意外に面白いといううわさと、朝のテレビドラマで見たことある人なので読んでみる事にしたのだ。意外に面白いと聞いて読んだのだから意外に感じるのはおかしな話のような気もするけれど、まさかここまでとは思わなかった。はっきり言ってこういう言い方も失礼なようだけれど、物凄くまっとうな小説で、実に上手い展開だ。これは小説家が読んでも上手い小説だと認識するのではないか。あるいはやられたと思うのではないか。いいや、そんなことはないよ、こんなの小説じゃないよ、という小説家がいるかもしれないが、そんなこといっても、たぶんこの小説は勝手に上手い小説として市民権を得るだろう。よくできているけれど、垣根を越えて小説という手法の普及まで果たすのではないか。そんな可能性まで感じさせられるほど、実に上手い。それでいて話は面白い。なんだか不思議な気持ちになった。
実をいうと劇団ひとりという人のギャグをみたことはない。先に書いたように演技は見たことがあるが、それなりに感じは出ていて、少なくともお笑いタレントという感じではなかった。だから僕にとっては俳優のような人が書いた小説ということになる。そうであるから小説については、意外に感心できるわけだ。俳優と小説家とどちらがいいのかわからないけれど、彼はどちらを選択してもそれなりにうまくいくのかもしれない。もちろんどちらとも選択するのかもしれないし、見たことの無いお笑いも続けていくのかもしれない。それは言ってみれば、才能なのだろうかと思わずにいられない。彼の中にどんな苦労が隠れていようと、そういう感想を持つに至るだろう。はっきり言って凄いと思う。一時期マルチタレントというものが流行ったことがあったけれど、これは本格的なそういう存在の登場なのではないか。引退した中田選手はビジネスマンとしては未知数だが、劇団ひとりは既にこのポジションを確立できている。あえて比較しても仕方がないけれど、僕は断然劇団ひとりの今後に期待できると宣言する。
ちゃんとした本だが字が大きいのですぐに読んでしまえる。時間が空いたら手にとって楽しんでみては如何だろう。変な話なのに妙に感動できる不思議な小説なのである。