梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

年賀ハガキの思い

2023年01月14日 05時35分24秒 | Weblog
正月も10日前後となると年賀状は来なくなります。松の内(1月7日)まで出せず、届いた年賀状の返礼に使われるのは「寒中見舞い」となります。もともと寒中見舞いは暑中見舞いと同じような季節の挨拶状だったようですが、喪中の挨拶を旧年中に出しそびれ年賀状が届いてしまった時、活躍してくれるのもこの寒中見舞いとなりました。いずれにしても、今年の年賀状のやり取りも終わりとなります。

日本郵便による2023年用の年賀ハガキの発行枚数は16億4000万枚だったようで、前年実績に比べると10%少なく、前年からの年賀状離れが加速していることを物語っています。年賀ハガキは1949年に発売が開始されてから、徐々に発行枚数を伸ばして、1973年には20億枚を突破し、ピーク時の2003年には44億枚を超えました。2010年から減ったり増えたりを繰り返し、2010年から現在まで発行枚数は減少し続けています。

私が積極的に年賀状を出すようになったのは、きっかけがありました。30年ほど前、「ハガキ道」の創始者・坂田道信さんの話しを聞く機会があったからです。「ハガキを書けば手に入らないものはない」とおっしゃっている方でした。坂田さんは昭和15年広島県生まれ。高校を卒業後農業のかたわら大工見習いとなり、46年ある師と出会い『複写ハガキ』に目覚めます。毎年約1万を超える年賀状を書き続け、ハガキ道の伝道者として、各地で講演活動をされるようになった方でした。

坂田さんの書く『複写ハガキ』は、少し変わった書き方のものでした。白紙の紙とハガキの間にカーボン紙を置いて書きます。こうすることで、当然、上の紙に書いた文面がカーボン紙を通してハガキに写るとともに、「自分の書いた文面がちゃんと残る」という仕組みなのです。

この『複写ハガキ』を始めたきっかけは、29歳の時、たまたまこの書き方を実践している森信三(哲学者・教育者)に出会い、薦められたことでした。「義務教育を終えたら次の3つが出来なければならい。挨拶が出来ること。ありがとうが言えること。そしてハガキがちゃんと書けること」。坂田さんはこの言葉を信じて、農業や建築関係の職に就きながら、まずは身近な人へ宛ててハガキを書き始めたといいます。そして信じるままに書き続けて10年が過ぎたころ、自分の「人生」に大きな変化が生まれていることに気が付きました。

苦労した漢字や文章も苦にならずに書けるようになり、そして日本全国にハガキのやり取りをする友達が出来ていました。そしてそれは、「自分は一人じゃない」そんな心の大きな支えになっていたのです。さらに『複写ハガキ』で残った何万通もの文面を振り返り、友人とはどうやって関係が出来上がってきたか、こんなことを書くと喜んでもらえる、こんな言葉は使うべきではなかった、自分は何を考え何を伝えてきたのか、人生にとっての「大事なヒント」がたくさん残されていたのです。

その坂田さんは、1枚のハガキを出すか出さないかによって、人と結びつき、自分の運命を変える実践を愚直にされた方でした。講演を聴いて私の中で変化が起こりました。手紙やハガキを極力書くことへの挑戦です。勉強会で初めて会って親しくお話をした人、営業で会社訪問をして心が通じ合った人、その人達にお礼の手紙やハガキを書くことです。すると、年賀ハガキの枚数が毎年どんどん増えていきました。

年賀ハガキ多くの方から頂くのは、私も相応に書いているからに他なりません。パソコンで印刷したものを打ち出しても、そこに一言書き込んでいると、費やす時間も多くなります。毎年頂いたものをチェックして、名簿を整備する手間も結構大変です。しかしそのつながりによって、人に助けられ、また貴重な多くのものを得ました。

ある時期から私に届く年賀ハガキの数が減ってきました。差し出される方が亡くなったり、高齢で年賀状をお終いにされたり、そのような理由です。最近は若い方でも、年賀状仕舞いをされます。その世相には、メールやSNSが普及したことが大きな背景としてあります。長く年賀状は、新年の挨拶のついでに近況報告をするのにちょうどいいツールであったのです。現在ではメールやSNSが普及したため、いつでも近況を知ることができるようになりました。

とはいえ、明日15日はお年玉抽選くじの発表日です。頂いた年賀ハガキに何か賞品がある事に淡い期待を抱きます。数は減っても、私は年賀ハガキを出し続けたいと思っています。  

 坂田道信さん
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