梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

あかざの杖

2012年11月02日 16時36分41秒 | Weblog

藜(あかざ)は植物です。インドあるいは中国が原産と言われ、古くからわが国へ渡来し食用として栽培されていて、今では各地の畑や荒れ地に帰化し、胃薬や滋養強壮など薬草としても効用はあるそうです。茎は軽くて丈夫な為杖として利用され、ステッキ専門店ではかなりの値段で売っています。長寿象徴の七福神の寿老人が持っている、仙人が持つような杖があかざです。

そんな杖を会社に持って来て下さった方がN氏です。ご自身であかざを栽培してその杖を手造りされた方で、私の足が悪いことを以前から承知で、将来必要になるだろうから使ってもらいたいとのことでした。形も種々、4本も頂きました。

私は昭和50年父親の会社に入社して一年経った頃、短期間でしたが修行に出されました。修行先であるその会社の創業者とは、私の祖父の時代からお取引をさせて頂き、鋼板溶断加工では草分け的な存在でした。

父親はスケールやスクラップ事業から、将来鋼板の販売に主軸を置くことを確信して私を専任とすることを決め、社外での知識の修得の為、昔から懇意にしていた会社に息子の修行を頼んだのでした。

その時お世話になった方がN氏です。私より一回り年上で、現場の長であったN氏から、厳しくも懇切丁寧に基礎を教えて頂きました。修行が終りわが社に戻り、半年後に大怪我をしました。私はその後15年間、新たに興した運送業の仕事に就きましたので、N氏とのご縁も途絶えてしまいました。

五年前にN氏と久々に再会しました。その会社の取引先を集めた忘年会です。八年前からその会社とは切り板の関係で取引が盛んになっていました。定年を前にN氏は、「ゆっくりしたら、必ず哲ちゃんの会社に遊びに行くから」と。

その会社は今年初めに、残念がなら看板を降ろしました。永くオーナー経営を死守していましてので、存続させるために色々と模索されたました。その結果、同業他社と別会社を創って、それまでの全ての業務の移管を果たしました。

一方N氏は二年前に退職していましたが、肺癌を患い手術をされました。鍛えた体力は病魔にも負けず回復は順調、定期検査の帰り道にわが社に来られました。頂いた杖は、転ばぬ先の杖として、心の杖として大切に致します。
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