思い起こすと若いころの旅行は、金も無いのでバスをよく利用した。
春節前の寒い時期にバスに乗ると、運転席の窓を閉めない運ちゃんがいた。
「寒いから閉めてよ」と乗客が抗議すると、
「俺が居眠りしていいんだったら閉めるよ」と言われた。
考えてみると何度かバスが事故を起こすこともあった。一度は派手に自転車に乗ったおばさんを跳ねた。自転車はぐちゃぐちゃになったが、おばさんは生きていて、起き上がってバスを叩いて文句を言っている。その姿を見たバスの運転手は、「こっちも傷が入ったし、あいこだ」と言ってそのまま走り去った。
それなりに高速で走っていてタイヤがパンクしたこともあった。蛇行しながら危うく横転しそうになったが、何とかバランスを保ち、無事に停車したときは車内で拍手が起こった。タイヤの付け替えは乗客の何人かが手伝っていた。
怖い思いは何度もしたが、やはり若いというのはそういうことには無頓着で、自分だけは助かると根拠もなく考えていたように思う。多少運転が気になっても、ちょっとばかり運が悪いだけだろうと思うようにしていた。ひょっとすると酔っているのかもしれないというような奴もいたが、目的地に運んでくれるなら特に文句も無いといった感じだったかもしれない。旅の宿でそのような話をすると、皆自分の危険体験を自慢し合ったものだ。
やはり今生きていることには感謝しなくてはならないようだ。
あ、日本での話では無いですよ。時期が時期だけに思いだしたもので…。