにまだ無名だったから売れないと決めつけられたということなんだろう。もちろん大変にヒットしたのは当然で、かなりロマンチックなラブコメの名作と言っていいだろう。この映画が好きだというのは何となく気恥ずかしいが、まあいいじゃん、と開き直ってしまおう。何しろ僕は少女漫画ばかり読んでいる少年時代を過ごしたので、これくらい甘いお話で無いと恋愛が盛り上がらないのである。
 いろいろと変なところはあるにはあるんだけど、学園生活というのはだいたい多少は変なところがあるものである。そういう中で夢を持って生きていこうとすると、このような漫画世界になってしまうのかもしれない。こんなことがあったらいいな、ということを現実化していくと映画らしくなるということだろうか。
 しかしながら、若いころの自意識過剰というのは、デフォルメがあるとはいえ、多くの共感があってのことではなかろうか。素直になれないのはたくさんの理由がある。それはお互いさまで、時にはそれが大変に大きなすれ違いを生む。そうするとさらに心を閉じることにもなりかねなくて、あんがい臆病なまま青春の終わってしまった人も多いのではあるまいか。その頃は本当に深刻だったのだけれど、あとから考えてみると、馬鹿らしいほどに大したことの無いことに意固地になってしまっていた。残念ながらもう取り返しは付かない訳で、返す返すも馬鹿だった自分を呪うしかない。せめて映画の世界で、その恨みを晴らすべき時もあるのではなかろうか。そういう過去の払拭には、まさにうってつけのラブコメ名作映画なのである。
 それにしてもやはり日本の高校生では、この世界観はやっぱりぜんぜん無理という気はする。第一車で学校に通うような環境の人間なんてほとんど無いだろうし、プロムという習慣もほとんど定着していない。パーティの風景もおそらくぜんぜん違うものだろう。少なくとも僕の時代にはまったく考えにくい世界で、映画の中でしか知らない世界なのである。そうではあるけれど、逆に映画やテレビドラマではそれなりになじみがあって、僕らはこの世界にあこがれていたようにも思う。多少前の映画だから現在のアメリカとはまた違うことも多いとは思うが、このようにして育った人間と日本人が違うのは、当たり前すぎるほど当たり前だという気がする。僕の子供の世代になるとひょっとしてこうなるかもしれないとは考えたことはあるが、現在においてもまったく世界が違うことには変わりはないようだ。自由ではあるが廃頽的な偉大なるアメリカ。日本人はいつまでもこの幻想を追いかけるより無いのかもしれない。
 勉強をしている息子たちの前で、この映画を一人で盛り上がりながら観た訳だが、結局彼等は食いついてくることは無かった。まあ、時代なのかもしれないですけどね。というか、単に邪魔だっただけなのだろうけど。
コメント
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