カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

ウイちゃんがみえるもの

2011-11-03 | 読書
ウイちゃんがみえるもの/衿沢世衣子著(講談社)

 絵本や児童文学を読んでいて時々本当に感心するのは、作者は現在恐らく大人になっているにもかかわらず、よくもまあ子供の考えている事を理解しているものだなあ、ということだ。かつては大人だったくせに実に勝手ながら、大人というのは見事に子供時代の自分のことをすっかり忘れてしまっているものだ。そうすることによって社会性を獲得し、人間として生きていくことが出来るようになったという側面はあるのかもしれないけれど、実に薄情なものである。しかしながら忘れてしまっている状態なので、ある時ふっと思い出すことは出来るようだ。完全には思いだせないものの、ちょっとしたきっかけや思い出さされ方が上手だと、あっ、そういえば、と衝撃を受ける事なんかがある。子供の頃の記憶はダイナミックなものが多いのだ。
 さて、子供の頃には確かに持っていた能力にアニミズムというようなものがある。僕は家から見える山の向こうに、ゴジラのような怪獣の気配を感じ取っていたし、確かにおもちゃと真剣に会話していたようである。時々話しかけられるのだけど、それがどんな言葉だったかは残念ながらまったく思い出せないが…。
 そういう不思議な世界を、不思議は不思議であるのだけれど、実に自然に表現したものであると思う。特にリアルに描かれているわけではないが、なんというか、実に自然なのである。僕の感じていたアニミズム世界とはぜんぜん違うものであるが、なるほど現代の子供ならこんな感じかもしれないな、とは思うのであった。
 また、自分の父親に人見知りするなど、子供としてかなり内気な性格らしいし、はちきれたものはあんまり無いのだけれど、それが却って本当の子供らしいというか、なるほど子供の立場としては、こんな感じなのかもしれないな、と感心したのだった。僕は父親なのでそういう場面に身につまされるものがあり、悲しいながら、なんとなく救われるような気分になった。
 漫画なんだけどそういうところは絵本的で、そうしてやはり文学的なのだ。僕は世間や世界を知らない大人なんだなと改めて感じさせられて、大変面白い読書体験になった。
コメント
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