日出る国の華

2009-07-19 | 【樹木】ETC
 北畠親房の「神皇正統記」のはじめに、日本の「くに」のさまざまな呼び名のことが出てくる。その中に、「又扶桑國と云名もあるか。『東海の中に扶桑の木あり。日の出所なり。』と見えたり。東にあれば、よそへていへるか。此國に彼木ありといふ事聞えねば、たしかなる名にはあらざるべし。」とある。
 芭蕉は、「おくのほそ道」で松山の景色を「扶桑第一の好風」を言っている。
 植物の分類上、扶桑と言えば、ブッソウゲである。仏桑花、仏桑華、扶桑花とも書く。またの名が、ハイビスカスである。こちらの方が通りがいい。
 夏に、真っ赤な花をつけ、その形は全体に円形で、太陽を思わせないでもない。日の出る国の象徴であり、日の丸を連想することもできる。
 ハイビスカスは、南国の花木である。植物図鑑では、栽培適地は、九州南部から沖縄とある。通常、内地では自然には見かけない。北畠親房が、扶桑を架空の神木としたのも、そうかなと思う。
 ハイビスカス、ブッソソウゲは、アオイ科フヨウ属の樹木である。
 同じ仲間に、フヨウ(芙蓉)、スイフヨウ(酔芙蓉)、ムクゲ(木槿)またの名をハチス、ハマボウ(浜朴)などがある。これらは、いずれも夏に花をつける落葉低木。ただ、ブッソウゲは異なり、常緑の低木である。
 これらに似たような花をつける草本にタチアオイがあり、これもアオイ科の植物である。
 ついでに、おぼえておいた方がいいのが、アオイであり、これはウマノスズクサ科の草本。草だか、木だか、常緑か落葉か、しばらくしたら、忘れてしまいそうだ。
※写真は、多摩動物公園の昆虫園で撮ったものである。このブログに載せてある写真は、すべてわたしによるものである。

春や昔の春ならぬ

2009-07-19 | 【断想】ETC
 月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして(在原業平)
 歌の意味をとりやすいように直してみる。
 月や昔の月ならぬ
 春や昔の春ならぬ
 わが身ひとつは
 昔の身にして
 昔、交わりのあった女の住んでいた屋敷を訪ね、いまは荒れはてたその中、板敷きのうえで、時のうつろいを思い、自分の気持ちだけは昔のままだと思いにふけっての一首である。